リリカルなのはZ 第六話 その涙を引き替えに、取り戻せ!子ども達の笑顔! |
ガンレオンの不思議な踊りが終わって始まった模擬戦。
エヴァとコクボウガーとガンレオンと言った巨大ロボットの対決に子どもならず大人達も胸を躍らせてみていた。
ガンレオン程ではないがその重量感のある巨体を生かしてがっぷりとガンレオンに組みつく光景はまるで相撲のようにも見えた。
そこにペイント弾が装填されたガトリング砲を放つエヴァ。
一般人が大勢いる会場で実弾を使う訳にはいかないので殴る。蹴る。ペイント弾を撃つなどあらかじめ用意された当たり判定で勝負をつけるという物だった。
その為・・・。
「判定の結果。・・・勝者、NERVのエヴァンゲリオン!」
ATフィールドと言うバリアを持つエヴァが勝利した。
威力の無いペイント弾はもちろん掴みかかったコクボウガーやガンレオンはATフィールド堅い壁を殴りつけるもそれを突破することが出来なかった。
ガンレオンのパワーならそれを破壊できそうだが、それだけのパワーを出したら観客席を守っているバリアフィールドも壊す恐れがある。
エヴァ自体も乗っている人間が素人の所為か、ほぼ一方的(?)な試合で終わった。
ただ、エヴァがガトリング砲を放っている間にガンレオンが被弾を構わず突き進み、肩にあたる部分に自前のスパナをかすらせるという一撃で終わった。
当たり判定という物が無ければガンレオンが最下位の三位で終わるという事も無かっただろう。
コクボウガーもノットバスターと言う鉄杭を打ち込むウエポンアームを準備していたらATフィールドを貫けたかもしれない。ただし、貫いた勢いでエヴァのパイロットまでも貫きかねないので使えなかった。
そんな泥沼もバックサウンド。戦闘BGM宜しくと言わんばかりに流れた音楽。
科学者や戦術家はくだらないと評価する中、高志が歌った『Victory』に『Rocks』といったこの世界には無い歌。ジャム・プロジェクトの歌が流れたため観客席にいた子ども達や大人達は冷めない興奮のまま勝利したエヴァに拍手を送った。
帰る際には研究所出口でそれぞれのロボットがプリントされたCDが売り出される。
これは収入方法がほぼない高志が持っている唯一の利益である。
当の本人はジャム・プロジェクトの歌を勝手に歌い、それでお金を儲けて良いとは思わなかった。だが、
周りの人間があまりにも高収入。
元の世界に帰るための手段にお金がかかる事。
周りの人達に世話になりっぱなし。
最高学歴、小学校中退。普通自動車免許はおろか何の資格も持っていない現『傷だらけの獅子』はそれらの領収書を見せつけられた瞬間、これを流した涙と共にジャムの歌を売り出すという条件を呑むしかなかった。
だが、それでもよかったと思っている。
模擬戦で負けたものの、それを見ていた子ども達も最初は落ち込んでいた子供もいたが、自分達を守ってくれるロボット達。そして、元気づけるような歌を聴いて誰もが笑顔を見せていた。
それはグランツ博士が望んでいた光景かもしれない。
この模擬戦についでグランツ研究所が出した体感型ゲームブレイブデュエルの宣伝に入る。
そして、三つのスーパーロボット達を模した鎧をつけたキャラを制作することもできて、ゲーム内だけではあるがそれを扱う事が出来る。
そのような説明を聞いた子ども達は目をキラキラさせて早くのゲームがしたいと大声を上げた。
「はーい、ゲームに参加したい人はお姉さんたちの後についてきてくださいね〜」
「小さい子から順番にお願いします〜」
「今回は満員の満員な為、おひとり様十分間だけとなっておりますが、やる前に渡されるデータカードに今日行ったゲームデータを保存して、次回は各ゲームセンターに配備されるブレイブデュエルで使えます。模擬戦やトレード。一日一回来るだけでもゲームで使えるアイテムやアバター強化のアイテムも手に入ります。皆さん、どしどし参加してくださいね!」
