真・恋姫†無双 裏√SG 第35話
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林冲「花栄!まさかお前が負けるとは……って、か、花栄?大丈夫か?」

 

花栄「司馬懿様はお姉さん…司馬懿様はお姉さん…司馬懿様はお姉さん…」

 

林冲「花栄!?何があったんだ花栄!?」

 

虎牢関の戦いは半日ほどで幕が下りた。

開戦がだいたい昼間だったのに対し、今はもう陽も落ちようとしている。

割と時間を食われたが、まぁ予定通りと言えなくもない

 

先程の戦いで、個人的には偵察に定評のある思春を捕らえておきたかったが、花栄という手練れに邪魔され、それは叶わなかった。

その腹いせに、ちょっとだかお仕置きをしておいたが、効果はてきめんのようだった

 

悠里「いやいや、邪魔された事に腹が立ったんじゃなくて、おばさっ!!?」

 

悠里が何か言おうとしていたが、その前にボディブローを入れておいた。

全く、勘違いとか勘弁して欲しいぜ

 

悠里「ね、姉さん…ボディは流石にキツイっすわぁ…がくっ」

 

悠里はそのまま倒れ込んでしまった。きっと、戦闘の疲れが出たに違いない

 

詠「ん?悠里、こんなところで寝てもらっても、邪魔なだけなんだけど」

 

悠里「ちょっと待って。あたしに対しての扱いが悪過ぎる!もうちょっと優しいちょうだい!」

 

詠「いや、あんたの扱いはこんなもんでしょ」

 

悠里「知ってた!知ってたけども!」

 

悠里はうがーと言いながら走り去ってしまった

 

咲夜「全くあいつは、いくつになっても変わらんな。それで、詠、被害状況は?」

 

私は詠に向き直り、詠に報告を促した。

今回の戦いは、水関の時に比べたら少しだけ苦戦してしまった。少なからず被害も出ているはずだ

 

詠「そうね。被害は軽微…とは言えないわね。軽傷者は後を絶たないし、重傷者もそこそこ。それと死傷者も、百には満たないけど出てしまったわ」

 

詠の報告に、思わず舌打ちしてしまう。

覚悟していたとは言え、死人を出してしまうと流石に後味が悪いものがある。

気をつけてはいたんだが、思春で遊び過ぎてしまった感もあるし、これは私の責任だな

 

詠「あまり思い詰めないで。兵士達はこうなる事も覚悟の上で来てもらっているのだから」

 

詠の言葉に少し驚いた。どうやら顔に出ていたらしい

 

咲夜「あぁ、大丈夫だ。心配かけたな」

 

詠「いいわよ。何も思わないよりは、遥かに良いと思うわ」

 

そんな発言に、思わず苦笑してしまう。

詠は軍師時代、こういう経験を多くしていたが故に、戦死者が出ても動揺しなくなってしまったのだろう。だからこそ、先程の発言は皮肉と言えなくもない

 

咲夜「今回の戦闘で、戦闘不能者はどれだけ出た?」

 

私は頭を切り替え、詠に話を促す。だが、それに応えてくれたのは詠ではなかった

 

音々音「1500…いえ、休息を取れば、1200人程まで減らせますぞ」

 

咲夜「ねね」

 

魏軍の現役軍師、音々音がやって来たのだ。

その顔はとても真剣だったが、少し嬉しそうでもあった。

きっと、かつての先輩軍師、詠と共に話せる事が嬉しいのだろう

 

詠「うちの部隊は3万人弱。たったの300人とは言え、無駄には出来ないわね」

 

音々音「向こうも意図的に殺して来なかったところを見ると、やはり時間稼ぎをしているのでしょう」

 

咲夜「手痛いな。行軍速度を遅らせることも、これ以上人員を減らす余裕も、私達にはない」

 

三人で現状をまとめていく。

新たに捕虜となった花栄がいるとは言え、確実に慎重にいきたい

 

咲夜「休息を取った場合の不利益は?」

 

