艦隊 真・恋姫無双 34話目
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【 旧友との再会 の件 】

 

? 益州 漢中付近 にて ?

 

何進、貂蝉の二人が……距離を開ける。

 

それを見て、一刀達はグッタリとした表情を浮かばしながらも、貂蝉を睨みつけた。 

 

貂蝉「あらぁ〜ん? あんまり時間を取らしても悪いわねぇ……早く用件を済ませましょうかぁ? ……………どふふふっ!!」

 

貂蝉は、そんな視線を受けても意に介さず、後ろに立っている4人の艦娘を紹介する。 そして、一刀達も……簡単に自己紹介を行った。 

 

貂蝉「────以上ねぇ! 私達ぃ管理者が建造した、自慢の艦娘なのよぉん! どぉう? 4人ともぉ綺麗なコばっかりでしょ〜う!?」 

 

一刀「………あぁ! 俺の仲間達に───負けず劣らずの綺麗な艦娘達だよ!」

 

『────────!?!?』

 

貂蝉「もぅ……相変わらず〜上手なんだからぁん? 私ぃが傾国の美女なのぉ分かっている癖にぃ───!!」クネクネ

 

一刀「────ごめん! 訂正だ! 貂蝉は省いてくれぇ!!」

 

 

急にそんな事を云われ、顔を真っ赤にする異国の艦娘!

 

勿論……『同じくらい綺麗だよ!』と言われたような言葉に、恥ずかしがる仲間の艦娘も居るわけで………!

 

ーーー

 

榛名「提督……榛名、感激です!!」

 

霧島「私の想像以上の……評価ですよ!」

 

木曾「フッ……甘いぜ、提督! だが……わ、悪くはない!」

 

ーーー

 

辺りが甘い雰囲気に包まれる中、一刀側から一人の艦娘が進み出て……4人の下へ向かう。

 

長門「───久しいな! サラ!!」

 

サラ「長門……またこうして、お会いできるとは……光栄の至り! 主よ、この再会の導きに───深く感謝致します!!」

 

二人は、旧来の親友のように、互いの出逢いを懐かしむ。 

 

互いの仲間達が首を傾げる中、一刀が近付いて理由を尋ねた。

 

一刀「………二人とも、再会を喜んでいるところを悪いが……事情を話してくれるかい? 君達の再会を懐かしんでいる理由を?」

 

長門「少し長くなるが……いいかな?」

 

一刀「貂蝉や何進大将軍、皆は良いかい?」

 

貂蝉「いいわよぉ! 私も聞きたいからぁん!!」

 

何進「……多少は構わんよ。 だが、あまり長くは困るぞ? 陛下の病が心配だからな。 私の配下も傍に居て、何かあれば連絡をくれるようにしているが………!」 

 

雪風「わ、私も聞かせて下さいッ! 皆さんが……どういう最後をなされたのか……知りたいんです!」

 

響「私もだ! あの大戦に……生き残れた艦として……肝に銘じておきたい! 如何に最後を……迎えたのか?」

 

皆より許可をもらった一刀は、長門とサラに話すように促すのだった。

 

 

◆◇◆

 

【 ちんきゅ怒りの鉄拳(笑) の件 】

 

? 涼州 漢陽郡 天水 にて ?

 

 

翠達は、城の中に通され……謁見の間に案内された。

 

馬岱(真名 蒲公英)「お姉様ぁ……大丈夫だと思う? 月(董仲穎の真名)達……私やお姉様の事……覚えてくれているかな? 焔耶みたいに脳筋じゃないから、忘れられる事は無いんじゃ無いかなぁ〜とは思うけど……」

 

翠「そんときは、そんとき!! もし……覚えてないのなら、月達に報告だけして、あたしらだけで洛陽に向かうぞ!? ご主人様が、洛陽に向かってるんだ! 覚えている奴が出迎えなきゃ、ご主人様が可哀想じゃないか!!」

 

蒲公英「………ほんとぉは……お姉さまが会いたいだけじゃない〜? 勿論、蒲公英も! ご主人様にぃお会いしたいけどねぇ───ッ!!」

 

翠「ば、馬鹿ぁ!! そ、そんなんじゃねぇ……ヤバッ!」バッ!