フローリアン姉妹も腰に拳銃のような物をつけたカラフルなコスチュームを着て人達を案内する。
「お兄さん達、そこから先は関係者以外、立ち入り禁止だよ。無理に越えようとしたらチヴィット達に怒られるよ」
レヴィもあちこちを走り回りながら余計な冒険心を持った人達を注意して回った。
彼女の注意を無視して侵入しようとする輩は何人かいたが、忠告通り警備していたチビレオンに拘束され、私達は立ち入り禁止の場所に入ろうとしましたと言うシールをおでこに貼られて、研究所から追い出すまでの光景を他の人達に見せつけるかのように連れて良かれた。
彼等は周りにいた人達に顔を覚えられ、もうこの研究所に行きにくくなるだろう。
だが、本当にそこから先はまだ人目に出していいものではない。
自衛隊の戦車やら戦闘機も止まっており、いつ使徒の襲来が来てもいいよう実弾が搭載されているのだ。
だが、そこに忍び込む男がいた。
予め、ここの警備をしているのはチビレオンやチヴィットといったロボットであることは分かっている。
この男は立ち入り禁止と明記され、立て看板を乗り越えた輩の後ろからついて行き、小さいロボット達に拘束されている男をしり目にその目をかいくぐってグランツ研究所へと足を踏み入れた。
と、当時に光学迷彩機能を持つNERV特製のマントを頭からかぶると研究所内部へと侵入。その途中でこの研究所で働く研究員の後ろに気配を感づかれないように近づいていく。
研究員は気付かないまま、地下の研究所の奥へと向かう。そこは模擬戦で取れたデータを解析している研究室。
そこには紫色の本を中心に様々なチューブが繋がれている。
「うん。予定とは違ったけど喜んでもらえているようでよかった、よかった」
それを本と言っていいのか微妙な所だが、その本の近くには研究所の総責任者グランツ・フローリアン博士が指揮を執っていた。
地上では子ども達が巨大ロボットの模擬戦で笑顔になっている光景を映し出しているモニターがあり、博士はそれを見て笑顔を見せていた。
・・・本当に子どもが好きなんだな。
今、自分が行っているスパイ活動に少し嫌気がさした。が、すぐに気を取り直して様子をうかがう。
自分の任務はこの研究所が所有していると言われているガンレオンのパイロットの情報。
その動力源を探る事。
ガンレオンの事に関しては現在、マスコミに話された以上の事は何も知らない。
あの本が何か関係している。そう、考えていると長年の勘が騒いだ。
これ以上ここに居るのは危険だと。
そう感じた男は最後にこの研究所から抜け出す際に、彼等が実験している物を見納める。
その本の名前はD・エクストラクター五号機。『紫天の書・改』。
全並行世界に十二ある物の模造品。D(ディメンション)・エクストラクター。
その名前だけを覚えたNERVのスパイ。加持リョウジはその名前だけを憶えてその場を後にするのであった。
「・・・誰かいたような気がしたのですが。・・・一歩遅かったようですね」
加持がその場を後にしてから一分ほど後に白衣を着た茶髪の女性が鼻をスンスンと鳴らしながら辺りを見渡す。
「アルフの鼻なら確かなのですが…。駄目ですね私も。プレシアやグランツさんの研究に構ってばかりで野生の勘を無くしてしまったのかしら?」
そう言いながら手にした資料に目を通した女性は、その内容を見て少しだけ笑みを浮かべる。
「私はまだあなたには会えませんが、いつかあなたに会うのを楽しみにしていますよ。・・・フェイト」
『揺れる天秤』のスフィアを持つ女性。
リニスはアリシアがまとめたこの世界のフェイト達の事が記載された書類を片手に優しく微笑むのであった。
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