真・恋姫†無双 裏√SG 第27話
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私の世界はとても狭い

 

 

 

私にとって世界とは、私の家族とその周りに居る大切な人だけなのだから

 

 

 

それ以外は、何もいらないし、興味もない

 

 

 

だから私は、士希が他を救おうとした気持ちがわからない

 

 

 

私が力を使うのは、ただ、家族の為だけに…

 

 

 

 

 

司馬師伝其一

 

 

 

 

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秋蘭「じゃあ、私達は先に行く。後は手筈通りに頼んだぞ」

 

秋菜「はい、母上もお気をつけて」

 

霞「霰も留守番頼んだで」

 

霰「任せとき!ウチらがおれば、許昌の守りは万全やで!」

 

今日この日、徐福攻略がとうとう始まる。

短いながらもしっかりと準備をし、士気も兵糧も十分のようだ

 

【晋】の大人組を中心に編成された攻略組。総勢約3万人。

まさか、お父様がこんな大部隊を率いる日が来るなんて

 

零士「じゃあ、みんなも気をつけてね」

 

お父様、超素敵です!その黒のスーツ、超似合ってます!「ハァハァ…」

 

秋菜「おい、バカ姉。声が漏れているぞ」

 

咲希「え!?」

 

秋菜の指摘に意識が現実に戻ってくる。どうやらトリップしていたようだ

 

零士「あ、あはは。じゃあ、行ってきます」

 

咲希「行ってらっしゃい、お父様!」

 

お父様はそう言って許昌を出て行ってしまった。

その後ろ姿が見えなくなるまで、私は見送り続けた

 

きっと、夫を戦場へ見送る妻とはこんな気持ちなのだろう。

あぁ、なんて切なくて、なんて不安…

 

咲希「あぁ…いっその事、私の力を持ってして洛陽を消滅させてしまえば…」

 

秋菜「やめろ!人質や市民、建物に罪はない!というか、やったその瞬間、父上はお前を軽蔑するぞ!」

 

チッ、市民とかどうなろうと知ったこっちゃねーわぁ

 

凪紗「姉さん、稽古をつけてもらってもいいですか?」

 

凪紗が裾を引いて上目遣いでお願いしてきた。その姿が、とても愛らしい

 

咲希「いいぞ。私もちょっと、体を動かしたい」

 

 

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許昌の城内にある訓練場にて、私は訓練に付き合ってあげる事にした

 

悠香「やぁぁぁ!」

 

空中より悠香が降ってくる。悠香は足を突き出し、私目掛けて蹴りを繰り出そうとした

 

悠香の攻撃力自体は大したことないが、能力は厄介だ。

あの蹴りに当たった敵は、どれだけ強大でも問答無用で吹っ飛ばす。

風圧で吹き飛ばし、壁などに敵を激突させて追加ダメージを与えていくスタイルだ

 

私は悠香の攻撃を躱す。

悠香は避けられながらも、地面にしっかり着地し、その瞬間に衝撃波を発生させた。

地面から感じる風圧に、思わず体が浮き上がった

 

蓮鏡「そぉぉぉい!」

 

空中に上がった瞬間、蓮鏡がトンファーを構えて追撃を仕掛けてきた

 

蓮鏡『目の前がボヤける』

 

咲希「!?」

 

蓮鏡の呟きが、私の耳にしっかり入ってしまった。

蓮鏡の呟き通り、視界が微妙に霞んでしまう

 

蓮鏡の能力、言霊は結構厄介だ。

この私でも、しっかり意識と氣を集中しないと、解くことができない

 

蓮鏡「ふふーん♪とったー!」

 

私が蓮鏡の術にハマったのが嬉しかったのか、上機嫌な声と共に、蓮鏡がトンファーを突き出してきた

 

目の前が霞む。まともに視えない

 

ならと思い、私は目を閉じ、全神経を集中させた

 

腹付近に威圧感を感じる。それが徐々に、私に近づいてきている。接触まで…2…1…

 

咲希「取った」

 

蓮鏡のトンファーを掴んでやった

 

蓮鏡「えぇ!?目瞑りながら取る普通!?って、いやぁぁぁ!!?」

 

そして掴んだまま、力任せに振り回した。

蓮鏡はトンファーを掴んだままなのか、一緒に振り回されているようだ

 

秋菜「手を離せ、蓮鏡」

 

さらに頭上から、威圧感を感じた。この氣は秋菜か。弓を構えているな

 

手に掛かっていた圧力が軽くなる。蓮鏡はトンファーを手放したようだ

 

秋菜「シッ!」

 

その直後、一本の矢が私目掛けて放たれた。

豪速で飛んでくる矢が、まるで巨木が降ってきたかのように感じる

 