 

───────ガチャン!

 

月が入って来るかと思えば……開いた扉の外に居たのは………

 

詠「………お待たせしたわね。 私の名前は賈文和(真名 詠)! 主である董仲穎が病で伏せているので……代理で失礼させて頂くわ! 『西涼太守 馬寿成』殿の御息女『馬孟起』殿で……よろしい?」

 

翠「あ、あぁ───馬寿成の娘『馬孟起』だ! 宜しく頼む! あ、あのさぁ……あ、あたしの事……覚えていないか? ほらっ! 桃香様に仕えてた───」 

 

翠は、正式な挨拶も忘れ……詠に話かけるが………

 

詠「…………可笑しな事を言うのね? ボクの奉じる主は、後にも先にも董仲穎ただ一人! 他の誰の下にも仕えた事もないし、貴女とも……顔を合わすのも初めてよ! 冗談を言うより、用件を早く伝えて貰いたいものだわ!!」

 

翠「くぅ───────!」

 

蒲公英「お姉様…………」

 

翠の言葉を───冷たく返す。 

 

詠には、記憶が無いと分かり……落胆する翠。 蒲公英の言葉に強がって反応したものの……記憶が無いと云う事実の衝撃は……少なくなかった!!

 

 

詠「…………何も無ければ、これで謁見を終わらせてもらうわよ! ボクも暇じゃないん『───詠ちゃん!!』─────月ぇえええッ!?」 

 

詠が翠の反応が無い事を確認し、用件は他に無いと判断。 踵(きびす)を返そうとしたら、入って来た扉から───詠を叱る声!

 

月「駄目だよ! 私に用事がある方なら、私に通してくれなきゃ! 兵士さんが私に教えてくれたから……急いで着替えて出てきたんだよ! それなのに、詠ちゃんたら……!! 私に心配掛けたく無いのは分かるけど……」

 

詠「………うぅぅ……ごめん、ごめんね? 月ぇ! だけど……アイツら、何か可笑しいから……気を付けて………」

 

月「心配しないで……詠ちゃん! 大丈夫だから……。 恋さん達にも、来て貰うようにお願いしたから……ね?」

 

詠は謝りながらも月を心配して注意を促すが、月もそれなりの対応をしていた。 董卓軍の誇る猛将達を控えさせていたのだ!

 

そして、威儀を整えて、翠達に向かい謝罪を行う。 先ほどの行動は翠の方が非があるが……詠も対応が性急過ぎた。 

 

その為なのだが……月が顔を翠に向けると───懐かしい言葉を発した!

 

月「───真に、臣下の者が失礼しました! 天水を預かります董仲穎と………! す、翠さん!?」

 

翠「─────!」

 

翠の驚いた顔を見て、月は後悔した。 前の『ご主人様』と一緒に過ごした記憶は……誰もが持っているワケでは無い! 

 

事実……親友であり……一緒に『ご主人様』の傍で奉仕した詠でさえ、忘れている。 覚えているのは、董卓軍では……恋(呂奉先 真名)とねね(陳公台 真名)だけ。 

 

月「あっ! す、すいません! 大切な真名を勝手に呼んでしまっ『ゆ、月ぇえええッ!』────えっ!? じゃあ───本当にぃ!!」

 

蒲公英「たんぽぽも、此処にいるぞぉおおお───ッ!!!」

 

しかし、二人が笑顔で応えてくれるのを見て───月の目から───涙が零れ落ちた。 あの時と……全く変わらない…元気な笑顔を見て!!

 

月は……日頃の振る舞いとは違い、大きな声で呼び掛けた!!

 

月「あ、あぁあああッ! 翠さん! 蒲公英ちゃん!! 覚えてくれていたんですね!! 『ご主人様』の事も、『ご主人様』の名前も!!」

 

翠「ったりめだぁ!! 『北郷』───!!」

 

蒲公英「『一刀』───だよねぇ!」

 

月「良かったぁ! 良かったぁあああッ!!」

 

翠「あたしも嬉しいぜ! ご主人様を迎えてくれる人数が増えてぇ!」

 

蒲公英「やったぁ───ッ!!!」

 

あまりの大騒ぎのため、扉の外に待機していた恋とねねが、顔を覗かせる!

