英雄伝説〜運命が改変された少年の行く道〜
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〜ウルスラ病院〜

 

「お母様!」

「この声は……!」

「メサイア。それにリィンさん達も……フフッ、どうやらヴァイス様の”試練”を無事に全て乗り越えたようですね。」

メサイアの声を聞いたリ・アネスが驚いている中、マルギレッタは自分達に近づいてきたリィン達に微笑んだ。

 

「……お久しぶりです、マルギレッタさ―――いえ、マルギレッタ様とお呼びするべきでしょうか。」

「まだ私を含めたヴァイス様の側室の方達は正式に側室として発表されていませんから、”さん”付けで構いませんし、いずれは”家族”の関係になりますからそんな固い呼び方をしなくても構いませんよ。」

「ちなみにクロスベル両皇帝の正室は誰になるんだ?」

リィンの言葉に苦笑しながら答えたマルギレッタの話を聞き、ある事が気になったユーシスは真剣な表情で尋ねた。

 

「ギュランドロス殿の正妃はルイーネ殿です。」

「ルイーネって言うとあの時お前さん達と現れた……」

「”微笑みの剣妃”ね。」

「まあ、そうなりますわよね。お父様の正室はどなたですか?やはりリセル様でしょうか?」

リ・アネスの話を聞いたトヴァルは目を丸くし、サラ教官は嫌そうな表情で呟き、メサイアは納得した様子で頷いた後マルギレッタを見つめて尋ねた。

 

「いいえ。リセル様とエルミナ様よ。」

「ええっ!?せ、正室が二人もいるんですか!?」

「フッ、その程度で驚く事か?リィンの場合は下手をすれば全員正妻にしなければならない状況だぞ?」

「う”っ……」

マルギレッタの話に驚いているアリサに静かな笑みを浮かべて指摘したユーシスの言葉を聞いたリィンは冷や汗をかいて唸り声をあげ

「ア、アハハ……でもリセル様はわかりますけど、エルミナ様はかなり意外ですわね……あの方は他の妾の方達と違って隷属の身であったにも関わらずお父様やメルキアに従う事を良しとせず強情を貫き続けた方で、完全にお父様に従属したのは自身の子供を孕まされた時でしたし……」

ユーシスの指摘に苦笑していたメサイアは意外そうな表情で呟いた。

 

「メサイア様の世界のエルミナ殿がどのような方だったのかはわかりませんが、エルミナ殿がヴァイス殿に対して強情だったのは私達の時も同じでしたね。エルミナ殿がヴァイス殿に心を開いた”方法”も普通なら考えられない方法だったとの事でしたし……」

「ア、アハハ……た、確かにそんな事もあったわね。―――さてと。数々の”試練”を乗り越えて私の元に来た皆様の目的はわかっています。――――私にクロスベル皇族の一員であるメサイアとリィンさんの婚約を正式に認めてもらう為ですよね?」

リ・アネスと共にかつての出来事を思い出して苦笑していたマルギレッタは気を取り直してリィン達を見つめた。

「―――はい。」

「お母様、私達の最初の”試練”の相手―――リーシャ様から”試練”を乗り越える事ができれば私達の望みに応じると話を聞いていますが……」

「ええ。クロスベル皇帝ヴァイスハイト・ツェリンダーの側室の一人―――マルギレッタ・シリオスの名において我が娘メサイア・シリオスとリィン・シュバルツァーの婚約を正式に認めます。なお、ヴァイスハイト陛下からも”試練”を乗り越える事ができた際は二人の婚約を正式に認めると伝えられています。」

「え……ヴァイスハイト陛下が本当にそのような事を?」

マルギレッタの言葉を聞いたリィンは目を丸くして尋ね

「はい。それとヴァイス様から伝言がありますわ。」

「伝言だと?」

リィンの質問に答えた後話を続けたマルギレッタの言葉にユーシスは眉を顰めた。

 

「『よくぞ俺の”試練”を乗り越えた。お前なら俺の娘が嫁ぐ相手として相応しい。メサイアやお前が娶る他の女性達との結婚式を楽しみにしている。』」

「お父様…………」

「た、”楽しみにしている”って事は式に参列する気満々って事じゃない………」

「クロスベルの皇帝陛下が私達の結婚式に参列なされるなんて……まだ先の話なのに何だか緊張してきました………」

「そりゃ自分の娘の結婚式なんだから出ない方がおかしいわよねぇ?」

「全くだな。それにユーゲント陛下の愛娘であるアルフィン殿下も共に結婚するのだから当然ユーゲント陛下達も参列なさるだろうな。」

「クク、よかったな、リィン。お前さん達の結婚式は各国のVIP達が参列する事は間違いなしだぜ。」

「……………………」

マルギレッタの言葉を聞いたメサイアが嬉しそうな表情をしている中、アリサとエリスは疲れた表情をし、からかいの表情をしているサラ教官達に見つめられたリィンは大量の冷や汗をかいて表情を引き攣らせていた。

 

(結婚か……私もリィンとしたいと思っているけど、貴女達はどう思っているのかしら?)

