IS ゲッターを継ぐ者 |
?光牙side?
着替えで一悶着あったものの、僕はISを使用するアリーナへ山田さんに案内された。
着いたアリーナは第八アリーナという所で、ここは教師が使用するので僕ら以外誰もいない。
アリーナの更衣室で、山田さんから受け取ったISスーツという、あいとゆうきとおとぎばなしに出てきそうなスーツみたいな、ISを展開する時に着るスーツに着替え、更衣室の外で待っていた山田さんにアリーナのグラウンドへ向かう。
織斑さんはなんか準備があるとかで、そのグラウンドで合流することになっていた。
そういう訳でグラウンドで待っていると、十分後にジャージ姿の織斑さんが一人の女の人と共にやってきた。
「織斑先生、彼が?」
「うむ。滝沢だ」
織斑さんが頷くと、女の人が僕を見てくる。
「初めまして、滝沢光牙君。私は更識楯無。この学園の生徒会長です」
「生徒会長さん?」
楯無と名乗った水色の髪で赤い瞳の女の人が頷く。生徒会長だったのか。白を基調とした制服みたいのを着てたから、生徒だと思った。
なんで扇子持ってるかは分かんないけど。
でも、笑顔を浮かべる表情からはこちらを見定めるような感じもして、相当の実力者だと感じた。
「なんで生徒会長さんが?」
「更識は学園の生徒会長、つまり生徒代表だ。だから滝沢の事も知る必要があると思ってな」
「成程、それでこの場に」
「よろしくね、滝沢君」
「あ、はい。よろしくお願いします」
更識さんに挨拶を返すと織斑さんが前に出てきて僕に言う。
「では滝沢。早速だがお前の機体とやらを見せてもらう」
「はい」
織斑さん達から少し距離を取る。
IS展開の方法はさっき山田さんから教えてもらった。イメージが大事なそうだ。
目を閉じ、精神を集中。イメージをガントレットに送る。
「……………」
――カッ!!
「スタンダップ! ヴァンガード!!」
「「「えっ」」」
「あいや、失礼。ーーバーストリンク!」
「それアクセル・ワールドだから!?」
しまった、間違えてしまった。
「た、滝沢君、真面目にやってよね……」
「申し訳ない」
ついうっかり。イメージで思いついちゃったのさ。
「では気を取り直し」
「普通にやって下さい……」
イメージするは、僕の相棒。戦いを共に潜り抜けてきた愛機。
キィィィィィン……。
高周波の様な震動がガントレットから発せられ、情報が頭に流れ込んでくる。
その情報はまごうことなくベーオのもの。
更にイメージを高め、相棒の形へ固めていく。
情報の流れが加速し、量が増える。粒子のようなものが僕の体の上を走り、徐々に形を成していく。
まだだ、まだ足りない。集中力を高めるべく左手のガントレットを掴み、精神をフル稼働。粒子の奔流が渦巻き、光り始める。
「(来い、ベーオ!)」
相棒の姿を完全にとらえ、カッと目を見開いた瞬間。
キィンッ! っと粒子が光輝き、緑の光が全身を包み込む。
体の上に金属質の物体が構成されていき、包んでいく。
腕、足、腰、胸、頭。体の全てにその感覚が行き渡った時、僕は何かと繋がるような感覚を覚えた。
「……ほう」
「わあ……」
「…………」
織斑さん達の反応が耳に届く。自分の体を見てみると、ISスーツを着た体ではなく、金属の装甲となっていた。
視界に映る自分の手足はロボットのような手足。以前は乗り込む時に見慣れていたベーオの白と黒の手足になっていて、ガントレットと同じ白、黒、紫のカラーがある。
頭には金属の感触にゲッター特有の角。
確信した。間違いなく、僕はベーオと一体になったのだと。
「それが滝沢のISか」
『えぇ。これがゲッターロボベーオ、僕の相棒です。こういう纏うのがISなんですよね』
「そうだな。先程よりも視界が広く感じたりしないか?」
『そう言えば、そんな感じが……』
「それがISのハイパーセンサーだ。何光年先の光さえも鮮明に見通す。ISの基本機能の一つだ」
凄いなそれ。そういうセンサー関係はスーパーロボットを上回っているかもしれない。
「ところで滝沢君。その機体は全身装甲(フルスキン)なの?」
『フルスキン? 全身装甲って事ですか? ベーオを纏ったならそうなると思いますけど、ISは違うんですか?』
「違うわ」「違うな」「違います」
三人揃って否定されました。……なんで?
