白なんとかさんのバレンタイン
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「……今年こそは渡すぞ! 日付は確認した。その日はアイツも非番だっていうし。ちょこれーと? ……は準備できなかったけど、ま、真心がこもってる手作りのものならってことだったし。……初めて作ったけど、饅頭喜んでくれるかなぁ……」

 

 

 北郷は桃香と愛紗を両脇に侍らせて歩いていた。

 白蓮が三人の様子を物陰から窺っていると、桃香だけが気付いたらしい。しばらくして何かに感づいたのか、愛紗と北郷の会話を思いっきり不自然に切り上げさせ、訝しむ北郷を置き去りにして愛紗と去っていった。

 

 めちゃくちゃ強引だったけど、たぶん私の事を察してくれたんだよな!?

 なら、好機は今だ!

 

「……おーい! 北g」

「あ、あら一刀、珍しく一人なのかしら?」

 

「……? あぁ蓮華か」

 

「キョロキョロして、どうかしたの?」

 

「いやさ、今白蓮の声が聞こえなかったか?」

 

「? 私は聞いてないわ」

 

「……気の所為かなぁ?」

 

 

 咄嗟の判断で物陰にエスケープした白蓮は難(?)を逃れていた。

 

「……私ってやつは!私ってやつはぁ! ……いや、まだまだ焦る時間じゃない。昼……そうだ、昼になったら誘えば良いんだ。いつものように、ごくごく自然にご飯どうだ? って」

 

 軽く怨嗟を吐きながらも暗い雰囲気を払拭することに成功する白蓮。

 まだまだチャンスはあると、前向きに時期を伺うことにした。

 

 

 

 昼過ぎ。

 街の裏道。特に昼間では人通りの少ない所に白蓮がいた。

 その様子から見るに、結果は芳しくなかったようだ。

 

「そうだった……。私って一回も北郷に食事を誘えたことなかったじゃないか……。今日は鈴々が先客だっていうし、一緒にどうかって言われても私にも色々とあるから二人きりじゃないと……、いや、鈴々はいつものことだな。なんか前々から約束してたみたいだし……。次だ次! 確かこの後は城に戻るって言ってたよな。なら先回りして……」

 

 

 

 結果から言ってしまえば、この日、白蓮が一刀に贈り物を渡すことはできなかった。

 城に戻れば祭と雪蓮の酒盛りに巻き込まれ、二人が背後に般若を携えた冥琳に連れて行かれた後は新作の試食会ということで、華琳に食堂へと連行されていった。

 そこでは朱里と雛里による天の国のデザートが振る舞われ、白蓮の唯一の支えはここで無残に打ち砕かれた。

 食堂を後にした白蓮はこう述べている。

 

『格の違いを見せつけられた。私にあそこまでの女子力はない』

 

 完全に意気消沈した白蓮は、気が付けば行きつけの酒屋に来ていた。

 そこで見知った常連仲間、星を見つけ、店主から酒を貰うと一気に煽り、自棄酒を開始した。

 完全に逃げ時を失った星は、白蓮に一つのアドバイスを送る。

 一刀の部屋には桃香、愛紗とは別に作らせたチャイナ服がある。それを着て誘ってみれば良いのではと。

 なぜ星がチャイナ服の事を知っているのか、普段の白蓮なら問いかける事をしただろうが、この時既に泥酔の域にまで達していた白蓮は、星の言うことを素直に聞き、半ば一縷の望みを掛ける気持ちで一刀の部屋に忍び込んだ。

 教えられたタンスの下から二番目の右奥を探っていると、確かに星の言った通りのチャイナ服があった。

 早速着替えてみるが、ほぼほぼ白蓮のサイズにピッタリであった。

 その事に気分を良くした白蓮は、鏡の前で色々なポーズを取ったり、一刀との甘々な日常を妄想をしていたところでだんだんと酔が冷めてきた。

 そんな折に部屋の主が帰ってきたものだから、扉を開いた一刀も、変なポーズを取っていた白蓮も、一瞬固まってしまったのは仕方のない事だろう。

 そして、白蓮よりも一瞬早く復活を果たした一刀が声を掛けるのと、白蓮が泣き叫びながら一刀の布団に潜り込むのはほぼ同時であった。

 

 

 

「なぁ白蓮、いい加減出てきなって」

 

「……うるさい。ほっといてくれ」

 

「ほっといてって言われても、ここ俺の部屋なんだけど」

 

「…………うるさい」

 

「……あーあぁ。せっかく白蓮をびっくりさせようと思って密かに作ってもらってたのに、なんで勝手に着ちゃうのかなー」

 

「……え?」

 

「その服、桃香が白蓮ならもっと良く似合うって言って、俺もそうだろうなって思ったから作ってもらってたんだよ」

 

「……私のため? あっ、だから白い……」

 

「白蓮は白が似合うからなー」

 

 実はこの時、一刀の脳裏に浮かんでいたのは別の女性である。

 このチャイナ服を最初に着たのはその女性で、何の打ち合わせもなく阿吽の呼吸で事実を抹消することにした。

 後に一刀は女性に謝罪するのだが、女性のほうも、自ら誘導したことだからと一刀に謝罪した。

 白蓮がこの事実を知ることは、おそらく生涯ないといえるだろう。

 

「罰として着替えた姿を見せてもらわないとな」

 

「さ、さっきも見ただろ!」

 

「さっきは一瞬だったし、部屋も暗かったし」

 

「そ、そんなに、見たいのか?」

 

「見たいに決まってる」

 

「…………す、少しだけだぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 布団から抜け出て一刀の前に姿を晒した白蓮が、饅頭もろとも食べられたのは別のお話……。

 

 

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【あとがき】

 

 皆様こんにちは。

 九条です。

 

 今年もこのネタをやっちゃったぜ。

 ネタなのでTINAMIだけの投稿です。

 なろうには活動報告にリンクを貼っとこう……。

 

 前書きにもあるように、去年に書いたやつはレスポンスに入れときましたので興味のある方はどうぞ。

 去年とは違いハッピーになりました。

 いつもいつも不憫な子なので、たまには、ね?

 

 実は白いチャイナ服はちょっと前に星と一発ヤッチャッタやつとかいう裏設定。

 白蓮が使った後は白蓮の私物になったので、星としては新しい服を一刀にねだっているとか。

 白蓮が似合っていたのは事実。

 胸元以外は星と同じぐらいの背丈なのかな〜という妄想。

 というか平均的なので、桃香並に作られていない限りだいたい身体にフィットしそう、とか思ってます。

 

 

 本編の進捗ダメです!(あかん

 明日仕事が休みなので、そこでどれだけ書けるか……。

 もちろん善処しますー!

 

 ではでは次回も(#゚Д゚)ノ[再見!]

説明
主に会話のみの進行。
ナレーションっぽいのが多少あります。

昨年のはレスポンスに載せておきました。
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コメント
>happy envremさん さすがに2年続いちゃうと……ね。 来年も書きそうな予感(九条)
>スネークさん 報われる回数が少ない気が……(九条)
>観珪さん 去年が去年だったのでね……。朱里とかも料理うまいですからねぇ(九条)
まぁ、華琳様たちと比べるのはね・・・ でも今年はハッピーエンドで何よりですわ(happy envrem)
ハムはちゃんと最後は報われてるから存在感が薄いことは耐える価値があるな(スネーク)
白蓮ちゃん、大変な目にあったみたいだけど、最後の最後でイイ思いができてよかったね! まぁ、華琳さまたちのお菓子には誰が作っても見劣りしてしまうのは仕方がないことなので……(神余 雛)
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