白い青年 |
「其れってさ、何の位掛かるの、」
黒い髪の青年が、椅子の背を支えに後ろを見遣る。
柔らかな髪が下へと引かれて、簾の様に緩く揺れた。
「……は、」
白い髪の青年が、振り向いて其れを見遣る。
眼帯と眼鏡で、印象的に鋭さを増した片の視線が訝しげに細められる。
黒の青年は姿勢を戻して、逆に坐り直す。
背凭れに顎を乗せ、首を傾げた。
「だから、其の、食べ終わる……の、」
だっけ、と少し上にある顔を見た。
「訊いて如何するんだ。」
「如何も。……てか如何も出来ないデショ、」
二人の視線が宙で交わる。
黒の青年がにこりと微笑った。
「まぁ、如何も出来ないんなら寧ろ君に協力しようかな、と思う訳ですよ。」
其の言葉を聞いて、白の青年が僅かに不思議そうな表情を浮かべた。
「……今迄多くの者に会って来たが、そんな事云う奴は初めてだ。」
「あれ、そう、」
今度は黒の青年がきょとんとして。
「だって、ボクが覚えた知識も、感情も、何時か死んで仕舞ったら消える筈だったんだよ。……けど、君が。」
柔らかく、微笑む。
「君が代わりに、君の中でずっと残るのだと、こんな、嬉しい事は無い。」
「……興味深い意見だな。」
白の青年が、口元に手を遣り考える仕草を見せる。
「贅沢云えば、君が更に知識を増やしていって呉れると嬉しいんだけどねー。」
ボクはもう使えないけど、気分の問題、と笑って。
「…………覚えておこう。」
決して承諾では無い其の返事に、其れでも満足したのか笑顔で頷いて黒の青年は立ち上がる。
「宜しく頼むよ。……じゃぁそろそろ寝るね。」
肩越しに手を振り、白い部屋を出て行く。
白の青年は其の後ろ姿を見送って、小さく零した。
――御休み、紗雪。
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眠る前の戯言。 | ||
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