リリカルなのはZ 第八話 自分が自分の為だけに |
昼休み。
本来なら昼ご飯を食べる少年少女が普通だが、そうではない生徒というのはどんな学校にもいる。
「毎度〜♪」
「ふお〜、月村さんの生写真〜。今日のおかずはこれだな」
今日の食事代を引き替えに月村すずかの体操服の写真を売買する少年たちの姿が体育館裏にあった。
「う〜ん。どれも、高いな〜。…財布の中身も少ないし。今日はこれで」
そういって少年が手に取った写真は八神はやての制服姿。
他にも高町なのは。フェイト・テスタロッサ。アリサ・バニングス。月村すずか。綾波レイ。といった少女達の写真が並べられており、その隣には値札らしきものが並べられていた。
アリサとすずかはガードが固いのか写真の種類は少なく、値段が高い。
退院してから復学したなのはの写真もそこそこ高い。
はやては写真の撮影にノリノリなので種類が豊富。
フェイトは執務官の仕事をしているからか隠し撮りの成功率は低い。見つかっていないのが奇跡に近いのか他の写真よりも桁が一つ違う。
「しかし、ケンスケ。よう、撮れたな。海鳴六人衆の写真をこうまでいつ撮影したんや?」
「苦労したよ。クラスの皆との集合写真や画面の端に彼女達を捉えるのは・・・。皆ガードが固くて・・・。高町さんが復学した時に写真を撮らせてもらったんだよ」
そばかすのあるメガネ少年ケンスケは、ジャージ少年のトウジの質問に答える。
フェイトの写真もその時の物だ。
もちろん彼女達にも今、売り出している写真を渡している。裏取引していることは秘密だが・・・。
「・・・ほんま、世の中は分からんなぁ」
トウジは残り少ないフェイトの写真に視線を落とす。
そこに映し出されているのは、花が咲いたように笑うフェイト。
今までの写真では見られない自然な笑顔の要因は一つ。
その隣には高町なのはがいる。
・・・ああ、これが百合ってやつか。
鈴原トウジ。十四歳。
自分の知らない世界を垣間見た気がしたのであった。
「それにしてもシンジがアリシア先生と知り合いだったなんて知らなかったよ。いや〜、持つべき友は美少女に縁がある友人だよ」
次回作として、美少女(本人は二十二歳です)先生アリシアが並べられる予定だ。
そのポーズはシンジをヘッドロックしているような写真だった。
ケンスケはシンジの目の部分には黒線を入れて販売しようと考えている。
「・・・いや、僕はアリシアさんに無理矢理撮られただけだよ」
「何言うとるんやセンセッ。こんな可愛いと綺麗が入り混じった女子と写真を撮るっ。それだけでも十分羨ましいくらいやで!」
シンジは転校して一週間もしないうちにあの模擬戦だ。
NERVとしては秘密兵器で最終兵器のEVAをあんな形で披露するつもりはなかったが、ガンレオンと言う存在の確認。コクボウガーという対使徒殲滅兵器の登場でNERVに回される資金がその二つに取られる可能性があったからだ。
現にコクボウガーの強化にNERVの資金が使われている。
それでもATフィールドと言うバリアを持つ使徒には同じバリアを張る事が出来るEVAが模擬戦に勝利した。
これであの三体のロボットの中で一番戦力になるのはEVAだと一応結論付けられた。
だが・・・。
(あれは、手加減されていた。それに・・・)
シンジはあの模擬戦後にガンレオンの操縦者である高志と実際に顔を合わせた。
そして、シンジがEVAのパイロットである事に若干の呆れ。いや、同情の眼差しを見せていた。
そして、コクボウガーのパイロットと共に赤城リツコ。そして、保護者になってくれた葛城ミサトにシンジのような少年に使徒という怪物と戦わせるとは何事だと本気で怒っていた。
それでも使徒はATフィールドを持っている。
それを無効化する事が出来るのはエヴァだけだと言っていたが、それを打ち破るだけの攻撃力を持っているガンレオン。
模擬戦という事でお披露目することが出来なかったウエポンアーム『ノットバスター』を持つコクボウガーならやれると抗議してくれた。
自分に冷たく接する父。碇ゲンドウと違い彼等が自分を気にかけてくれていると肌で感じ取った。
結局、使徒が現れた時はコクボウガーとガンレオンで対処して、エヴァが出るのは最後という結論に達した。
自分をエヴァのパイロットとしてしか必要としない父に対して、彼等は本気で心配してくれた。
特にガンレオンのパイロットである男性はエヴァを作り直して大人が乗れるようにしろとまで言ってきた。
そんな彼の事はエヴァのパイロットである自分同様トップシークレット扱い。
アリシアと自分と彼で一緒に写っている写真をケンスケに目撃され、トウジと一緒に裏取引もどきをしている。
彼等に自分がロボットのパイロットだと告げた時、どのようなリアクションを取るだろうか・・・。
ウーッ!ウーッ!
