裏次元ゲイムネプテューヌR |
キメラ王と生欲
鋼鉄の馬車に乗っていたユウザは、いきなりふるい落とされた。
原っぱに転げ落ちたユウザが見たのは、大きな大きなモンスターだった。
ユウザは機械皇にもらった銃剣でをモンスターに向けるが、引き金を引くことが出来なかった。
人が喰われているところを見た事があるから、その時の事を思いだしてしまい、恐ろしくなって引けなくなっていた。
ユウザは引け腰になって足を滑らせ、尻もちをついた。
その隙を逃さんとばかりとモンスターが爪を立てて襲いかかり、「もうだめだ」とユウザは目を瞑った。
直後、ずしゃりという何かが切り裂かれた音とぼとりと何かが落ちた音が聞こえた。
恐る恐る目を開けると……
「ダメだよ、よわむしなおにーちゃん」
そこにいたのは無惨に斬り散らかされたモンスターの亡骸と、返り血を浴びた女の子だった
「しんだらまけなんだから、ひきがねをひかないと」
女の子はユウザに手を差し伸べた。ユウザは恐る恐る、差し伸べられた血まみれの手をとった。
「へー、じゃあおにーちゃんは ここがこーなるまえのこともしってるの?」
女の子は、別の所から来たユウザの話に興味津々だった。特に、『書き換えられる前の世界』と言う所が気になったようだった。
ユウザは自分がいた世界の事を女の子に話す度に、その世界での出来事が脳裏にはっきり浮かび上がった。
まるで今もどこかにあるかのように、ユウザは懐かしんでいた。
「いいなー、そんなせかいならのんびりできそうだねー」と女の子は笑った。
今度はユウザが、ここはどんな世界かを女の子に尋ねた。
女の子の話によると、ここは前いた国と同じく、人間になった女神の代わりに、合成生物のキメラを王とした世界らしい。
その影響からか、ここの住民の中には、何かしら別の生物データを取り込んだ人もいるようだ。
女の子もまた、別の生物の情報を得ているらしい。ユウザはそれを聞いて「道理でモンスターをいとも簡単に……」と思った。
女の子は面白い話をしてくれたお礼にと、ユウザを自分のいる家に泊めることにした。
「もっとおはなしをききたいけど、おにいちゃんすぐしんじゃうし」と言われ、自覚はあるも少し傷ついたユウザであった。
女の子の家に泊まって暫く日が経ったある日の買い物帰り、ユウザは国民から人さらいの噂を耳にした。
噂の内容は、「月に一度、幼い純血の女の子がさらわれる」というものらしい。
ユウザは「あの女の子はさらわれないな」と安心して帰っていった。
ユウザが「ただいま」と言って帰って来た時、信じられない光景が目に飛び込んだ。
斬れ跡、裂き跡、引っ掻き跡、兎に角しっちゃかめっちゃかに部屋が荒らされていた。
その時、ユウザはあの人さらいの噂が脳裏によぎり、慌てて女の子を捜しに走り回った。
しかし女の子が見つかる事はなく、待っていても帰ってくることは無かった。
その翌日、再び女の子を捜しに走っていた時、噂の続きを偶然聞いた。
「さらって行くのは国の当主、キメラの王だ」という噂だった。
手がかりがロクになかったユウザは、それを頼りにキメラ王のいる城に行くことにした。
機械王の城に入った時と同様、荷物の山の中に紛れるように荷馬車に乗って、城の中に入った。
城の中に入ったユウザは、城の最上階にある王の間に行くことにしたが、機械王の時とは違って警備が薄くなってない為、息を潜めて気を付けて行った。
警備員に見つかりそうになった時には物陰に隠れてやり過ごした。
以前とは違って緊張感が高まり、汗も滝の様に出ていたが、何故か警備員はキメラでなく普通の人間だったため、匂いや音でバレる事無く王の間の扉の前に行くことが出来た。
そして扉の前に立ったその時、ユウザは「これからどうしよう」と、肝心な事を忘れていた。
普通に会えば殺されるかもしれないし、かと言ってこのままだと真相を知る事が出来ずじまいだ。
そんな時、勢いよく扉が開いたと同時に、何か人らしきものが吹き飛ばされた。
ユウザは思わず駆け寄って見たら、それは胸を貫かれて今にも死にそうな痩せ型の男性だった。
男性はユウザに「誰かは知らないが、娘を頼む」と拳銃を渡し、詳しい事は何も言わぬまま息を引き取った。
直後、後ろから「おにいちゃん」と言う声が聞こえたので振り向くと……そこには得体のしれない【何か】がいた。
それを見た瞬間、ユウザは自分の死を直感し、恐怖し、絶叫し、思わず躊躇わず、男性に渡された拳銃を【何か】に向けて引き金を引いた。
暫く後、城の内側から肉塊があふれ出て、街を、国を埋め尽くした。
それは暴走した状態でキメラ王が死んだ証、体内に取り込み溜め込んだ血肉が制御が効かずに一気に放出されたからだ。
ユウザの撃った拳銃には、魂生弾という対キメラ用の銃弾が込められていた。
魂生弾に撃たれたキメラは、細胞一つ一つの魂が目覚め、各々が拒絶反応を起こし合わせて自壊させる弾だった。
キメラでなければ致死性が無い成分の為、その弾が込められた銃を扱う警備員は全員純粋な人間だったのだ。
何も知らないユウザは、その銃のお陰で結果的に生き残った。けれど同時に、女の子を殺してしまった。
「純血の幼い女の子しかさらわれない」……そう、あの女の子こそ、キメラ王である。
彼女に殺された痩せ型の男性はその父親でありキメラの生みの親だった。
病弱だった彼女を生かすために手術を施してキメラにしたが、その時の暴走で女神だった者を含むほとんどの人たちが死んだのだった。
暫くして暴走はおさまり、女の子は元気に動き回れるようになったが、一か月に一度、新鮮な純度100%の人間を丸々一人取り込まなければ暴走する身体になってしまった。
その為の虚像の王、その為のハリボテの威厳、全ては娘を生かす為の狂気じみた愛情だった。
ユウザはそんな事を知る由もなく、ただ「助けられなかった」「間に合わなかった」と肉塊の中に浮かんだ女の子の遺体を抱いて嘆いていた。
ただこればっかりは真実を知らなくてもいいのだろう、知った所でどうせ同じく……否、殺してしまったと分かった分、それ以上に悲惨で悲愴なモノでしかないのだから……
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