頑張れ蔡瑁さん
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『天の御使い』を、欲しくもないのに拾ってしまい胃に0.1ミリの穴が空いたの巻

 

 

「ちょ、ちょっと待て!!北郷を荊州の刺史に据えるだと!!本気で言ってるのかお前たち!!」

「「「「はい、本気と書いてマジです!!」」」

 

 

荊州の有力者である蔡瑁は、慌てた様子で自分の周囲を取り囲む者たちの顔を眺めた。

蔡瑁の腹心で又有力豪族の一人である張允、荊州一の秀才で文官達の頭目を務めるカイ越・カイ良姉妹、荊州軍の総司令官役を担う猛将黄祖等、前刺史(簡単に言えば州の長官)の急死により中枢の空白化が起きている荊州にとっては、各分野の実権を掌握している荊州の有力者ばかりだ。

そんな有力者たちに「逃がさぬ」と言わんばかりに取り囲まれた蔡瑁は、驚愕の顔から青ざめひきった顔に変化する。

 

 

「じょ、冗談だろ……だって、北郷だぞ」

「この情勢下で冗談など言えません、我々は急ぎ新たな刺史殿を据えねばならぬのです、そうしなければ荊州は黄巾党の格好の標的になってしまいす」

 

 

蔡瑁の問いに張允が他を代表するかの様に返答する。

皇帝の無能さとそれを取り巻く有力者達の私欲によって作り上げられた乱れによって生まれた「黄巾党」、その黄巾党の対策に曹操・袁紹・劉備・孫策が私兵を集めて軍備を固めつつある中、荊州は前刺史の急死により取りまとめる物がおらず黄巾党に対抗する用意が整っていなかった。そして、それに比例するように荊州黄巾党の頭目である張曼成は蜂起の準備を着々と進めており状況は切迫していた。

 

 

「た、確かに、黄巾党に対抗するためにも我ら荊州の者を取りまとめる刺史を決めるのは急務であるが、なぜわざわざ北郷のような浮浪者を……」

「「浮浪者ではありません!!天の御使い様です」」

 

 

カイ姉妹が声を揃えて否定する。

管輅が示した、荊州に天の御使いが降りてくるという言葉は、刺史の急死により先生きを不安しする人々にとっては僥倖であり。

実際、蔡瑁が天の御使いを拾った時には、「天の御使い」=「北郷一刀」のその名は直ぐに荊州全土に広まった。

 

 

「だ、だが、あいつは確かに管輅の予想通り天から降ってきたが、だが、その当人の北郷……、アレは取り柄もなにもないただの男だぞ」

「……」

 

その蔡瑁の言葉に一部の方の動きが見える。

特に一番感情の起伏が激しい黄祖が親の敵を見るような目で蔡瑁睨む、というより「俺の北郷を馬鹿にするな……凡愚が」小さく呟きながら腰の剣を今にも抜きかけたていたのだが……、幸いにして黄祖が背後にいたため蔡瑁は気がつかなかった。

だが、本当に蔡瑁にとって北郷という男は、現実性皆無の奇抜な発想をする変人という印象しか持っていなかった。

……、実際の所は、今の荊州で一番の権力者で有り北郷の庇護者でもある蔡瑁に、北郷のその発想を現実にする才が無いだけであり。北郷の才は蔡瑁によって生殺にされていたというのが正確であるが。

 

 

「では、あえてお伺い致しますが、蔡瑁殿は北郷様をどう処遇すべきだとお思いですか」

「んっ?まあ、先も言ったとおりアレ自身は平凡な男だしあまり魅力は感じられんが、まあ、他の世界から来たらしくこの世界の常識もない、ほおり出しても生きていけまい」

 

 

とはいえ、蔡瑁以外の、……今蔡瑁を取り囲む有力者たちの北郷の評価はまったく異なる。

北郷が蔡瑁の所に降りてから、半年。北郷は某種馬スキルをフルに(無意識に)していたのだ。

そしてここは名のある人物が全て女性化してしまう世界。

 

 

「まあ、拾った縁もあるし……このまま私の屋敷で下男として働かせてやろうと思うが」

 

 

だから…。

 

 

「「「やっぱり、北郷様を皆の為に刺史に(お前の屋敷って、半分同棲じゃないか!!北郷(一刀様)一人じめじゃねぇかー!!)」」」

 

