英雄伝説〜運命が改変された少年の行く道〜
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〜ウルスラ病院〜

 

「あ……!」

「兄様……!」

「お見事です……!」

リィンの勝利にアリサやエリス、メサイアは明るい表情をし

「フッ、どうやら勝負あったようだな。」

「ギリギリだったが、何とか超える事ができたようだな……」

「フフッ、やっと特別模擬戦で受けた借りに対して一矢報いる事ができたわね。」

ユーシスやトヴァル、サラ教官は口元に笑みを浮かべてリィンを見つめていた。

 

「ハア……ハア……グッ……!?」

一方リィンは息を切らせながら地面に膝をつき

「フゥ……特別模擬戦の時にその”力”を使われていたら負けていたかもしれないな……」

同じように地面に膝をついているロイドは疲れた表情で呟いた。

 

「だ、大丈夫、ロイド!?」

「歴史に残ってもおかしくない凄まじい一騎打ちでしたね。」

「ああ。リーシャちゃんとの一騎打ちより凄かったぞ……」

エリィはロイドを心配し、ティオの意見にランディは静かな表情で頷いた。

 

「ああ……何とかね。いたた…………―――おめでとう。君達の”勝ち”だ。マルギレッタさんは病院内にいるから、詳しい場所については受付の人に聞けばわかると思う。」

「……わかりました、わざわざ教えて頂きありがとうございます。あの……こんな事を言うのも変だと思いますが、ロイドさん達が俺達”Z組”の最後の”試練”でよかったと思いました。」

「へ……」

「リ、リィン……?」

リィンの言葉にロイドは呆け、アリサは不思議そうな表情をした。

 

「俺達”Z組”とは目的が異なりますが、多くの人々と接し、”自分達の意志”でそれぞれが協力して様々な問題に立ち向かい続け、俺達と違い自分達の”目的”――――クロスベル解放やキーアさん奪還を果たした貴方達”特務支援課”は俺達にとって超えるべき”壁”でした。そして今貴方という”壁”を超える事ができて、普通なら不可能と思われる事をも可能にできる自信がつきました。」

「兄様…………」

「…………」

リィンの言葉にエリスは驚き、ユーシスは目を伏せて黙り込んでいた。

 

「フフッ、まさか私達がそんな風に見られていたなんてね。」

「まさか”壁”を超える側だった俺達自身が”壁自身”になる日が来るとはなぁ。」

「人生わからないものですね。」

一方エリィ達は苦笑しながらリィン達を見つめ

「ハハ……この間まで”壁”を超える側だったのに、いつの間にか”壁”自身になっていたとは光栄だよ。――――いつも”壁”を超えていた側としての助言だと思って聞いてくれ。”絶対に諦めない事”。俺達は兄貴譲りの諦めの悪さで今まで”壁”を超えて来て大切なものを守る事ができた。俺達のような真似をしろとは言わないけど、参考にはなると思うよ。」

「”絶対に諦めない事”…………」

「お前さんの兄貴って言えば………」

「…………事件の真相も未だ不明の殉職した捜査一課のエース、ガイ・バニングスね。」

ロイドの助言を聞いたリィンが呆けている中、トヴァルとサラ教官は複雑そうな表情でロイドを見つめていた。

 

「ええ、兄貴の事件もようやく解決する事ができました。ですから俺の事は気にしないで下さい。―――局長達に加えてリウイ陛下達に挑むのは”あらゆる意味”で厳しいと思うけど、君達なら何とか”落としどころ”を見つけて、局長達を納得させてエレボニアを国として生き延びさせる事ができると信じているよ。」

「ありがとうございます……!それと……お祝いの言葉が遅くなりましたが言わせて下さい。――――クロスベル解放、そしてキーアさんの奪還、おめでとうございます。」

「ハハ……クロスベルを解放できたのもキーアを取り戻す事ができたのも俺達だけの力じゃなく、みんなのおかげだよ。でも、ありがとう。もう一つの”俺達”と言ってもいい君達に祝われると他の人達に祝われるより嬉しい気がするよ。」

そして互いに笑顔で見つめるリィンとロイドを見たその場にいる全員は冷や汗をかいて脱力した。

 