 

恋「…………あっ、翠に……蒲公英!」ヒョコ!

 

ねね「ぬあぁ──ッ!? な、なんですとぉ───ッ!?!?」

 

翠「元気そうだな! 恋!!」

 

蒲公英「あぁ───恋! 久し振りぃいいいッ!!」

 

恋「………うん!」

 

ねね「くぉおらぁ──ッ! 二人して『ねねの事だけ綺麗に忘れちゃた♪』と薄情な事をほざくつもりですかぁああッ!? そんな奴らには───ちんきゅキックの餌食となれぇーですぞぉおおおッ!!!」

 

翠「忘れてないって! ねねも……久し振り!」

 

ねね「ふ、ふんッ! 久し振りに……してやるですよ! ……二人とも……覚えてくれていて……嬉しい……」

 

蒲公英「うぅ〜ん? 何か言ったぁ?」ニヤニヤ

 

ねね「────決闘を申し付けるのですッ!!!」

 

ーーーーー

 

祭りのような大騒ぎになり、続けて待機していた霞達も出てくるが──何の事で喜んでいるのか……分からない。

 

詠「────何なの?」

 

霞「知るかい………」

 

華雄「私としては、月様が御元気なら……それに越した事は無いさ!」

 

詠と霞が顔を見合わせ不思議がり、華雄は一人……満足していた。

 

 

 

◆◇◆

 

【 慈母と歌 の件 】

 

? 益州 漢中付近 にて ?

 

長門とサラは、皆の注目を集める中……話を始める。

 

長門「……前の世で、二度も世界を巻き込んだ大戦が、終わりを告げたのは、提督も皆も存じていると思う。 その後……戦で『走狗』だった私達は、不要とされ……解体、転用等されたりして『煮られ』てしまった!」

 

サラ「私も……多数の自国の戦友達……敵国の戦艦だった長門達と共に、実験台へと……されてしまいました。 次の戦の為への布石に………」

 

長門「私は……怯える『プリンツ・オイゲン』、号泣する『酒匂』を抱きながら……己の非力さを噛み締めるしかなかったのさ! ……そんな中だったよ……多数の軍艦達が『歌』へ耳を傾けていた事に、気付いたのは………」

 

サラ「…………私は………悲しむ皆を………救いたかった。 轟沈すれば天国で迎えられる。 だから……怖れる事も、悲しむ事も無いのだと『賛美歌』を歌ったのです。 少しでも……皆の心が安らぐようにと………」

 

長門「お陰で……プリンツも酒匂も……最後を心静かに迎える事ができた! 今も感謝しているぞ! ───あの二人が……この鎮守府に着任していれば、あの時の礼を──それぞれが述べてくれるだろう!!」

 

サラ「ですが……私は、仲間を抱きしめて、慈愛の表情を浮かべる長門に……正直……憧れました。 この方の中には『聖母』が居ると。 私も歌と云うdeception(まやかし)ではなく……一隻ずつ抱きしめてあげたかった!」

 

長門「あの犇めく(ひしめく)艦の中を、短時間で癒やす事など、歌しかなかったさ。 現に……私達も癒やされたしな! サラ……お前の歌は……敵味方を越えて、魂を救ってくれたのだよ!!」

 

サラ「そう言って頂くと……少しは自信が持てます。 ですが……二人が、笑顔で天に帰れたのは、私だけの力では……到底無理でした! 貴女の信頼が励みになったのも、間違い無いと確信しています!」

 

長門「───そんなサラだからこそ、礼を述べる為に近付き、会話を交えて……友となったんだ。 互いに戦う為と生まれた私達が……話せば友になれる! 対話の大切さを教えてくれたのは、サラのお陰でもあるんだ!」

 

サラ「フフフッ! でも、敵国の鋼の武人が……まさか可愛い物好きの女性とは、流石に……驚きましたよ。 こんな方なら、もっと早く出逢えて話せれば……と悔やみましたけど……」

 

長門「────てぇ、提督に前で話すなッ! 恥ずかしいじゃないか……武骨な私が、可愛い物が大好きだなんて……」

 