『パワードスーツなら全身にガシャンで纏って、武器持ったり、後付けの追加武装付けたり、他のメカと合体するんじゃないんですか?』
「ISはそんな架空のメカではない……。更識、見せてやれ」
「は、はい」
多少呆れた感じの織斑さんが更識さんに言うと、更識さんは扇子を前に構えたる。
次の瞬間、扇子についていたストラップが爆発的に光り輝き、更識さんは姿を変えた。
水色の装甲を体の所々に装着し、頭にはクリスタルみたいなのがついたヘッドギア。四肢にやたらゴツい金属の手足の纏い、右手には槍型の武器を持っていて、機体の左右に水色のクリスタルが浮いている。
『これが、IS』
「そう。私の専用機『ミステリアス・レイディ』よ。和名は霧纏いの淑女」
『え、霧纏いの熟女?』
「んなワケないでしょう!!」
ドガァ!
『げった!?』
「淑女よ淑女! 濁点つけちゃダメ!」
ブッブー! と言いながら手でバッテンマークつけてまで訂正してくる。
いやランスで顔面を横殴りにしなくたって……。角折れてないよね?
でもISとの違いは分かった。更識さんのミステリアス・レイディへ目を向ける。なるほどあんな感じか……。
「もう。失礼しちゃう」
『すみません』
「……霧纏いの熟女……ブッ」
「ぷふっ……」
「先生! もう?滝沢君のせいよ!」
『え? あ、すみません』
とりあえず置いておこう、熟女は。
「だから熟女違う!」
「しかし滝沢の機体、ゲッターと言ったか? 随分と物騒な機体だな」
『物騒?』
「ちょっと怖いです」
「なんだか鬼みたいね。機体のイメージは」
更識さんが頭を指してそういう。言われてみれば確かに。
『鬼、ですか。……まあそうでしょうね』
三人は顔をひきつらせている。確かに怖いかも。
それにあながち間違いじゃないからなぁ。ゲッターロボに乗ってた竜馬さんとか隼人さんなんか正に。
――てめえらにも味あわせてやる、ゲッターの恐ろしさをなぁぁぁぁ!!
――目だ! 耳だ! 鼻!!
……やばい、あのお二人の地獄思い出したら寒気が……。
『鬼といいますか……悪魔?』
――誰が悪魔だこの野郎!?
『ヒッ!?』
ヤバイ! とりあえずこの事は今置いておこう、そうしよう。
自分に言い聞かせて、僕は話題を変える事にする。
『ISはどうやって機体状況とか見るんですか?』
「機体状況ね? それならこうやって……」
更識さんに教えてもらい、やってみると機体状況を見せるウィンドウが開いた。ただ、そこにあった情報は僕の予想通りで。
『こりゃ不味いな』
機体を簡略化した表示の、殆どが損傷及び欠損を示す赤に染まっている。実際に見てみても装甲にはあちらこちらにヒビや傷が入っていて、装甲が無いところもある。無事なところの方が少ないくらいだ。
手足の刃ゲッターブレードは全て欠けていて、頭の角は右の方が根本から折れてなくなってしまっている。
残りの武装や動力系統も調べてみたけど、武装は全て使用不能。炉心もガタガタでエラー寸前だ。
まずい、開始早々で虚無る危険でてきたよ!
……ガシャン!
『あ』
そう見ている中でも、右肩の装甲が音を立てて取れてしまい、バチバチと火花を上げるメカ部分が露出してしまった。
ガントレットのヒビは機体がボロボロって意味だったんだ。確かに、宇宙での戦いの直後にこの世界に来てベーオがISになったのならこうなるのは必然だと納得。
「大丈夫なの?」
『なんとかと言いたいですが、そうも言えませんね』
取れた装甲を拾う。少し動いても機体がきしみ、これじゃまともに動いただけでバラバラになるな。
『織斑さん、この学園にISを修理出来る所ってありますか?』
「そう来ると思っていた。ここはISの学び舎だぞ、機体の整備や修理位出来なくてどうする」
『それじゃあ』
「動かせないのでは話にならんからな。こちらの条件を呑んでくれたら整備室の許可を出そう」
『……分かりました』
僕が頷くと、更識さんと山田さんが少し驚いたような表情になった。簡単に条件を承諾したのだからだろう。
けどこういう状況なら相手方の条件の提示は当たり前。こっちも背に腹は変えられない以上、選択肢はない。僕は織斑さんの条件を呑み、こちらも引き続きゲッターについて過度の干渉をしない事で話は纏まった。
「では、修理についてだが……」
「あ、それなら僕が自分で直しますか大丈夫です」
「「「……はい?」」」
「ん?」
「お前、自分で自分の機体の修理が出来るのか?」
「自分の機体くらい直せなくてどうするんですか」
「ちなみにどこまで?」
「今のベーオなら大体は普通にいけますけど何か」
「「「………………」」」
というか、ベーオの元のブラックゲッターを一人で改修した竜馬さんや敷島博士の方が凄いと思うけど。
〜光牙sideout〜
説明 | ||
第三話です。光牙の愛機が登場します。 | ||
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