私は手にしたトンファーを構え、矢が接近したと同時に突き出した。

トンファーの先端に矢が突き刺さる。

あの日の梁山泊のように、着弾と同時に爆発はしないようだ

 

矢を弾いたと同時に目を開き、視界を確認する。

 

うん、良好だな、良く視える

 

咲希「だから凪紗ぁ、お前の姿も視えてるぜ」

 

地面に着地すると同時に、足を少し高く突き上げる。

するとそこへ、凪紗が上段蹴りを決めてきた

 

凪紗「っ!?はぁっ!!」

 

上段蹴りを止められた事に一瞬驚いていたが、すぐ様体を引き、私の足を取って関節を極めた

 

ずいぶん強くなった。解けない…

 

 

ゴキッ

 

 

凪紗は私の足の関節を極めると、その直後に一気に力を込めた。

私は少し抵抗しようとするも既に遅く、関節が外れ、鈍い音が聞こえてしまった

 

咲希「足一本やられたか。上々だな」

 

凪紗「え?ガッ!!?」

 

私は足に引っ付いて入り凪紗に、両手を合わせてグーにしてぶん殴った。

それが背中に直撃したと同時に、メシメシメシと骨が悲鳴をあげていた

 

凪紗の腕の力が緩められ、その隙に脱出する。そのついでに…

 

咲希「瞬間回復」

 

氣と魔力を集中させ、細胞を活性化させ、骨の関節を元通りに直した

 

悠香「相変わらず、咲希姉は反則だねー」

 

蓮鏡「ホントよね。どんだけ傷を負わせても、速攻で回復するんだから」

 

秋菜「本人自身も無駄に強いから、なおさら凶悪だな」

 

三人が三様の感想を並べつつ、凪紗を抱き起こした。

凪紗はどうやら気絶してしまったらしい

 

悠香「あちゃー、凪紗ちゃん気絶しちゃったし、休憩しよっかー」

 

蓮鏡「そうねー、4対1とはいえ、3時間もこんな化け物の相手させられたのは、流石にしんどいわー」

 

秋菜「だな。私も一度、執務室に戻るとするよ」

 

咲希「おう。なら私は…おい、そこで見てる奴で、私に挑みたい奴はいるか?」

 

姉妹が休憩に入るのを確認し、私は訓練を見ていた他の兵士に声をかけた。

すると、この場のほとんどが青ざめた

 

兵士1「む、無理だろあんなの…」

 

兵士2「あぁ…どうあっても勝てる気がしねぇ…」

 

そんなに壮絶だったか?まだ全力は出していないが…

 

霰「なんやなんやダラシないなぁ!ウチがあの化け物倒したるわ!甄姫もどや?」

 

甄姫「私は遠慮しておきますわ。無駄な労力を使いたくないので」

 

成済「なら、俺が付き合うぜ張虎!」

 

諸葛諸「私も私も!隊長のお姉さんとやれる機会なんて、滅多にないもんね!」

 

霰を皮切りに、男女入り乱れた数人が私を囲むように立ち上がった。

その全員が、士希の部隊にいた奴らだった

 

咲希「そう言えば、こいつらと戦った事はなかったな。なら、見せてもらうぜ士希。お前の育てた部隊をな!」

 

 

 

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士希の部隊は、流石にかつて『キセキの部隊』なんて言われるだけはあった。

全員が全員、一線級の実力で尚且つ連携もしっかり取れていた。

しまいには、甄姫まで出て指揮を取り始めたから、かなり苦戦してしまった

 

甄姫「ほ、本当に…化け物ですわね…」

 

霰「同感や…訓練やなかったら、絶対に当たりとうないわ…」

 

甄姫や霰達は皆大の字で寝転んでいる。かなり疲労しているのか、息も絶え絶えだった

 

秋菜「見ろ、これが死屍累々というやつだ」

 

蓮鏡「酷い有様ね」

 

悠香「霰ちゃん達、よく無事だったねー」

 

凪紗「むしろ、兄さんの部隊の人だったから、この程度で済んだんでしょうね」

 

いつの間にか気が付いた凪紗の評価はもっともだ。

こいつら以外がやったら、もっと酷い惨状が出来上がってもおかしくない。

それでもこいつらが無事でいられたのは、個々の能力はさる事ながら、連携が異常に良かったからだ。

それにこいつらの動きは…

 

咲希「お前ら、私を想定して訓練していただろ?」

 

戦った感想としてまず思ったのが、非常にやり辛いだ。

 