そんなことを考えていたシンジの耳に避難警報のサイレンが鳴り響いた。
「避難警報?!つい、この間あったばかりやで?!」
「ま、まさかまたあの怪物が。・・・あ、でもそうだとしたらまたあのスーパーロボットが出てくるのかな」
「なにワクワクしてんねんっ。ケンスケ、センセはよ学校の下に用意されたシェルターに逃げ込むで!」
「う、うん」
(・・・怪物。使徒は一度、あのライオンのロボット。ガンレオンで撃退しているんだ。僕がEVAに乗らなくてもきっと・・・。でも、それだと僕はどうしてこの町にやって来たんだろう)
父親にEVAに乗る事で必要とされた少年、シンジはトウジとケンスケに続いて学校の下にあるシェルターへと向かおうとした時だった。
赤いスポーツカーが生徒や先生の大半が避難しているとはいえ、まだ人がいる校庭に勢いよく入り込んできた。
「シンジ君!早く、これに乗って!使徒が出たわ!」
「・・・み、ミサトさん」
自分の保護者である葛城ミサトだった。
避難警報が鳴った時、偶然近くを通りかかっていた彼女はEVAのパイロットであるシンジを迎えに来たのである。
シンジがパイロットであるというのは学校関係者である教師にも伝わっている。このような事態でもシンジ一人を迎えに来るために多少の無茶は許されている。
それでも、文句を言ってくる教師。
いや、臨時講師がいた。
「ちょっと、どこの人。うちの生徒をどこに連れて行こうとしてるんですか!」
アリシアだった。
彼女はシンジがEVAのパイロットであるとその目で見て知っているはずなのにシンジを連れて行こうとするミサトを止めに入る。
「貴方は、分かっているでしょう!シンジ君は使徒を倒すEVAのパイロットで、私はそれを迎えに来たんです!彼はその為にこの学校にいるんです!分かったらどいてください!」
ミサトは見た目が華奢なアリシアを押しのけて彼女の後ろにいるシンジに手を伸ばそうとしたが、アリシアの体はびくともせず、逆にシンジに伸ばしたその手を掴み上げた。
こう見えても彼女は前の世界では傭兵のようにあちこちの戦場を駆け巡った猛者であり、砲撃手であった。
今でこそ、臨時講師という役柄だが、獲物さえあれば高町なのは並に敵を砲撃して撃破してきた猛者なのである。
「その必要はありません。あの怪物を倒すのはあの人。いえ、私達『傷だらけの獅子』で十分です」
アリシアが冷静に、だけど力強くミサトに言い放つ。
そして、EVAに乗る為にここに居ると言われたシンジに優しく微笑んで言う。
「シンジ君は大人になる為にこの学校にいるんです。彼が彼自身の為にここに居るんです」
「何を悠長な事を・・・。こうしている間にも使徒がこちらに近付いてきているんですよ!」
ミサトはロマンチストな台詞を言い放ったアリシアに苛立ちを覚えた。
それは自分が胸に秘めていた、物事にかける信念。やり通す、やり遂げるんだという意思に嫉妬したものなのかもしれない。
「大丈夫ですよ。・・・私達の獅子も今ここにやってきましたから」
アリシアがそういうと彼女の後ろに一人の男性が何もないところから突如現れる。
「非常事態だアリシア!って、丁度外にいたのか。ちょうどいい、出撃するぞ!」
「おわぁっ?!ひ、人がいきなり出てきたぁ?!」
「・・・なっ。い、いつみても理解に苦しみますね」
作業着の上着を腰に巻いた高志がアリシアの傍に転移してきたのだ。
魔法という存在に慣れていないミサトは彼が魔法という非科学的な物で転移してきたのだと理解するのに数秒だけ呆然としていたが、それは更に延長されることになる。
「ガンレオン、セットアップ!」
高志が腰にぶら下げていた黄色のレンチを空に掲げるように振り上げると校庭のど真ん中に緑色の光が突如発生する。
「ちょ?!」
「も、もしかして・・・」
突如発生した光の中から見える巨大な影。
獅子を象った巨大な人型ロボットが現れると高志が来た時に驚いたままのトウジをしり目にケンスケは目とカメラを輝かせていた。
