IS ゲッターを継ぐ者
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第五話 いざ、学園入学

 

 

 

〜ナレーションside〜

 

 

「あ〜……」

 

 

 光牙が使っている部屋。その真ん中に敷かれた布団から、虫の居所の悪さ100%、といった感じの声を発せられモゾモゾと蠢く。

 

 

「あぁ〜」

 

 

 120%に上がった声を出しながら、布団の中から光牙の頭がニョキっと出てくる。そこでまた唸ってから、起きるのではなくイモムシの様に這い出る。光牙は低血圧なので基本、朝に弱い。

 

 這いより移動で窓まで移動するとそこでようやく立ち上がった。

 

 カーテンを開けると眩しい朝日が差し込んでくる。

 

 

「うわぁぁぁぁぁ。目が、目がぁぁぁぁぁぁ」

 

 

 眩しいものを見たらで思いつくであろう、目を両手で押さえ、某キャラの物まね。

 

 

「…………空しい」

 

 

 だが光牙自身でもしょうもないと思ったので直ぐに止める。

 

 

 ため息をつきながら洗面所で顔を洗い、両頬をはたいて意識を叩き起こす。部屋に戻り、布団を畳んでパジャマを脱ぎ着替えの服を取る。

 

 その服はハンガーにかけられたあの白い服。

 

 このIS学園の制服(特注・男性バージョン)である。

 

 

「………………」

 

 

 それを直ぐに着ようとしない光牙。

 

 彼は学校が嫌いであった。

 

 勉強、生徒、先生、行事。自分の中で思い返しても“学校”に関連するものに楽しい記憶など一つもない。

 

 願いを叶える神様が居たら、学校を無くしてほしい、と頼む程に。

 

 

「……クソっ」

 

 

 だがこうしてグダグダしてたら、余計に思い出してしまった。

 

 首を振って気持ちを切り替え、荒っぽくだが制服に袖を通す。鞄に支給された教科書や筆記用具を詰め込み、それを持って部屋を出て鍵をかけ、朝食の為に食堂へと向かった。

 

 

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〜食堂〜

 

 朝食は日替わり定食を頼み黙々と口に運ぶ光牙。

 

 今はまだ六時半で、時間帯的にまだ一般の生徒達はやっと起き始める者が出る頃。

 

 それでも男の自分が見つかると厄介な事になるので、ご飯をかきこむ光牙。

 

 

「光ー牙君っ」

 

「うぐっ!?」

 

 

 だが後ろからの声にびっくりしてしまい、かきこんでいたせいで喉にご飯を詰まらせる。

 

 

「み、水……」

 

「あ、はい! お茶だけど」

 

「んぐぐ……ぷはぁ」

 

 

 手渡された液体でご飯を流し込み、一息つく光牙。

 

 コップを置きながら、声をかけてきた闖入者に目をやる。

 

 

「更識さん……人が食べてる時は脅かさないでください」

 

「あはは、ごめんごめん。隣、良いかしら?」

 

「お好きな様に」

 

 

 返答を聞くと楯無は隣のテーブルに置いていた洋食セットのトレイを持ってきて、光牙の隣に座った。トーストを一口齧り飲み込むと、光牙に話しかける。

 

 

「いよいよ今日からね、光牙君」

 

「……そうですね」

 

「あら、元気がないわね。何かあるの?」

 

「前に言ったでしょう。僕は学校が嫌いだって」

 

 

 光牙は学校が嫌いな事を、楯無と真耶、千冬には話していた。その理由は話していないのだが。

 

 

「むむ、よく生徒会長の前でそんな事言えるわねぇ」

 

「仕方ないでしょう。嫌いなもんは嫌いなんです」

 

「そんな屁理屈こねないの。今の貴方は発言に力があるんだから」

 

 

 そう言った楯無に学校への文句をまた言おうとした光牙は、出かかっていた言葉を抑えた。

 

 今の光牙は世界初のIS男性操縦者。IS委員会には報告がされ、更に何処からか情報が流れて世界中に知れ渡ってしまっている。

 

 その為、数日前にはマスコミや企業、果てにはどっかの研究所まで学園の前に詰めかけたのだ。

 

 まあそいつらは千冬が放った「失せろ」の一言と殺気で気絶させられ、楯無が家の力で圧力をかけたので、以降そういう連中は来なくなった。

 

 この事もそうだが、この世界で保護して色々整えてくれたのは目の前にいる楯無、ここにはいないが千冬や、真耶なのだ。

 

 学校は嫌いだが自分がそんな文句を言う資格など、元々ないのだ。心の中で謝罪する。

 

 振る舞いには気を付けなければならない。そう誓い、光牙は最後のおかずを食べ飲み込む。

 

 

「ごちそうさま」

 

 

 食器をまとめ立ち上がる。トレイを持とうとする前に、光牙は楯無に言った。

 

 

「更識さん」

 

「ん? 何かしら?」

 