 

北郷は荊州刺史の座に収まったとかなんとか。

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北郷荊州に逆賊(劉備)を迎えて胃に2ミリの穴が空いたの巻

 

 

「ご主人様〜!!」

「やぁ、桃香!久しぶり」

 

 

周囲に押し切られ北郷が刺史に就任した後。

 

 

黄巾の乱

反董卓同盟

官渡の戦い

 

これらのの歴史的局面を乗り越え、荊州の人々は皆平穏に過ごしていた。

ただ……。

 

アイドル三姉妹

へううメイド+アホ赤毛+へううメイドラブ娘・美髭公ラブ娘・アホ毛ラブ娘・真名無しぺったんさん

馬鹿姉妹+従者3名+1(なんかオマケで白蓮が付いてきた)

 

 

何かあるごとに、北郷が連れて帰ってくるその少女達の正体を知るに、毎度失神を繰り返していた蔡瑁を除けばだが。

 

 

「(い、胃が痛い)」

 

 

だが、今日やって来たのは今までのレベルではない厄介者だ。

 

 

「桃香無事だったか」

「うん、ご主人様」

 

 

蔡瑁の目の前にいる劉備たちは、曹操の仇敵で今じゃ朝敵扱いされてる存在。

ちなみに、曹操は今この国で一番力を持つ勢力であり、その圧倒的な戦力から蔡瑁の中では曹操軍=転職先というのは既定路線であり、前々から北郷に曹操に降伏(吸収合併)するように提案していたのだが。

北郷がその転職先の敵である劉備勢を迎える事を決めたため、蔡瑁の転職プランは潰れてしまった。

というより、曹操を敵に回してしまって、転職どころか人生オワタ!などと考えていたのだが。

 

 

「頼むよ、鈴々、星」

「わかったのだ」

「お任せ下さい主」

 

 

蔡瑁の人生を終わらせた、当の北郷は劉備勢相手にニコニコと話しかけている。

 

 

「そういえば皆、蔡瑁さんと会うのは始めてだよね。紹介するよ、俺の補佐を勤めてくれてる蔡瑁さん、なにか困ったことがあればこの蔡瑁さんに相談してくれたらいい、俺の半身といっていいぐらいの人だから」

「……ああ、よろしくた……の」

 

 

来てしまったからには覚悟は決めないといけないと。

蔡瑁は営業スマイルそのものの笑顔作り、劉備達に挨拶しようとするが……止まった。なんか射殺す様な視線を劉備勢全員から感じたからだ。……今更だが、当然北郷は劉備勢にもスキル発動済みなわけで。

 

 

「ご主人様の、半身・・・・だと、」

 

 

嫉妬神=関羽様の言葉に凝縮された通りの、嫉妬の目を劉備勢全員から向けられた。

 

 

「(わ、私がなにをしたというんだー!!)」

 

 

蜀の英雄達の殺気に充てられ、基本モブキャラな蔡瑁は失神してしまった。

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なんか北郷を巡って劉備勢(特に嫉妬神愛紗)と心ならず修羅場になり3ミリの穴が空いたの巻

 

 

後継者問題…それは世襲制を取る権力組織にとって最も重要な問題である。

特に荊州に場合は、良くも悪くも北郷一刀個人に全ての役割が担わされている。

将達は荊州ではなく北郷個人を忠誠の拠り所にしており、また民たちも「天の御遣い」という北郷の存在に敬慕の思いを抱いている、その為、荊州にとって北郷という個人の生命は極めて重要であり、その死は荊州の崩壊を意味しかねなかった。

とはいえ、戦乱の世、なにがあるか分からない世である、悪く言えば北郷を失った時の事を考えた保険、つまり北郷の代わりとなる忠誠・敬慕の対象は万が一に備え必要であった、そしてそれは現状では北郷の血を引くものつまり子でしかありえなかった。

その為、城の中では北郷が誰を娶るのかが毎日の様に囁かれ、独特な雰囲気を醸し出していた。

 

 

そんな雰囲気に充てられたのか嫉妬神様は…。

 

 

「ええと……、だからな?なにが不機嫌なんだ関羽殿」

「なんでもない!」

「いやっ、なんでもないって顔じゃないぞそれは」

 