「ハア……プリネ達の話通りの人ね……」

「兄様みたいな方が他にもいらっしゃるなんて……」

「フッ、まさに似た者同士だな。」

「ア、アハハ……」

アリサとエリスは疲れた表情で呟き、静かな笑みを浮かべるユーシスの言葉を聞いたメサイアは苦笑し

「向こうも大変でしょうね……」

「………ですね。それによく考えてみたらリア充同士の決戦にもなりましたね。」

「ったく、これだからリア充共は……!お前らのその必殺無差別笑顔攻撃にどんだけの被害者が出たかちゃんと自覚しているのか!?」

同情の目でアリサ達を見つめるエリィの言葉に頷いたティオはジト目でロイドとリィンを見つめ、ランディは悔しそうな表情で二人を睨んだ。

 

「ええっ!?”お前ら”って事は俺も入っているんですか!?」

「ちょっ、ランディ!被害者ってどういう意味だよ!?」

「おいおい……自覚していない所も一緒かよ。」

「アハハハハハッ!”天然”な所もまさに一緒ね♪」

慌てているリィンとロイドを見たトヴァルは呆れ、サラ教官は腹を抱えて笑った。

 

「ハア……何でこんな事になったんだ?――――そうだ、君は確か温泉郷ユミルが故郷だったね。」

「え?はい。それがどうかしたのですか?」

「――――マルギレッタさんに会った後にユミルに行けば、”ある人物”が今いると思う。その人物を味方にする事ができれば、リウイ陛下や局長もその人物の意見には耳を貸すと思うからメンフィルとクロスベルを説得できる可能性が高くなると思うよ。」

「へ……」

「ユ、ユミルにですか!?一体どなたなのでしょうか??」

ロイドの話を聞いたリィンが呆けている中、エリスは信じられない表情で尋ねた。

 

「あー……確かに”あの人物”は”色々な意味”で反則的な存在だからありえるだろうな……」

「……ですがあの人の事ですから、めんどくさがって引き受けないんじゃないんですか?」

「ティ、ティオちゃん!え、えっと……気難しい方?だけど、説得して味方にする事ができれば、ロイドの言う通りメンフィルとクロスベルに情状酌量を認めてもらえる可能性が高くなると思うから頑張って。」

ロイドが言っている人物に心当たりがあるランディは苦笑し、ジト目で言ったティオの推測に慌てたエリィは冷や汗をかいて苦笑して必死に言葉を選びながら答えた。

 

「メンフィルとクロスベルに意見できる人物等普通に考えてありえないと思うが………」

「一体どのような方なのでしょう?」

(……ねえ、トヴァル。まさかとは思うけどあのハチャメチャな自称”ただの新妻”の事を言っているんじゃないかしら?)

(あー……”あんなの”でも一応ゼムリア大陸の人々が崇める存在だからな……確かに”アレ”が口を出せばメンフィルとクロスベルも耳を貸すかもしれねぇな。)

ユーシスとメサイアが戸惑っている中、心当たりがあるサラ教官とトヴァルは疲れた表情をした。

 

「その……ユミルにいるというその方の事を詳しく教えてくれ――――」

その時考え込んでいたリィンがロイド達を見つめて尋ねたその時

「ロイド、無事!?」

ナース服を身に纏ったセシルが慌てた様子で病院から出て来てロイド達に近づいてきた。

 

「セ、セシル姉!?何で出て来たんだ!?」

「勝負は終わったようだし、あなたの事が心配になって出て来たのよ。もう……一騎打ちだなんて、ムチャな事をして……しかも切り傷まで作って……すぐに手当てするから行きましょう?」

驚いているロイドにセシルは心配そうな表情で答えた後ロイドの腕を両手で掴んで自分の豊満な胸へと引き寄せた。

「いや、一緒に行くもなにもセシル姉が既に俺の腕を掴んでいるんだけど……というか一人で歩けるから掴む必要はないって!リウイ陛下に関係を疑われたらセシル姉も困るだろう!?」

腕から伝わるセシルの豊満な胸の感触に慌てたロイドは顔を真っ赤にして反論したが

「フフッ、リウイさんはロイドと私が昔から本当の姉弟のように親しい事を知っているからこのくらいの事で妬かないわよ。それじゃあ私達は失礼するから、貴方達も頑張ってね。」

「ちょっ、セシル姉……!?」

セシルはロイドの反論を笑顔で流し、リィン達に微笑んだ後ロイドを病院へと連れて行き、その様子をリィン達とエリィ達は呆気に取られた様子で見守っていた。

 

「フウ……相変わらずね、セシルさん。」

「ティナさんを知っている身とすれば、とてもティナさんが転生した人物に見えないですね。というか”シメ”は自分のリア充っぷりを見せつけるとはさすがはロイドさんですね。」