一刀「そうか……気に留めておくよ! そうか! 可愛い物か……! 近いうちに何か考えておこうか!」

 

長門「き、気に留めなくても……いや! 提督に断りを入れるのは失礼だな! ……楽しみに……している………///////」

 

サラ「良かったですね……長門。 あぁ……その後ですね? その実験は二回も続けられ、私も一回目は耐えれましたが……二回目は無事に済まず……海の底へと眠る事になりました。 主の導きのままに………」

 

長門「………私は……そんな掛け替えの無い3人の轟沈を……見届けた後……静かに眠りに付いたんだ……。 夜中……誰にも看取られず、皆が眠る海の中へ。 ……サラの歌を思い出しながらな……」

 

一刀「………そんな話が……あったんだなぁ……! くっ! め、目にゴミが入ったみたいだぁ! ───ハンカチ、ハンカチ!!」ゴソゴソ

 

長門「………この方が、我等の提督『北郷一刀』殿だ! こんな方ゆえ、私は……私達は……指揮下に入り、提督に仇なす敵に立ち向かっている!」

 

サラ「………………」

 

長門「……私達を武器とは扱わず、一人の仲間として接してくれる上官。 この素晴らしい提督に出逢え、その身近に接すれる事を……誇りに思う! どうだろう? この提督の下、私達と共に戦ってくれないか!?」

 

サラ「私達が着任した事は……そのために呼ばれたのでしょうね。 必然か偶然か……分かりませんが。 龍驤様に、前世の罪を赦された私は、元より艦隊に参入するつもりでしたよ! 長門が居る───この艦隊に!!」 

 

長門「そうか! ありがとう!! サラが参入してくれてれば心強い!!」

 

二人は、互い握手して───共に戦う事を誓い合った。

 

 

 

◆◇◆

 

【 スチュワートの想い の件 】

 

? 益州 漢中付近 にて ?

 

 

スチュワート「…………言っておくけど、私は……まだ協力するか……分からないんだからね! 元『第102号哨戒艇』として……長かったから……出来ればしてあげたいけど……。 この艦隊の司令官を見定めないと………」

 

雷「─────!!?」

 

電「はわわわ!!」

 

スチュワートが、モジモジしながら話を切り出すと……雷と電が急に近付いた! 顔を真っ赤にさせて……珍しく鬼気迫る表情で迫る!

 

雷「ちょっと!! それ本当なんでしょうね!?!?」

 

電「─────なのですぅうううッ!!」

 

驚愕したスチュワートは、慌てて雷と電に釈明する!! 

 

スチュワート「なぁ、何なのよぉ!? 私は元友軍を轟沈させた事はあるけど、アンタ達のような駆逐艦、誤射して轟沈した事なんてないから!?」

 

雷「違うわよ! 名前が『第102号哨戒艇』で間違いないか聞きたいの! 私達……姉妹の仇を取ってくれた艦が、そんな名前だって聞いたんだから!!」

 

その言葉を聞いて……スチュワートの顔色が更に青くなる。 

 

スチュワート「………そうよ。 死に損ないの米国駆逐艦から、友軍に仇なす『第102号哨戒艇』となった……私で間違いないわ! だけど……私は、この手で……何隻も……何隻も!!」

 

電「………それが……戦なのです。 敵味方、オセロのように白黒が変わるゲームみたいなモノ。 いつも悲しむのは……その中に巻き込まれるモノ達なのです。 私達だって、敵と云えども救える命は……救いたいのですよ!!」

 

雷「そうよ! それに、アンタだって……相手を攻撃しなければ、アンタが代わりに轟沈していたわよ? アンタの中に居た仲間と共に! アンタはそれでも良かったワケ!?」

 

スチュワート「──────!」

 

電「今は……ただ感謝させて下さい。 私達姉妹の仇を取ってくれて、ありがとうなのです! そして、今度は───この大陸と司令官や艦隊の為に、力を貸して貰いたいのです! 誰も……悲しむ事が無いように!!」

 

雷や電が言葉を尽くし、世の無常、感謝、協力要請等を説明するが……スチュワートの心は晴れない!