 

当然の様に、副官として北郷の隣に何時も居る蔡瑁を睨み付けていた。

自分が世話焼き女房として北郷のそばにいる的な算段を弾いていたのに、蔡瑁にその座をとっくに座られていたのも原因だ。

又、嫉妬神様以外にも、華蝶仮面にも悪代官役として蔡瑁は数度討伐されかけたりもした。

 

蔡瑁とて荊州の豪族として、多少の荒波を越えてきたつもりで多少の事では動じないのだが。

まあ、ただ。

 

 

「・・・・・」

「そ、その目をやめろ!!し、死ぬぞ!死んじゃうぞ!!わたし!」

 

 

嫉妬神様の嫉妬オーラは怖すぎる。

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曹操攻めてきたから、本陣に行って来いと脅迫され4ミリの穴が空いたの巻

 

 

種馬スキルに充てられた、ロリ軍師×2+メガネ軍師の暗躍により。

赤壁の連関の計の実行役を担わせられた蔡瑁は一人(祭は付いてきてくれなかった)……裏切りを偽り曹操の本陣にいた。

 

 

「ま、まあ……不満があるというかなんというか、かんというか……」

「そう……(駄目ね、嘘が下手すぎるは)」

 

 

だが、モブな蔡瑁さんには役割が重すぎで、曹操は心の中で蔡瑁を処刑すること心に決めた。

とはいえ、最後にいたずらごころが発動した。

 

 

「あなたと北郷はいい仲と噂を聞くけど、……貴方は愛した男を裏切るのかしら」

 

 

蔡瑁は北郷の側近中の側近、あの種馬なら手を出さないはずがない存在。

また、蔡瑁対劉備勢で北郷の寵愛を巡り勢力争いが起きているという確かな噂も曹操は手にしている。

 

……、実はちょっと種馬スキルに当てられている華琳様は拗ねもあって、蔡瑁に意地悪を込め最後の質問をした。

つもりだったが。

 

 

「はい?私が北郷を?いやっ、ないない!絶対ない!あっ!いや、その失礼しました。そ、その私が北郷を愛するなど到底ございません!」

「そ、そう?」

 

 

予想から外れた答えに、曹操はちょっとだけ驚いたような声を上げる。

 

 

「それりゃあもう、なにを好んであんな節操なしのことなど好きになれねばならんのですか…だいたいですねあいつは!!」

 

 

それから蔡瑁は主に北郷の女性関係を中心にさんざん誹謗中傷しまくった。

周囲が種馬スキルに骨抜きにされて、誰にも愚痴もができぬ状況で溜まりにたまった北郷への恨み節が曹操という第三者の前でついに爆発したのだ、また、嘘を見抜かれたら「死」という異常な精神状況が、蔡瑁に酒でも入ったような「無礼講」とでもいう精神状態を作り上げ、口が本当に滑らかで滑ら過ぎて、「北郷マジで死ね」という言葉を連呼するぐらいに。マジ無礼講!!なのである。

 

 

結局30分程、北郷への不満を口にした蔡瑁は心からスッキリした顔をして「長々と失礼しました」と話を結んだ。

 

 

「(ね、ねぇ・・・凛、嘘じゃないわね)」

「(は、はい、……演技とは思えません)」

「(ここまで、北郷の事を恨んでいるとなると…裏切りの件も信頼していいわね」

「(はい)」

 

 

そして、蔡瑁の迫真の無礼講は、曹操を打ち破る決定打となったのである。

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蔡瑁・・・ついに胃が最終段階にの巻。

 

 

北郷が粛々と戴冠の議を行う。

孫策・劉備・曹操を勢力下におき、漢の皇帝も民の為と身を引きいた後の、新王朝の皇帝となるために。

そしてその姿を、北郷の副官であり、北郷に次ぐ権力者である蔡瑁は最も近くで眺めている。

 

とはいえ、曹操や多くの優秀な人材に恵まれた新王朝には、もうモブな蔡瑁の力はもう必要はないだろう、実際「引退しろ凡愚っ」という周囲の空気もビンビンに感じていた蔡瑁は今の立場から身を引くことを決めていた。