「畜生、この弟王が!頼むからその位置を一度でいいから変わって下さい!」

我に返ったエリィは疲れた表情で溜息を吐き、疲れた表情で呟いたティオはジト目でロイドとセシルを見つめ、ランディはロイドを悔しそうな表情で睨んでいた。

 

「え、えっと……今の方は一体?リウイ陛下と親しいような口ぶりでしたが…………」

その時我に返ったメサイアは苦笑しながらエリィ達に尋ねた。

「さっきの人は幼い頃のロイドの世話をロイドの兄に当たるガイさんと一緒に世話をしていた方で、ロイドにとって姉同然の方なんです。」

「ちなみにあの人はガイさんの元婚約者で、今はリウイ陛下の側室の一人ですよ。」

「ええっ!?」

「ハアッ!?」

「”英雄王”の側室の一人だと!?」

「何故それ程のやんごとなき身分の方が病院に務めているのだ……?」

ティオの説明を聞いたアリサとサラ教官が驚いている中、トヴァルとユーシスは信じられない表情でロイドとセシルが入った病院を見つめていた。

 

「…………”セシル”…………あ。ま、まさか、今の方がリウイ陛下の第一側室のセシル・パリエ・ノイエス様ですか!?」

「兄様、セシル様の事をご存知なのですか?」

驚きの表情で声を上げたリィンの様子を見たエリスは不思議そうな表情で尋ねた。

「あ、ああ……――――セシル・パリエ・ノイエス。リウイ陛下が今年の2月くらいに側室として娶った方で、側室の中でも本来なら側室としての序列は最後であるはずなのに”第一位”の序列を与えられた事が有名な方で、その事からイリーナ皇妃に次ぐリウイ陛下の愛妻ではないかと噂をされている方だ。」

「ハアッ!?あ、あの”聖皇妃”に次ぐ”英雄王”の愛妻ですって!?」

「というかさっきお前さん達のリーダーの兄貴の婚約者でもあったって言ってたよな?一体どういう経緯があってあの”英雄王”とそんな仲になったんだ?」

リィンの説明を聞いたサラ教官は驚き、トヴァルは目を丸くしてエリィ達を見つめて尋ねた。

 

「―――その説明をし出すと時間がかかりますし、何よりもめんどくさいので詳しい事情は全部終わって状況が落ち着いてから本人に聞いて下さい。」

しかしジト目で説明を放棄したティオにリィン達は冷や汗をかいて脱力し

「もう、ティオちゃんったら……」

「ここで完全に説明を放棄するとか、さすがはティオすけだな。―――そんじゃあ、俺達もロイド達の後を追うか。」

エリィは呆れた表情で溜息を吐き、ランディは苦笑した後提案した。

「そうですね。」

「ええ。―――それじゃあ私達はこれで失礼するわ。そちらも頑張って。」

「気絶したアリオスのオッサンは俺が運んでおくぜ。」

そしてランディはトヴァルが背負っているアリオスを回収した後エリィ達と共に病院の中へと入って行った。

 

「行ってしまわれましたね……そう言えば兄様。先程のお話ではセシル様は”第一側室”との事ですが、リウイ陛下の側室の中で序列が一位の方はセシル様を除いていらっしゃらなかったのですか?」

「いや……以前はいたけど、その方は人間だったから寿命で随分前に崩御されている。……ちなみにその方はティア神官長の産みの母親に当たる方だ。」

「何だと!?」

「……ちょっと待って。さっきのナースの女性の名前に”癒しの聖女”の家名―――”パリエ”があったわよね?もしかしてそれと何か関係があるのかしら?」

エリスの疑問に答えたリィンの話を聞いたユーシスは驚き、サラ教官は真剣な表情で尋ねた。

 

「それはさすがにわかりません。―――ただセシル様はティア神官長にとって義母に当たる方で、ティア神官長もセシル様を自身の義母として認めている事は確かな事実です。」

「え……ティ、ティア神官長のですか?」

リィンの話を聞いたエリスは戸惑いの表情をした。

「色々と気になるが………今は関係のない事に時間を取っている暇はないぞ。」

「そうね。――――行くわよ。」

「はい。」

その後リィン達は病院の受付でマルギレッタがいる場所を聞き、屋上のベンチでリ・アネスと共に休憩しているマルギレッタを見つけて声をかけた。

 

 

 

説明
第551話
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コメント
本郷 刃様 全ての真実を知っているのはあの中ではティオのみww(sorano)
ティナ・パリエさんその人ですがなにかw?(本郷 刃)
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