ズンッ。
黄色とクロノカラーリングをしたスーパーロボット。
ガンレオンが校庭に現れ出た。
「・・・ガンレオン」
シンジは目の前に現れた巨人の名を呟いた。
それが聞こえたのか、アリシアと共にガンレオンに乗り込んでいた高志がシンジに声をかける。
「シンジ!」
「は、はいっ」
「お前はお前に成れ!」
「え?」
いきなり声をかけられて困惑したまま返事を返したシンジだったが、高志は構わず言葉を続ける。
「父親の為じゃない。お前自身の為に。お前が成りたいお前の為に頑張れ!頼ってもいい!泣き言を言っても良い!逃げ出してもいい!それに答えるのが俺達大人だ!」
高志が何故そう言ったか、シンジは後から知ることになる。
グランツ研究所に直接足を運んだNERVの総司令。碇ゲンドウと一悶着あり、使徒の襲来を知らせる為の警報が鳴るその直前に高志は彼を殴り飛ばした後だったという事を。
殴った理由はシンプルだ。
自分の子どもを死地に送るんじゃない。
送り出すならまずは自分が出ろと。
「・・・でかい、ウナギだな。ありゃあ」
海上自衛隊から送られてきた巨大生物の映像を見たコクボウガーのパイロットはため息をついた。
空を飛ぶ巨大ウナギ。
人間で言うと首にあたる部分から赤紫色に伸びている二本の触手。
遠くからそれを計測すると鉄を軽く融解させる高熱の鞭だということが分かった。
空を飛んでいる。そして、鉄をも軽く溶かす。
コクボウガーに対空戦闘をするだけの機動力はないし、攻撃を受け止めるほどの強度も持たない。
その二点だけでコクボウガーを出すのは危険と判断した部隊長はNERVとグランツ研究所に救援を願った。
その連絡をしている間、誰かが殴られるような音が聞こえたが、そう時間が経たないうちに鋼鉄の獅子が何故か海鳴市にある中学校。
しかも後から知る事だが、そこにはEVAのパイロットである碇シンジが通う中学校から、使徒と同じようにいきなり出現。背中に収めていた鋼の翼を展開。炎の羽を撒き散らせながら巨大ウナギが出没した海上へと高速で向かう。
あの巨体でしかも高速飛行できるというデータは貰っていない。
これでまた、グランツ研究所にお偉方が向かうことになった。
「怪物に。スーパーロボット。魔法か。・・・まるでたちの悪い漫画かアニメを見ているみたいだぜ」
今のコクボウガーにはあのウナギの触手を受け止めることが出来るほどの強度はない。
そもそも、あのウナギにもATフィールドは備わっているらしく、海上自衛隊の砲撃。更には戦闘機から発射されたミサイルも効果が無かった。
それどころかそれに刺激されてか、骸骨兵のケルビムを体中から生み落していく。
幸い、生み落される前から集中砲火を浴びさせていたのが幸いして、生み落された次の瞬間には全て打ち落としていた。
だが、それだけの飽和攻撃を与えているのに使徒本体には攻撃は届かない。
炎の翼を背にしたガンレオンがそのバリアごと使徒を海中へ叩き込む瞬間までは。
『見せてやる!シンジ!男の、いや、本当の大人の意地ってのものを!』
オオオオオオオオオオオッ!!
鋼鉄の獅子から聞こえた声と共にガンレオンの咆哮が辺りに響き渡った。
あとがき。
大分間が空いての更新申し訳ございません。
ちょっとネタに行き詰ったところでスパロボZ天獄編のPV第二弾の最後辺りでガンレオンのムービーを見てヒャッハー!した勢いで書き上げました。
・・・マグナモードが界王拳からスーパーサイヤ人みたいになっているってばよ。
作者大歓喜です。絶対に買いです!
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誤字修正しました。申請ありがとうございます(たかb) 誤字報告「写真の首里は」首里→種類、「魔法という賦課額的な」賦課額的→非科学的な、「漫画家アニメ」漫画家→漫画か(kaji) |
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