音々音「相手に迎撃の準備時間を与えてしまう事、救出の時間が遅れて要救助者の体力面に問題が出るかもしれない事」

 

咲夜「じゃあ、利益は?」

 

詠「こっち側の兵士の回復。でも、それ以上に有益になる事もある」

 

詠はフッと笑ってそう言った。その笑みで、私も詠が言わんとする事を察した

 

咲夜「あぁ、そうだな。月が万全の状態になる。不利益を差し引いても、1日くらいなら誤差の範囲だろう。それで月が本調子になるなら、安いものだ」

 

私の言葉に詠と音々音がニヤリと笑った

 

方針が決まったな

 

零士「あ、咲ちゃーん、虎牢関に仕掛けられていた罠、解除終わったよ」

 

今後の方針が決まったところで、零士が虎牢関内部から走ってやって来た。

 

ちょうどいい

 

咲夜「ご苦労だったな。こっちも今し方、今後の方針が決まったところだ。ご苦労ついでにみんなを集めて来てくれないか?」

 

零士「はは、人使いが荒いなぁ」

 

とか言いつつ、素直に行ってくれる辺りは、人の良いあいつらしい

 

 

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咲夜「さて、全員揃ったな」

 

零士作、大きな天幕の中には、私、零士、悠里、雪蓮、秋蘭、凪、詠、霞、音々音、そして氷華、雷蓮、風香の合計12人が揃っている。

 

ちなみに、華佗と華雄は負傷者の治療中で出払っており、各国の王の娘達の護衛を務めている張済さんは、捕虜である星、林冲、花栄の監視についてもらっている。

そして月、流琉、恋は食事の用意で席を外している。

 

恋…つまみ食いとかしてないといいけど…

 

咲夜「まずはここまで、皆ご苦労だったな。皆のお陰で、ここまで何の障害もなく来れた」

 

私が言うと、皆微笑み、頷いてくれた。現状の士気はまずまずだな

 

咲夜「早速だが、これからの事を話していきたい。皆、ここまで連日の移動、および戦闘で疲れていると思う。だから、洛陽に行く前に一日の休息を取ろうと思っている」

 

霞「お!ええ提案なんちゃう?ウチらはまだまだ平気やけど、流石に立て続けに戦わしたら、兵士らが可哀想やでな」

 

雪蓮「私もいいと思うわよ。正直私も、少し休息を取りたいと思っていたからね。年かしら?」

 

霞や雪蓮を皮切りに、この場のほとんどの者が賛同してくれた。

唯一微妙な顔をしていたのは…

 

氷華「休息を入れるのは賛同するけど、一日は長過ぎないかしら?今回の作戦は速さが重要なのでしょ?」

 

氷華が反対意見にも似た事をいった。

その氷華の隣にいる雷蓮と風香も、似たような意見なのか、氷華の意見に合わせるかのように頷いている

 

恐らくこの三人は、自分の親の事もあるが故に、なるべく速く片付けたいと考えているのだろう

 

咲夜「あぁ。この作戦は速さ重視だ。だが、それを重視し過ぎて、兵士の安全を疎かにする訳にはいかない。言ってる意味はわかるよな?」

 

氷華と雷蓮は苦々しい表情になる。だが、風香は…

 

風香「で、でも…それだとお父さんとお母さんが…」

 

流石、あのバカ女の子だな

 

咲夜「なぁ風香、お前は自分の我儘で、私達が率いている三万人もの人間を犠牲にする気か?」

 

風香「え!?そ、そんな事は…」

 

焦る風香を尻目に、私は構わず続けた

 

咲夜「いいか風香?お前は王の子だ。いずれは桃香の座も継がなきゃいけない日も来るだろう。だからな、今回お前達は学ばなきゃいけない。王というのは、常に自分について来てくれる人間を守っていかなきゃいけないと。そこに私情を挟んで、大切な民を犠牲にしちゃいけない」

 