 

スチュワート「………なんでよ……。 なんで……私は、行く先々で歓迎されるのよ。 前の時も……故国に曳航されて帰れば「浮気なお転婆娘」と歓迎されたわ! なんで……誰も……私を叱らないのよ! 怒らないのよッ!!」

 

雷と電は、顔を見合わせて……溜め息を吐く。 

 

すると、一人の人物が二人の肩に手を添え……『御苦労様』と一声ずつ掛けたあと、スチュワートに向かい……語りだす。

 

一刀「──それは、君が任務として、一生懸命働いた結果だからさ! それが、正当に評価された結果だから! それに、向こうでは轟沈と思われたんだよね? それなら除籍処分されるから、正式に帝国海軍の所有になる!」

 

スチュワート「それが………『君は裏切ってない! 立派に任務を全うした《駆逐艦 スチュワート》だよ!』……本当ぅ? 本当に……そう思う?」

 

一刀「君は、自分を恥じていたんだろう? 否応なしに祖国を裏切り、敵国に力を貸して友軍を轟沈させた行為に!」

 

スチュワート「…………うん! うんッ!!」

 

一刀「この艦隊を率いる提督として断言する! 君を侮辱する事は、誰にも断じて許さない! 君は間違いなく──『国に奉じて戦い抜いた軍艦』だ! だから、向こうでも歓迎されたんだよ! 『お帰りなさい!』ってね!」

 

スチュワート「ううぅ……ウワァ──ァアアアン!!」

 

一刀「────大丈夫! 大丈夫だから!!」ナデナデ

 

 

★ーー★ーー★ーー★ーー★

 

始めは、ビッグ Eの為に……司令官を試す試金石で艦隊に入る事を、ワザと濁した。 司令官の行動が……どう動いても……艦隊に参入するつもりだった。

 

理由は、艦娘と着任したから──と、その一点のみ。

 

その後……サラやアリゾナ、ビッグ Eが参加した為と理由を増えたが……ただそれだけだった。

 

ところが、雷や電に──唐突に礼を言われた事から、スチュワートに異変が起きた! 自分の心の片隅に眠っていた劣等感が、襲い掛かってきたのだ! 

 

 

ーーーーー

 

スチュワートの想い……自己の嫌悪感、忘却された『自分の名前』への虚無感。

 

敵に鹵獲されるならと自沈したのに、『運悪く』救われ、敵国の艦隊へと編入。 そして、新たな名前『第102号哨戒艇』と付けられた。

 

そのため、元仲間の艦隊が……航海中のスチュワートを見て、混乱したと逸話が残る。

 

『私……裏切ったワケじゃない! 鹵獲されたから……こうして戦うしか無いの! それが──艦たる私の宿命だから!!』

 

そう信じて……幾多の戦いに挑み……戦禍を潜り抜けた!

 

その想いを秘めて大戦を乗り切り……故国へと戻る。 

 

長年の過労によ動力源が途中で止まり……他の艦に曳航してもらいながら、やっと帰って来れたのだが……。

 

そこには……自分の名前『スチュワート』を持つ後続の駆逐艦が既に居た。

 

ーーー

 

スチュワート『《エドサル級護衛駆逐艦 スチュワート》です!』 お疲れ様でした! 《DD-224》先輩!!』

 

DD-224『えっ!? わ、私……スチュワート……じゃ?』

 

スチュワート『───既に、大戦中に轟沈したと云う事で……先輩の偉大な名は、私に受け継がれたんです……!』

 

DD-224『────────!?』

 

ーーー

 

こうして…………元スチュワートは、無機質な名前『DD-224』と呼ばれた。

 

 

 

『私の自身の事を……米国市民は褒めてくれた。 だけど……私は国に仇なす艦だったのよ! 友軍の進撃を遮り、作戦を遅滞させ、轟沈もさせた……敵国の狗! それなのに……なんでぇ……なんでよぉ───ッ!!』

 

『私の……本当の名前は《クレムソン級駆逐艦 スチュワート》よ! 祖国の為に戦い、敵国で名前を変えて働く事になろうとも! 私は故国を忘れなかった!! だけど……私の名前は……故国に……もう無いのよ………』

 

その事が、艦娘になって今も───心にあったのだ。

 

★ーー★ーー★ーー★ーー★

 

 

雷や電の励ましは、心に染みた! 

