真・恋姫無双〜魏・外史伝〜7
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第四章〜『心』と『強さ』・前編〜

 

 

  場所は変わり、再び蜀・成都、白帝城・・・。

  「ふあ〜〜・・・。」

  背中を伸ばしながら大きな欠伸をする。

  「眠そうだな、雪蓮。ま、昨日あれだけ夜遅くまで騒げば当然の事か。」

  その欠伸に、的確な指摘をする。

  「姉様、私達がここ成都に来た目的は宴会ではありません。もう少し、

  呉の王としての自覚をお持ちならないと。」

  そのだらしない姿を、批評する。

  「もう・・・、二人して私をいじめないでよ。桃香や華琳達と会って話すせっかくの機会

  なのよ。そりゃ、ちょっとは羽目を外したっていいじゃない。」

  二人に言われて、ふてくされる。

  「姉様は、羽目を外しすぎかと思いますよ。」

  「え〜、そんな事ないわよ。ねぇ、冥琳。」

  そう言って同意を求める。

  「・・・・・・。」

  やれやれ・・・と何も言わず首を横に振る。

  「めーーりーーん〜〜・・・!」

  そんな会話をしながら、昼間の廊下を歩く、孫策、周喩、孫権。

  

  「一体これはどういう事なの!!答えないさい、桃香!!」

 

  「「「!?」」」

  廊下にまで響く大声に反応する三人。

  「な、何今の?」

  「今の声は・・・華琳殿で間違いないだろうが・・・。」

  「どうやら王座の間から・・・のようですね。」

  廊下の先にある王座の間の扉が少し空いていた。三人は近付き、その隙間から中の

 様子を覗う。見た所、そこには桃香と華琳の二人のみが居るようであった。

  「え、えぇっと・・・、それは・・・。」

  言葉を濁してしまう桃香。

  「答えなさい、何故『これ』がこの城に存在するのかを!?」

  対して、一方的に言葉攻めする華琳。

  桃香が華琳に叱られている光景そのものは、決して珍しいものでは無い。それは、桃香の王として

 欠落した点に対して華琳が注意するといったもの。だが、今目の前で繰り広げられているそれは、叱る

 というよりも、華琳が桃香に対して、一方的に怒りをぶつけているというものであった。

  「ふむ〜、これはただごとでは無いわね・・・。」

  「ただ事でない、ならばどうすると言うのだ?呉の王として。」

  「面倒事に関わる気はないんだけど・・・、このままじゃちょっと桃香が気の毒だしね。」

  そう言って、雪蓮は隠れるのを止め、堂々と二人に近づく。

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  同時刻・・・。

 

  「うわあああっ!?」

  「ぎゃああっ!?」

  兵達が次々と吹き飛ばされ、一人は家の屋根に落ち、瓦が砕け散り、また一人は家の壁と

 ぶつかり、口から血反吐を出し、そしてまた一人は店先の品物に突っ込み、品の山に押し潰された。

 その光景に、臆する者は決して少なくは無かった。相手が人間ならば、その様な事は無かっただろうが、

 今彼等の目の前にいる者は、おそらく人では無い・・・現実からかけ離れた存在であった。

 多勢に無勢・・・、この言葉はこの大男には大した意味を為さなかった。

 

  その体は、家一軒をはるか見下ろす巨体。

 

  その重さで足が直立できず曲がってしまうほどに、発達した上半身の筋肉。

 

  その皮膚はまるで鉄の様な硬さで、剣や槍などでは貫けず、矢でも射ぬけない・・・。

 

  顔の皮膚が一部剥離し、真皮が見えてしまっている。

 

  痙攣を起こしているのか・・・、口が引きつっている。

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  現状を打破する術が無く、明命と小蓮は唯その大男から逃げるしかなかった。

  「周泰様、ここは我々に任せ、一刻も早く尚香様を城へ!」

  兵達が彼女達のために、その身を壁にしてその大男の前に立ち塞がるが、

 脆くあっけなく崩れ去る。

  「く・・・。」

  悔しさが明命の顔ににじみ出る・・・。

  「明命、あれは一体何のなの?!」

  小蓮は、頭に浮かぶ疑問を逃げながら明命に投げかける。

  「申し訳ありません、私にもそれが分からないのです。男が街で暴れているという

  報告を聞き、至急現場に駆け付けましたらあの大男が傍若無人に暴れていまして・・・。」

  「ただ暴れまわっていただけなら、どうして私達を追って来るのよ〜!」

  小蓮の言う事は最もではあるが、現に大男は自分達を追いかけて来ているのだから

 仕方のない事である。

  (今、亞莎と思春殿を呼び戻すよう指示はしたけど、このままでは城に着く所か、二人が

  戻って来る前に・・・。駄目、それだけは!小蓮様を守る任を雪蓮様から与えられたんだ。

  何としても・・・!)

