真恋姫無双幻夢伝 小ネタ12『蓮華の悩み』
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   真恋姫無双 幻夢伝 小ネタ12 『蓮華の悩み』

 

 

 赤壁の戦いから数か月が過ぎ、呉にもあの殺伐とした空気は薄まってきていた。皆は冥琳の死去を受け入れ始めており、船団の再建は着実に進んでいる。先月には蓮華の一大決心の下で、首都が柴桑から建業に移り、呉の臣下や民は気分を新たにしていた。

 だが、華北に進軍できるまで軍が回復するには数年を要すると予測されている。天高く雲がたなびく秋空の下では、今日も呉の武将たちはせっせと働いている。

 亜莎が視界を遮るほど山積みされた書類を抱えて、蓮華の部屋に向かっている。その部屋の前では思春が立っていた。

 部屋に入ろうとした彼女を、思春が止める。

 

「今は駄目だ」

「何かあったのですか?」

「蓮華様が手紙を書くことに集中なさっている。後にしてくれ」

 

 そうですか、と言って引き返そうとした彼女は、後ろからやってきた穏とぶつかってしまった。

 

「きゃ!」

 

 彼女の巨大な胸に当たり、書類が床に散らばる。

 

「ご、ごめんなさい!」

 

 亜莎が膝を曲げ、慌てて拾い出す。思春と穏も「やれやれ」「大丈夫ですかぁ?」と言いながら、一緒に拾いだした。

 その間に、穏が思春に進捗状況を聞く。

 

「思春ちゃん、蓮華さまは書けましたでしょうかぁ?」

「おそらくまだだろう。悩んでおられるお声が時々聞こえる」

「敵意を示しつつ、交流を持ちたいことをほのめかさないといけないですからねぇ。難しいでしょうねぇ」

「確かに、大変な作業だ」

「あのー、誰に送る手紙でしょうか?」

 

 亜莎の質問に、2人は顔を見合わせる。そして亜莎なら口が堅いから大丈夫、と確信した彼女たちは答える。

 

「李靖さんへのお手紙ですよぉ」

「えっ!?」

「声が大きい」

 

 思春に叱られて「す、すみません」と一度は謝ったが、彼女は驚きを隠せない。声を落として質問を続ける。

 

「よろしいのですか?彼らとは断交しています」

「亜莎ちゃん。断交していても、相手と連絡を取る手段は確保しないといけないのですよぉ。これは外交の基本ですぅ」

「ありえないが、万が一のことが起こるとも限らん。可能性は残しておくべきだろう」

「な、なるほど!」

 

 そんなことを話していた3人の耳に、蓮華の「あー!もう!」と苛立つ声が聞こえてきた。床にしゃがんだ彼女たちは部屋の扉を見る。

 

「まだ、かかりそうですね」

「ああ」

「はあ」

 

 

 

 

 

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 ここからは、蓮華の手紙の下書きと、それに対する蓮華の反省の弁を紹介する。

 

『拝啓 李靖殿

 黄金色に実った稲穂の収穫の時期となりました。段々と寒くなってきましたが、いかがお過ごしでしょうか。

 建業は長江の魚は勿論のこと、海からも魚が運ばれてくる土地柄で、その味には毎回、顔がほころびます。さらに建業の特産物は他にもあり…』

 

「書き出しが長すぎるわ。これは駄目ね。文章も堅苦しいし、アキラに『蓮華は相変わらずお堅い』なんて笑われてしまう。もっと私の気持ちを率直に表した方がいいかしら」

 

 

『愛しのアキラへ

 久しぶりですね。寒くなってくると、あなたのぬくもりが恋しくなってきます。

 繋いでくれたあなたの大きな手。私を抱きしめてくれたあなたの太い腕。抱き合った時に鼓動が聞こえてきたあなたの胸。そして私に話しかけてくれたあなたの唇。それらを思い出すと、私は体が熱くなって…』

 

「な、なに書いているのよ!?これじゃ、ち、痴女じゃないの!ダメよ、ダメ!アキラに誤解されちゃうわ。もっと婉曲な表現にしないと!」

 

 

『アキラへ

 お元気ですか。今年もまた寒くなってくる季節を迎えました。

 あれからもう半年が過ぎようとしているのですね。あなたと一緒に市場を歩いたことが、昨日のことのように思えます。あなたに握られた手の感触や、私に向けられたあなたの笑顔が、美しい記憶となって甦ってきます。

 そうやって思い出したときは決まって胸が苦しくなります。そんな時は、苦しくっても幸せです。また、あのような時間を過ごしてみたいと、私は心の底から…』

 

「こんなものかしらね。ちょっと遠まわしに書きすぎちゃったかしら?でも、あの人なら気付いてくれるわよね……あれ?この手紙って、なんのために送るのだったかしら?」

 

 

 

 結局、アキラたちには穏が手紙を出すことになった。

 

 

 

 

 

説明
相変わらず章の間に小ネタを挟みます。
最初は呉の話です。
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真恋姫無双 オリ主 蓮華 小ネタ 

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