 

だけど………肝心な部分に届かない!

 

自分を卑下する部分に……命中しない!

 

だが……ここの司令官は、的確に劣等感を看破して……スチュワートの悩みを見事に大破、轟沈させたのだ! 

 

自分の名前を認め、働きを認め、理由を認めて……安心感を与えてくれた!

 

だから……スチュワートは、嬉し泣きをしてしまったのだ。

 

ーーー

 

電「流石……一刀さん……なのです!!」

 

雷「………妬けるけど………しょうがないわね!」

 

暁「あ……いいなぁ、頭ナデナデして貰ってる。 う、羨ましくは無いわよ? これでも───レディだもんッ!!!」

 

響「……気持ちは分かる……」

 

ーーーー

 

ビッグ E「スチュワートの質問は、アタシの為に……?」

 

アリゾナ「半分は勿論……ビッグ Eの為だね。 もう半分は……結構本気だったみたい! 結構──気にしていたからね。 それで……どうかな? ビッグ Eは納得したの? あの提督……指揮官に相応しい人物か見極められた?」

 

ビッグ E「…………………」

 

アリゾナ「不満そう……だね。 じゃあ……私に協力してくれる? 私も少し試したいのよ! 話に聞いた──身を挺して庇った覚悟を知りたいの! それに、敵国だった国の艦娘である私達も……大事にしてくれるのかどうかも!」

 

ビッグ E「何を───!?」

 

この後、ヒソヒソと内緒話を始める二人であった。

 

 

 

ーーーーー

ーーーーー

 

あとがき

 

最後まで読んでいただき、ありがとございます!

 

あっちこっちの史実を引っ張り出して、作り上げた話です。 中には『イメージと違うぅうう!』と叫ばれる提督諸氏もいらっしゃるとは存じます。

 

まぁ……作者の独自解釈ですので……お気にされないように。

 

 

説明
オリキャラ中心です。
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コメント
ハスター提督 御指摘ありがとうございます! 何気にプリンツ・オイゲンの画像を調べていたら、座礁状態!? 『はわわわっ!?』となり、こちらを見ればコメントが………。 長門の誤認、もしくは既に亡骸になっても浮かんでいたプリンツを曳航したと考えていただければ。 ファンの方に怒られそうですが………。 (いた)
プリンツ・オイゲンは2発の原爆を耐え抜き、曳航されている途中で座礁し、その生涯を終えたので、厳密にはオイゲンが3隻を看取った形になりますが、この外史ではこうなったということで野暮は言いますまい。(ハスター)
hokuhin提督 コメントありがとうございます! 今回は『艦』ですから、こんな結果ですからね。 捕虜と言えば、秦の白起が行った四十万生き埋めとか……も。(いた)
史実の于禁みたいな例もあるし、本当に捕虜は大変だなあ・・・(hokuhin)
雪風提督 コメントありがとうございます! 三国の時代から千年経ても……基本変わらないかと。 黄権は、劉備に信じて貰いました! スチュワートは……消耗品として、見られていたんでしょうかね。(いた)
戦史は違えど・・、国を友を思う心は同じなのですな・・。例なら黄権辺りでしょうか・・(蜀⇒魏)(雪風)
スネーク提督 コメントありがとうございます! 長門の話は直ぐ出来たんですが……スチュワートの方が納得できなくて……。 お陰で推敲に3、4時間掛かったシロモノです。 作者としては……まぁ……嬉しいんですが(>。<)(いた)
スチュワートの話に感動してしまった( ̄^ ̄゜)涙で濡れてしまった書類をどうしてくれる(*´Д`)σ ツンツン(スネーク)
mokiti1976-2010提督 コメントありがとうございます! 資料を調べていたらアノ話にぶつかり、サラの名前で浮かんだ話です。 次回もネタはできているのですが……どう繋げようか苦戦中です。(いた)
やはりサラと長門が出会えばあの話になるわけですね。そしてちょっとだけ感動…。そしてアリゾナの考えが気になります…次回に期待。(mokiti1976-2010)
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