今も、「自分も北郷を支えてきたんだし、王侯として荊州の一部に領土でも貰って後はゆっくりさせてもらってもバチはあたるまい。あと、そろそろ結婚も考えないとな、家族からも早く孫の顔をみせろとせっつかれているし、まあ、王侯になれば相手からよってくるだろう〜よーし、私これで人生勝ち組!!」という引退後の将来設計を考えながら、蔡瑁は北郷の晴れの姿を眺めていた。

 

ただ、蔡瑁は気づいていなかった、家族が求める「孫」とは北郷…皇帝の子であり。

また、仮に王侯となろうとも北郷一番のお気に入りと評される蔡瑁に男なんてまったくよってこないことを。

 

 

「あのさ、蔡瑁さん」

「はっ、いかがなさいましいたか陛下」

 

 

戴冠の議を終えた北郷は、家臣たちに労いの言葉をかけていく。

もちろん、副官である蔡瑁が一番最初だ。

 

 

「うん、今までありがとう、今の俺があるのは蔡瑁さんのおかげだ」

「いえ、そんな事はありません、全ては陛下ご自身の才覚に依るものであり、愚者である私はなにも、それはゾウリムシにも劣る感じで……」

「……、いやっ、そんなに自分を卑下しなくても、まあ、蔡瑁さんらしいちゃらしいけど」

「はっ、申し訳ございません」

「まあ、いいや、それより蔡瑁さんに一つ大きなお願いがあるんだ」

「お願いですか?いえ、陛下の命令ならどのような事も」

「いや、命令じゃなくて、あくまでお願いだから!ま、まあともかく蔡瑁さんまずは目を閉じてくれない?」

「はっ、陛下のご意志のままで」

 

蔡瑁が目を閉じた数秒後、手のひらに冷たいものがふれ、同時に北郷から目を開けるように告げられる。

 

「……はい、では失礼して目を開けさせていただきます、んっ、手にあるのは指輪?」

「うん……、蔡瑁さん俺と結婚してくれませんか」

 

 

 

「……、はっ?へっ?」

 

 

男の戴冠と、それを常に支えた女がついに結ばれる、普通なら最高の流れであったのだが。

 

 

「「「「「「「……」」」」」」

 

 

北郷を思うものたちの目線が蔡瑁を貫く!!、あと、愛紗は包丁持たない!!旧3王は、軍師たちと「毒」なんとかとか、暗い事企まない!!えっ、ちょ、ちょっと紫苑さんどこから弓矢を!!あっ……、うん麗羽はいつも通り高笑いしてるだけだね、いいこ〜いいこ〜。

 

 

「ちょ、ちょっと待て…お、お前状況を読んで、って」

 

 

蔡瑁の胃に、いつも以上の痛みが走る。

 

 

「ぐうっ、締めねじれるような!痛みが!!」

「さ、蔡瑁さん!!」

「うっ・・・うう、」

 

 

倒れ込んだ蔡瑁……。

その後、蔡瑁がどうなったかは誰も知らない。

 

 

「あっ、蔡瑁さんおはよう」

 

 

とおもいきや、翌朝、山場を越えどうにか目覚めた蔡瑁の目の前には嬉しそうな北郷の顔と、嫉妬に満ちた恋姫たち……。

 

 

「(.。o○)」

 

あっ、泡をはいてまた倒れた!

蔡瑁の胃は痛み続ける、そう!!死ぬまで!!

 

 

「い、いが、胃がぁ〜!」

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あとがき

 

蔡瑁にデレは一切なしです。

蔡瑁には苦労ばかりしてもらいます、それが苦労人キャラ好きのくろ(苦労)もえ?という新種な作者ですので。

説明
北郷一刀が、蔡瑁のもとに舞い降りたら……。なSSです。
(レスポンス先のシナリオ変更版です)

※コメント返しませんご理解ください。
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コメント
胃がどれだけ痛もうとも医者王のいるこの世界じゃすぐに治るでしょうし…そしてしばらく後にまた胃を痛めると。永遠に続くスパイラルですね。(mokiti1976-2010)
蔡瑁が不憫すぎる;;頑張って生き抜いてくれ!!(nao)
面白いです??(キャスター)
面白いな〜!?(笑)(劉邦柾棟)
タグ
蔡瑁 恋姫†無双 北郷一刀 胃が・・・ 

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