(うふふ、私はご主人様の事が大好きだしここは流れに乗っておくべきだと思うし別にいいわよ♪)

(ふふふ、”精霊王女”が愛人や使い魔という立場はどうかと思いますし、仕方ありませんね。)

(私は………マスターがそれを望むのならば構いません……)

アイドスに尋ねられたベルフェゴールとリザイラはそれぞれ興味ありげな様子で答え、アルティナは頬を赤らめて呟いた。

 

「『―――だが、俺達がお前達の結婚を認めたからと言ってそう簡単にエレボニア帝国滅亡を防げると思ったら大間違いだ。俺やリウイ達相手を説得できるかどうかはお前達やオリヴァルト皇子達次第だ。』――――以上です。」

「!!それは……」

「……”試練”を乗り越えて浮かれた気持ちになっているあたし達に釘を刺しているのでしょうね。」

「フン、俺達だけじゃなく殿下達をも試しているとは何様のつもりだ。」

「ったく、つくづくとんでもねぇ存在だな、”六銃士”は……」

「姫様…………」

「リィン……」

「………………」

マルギレッタの言葉で雰囲気が変わったリィン達をメサイアは複雑そうな表情で見つめ

「……ヴァイス殿達は確かに手強い方達ですが、自身に落ち度があればそれを偽る事なく認める誇り高き方達です。ヴァイス殿達の”落ち度”を見つけてそれを盾に”情状酌量”を認めてもらうのも弁論で勝つ手段の一つです。貴方達の健闘、マルギレッタ様と共に心からお祈りしております。」

リ・アネスはリィン達に助言をし、静かな表情で会釈をした。その後二人と別れ、メサイアを身体に戻したリィンは仲間達と共に病院を出てバス停がある場所まで移動した。

 

「フゥ……今日は本当に疲れる一日だったわね……せっかくクロスベルまで来たんだからクロスベル市に戻って”ガランテ”あたりで一杯ひっかけて疲れを癒したい所だけどそうも言ってられないわね。」

「はい。ロイドさん達が言っていたユミルにいるというメンフィルとクロスベルに意見ができる人物……何としてもその方がユミルを去る前に会って協力を取り付けるべきです。」

疲れた表情で溜息を吐いたサラ教官の言葉に頷いたリィンは真剣な表情をし

「一体どんな人なのかわからないけど、居場所がわかっている内に何とか協力を取りつけないとね……!」

「ああ。その人物にメンフィルとクロスベルとの交渉の場に参加してもらう為にも急いでユミルに行くぞ。」

「それにしても一体何者なのでしょう……?」

「あー……そいつの事だが、俺とサラの予想では――――」

アリサとユーシスが決意の表情をし、エリスが戸惑っているのを見たトヴァルが苦笑しながら答えようとしたその時

「――――フフッ、”特務支援課”のリーダーとの一騎打ち……中々の名勝負でしたよ。」

何とリアンヌが転移術でリィン達の前に現れた!

 

 

説明
第552話
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コメント
K'様 まあエリゼ達の場合互いの仲がいいですから、その点は大丈夫かと。後リィンもさすがにシュバルツァー家の跡継ぎはエリゼかエリスの子孫にするでしょう。リィン自身もそのつもりでしたし。まあエリゼの子孫がエリゼ共々メンフィル皇家に仕えてもおかしくない状況ですから、エリスの子孫が一番妥当でしょうね(sorano)
まあ普通に考えればそうですけどこういうのって当主としてはっきり明言していないせいで揉めるってのは歴史とかでもよくある話なんで。そうでなくても人間自分の子供は可愛い者でついつい贔屓したくなるものですし(K')
本郷 刃様&kanetosi様 いや、疲れ切っている状態で手合わせしろとかどんだけ鬼畜なんですか、リアンヌww K'様 後継者は普通に考えてエリゼかエリスの子孫なのでは?(sorano)
せめて序列ぐらいは決めとかないと後々御家騒動の火種になりかねないのですが……ここのリィンはそういうとこまるで駄目ですね。数十年後に後継者問題で振り回される姿が目に浮かびます(K')
いや十中八九言うでしょ、一応リアンヌも武に関しては譲らないところがあるからww(kanetosi)
ここでリアンヌの登場、自分とも手合せしてくれとか言い出しかねませんねw(本郷 刃)
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