青いチビの使い魔 41話
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 キキSide

 

『あの子爵が裏切りものだったなんて……。まさか、魔法衛士隊に裏切り者がいるなんて……』

 

『姫さま……』

 

『わたくしが、ウェールズさまのお命を奪ったようなものだわ。裏切り者を、使者に選ぶなんて、わたくしはなんていうことを……』

 

『姫さまのせいではありません! それにウェールズ様が死んだと決まったわけでは…』

 

『ルイズ…。わたくしだって信じていたいのです。しかしワルドによって傷ついた身でアルビオンへ残ったのでしょう?』

 

『それは…そうですが』

 

と、姫さまとルイズが悲壮感ただよわせて話し合っているのを俺は案内された部屋から百眼と読唇術を使い覗き観ていた。なぜ俺がそんな事をしているか? それは暇だからだ。案内された部屋には何も無く、暇つぶしすることが出来ないため、暇つぶしの覗きである。なんか日本語おかしいな。まあいいや。

 

「あー、しかし思い出せねーなー」

 

この先どういう感じで進むんだっけ? 全然思い出せない。零戦っていつ頃手に入るんだっけ? あ、いや、召喚されてるのリオンだし手に入れるの零戦じゃなくて飛行竜…はデカすぎるよな。じゃあD2の飛行艇(名前が思い出せない)かな? んーアレもデカいから無いなー。

小型で1〜2人乗れる物……やっぱりレアバードが妥当だよなぁ。でもTODってレアバード出てこないし。

あッ! そういえばアッシュもこの世界にいるんだったな。ってことは他のテイルズオブ世界の色々な物があってもおかしくないか。……いや、待て自分。ここには烏丸チトセが居るんだぞ。しかも原作版の淑女ではなくアニメ版の方が。あの世界観を考えると………

 

〈略〉

 

………でもやっぱりチェーンバインドってかっこいいと思うんだよな〜……

 

〈略〉

 

……斬撃って飛ばした方がいいの…

 

〈略〉

 

…だし、そうなると、

 

「キキ」

 

「ホファッ?」

 

色々と思考に((耽|ふけ))っていたせいでタバサに声をかけられたら驚いて変な声を出してしまった。俺は皆の反応が気になり周りを見て……ってあれ?

 

「帰る」

 

「え? あ、ああ。そういう事ね」

 

周りを見たらタバサ以外部屋に居なかった。いつの間にか相当時間がたっていたらしい。途中から覗きそっちのけで色々と考えてしまっていた。…………あれ? 何考えてたんだっけ? まあいいや。思い出せないってことはどうでもいいことなんだろう。ってなわけで、俺たちはシルフィードに乗って学院に帰るのであった。

 

 

 

 

 フーケSide

 

レコン・キスタの連中がニューカッスル城へと攻め込んでから二日後、私は怪我をして片腕を吊っているワルドと共に戦跡の検分に来ていた。

 

「ったく。こんな死体と瓦礫しかない場所に来たがるなんて物好きだね」

 

「付き合わせてしまってすまないね。でも確かめたい事があるんだ」

 

「あのガキ共の生死の確認かい? さすがにこの状態で生きてはいないんじゃないか?」

 

私はニューカッスル城だった場所を見渡しレビテーションで大きな瓦礫をどかして居るワルドへと言う。少しは原型を保っている場所も見当たるがそれでも元々の形など見る影も無く、私たちがいる聖堂だったこの場所など教えられなければ分からないほどだ。

 

「奴らがそう簡単に死んでくれれば私としてはこれ以上ない朗報なのだがな。が、しかしそうもいかないみたいだ」

 

「その言い方だと逃げられたみたいだね」

 

「ああ。死体どころか服の切れ端一つ見つけられない」

 

と、ワルドは悔しそうに言うが、その表情は少しの笑みがこぼれていた。まったく、男ってのはなんでこう言うバカが多いのかねぇ。私は呆れてふとある場所を見る。元々は立派な宝物庫の塔があったものの、今や半ばあたりから壊れ崩れてしまっている場所だ。

いくらいい思い出が無いとはいえあの((娘|こ))と遊んでた場所が無くなったのは少し哀しいねぇ。

と、我ながら珍しく感傷に浸っているも塔の下でレコン・キスタの兵士たちが我先にと宝石を((漁|あさ))っている姿を見て別の意味で気落ちしてしまった。

 

「どうした? 貴様も宝石を漁らんのか? 貴族から財宝を奪い取るのは貴様の仕事じゃなかったのか」

 

そんなふうに冷めた目で兵士たちを見ていたら一通り探し終ったのかワルドが話しかけてきた。

 

「私とあんな連中を一緒にしないで欲しいわね。火事場泥棒なんて趣味じゃないの」

 

「ほう。盗賊には盗賊の美学があると言うやつか」

 

「そうね。据え膳には興味ないわ。私は、大切なお宝を盗まれて、あたふたする貴族の顔を見るのが好きなのよ。だから…もう慌てることのできない奴らから奪うなんてつまらないわ」

 

私は兵士たちによって身ぐるみを剥がされた王党派の死体を横目で眺めて言った。そんな私の言葉にワルドは不思議そうな顔をしてきた。

 

「アルビオンの王党派は貴様の((仇|かたき))だろうが。王家の名の下に、貴様の家名は辱められたのではなかったのか?」

 

「まあ、そうなんだけどね。…そういうあんたこそ魔法衛士隊隊長なんていう名誉と誇りある立場を捨ててまでコッチで何しようってんだい?」

 