今回の目的は猪々子の奪還だが、もう一つ、あいつらに説教をするつもりでも来ている。

既に愛紗には言ったが、あいつらは北郷一刀という私情の為に、国を明け渡したのだ。

 

それが許せない。

 

王なのだから、時にはそれらを捨てる覚悟を持っていなくちゃいけない。

 

だからあいつらは、甘いのだ

 

咲夜「わかったか?お前の親は、私達の言う通りにしてりゃ、ちゃんと助けてやる。だから今は、しっかり休め。それもまた仕事だ。それに、今休んでおかないと、洛陽に着いたら休む暇なんてないからな」

 

少し説教臭くなったが、風香も、それに氷華も雷蓮も納得はしたようだった。

 

こいつらはこれからなのだ。

今回の戦いで、こいつらが少しでも成長してくれたら、三国としても御の字だな

 

詠「ていうか、一日休みは多分無理よ。ここから洛陽までだと、多分半日は歩くから。理想としては明朝に仕掛けたいから、明朝に洛陽に着ける範囲までは移動、それから休息ね。休息時間も、半日あれば上々ね」

 

詠の付け足すように言った。

夜はここで過ごすとして、朝に出発し、洛陽を目前まで捉えた所で再び休息。

恐らくは正午過ぎくらいになるだろう。そして翌日の朝に攻撃。

その予定でいけば、決戦は明後日だ

 

これでもかなり詰め詰めの予定になっているな。

水関と虎牢関を順調に攻められて良かったと思っている。

長引けば長引くほど、こちらの疲労が蓄積されていくからな

 

秋蘭「順当だろう。私としては何も不満はないぞ」

 

凪「私もそれで問題ないかと」

 

悠里「よーし!なら解散にしましょー!ぶっちゃけ、あたしこういう場は堅苦しくて!」

 

音々音「いや、まだまだこれから話さないといけない事もありますので、もう少しお付き合いしてもらいますぞ」

 

悠里「マジでか!?」

 

その後も、ダラける悠里はよそに、私達は今後の予定や洛陽での戦闘布陣について細かく打ち合わせをした。

 

会議の途中では…

 

月「みなさん、食事の用意が出来たので、宜しければ食べてください」

 

流琉「いっぱい作りましたので、どんどんおかわりもしてください!」

 

恋「戦場の料理とは思えない程の絶品」

 

料理組が飯を用意してくれたので、皆でそれを食し、舌鼓を打ちながら和やかな雰囲気で会議を進めていった

 

雷蓮「これは…責任重大ね」

 

氷華「えぇ。でも面白いわ」

 

風香「わ、私に…できるかな…?」

 

特に、氷華、雷蓮、風香には良く聞かせた。

ここまで温存させたんだ。しっかり働いてもらわないとな

 

 

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会議がひと段落し、各々休憩に入る中、私と詠と音々音は捕虜を取りまとめている区画へとやって来た。

そこには、水関と虎牢関で捕まえた2000人にも満たない数の兵士と、星、林冲、花栄の三人が居た

 

咲夜「よぉ、気分はどうだ?」

 

私が聞くと、まず一番に口を開いたのは、この中で最も無傷に近い星だった

 

星「悪くはないぞ。というか、メンマと酒さえあれば、世はこともなし」

 

ほんと星は、どこにいてもどこか不真面目に見えるな

 

林冲「私もです。捕虜であるはずなのに、食事まで出るんですからね」

 

林冲も慣れてきたのか、とてと穏やかな表情で言った

 

詠「食事に関して言えば、虎牢関にあるものを出させているからね。気にしなくていいわよ」

 

私達の方でももちろん兵糧はあるのだが、せっかく虎牢関に大量の備蓄があったのだ。

勝者の特権と言うことで遠慮なく使わせて貰っている。

現地調達は戦の基本だな

 

音々音「花栄の様子はどうですか?」

 