  共に走っていた明命は足を止め、小蓮達に背を向け、そして追いかけて来る

 大男を見据える。思わず、尚香達も後ろを振り返る。

  「明命!?」

  「小蓮様、ここは自分に任せ、早くお城にお逃げ下さい!」

  「周泰様、ならばここは自分が!」

  「あなたは自分に課せられた使命を全うして下さい!小蓮様を守るのは・・・

  私に課せられた使命です!」

  「!!」

  その若い兵士の胸にその言葉が刺さる、自分の使命・・・それは天の御遣い様を守る事。

  「私にもしもの事があれば、小蓮様をお願いします!」

  「御意!」

  「明命!!」

  「大丈夫です、時間を稼ぐだけですから!」

  「うん、死んだりなんかしたら・・・承知しないんだから!」

  その言葉を聞き、尚香の方を振り向き、にっこりと笑いながら

  「はい!」

  の二文字をしっかりと言う。

  その言葉を聞いた小蓮は、一刀と兵士と共に前へと進む。そして、明命は背中の『魂切』に

 手を掛け、目の前の敵を睨みつける。だが、敵はそれにひるまず、自分に近づいてくる。

  「お覚悟!」

  魂切を鞘から抜き、敵に掛かって行く。

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  「は・・・は・・・はぁ・・・。」

  「尚香様、大丈夫ですか?少し休まれた方が・・・?」

  明命と別れてから、小蓮と兵士は極力、大男が通れないような細い道を選んで城へと向かう。

 そのため、複雑な、まるで迷路のように入り組んだ道を通ることとなり、それが必要以上の

 体力を奪っていった。

  「だ、大丈夫・・・。それよりあなたの方こそ大丈夫なの?一刀を背負っているんだし。」

  そう言いながら、兵士の背追われている一刀を見る。さっきよりも顔色が悪くなっている。

  「私の事は気になさらずに。尚香様と北郷殿を守る事が私の使命です!この程度、

  問題はありません。」

  小蓮を励ますように、力強く答える。

  「!尚香様、あの先を抜ければ城は目前です!もう一息ですぞ!」

  そう言われ、小蓮はその先を見る。その細い道の先に城の姿が見えた。

  あと少し、そう疑わなかった。細い道は終わり、あとは目の前に見える城の城門に

 向かうのみ・・・。

 

     ズドーーーンッ!!!!

 

  二人の目の前に大きな影が落ちてきた。

  「きゃあっ!?」

  「うわあっ!?」

  その衝撃に、小蓮は後ろに倒れる。彼女を支えようと、彼女の後ろに回る兵士。

  「・・・大丈夫ですか!?」

  「う、うん・・・ありがとう。」

  目の前で舞い上がる砂煙から、大きな影が現れる。

  「!?そ、そんな・・・!」

  目の前に現れたのは、明命が足止めしていたはずの・・・。

  「うそ・・・。そんな、明命は・・・?明命はどうしたの?!」

  あの・・・大男であった。

  小蓮の頭を嫌な予感がよぎる・・・。

  「・・・周泰殿・・・。」

  兵士の口から、自分の隊長の名がこぼれる。

 大男は、小蓮の方に足を進めていく。

 恐怖に体が動かない小蓮。その彼女の前に若い兵士が立ちはだかる。

  「尚香様、ここは自分が食い止めておきます!北郷殿を連れて・・・さあ早く!」

  小蓮は、兵士の背中に居たはずの一刀を探す。後ろにある家の、日陰となっている

 壁際に横たわる彼を見つけ、急ぎ駆け付ける。

  「一刀・・・!一刀!しっかりしなさいってば!」

  彼を揺するが、それでも目を開ける事は無かった・・・。

  「ぐわあぁあっ・・・!!」

  その声のした方向を見る。そこには、無力にも大男の左手と地面に挟まれる兵士の姿。

 その左手が離れても、彼はそこから動けず、咳き込みながら、口から血を吐き出す。

  「だ、駄目・・・や、止めて・・・!」

  そんな彼女の言葉に、耳を貸すはずもなく・・・。その兵士に止めをさすため、

 大男は右手は天高く振りかざされた。

  「いや・・・、いやあああぁぁぁぁぁああああっ!!!!」

  小蓮の叫びが街に響き渡る。

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  ザシュッ・・・・・・!!!!

