真・恋姫無双 別たれし御遣い 第三十一話
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〜鞘華視点〜

一君の脱走

この事実に孫呉の陣営は騒然となった

『天の御遣い』として孫呉独立の時に力を貸した人物が脱走したのだ

当然と云えば当然だ

雪蓮を筆頭に、各将が動揺を何とか抑え込んだ

と言っても、将の中にも動揺している者が多数いる

その筆頭が蓮華 

梨晏、明命、亜莎も動揺している

雪蓮、粋怜さん、祭さん、静里、氷雨はそれ程動揺していない

静里や氷雨は気づいているのかもしれないわね

兎に角、このままでは戦にすらならない

 

しかし一君が脱走した夜とその翌日こそ騒然としたがその後は沈静化した

疑問に思った私は冥琳の元に訊きに行った

「冥琳、一君が脱走した事による動揺をどんな方法で沈静化させたの?」

「大したことじゃない

 ”天の御遣いとしての神通力は北郷一刀より北郷鞘華の方が格段に優れている

  その証拠として、反董卓連合の戦いで勝利したのは鞘華の所属していた連合軍

  更には先の曹操軍の侵攻は鞘華が離脱した直後に撤退した”

 こんな内容の噂を流しただけだ」

え、それだけで治まる物なの?

「人は自分に都合の良い噂は信じたくなる

 ましてや此処は戦場 自らの命がかかっている

 そんな時に良い噂が流れてくれば縋りたくなるのが当然だ」

でも噂が広まるのが早すぎない?

「此処は人こそ多いが範囲は狭い

 噂は瞬く間に広まるさ

 特に先ほど言ったような縋りたくなる噂は、な」

成る程 納得した

「一応言っておくが

 ”北郷鞘華は北郷一刀と肌を重ねた

  その際に神通力の殆どをその身に吸収した”

 と云うのは私が流した噂では無いぞ

 勝手についた尾ひれだ」

え?そんな噂になってるの?

「私はどこかの吸血鬼か〜」

そう大声で叫びたかった

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〜華琳視点〜

「北郷一刀が投降して来た?」

この報に驚き、その意図を推測する

だが読み切れない

「華琳様、お会いになる必要は有りません

 直ぐに討ち捨ててしまうべきです」

「それはどうかと思います〜

 そんな事をすれば華琳様は投降する事を許さない冷酷な王と云う汚名を被ることになります〜

 此処は会って、話を聞くべきだと風は考えます〜」

「私も風の意見に同感です

 謁見の際に全ての武官が揃っていれば、華琳様の安全は確実に保証されます」

桂花の意見に風と稟が反対する

これは、どちらの言い分に筋が通っているかは明白ね

「此処に連れてきなさい」

そう命じて程無く、北郷が連れられてくる

 

〜一刀視点〜

「早速の目通り 感謝する」

取り敢えずは型通りの挨拶から始める

それにしても彼女が曹操か

前回、孫呉に侵攻して来た時に会ったが、あの時は鞘姉の件で怒り狂っていた為気付かなかったが相当な覇気だ

「形式ばった事は省きましょう

 投降したいと聞いたのだけどそれは本当なの?」

「その通りだ」

さて、ここからが正念場だな

「理由を訊きましょう」

「俺の目的は鞘華 彼女の保護だ」

曹操達が驚いた表情をしている

意表を突いた答えだったようだな

これは、いける!

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「その言葉の意味を教えなさい」

「この戦は曹操が圧倒的に有利だ

 だから俺は無駄死にを無くすために、降伏を勧めた

 その結果がこれだ!」

そう言って上着を脱ぎ、背中の傷を見せる

そして言葉を続ける

「俺が一番に考えるのは鞘華の身の安全だ

 だが孫呉にいたのでは曹操軍に押し切られ、鞘華の命が危ない

 だから投降して曹操軍に参加する そして鞘華を捕える

 そうすれば鞘華の助命嘆願を曹操に出来るし、曹操もその嘆願を無視できない

 そう考えたんだ」

曹操は少し考えてから

「それならばどうして鞘華が直接来ないのかしら?」

「鞘華は前回の曹操の侵攻の際に孫策を刺客から庇っている

 これは曹操から見れば、完全な利敵行為だ

 それを許すには理由が必要だ

 その理由が”鞘華を捕えた俺の助命嘆願”と云う訳だ」

これで、どうだ?

曹操も周りの臣下も考えている

そして曹操が口を開いた

「分かったわ、貴男の投降を認めましょう」

「華琳様!?」

猫耳フードを被った少女が叫ぶが、曹操は無視して言葉を続ける

「取り敢えず貴男はこの本陣に詰めるように

 そして今私達が勧めている準備が整い次第、孫呉に決戦を仕掛ける

 その時には最前線で戦いなさい 鞘華を捕縛する為にね

 あと監視もつけるから 妙な真似をしない方が身の為よ」

「受け入れ感謝する

 そして、命令は承知した」

此処までは成功と云えるだろう

「だが、今進めている準備とはなんだ?」

「鎖で船団を繋ぎ合わせて、揺れを少なくする

 その準備よ」

”連環の計”か 鳳統が居ないから名前が無いのかな?

全てが順調だ 後は仕上げのみだな

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〜あとがき〜

 

孫呉の動揺の押さえ方 どうでしたでしょうか?

お叱りを受けそうですが、充分可能だと私は考えます

理由は本文に有る通りです

 

華琳は一刀を受け入れました

桂花はやはり反対しましたが”華琳”の矜持からすれば止むを得ないでしょう

 

更新はゆっくりになるかもしれませんが続けるつもりです

 

 

 

 

 

 

説明
赤壁の戦いA
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コメント
いい説得だったな〜華琳は鞘華を欲してるからなw(nao)
うん、確かに適確な理由だな。船での戦に慣れてない魏軍が船を鎖で繋ぐアイデアをどうやって得たのか気になるが(スネーク)
……荊州に侵攻した時に一刀達が即座に撤退した事で、実は蓮華の犯した失態の件がほぼ間違いなく魏陣営の耳に入っている筈なんですよね。それが冥琳の身内に対する隠蔽工作とどの様な化学反応を起こすのか、それが呉の不安要素ではありますね……(h995)
矜持は弱点ともなりうる。況してそれに何よりも拘る華琳なら猶更。そこに上手く付け込めたことで、一刀達の策は妙手となりましたね。一方、劉備軍がどう動くのか気になります。捕虜を無傷かつ事実上の無条件返還されているのだから、下手な真似は出来ませんが……どうなる?(Jack Tlam)
確かに「鞘華」を欲している華琳なら、ああ言えば喰いつくわな。(笑)(劉邦柾棟)
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真・恋姫無双 北郷一刀 北郷鞘華 華琳 冥琳 

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