花栄は虎牢関での戦闘で、自ら殿を務め、最後の最後まで粘った。

そのせいで、捕虜の中でも特に身体中がボロボロであり、体力も消耗し切っていた。

一応華佗に治療はさせたが、まだ寝ているようだった

 

林冲「華佗先生のお陰で、もう大丈夫かと。今はまだ寝ていますが…」

 

花栄「起きてますよー…」

 

掠れた声と共に、花栄はゆっくりと体を起こした。

なんとも気怠げで、眠そうな目をしている。あの戦っていた時の修羅のような雰囲気が嘘の様だ

 

音々音「気分はどうですか?」

 

花栄「最低ですね。でも快適ですよ。やっぱ私は、こうしてダラける方が性に合ってます」

 

花栄は脱力し切っていた。

これで戦えば強いんだから、人は見かけによらないよな

 

咲夜「残念だが、お前一人怠けさせていいほど、うちの軍は人員的に余裕はない。お前達捕虜はこれから、洛陽で共に戦ってもらう」

 

これもまた、勝者の特権というやつだ。捕虜をどう扱おうが、私達には自由がある。今回は戦ってもらう事にした

 

星「私は無論、構わんぞ。徐福に一矢報いる事も叶うからな」

 

林冲「私も問題ありません。梁山泊が誇る槍術、あなた達の為に役立てます」

 

二人は迷う事なく了承してくれた。むしろ、戦える事が幸運だと言わんばかりの勢いだった

 

だが、花栄だけは、やはり気怠げに、だけど何か思案していた

 

詠「花栄、あんたはどうする?と言っても、戦わないのであれば、ここに縛って放置になるのだけど」

 

花栄「放置は構いませんが、縛られるのは勘弁して欲しいですね。というか…」

 

花栄は立ち上がり、大きく伸びをして欠伸もひとつ吐いた

 

花栄「みなさんに残念なお知らせです。今回、嫌に速い速度で虎牢関まで突破したので、まだ余裕はあるんですけど、多分そのうち後方、水関側から、挟撃部隊が来る手筈になっています」

 

なんだと?

 

林冲「なに!?聞いていないぞ!」

 

花栄「でしょうね。これ、多分私にしか伝わってないと思うし」

 

水関側からという事は、拠点突破にモタモタしていたら、挟撃の可能性もあったのか。

本当に、さっさと済ませて正解だった

 

音々音「むぅ、困りましたな。その話が本当なら、これを放置する訳にはいきませんぞ。それこそ、洛陽戦で挟撃されるかもしれません」

 

ねねの言う通りだ。拠点は突破出来たが、この後もまだ控えている。

その時に挟撃なんてされたら、うちの軍はひとたまりもない

 

花栄「そこで提案です。私達捕虜組で、その挟撃部隊を迎え撃つのはどうでしょう?幸い、ここは難攻不落の虎牢関。門を固く閉ざしておけば、あなた達みたいな人外が来ない限り、4日は持つと思いますよー」

 

花栄の提案は理に適っているし、とても魅力的だった。

要はどこでこの捕虜部隊を使うかなのだ。

洛陽で背後を守ってもらうか、虎牢関で守ってもらうか。

挟撃部隊が居なければ、前線で使うつもりだったが…

 

私は詠と音々音に目配せし、同意を得る。

二人ともきっと同じ判断なのだろう。問題ないと言った表情だった

 

咲夜「よし、なら捕虜組はこの虎牢関を死守しろ。一兵たりとも通すな。それでいいな?」

 

星「問題ない。私も、お主らの時の様に取り乱す事はあるまい」

 

林冲「はい、この命に代えて、必ず守り通します」

 

花栄「その代わり、後はお願いしますよー」

 

花栄の言葉に頷く。

 

あぁ、後は任せな

 

わざわざ私達が出たんだ

 

最良の結果を残してやるよ

 

 

 

説明
こんにちは!
Second Generations司馬懿視点
虎牢関戦後
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コメント
零士が完全に空気中ですな・・・(ohatiyo)
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