私は自分でもどうかと思うほど強過ぎる。

共感覚をオンにしてしまえば、半径3キロ程度なら余裕で気配を察する事も出来る。

だが、そんな私でも隙が全く無いわけではないし、苦手とする死角も存在する。

こいつらは、そんな私の癖もよく研究した上で隙や死角を容赦無く突いてきた

 

霰「当たり前やろ。ウチらの目標の一つに、打倒司馬師ってのがあるくらいやでな」

 

なんだそれは…

 

甄姫「欠員がいるとは言え、私達もまだまだですわね。ところで、あの男は今どうしているのかしら?」

 

甄姫の言うあの男というのは、恐らく士希の事だろう

 

あいつは今、この世界にはいない。

現在は3月上旬だから、士希の世界ではホワイトデーの時期だろう。

きっと、平穏な生活を大切な奴と過ごしている筈だ

 

成済「そう言えば隊長、以前女性を連れて城へ来ていたな」

 

諸葛諸「え!?何それ!聞いてないよ!?」

 

隊員の一人、成済の呟きを聞き、諸葛諸が声を荒げていた

 

胡奮「あぁ、あの時か。ずいぶん小柄で、可愛らしい女性だったな。というか、それ言わなかったか?隊長が同窓会しようと言っていたと教えたと思ったが」

 

石苞「それは私も聞いたなぁ。でも、隊長に女がいるなんて聞いてないよー!」

 

王基「だね〜。ていうか、隊長の女運って最悪だったはずなのに、よく彼女できたね〜」

 

士希の話題が出ると、皆が一様に表情を明るくする。今でもこいつらの隊長は士希で、あいつを慕っているということか

 

咲希「だからあいつは…」

 

あいつは確かに、多くを救い、多くを導いたかもしれない。

でも、だからこそあいつは、この世界に裏切られたんだ

 

 

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お父様達が行ったその日の夜、私達姉妹は揃ってリビングに布団を敷き、一緒に寝る事にした。

 

いつもは賑やかな【晋】の家が、今日はとても静かで、広くて、寂しかったのだ。

みんな自然と、リビングに集まっていた

 

悠香「えへ!なんかこうやって一緒に寝るの、久しぶりだね!」

 

部屋を暗くし、布団に寝転ぶと、悠香がうつ伏せになって話かけてきた

 

蓮鏡「そうねー。私達もいつの間にか大きくなって、自分の部屋持つようになったからね」

 

蓮鏡が悠香の会話に付き合い始めると、秋菜と凪紗も加わりたくなったのか、同じくうつ伏せになった

 

凪紗「私や秋菜姉さんは、城勤めになってからは、城で寝泊まりする日もありますからね」

 

秋菜「それを言ったら、悠香こそ幼稚園の方で寝る事もあるじゃないか。父上が時々寂しがっていたぞ」

 

咲希「その台詞はお前にもブーメランだぞ、秋菜。秋菜も凪紗も、もっと家に帰って来いよ。忙しいのはわかるけどさ」

 

凪紗「うっ、気をつけます…」

 

バツが悪くなったのか、視線を逸らした凪紗。秋菜は別段、悪びれてはいないが、何か考えているようだった

 

咲希「何考えてんだ、秋菜?」

 

秋菜「いや、凪紗はなんで、私達にも敬語を使うのかなって。昔は普通に話していたのに」

 

割とどうでもいい事だった

 

咲希「でも確かに、凪紗はいつも敬語だな」

 

悠香「えー?あたしと話す時は普通に話してるよー?」

 

蓮鏡「そうなの?ずるいずるい!私にも普通に話してよ!」

 

凪紗「え!?そ、それはちょっと…」

 

咲希「確か、軍に入る頃からだったか?凪紗が敬語で話し始めたのって。やっぱり軍人ってのを意識してるからか?」

 

凪紗「え、えぇ、まぁ…私は元々、母さんに憧れて軍人になったので、いつも凛々しい姿勢を崩さない母さんの様になりたくて、まずは言葉からと…」

 

悠香「それって疲れない?なんかいつも肩に力入ってるみたいでさ」

 

凪紗「実は…ちょっと…」

 

凪紗は少し照れ臭そうに言った。その仕草に、ここにいる全員が凪紗の頭を撫でた

 

秋菜「せっかくだ。今日くらいは、姉妹として話さないか」

 

蓮鏡「そうよ!敬語禁止!ここには花も恥じらう可憐な乙女しかいないんだから!」

 

咲希「いまいちその理由はわからんが、凪紗も今日くらいは力を抜け」

 

悠香「そうそう!ついでに夜は長いんだから、語らい合おうよ!」

 

私達の提案に、凪紗は少し考えるも、程なくして微笑を浮かべた

 

凪紗「うん、じゃあ、今日だけは…」

 