 

  「・・・・・・え?」

  「な、・・・・!?」

  一瞬、何が起こったのか?二人は理解できずにいた。気がつけば、若い兵士の手には

 剣が無く、兵士は辺りを見渡す。

  一方、大男は自分の身に何かが起きた事に気付く。振り上げた右腕を自分の顔の前に

 持ってくる。すると、手首から先が無くなっていた・・・。自分の右手が何処に行ったのか

 と辺りを探す。

 

  ドサッ!!

 

  何かが地面に落ちる音がした。

 大男は自分後ろを見る様に顔を向ける。そこには、つい先程まで・・・自分の右手首の先

 に存在していた右手と、北郷一刀の背中姿があった。そして一刀の手には、兵士の剣があった。

  「ぐおぉ・・・、おおおお・・・。」

  痛みを感じているのか?大男の口から、声が漏れる。

  一刀は顔だけを大男に向け、すぐさま体も向けながら、剣道の中段の構えをとる。

 つい先程まで、胸の痛みに苦しむ姿は微塵も無かった。今あるのは、目の前の敵に臆せず、

 威風堂々とした姿がそこにあった。

  「ふおおお!!」

  大男が一刀に向かって、左拳で殴りかかる。

  そして、拳は地面を叩き割り、砂煙が舞い上がる。

  「一刀!!」

  

  思わず彼の名を叫ぶ小蓮。

  

  だが、彼は砂煙の中から現れる、大男の左腕の上を駆け上りながら。

  

  大男は捕まえようと右腕を一刀に伸ばすが、右腕の先に手は無かった。

  

  何故ならば、今しがた一刀によって斬られてしまったのだから・・・。

  

  だが、そんな事に構わず右腕で一刀を捕らえようとする。

  

  彼が左肩まで上ると、そこから上に飛び上がる。

  

  その行動に、大男は混乱し、彼の姿を追いかける。

  

  高く高く飛びあがった彼の背の向こうには太陽があった。

  

  太陽の光に大男は目をつぶってしまう。

  

  一刀はそして重力によって下に落ちる体を一回転させ、剣を高く振りかざした。

  

  「うおおおおおおおああああああああッッッ!!!!」

 

 

  怒りに近い、その叫びと共にその剣は、大男の左肩から左太腿へと力強く、

 斬り落とされた!

  その一撃に、大男から大量の血が噴き出しながら、尻餅を着く。そして、

 手足、首が痙攣を起こすが、次第にそれを消失し、上半身は後ろに勢いよく倒れる。

 ドサアアァッ!!という音を上げながら。

  「・・・・・・。」

  「・・・・・・。」

  その想像を絶した光景に小蓮と兵士は言葉を失い、ただそれを見ているだけであった。

 折れた剣を握りしめ、大男を見下ろす北郷一刀の姿を・・・。

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  建業の中で最も高い建物の屋根の端に座り、事の顛末を見ていた男がいた。

  「うっふふふ・・・、いやいやまさかこんな所で意外なモノを見つけちゃうなんてね〜♪」

  男は嬉しそうに言う。まるで新しい玩具を買って貰った子供のように。

  「でも、あの能力(ちから)・・・、常人のモノにしてはぁ〜、ね〜♪あれきっと

  連中が絡んでいるよね〜。」

  男の顔が少し真面目になる。

  「さてと・・・。早いとこ二人にこの事、報告しなくちゃね。」

  そう言い終えると、そこに男はいなかった。

説明
昨日今日急いで書きあげました。
今週からしばらく学校の試験で忙しく
なるため、投稿が遅れますので、ご了承ください。
魏・外史伝第4章・前篇。前回は謎のモンスターが登場した所で終わりました。はたして、一刀達の命運は如何に?!
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コメント
バイオウェポンだ(ブックマン)
何なんだあのでかいのw(WING)
タイラントだwwwww(フィル)
絵が無いより想像しやすくていいじゃないですかね? それに絵がかけない俺には凄いと思うんだが;; さて、次回どうなるのだろうか・・・・愉しみです^^w(Poussiere)
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