「……学校が嫌いなのは変わりません。けど、僕なりにやれることは最大限やりますから」

 

 

 それを聞いた楯無は、にっこりとほほ笑む。

 

 

「いい心がけよ。私達もサポートするから、頑張って」

 

「……はい」

 

 

 ぺこり、と一礼し、光牙はトレイを持って返却口の方へ歩いて行った。

 

 

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「……学校が嫌いか」

 

 

 光牙が見えなくなってら呟く楯無。

 

 あそこまで言うには、きっと過去に何かあったのは間違いない。

 

 けど、無理やり聞こうとは思わない。人としてそれはいけない事だし、誰にだって悩みはある。

 

 そう、楯無自身にも。

 

 

「……光牙君。学校はそんなに捨てたもんじゃないわよ」

 

 

 聞こえないだろうが、光牙へそう贈る楯無。

 

 朝食を食べ終えると、両手を合わせ、

 

 

「御馳走様でした」

 

 

 近頃は忘れていた御馳走様をして、楯無は食器の返却に向かった。

 

 

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〜一年一組・教室〜

 

 

 時間は進み、IS学園校舎の一年一組の教室。

 

 休み明けのこの日。既に生徒の大半が登校したそこは、一つの話題で持ちきりだった。

 

 

「ねえねえ、あのニュース見た?」

 

「勿論! 見逃すわけないよ!」

 

「なんたって〜」

 

「「「世界初の男性操縦者!」」」

 

 

 『相川清香』、『谷本恵子』、『布広本音』の仲良し三人組が声を合わせる。

 

 世界初のIS男性操縦者現る、のニュースが数日前に流れてから、学園は大騒ぎだった。

 

 今まで男という人種が居なかった学園。しかしそこに通う生徒たちは思春期まっさかりの乙女達だ。

 

 色々敏感である彼女らが、こんなビッグニュースに飛びつかない筈がない。

 

 クラスの誰もが男性操縦者の話題で話をしていて、考える事は同じか隣のクラスからのざわつきも聞こえる。

 

 

「どんな感じなのかな〜」

 

「結構キリッとしてたよね?」

 

「楽しみだな〜」

 

 

 色々妄想を膨らませる女子生徒達。

 

 

「ふん、皆さん何を浮かれているのかしら……」

 

 

 だがはしゃいでる生徒ばかりではない。女尊男卑思想の女子は、ISに男が乗るなんて不愉快極まりない。

 

 この女子生徒も、悪態をつきながら自毛の金髪をいじっている。

 

 ----キーンコーンカーンコーン。

 

 学校特有の音、チャイムが鳴り響く。

 

 教室の出入り口が自動に開き、担任の千冬、副担任の真耶が入ってきて、途端、散らばっていた生徒が話を止め、急いで自分の席についた。

 

 

「諸君、おはよう。HRを始める」

 

 

 教卓に立った千冬が言う。だが彼女や真耶は、教室を見渡し生徒の様子を見ただけで、何かを待っている様な感じが感じ取れた。

 

 そして言えばどうなるか。思い浮かべて少し憂鬱になったが、それを分かりつつ千冬は一息つき、言葉を発した。

 

 

「……その前に。諸君らに報告すべき事がある。このクラスに転入生が来る事になった」

 

 

 それを聞いた瞬間、擬音で表すなら、ざわっ、という感じで、クラス中の女子が言葉を伝達していった。

 

 案の定こうなった、と千冬は頭を抱えたが、バン! と手に持っていた出席簿を叩きつけた。

 

 冷水をかけられた様に静まる教室。

 

 

「諸君らも知っていると思うが、先日、男性のIS操縦者が発見され、我がクラスに転入する事になった。まずは彼を紹介する」

 

 

 さっきとは対照的に静かに話を聞く一組女子達。

 

 千冬が自分が入って来た出入り口に向け、叫んだ。

 

 

「滝沢! 入ってこい」

 

「はい」

 

 

 それが聞こえていたのか、帰ってきた返答は間違いなく“男性”のそれだった。

 

 プシュッ、と出入り口が開き、廊下で待っていた人物が入ってくる。

 

 白い制服。そこは同じだが、下はスカートではなくズボン、上の制服も男性用にカスタムされている。

 

 特注の男性用制服を纏った、小柄で少し茶色がかった黒髪、左頬には傷がある少年が、クラスメイト中の様々な視線を浴びながら教卓の隣まで歩いてくる。そこで左45度回転してクラスに向き直り、彼の後ろの大型ディスプレイに彼の名前が表示され、同時に自己紹介をした。

 

 

「初めまして、滝沢光牙です。男で色々分からない事がありますが、これからよろしくお願いします!」

 

 

 簡素かつ普通の自己紹介をし、一礼する光牙。

 

 今、波乱の学園生活が幕を上げる!

 

 

説明
第五話です。
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ドワォ 目が、目がぁぁぁぁぁぁ 入学 真耶 千冬 楯無 光牙 ゲッター インフィニット・ストラトス 

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