ホントにこの子は可愛いな

 

蓮鏡「あーあ、せっかくこうして話すんだから、なんかお菓子とか欲しいわよね」

 

秋菜「こんな時間から食ったら、太るぞ」

 

悠香「そんな事ないよ!だってあたし達、あのお母さんの子どもなんだよ?」

 

凪紗「なんか凄く説得力があるね。でも、母さん達も不思議だよね。平均年齢35以上なのに」

 

咲希「あぁ。いまだに20代でも通る見た目だからな。あれで何の努力もしてねぇんだから、詐欺だよな」

 

私達の母親陣は皆40手前であるはずなのに、スタイルは良く、見た目も若い。

努力をしているのかと聞けば、日々の運動と食ってる物がいいからだろと言う。

ある意味、世の女性を敵に回しかねない発言だ

 

悠香「そう言えば、月姉さん達っていくつくらいだっけ?」

 

咲希「!?あ、あぁそうか。今は月姉さん達も居ないんだった」

 

蓮鏡「大陸最強の咲希も、月姉さんにはタジタジね」

 

秋菜「あの人は文字通り、八つ裂きに出来る力を持っているからな」

 

凪紗「月姉さん達がいないからって、悠香もよく言えたね」

 

うちでは暗黙の了解とされている、月姉さんの年齢話。聞いた話では、詠姉さんと恋姉さんは30くらいと言っていたが、月姉さんはいまだに20代らしい。

確かに、月姉さんは若い。10代でも余裕で通るほど若い。

噂では、魔法で肉体年齢を止めているんじゃないかと言われていたが…

 

咲希「あんまり詮索すると、消されかねないな…」

 

私でもまだ命は惜しい。そしてそれは姉妹も同じようで、一様に口を閉じた

 

凪紗「で、でも、なんで月姉さん達、あんなに綺麗なのに独り身なんだろうね」

 

秋菜「そう言えば、確かにそうだな。あれ程の美貌なのだから、貰い手くらい居るだろうに」

 

悠香「あ、凪紗ちゃんと秋姉は知らないんだっけ?月姉さん達、みんなお父さんが好きなんだよ」

 

凪紗「え!?そうなの?」

 

蓮鏡「そうそう。月姉さんも詠姉さんも流琉さんも、みんなお父様が好きなのよね。恋姉さんはそう言うのなさそうだけど」

 

咲希「いや、そうでもない…」

 

私自身はあまり知りたくなかったが、恋姉さんもお父様を男性として好きなのだ。

恋姉さんは、普段何気なくお父様に背負われるが、その際彼女の色がピンク…好意色になるのだ。本人は無自覚かもしれないが…

 

悠香「お父さんも北郷さん並みにモテるよね」

 

蓮鏡「本人は無自覚だけどね」

 

秋菜「だな。それに、父上はまだ節操があるから救いだろう」

 

凪紗「北郷さんは酷いからね」

 

咲希「サラッと言った凪紗のその発言にびっくりだよ」

 

 

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それからもしばらく話し、少しうとうととし始めてきた頃、私の目を覚ます一言が発せられた

 

秋菜「姉者、せっかくなので、兄者の事について、教えてはくれないか?」

 

私はガバッと起き上がる。周りを見ると、悠香も凪紗も既に寝落ちしていた

 

蓮鏡「それ、私も聞きたいわね。ねぇ、なんで兄貴は、この世界を離れなきゃいけなかったの?」

 

蓮鏡は私を見据えて言った。

その目は、先ほどまで眠そうであったにも関わらず、真剣そのものだった

 

咲希「知らない方がいいかもしれないぞ」

 

秋菜「それでも、家族の事を知りたいと思う事は、いけない事ではないはずだ。この家では特にな」

 

蓮鏡「今なら、悠香も凪紗も寝てる。私も秋菜ももう15歳なんだから、教えてくれてもいいじゃない」

 

この世界では、15歳で成人とみなされる。確かに大人なのかもしれない。

しかし、それをこいつらに言うには…

 

秋菜「約束、したよな?いつか教えると。今がその時だと思うがな」

 

咲希「………チッ」

 

思わず舌打ちしてしまう。

約束した手前もあるが、あまりストレートに感情を向けられるのは苦手だ

 

咲希「……士希は、あいつは、私達を守る為に、この世界を離れなきゃいけなかった」

 

そして私が語ったのは、どうしようもない程善人で、どうしようもない程家族想いな、あの馬鹿の話だった

 

 

 

説明
こんにちは!
Second Generations司馬師伝其一
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コメント
まだ戦いは始まりませんか。次回は士希の過去と言ったところですかね(ohatiyo)
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