私はワルドの言葉に曖昧に答え、強引に話題を変えた。確かに恨みが無いとは言えない。実際、貴族専門の盗賊をやっているのも稼ぎがいいと言うこと以外にもちょっとした嫌がらせという面も持っているからだ。

まあだからと言ってあれから何年も経っていて、あの娘も平穏無事に暮らしているんだ。今更『王党派がッ!』などアホらしいと思うしね。

 

「聖地へ行く。そこで私は確かめなければならないことがあるのだ」

 

「聖地ねぇ。……あんたは本当に聖地奪還なんて出来ると思っているのかい?」

 

「それはこれからの働き次第だろう。それに……」

 

「おお! ワルド君! 件の手紙は見つかったのかね? アンリエッタがウェールズに認めた恋文は」

 

私とワルドが話していると、遠く方から快活な声と共に二人の人間が歩いてきた。先を歩いて来た丸い球帽をかぶり、ローブとマントを身に着けた三〇代半ばの男だ。見た感じ聖職者のようだけど何者だい?

 

「閣下、申し訳ありません。手紙は発見できず、ウェールズの死体も見つかりませんでした。私が不甲斐ないばかりに何も成果を上げられず、それどころか手負いで逃げ帰る始末。何なりと罰をお与えください」

 

私が男の事を((訝|いぶか))しんでいると、ワルドが男を閣下と呼び地面に((膝|ひざ))をついて頭を垂れた。閣下ってことはこの男がもしかしてレコン・キスタの指揮官なのか。

 

「ふむ、確かに双方とも結果を得られなかった事は残念だが…なに気にすることではない。手紙に関してはいわゆる保険のような物であったし、ウェールズに関しては先の戦いで目撃されている。彼とて手負いのまま戦場へと出て無事では済まないだろう。死体の発見も時間の問題だ。

いや、もしかしたら砲撃の直撃に遭い、形が残っていないのかもしれない。ふむ、それは少し困りものだな。そう思うだろワルド君」

 

と、閣下と呼ばれた男はカラカラと笑いながらワルドの肩を叩いた。男の言葉は慰めているとか皮肉を言っているとかではなく、本気で気にしていないと言う感じであった。

 

「ですが……」

 

「いいではないか。気にしていないと言っているのだ、お前も必要以上に気負うことはないわい」

 

「………はい」

 

ワルドがさらに何かを言おうとすると、閣下と呼ばれた男の後ろにいるフードを被った男が諭すように言葉を重ねてきた。

フードを被っているから詳しい容貌はわからないけど、フードから除く髪は紫色で赤く色の付いた眼鏡を掛けている。声から察するにそれなりに歳をとっているようだが、こいつもレコン・キスタの重鎮か何かなのかね?

 

「彼の言う通り気にするな。それに例の船の残骸から良い者も発掘出来だのだからな。さて、他にも見回らなければならない場所があるのでね。行かせてもらうよ」

 

男は最後にそう言ってフードの人物と一緒に去って行った。

 

「あいつらって何者?」

 

私は二人が見えなくなったのを確認してからワルドに二人の男について聞く。

 

「ん? ああ。マントを付けていたお方はオリヴァー・クロムウェル閣下だ。そしてフードを被っていた者は参謀にして閣下のご友人であるロディル様だ」

 

 

 

 

 ロディルSide

 

「ああッ! どうしましょうミスタ・ロディル!」

 

外の様子を散策し終わり、拠点の執務室へと戻ると目の前でオリヴァーの奴が取り乱し始めた。

 

「何を慌てているのじゃ」

 

「何をって、手紙が見つからないのですぞ! それにウェールズの亡骸も未だに発見できずにいる。これを慌てないでいつ慌てるのですか!」

 

「そんなくだらないことで取り乱しているのか。手紙やウェールズなど別にどうでもよいわい。有れば多少は役に立つ程度だと言ったであろう」

 

「そうですが…しかし…」

 

まったく劣悪種が。余計なことなど考えずにこちらの指示に従ってればよいものを。が、勝手なことをされてもわしが困る。

 

「何を悲観しておる。レキシントン号へ突撃して来て撃墜した軍船。それに乗っておったアルビオンの国王と将軍の死体を手に入れたではないか。使い方では手紙やウェールズよりも役に立つわい。

それに貴様に渡したソレと湖で手に入れた指輪さえあれば何も問題はない。貴様は何も気にせずいつも通りにすればよいのじゃ」

 

「う、うむ。そうですな」

 

わしがオリヴァーの胸と右手を((指|さ))して言うと、奴は先ほどまでのオロオロした様子から一度咳払いをして気を取り直した。

 

「さて、わしはもう一度出てくる。」

 

「また例の遺跡ですか? 『場違いな工芸品』が多々発見されているようですが、私には何がなんだが。そんなにも価値があるもので?」

 

「フォッフォッフォ。貴様が気にすることではない」

 

わしはそう言って部屋を後にする。価値があるものだと? あれほど素晴らしい“施設”を理解できないとは所詮は劣等種。まあよいわ。あれを完全に掌握できれば研究も今よりもっとスムーズにできるようになる。そうなればアレの…エクスフィアの製造も容易に。そしてゆくゆくはクルシスの輝石を…っと、これはタヌキの皮算用じゃな。今はやるべきことを確実にじゃ。

 

「マスター。準備はできています」

 

「うむ」

 

わしは外へと出ると、用意させておいた馬車へと乗り込み遺跡へと出発した。

 

 

 

 

説明
始祖の祈祷書編その2
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