英雄伝説〜運命が改変された少年の行く道〜 |
〜エルベ離宮〜
「えっと……話を戻すけどゲルドさん。キーアにお礼を言いたいような事を言っていたけど……」
「うん。キーアって娘に伝えておいて。――――貴女の力で私をこの世界に呼び寄せてZ組のみんなと出会わせてくれてありがとうって。」
「ゲルド……」
「フフ、ならば私もですわ。私もキーアさんのお蔭でリィンお兄様やツーヤお姉様、そして皆さんと出会える事ができたのですから。マキアスさんもフィオーラ様の件でお礼を言った方がいいと思いますわよ。」
ロイドの質問に対して優しげな微笑みを浮かべて答えたゲルドにアリサは驚き、セレーネもゲルドに続くように微笑みながら答えた後マキアスに視線を向け
「そうか……”本来の歴史”――――異世界と繋がっていなければ姉さんは………その、姉さんの事も救ってくれた事に僕は今でも感謝している事をそのキーアって娘に伝えておいてくれ。」
改変されていない時代ではフィオーラは生きていなかった事を悟ったマキアスは複雑そうな表情をした後すぐに気を取り直して真剣な表情でロイド達を見つめて言った。
「キーアちゃんの”力”のお蔭って……」
「ツーヤさんの妹であるセレーネさんは察していましたけど、ゲルドさんも別の世界の出身の方なんですか?」
二人の答えを聞いたエリィは驚き、ある事を察したティオは驚きの表情で尋ねた。
「うん。」
「……そう言えば以前から聞こうと思っていたのですが……ゲルドさんはこの世界に来てしまった事に後悔等はないのでしょうか?身内の方が心配していると思いますし……」
「あ……」
「言われてみればそうだよな……」
「確か……以前の演奏会の際に祖父に育ててもらったような事を口にしていたが………」
エマの質問を聞いたエリオットは呆け、マキアスは複雑そうな表情で考え込み、ケルディックの演奏会が終わった後のゲルドの話を思い出したラウラは真剣な表情でゲルドを見つめた。
「……………私を育ててくれたおじいちゃんは私が旅立つ少し前に亡くなったわ。」
「……すまぬ。」
ゲルドの答えを聞いたラウラは重々しい様子を纏って頭を下げ
「ううん、気にしないで。それに私がいた世界では私がいなくなった事を気にする人は絶対にいないわ。」
「”絶対にいない”って……例え身内じゃなくても友達とかが心配するわよ?」
「それに何故そう言い切れるのだ?」
ゲルドの口から出た信じられない答えにアリサは悲痛そうな表情をし、ユーシスは複雑そうな表情で尋ねた。
「だって私、自分がいた世界では”既に死んでいる”し、亡骸もちゃんと葬られてあるもの。」
「何ですって!?」
「す、既に死んでいるって……ま、ままままま、まさかお化け〜!?」
ゲルドの口から出た予想外の答えにその場にいる全員と共に顔色を変えたサラ教官は声をあげ、ミリアムは混乱し
「落ち着きなさい。その娘は間違いなく生きた存在よ。」
「でもそうだとしたらゲルド、わたし達の世界で生き返った事になるよね?」
混乱しているミリアムにセリーヌは静かな表情で指摘し、フィーは複雑そうな表情でゲルドを見つめながら推測を口にした。
「……あ。まさか……!」
「キー坊の”零の至宝”の力か!」
「因果の操作ですね……」
「……実際それによってこの世に蘇る事ができた方達がいるものね……」
フィーの疑問を聞いて何かを察したロイドとランディは声をあげ、ティオとエリィは複雑そうな表情をしていた。
「うん……多分私が生き返ってこの世界に来る事ができたのはそのキーアって娘のおかげ。だから――――ありがとう。私は元いた世界では友達もいなく、一人ぼっちで私が死ぬその時まで旅をしていたけど……今はたくさんの友達がいるわ。キーアって娘に会ったら私が貴女に今でも貴女のお蔭で生き返る事ができた上、みんなと出会えた事に感謝しているって伝えておいて。」
「ゲルドさん………」
「………わかった。クロスベルに戻ったら本人達に伝えておくよ。それでは俺達も警備に入りますので、一端失礼します。」
ゲルドの答えにエリィは辛そうな表情をし、ロイドは静かな表情で会釈をした後エリィ達と共にその場から去り、離宮内に入って行った。
「その……ゲルドさん。ゲルドさんは一人で旅をしていたとの事ですが……本当に友人の方は一人もいなかったのですか?」
ロイド達が去るとエリスは辛そうな表情で尋ねた。
「うん。―――私ね、旅の途中でよった街や村に様々な”予言”を残していったんだけど……みんなはそれを怖がって、誰も私に近づこうとしなかったわ。中には石を投げて街から追い出そうとする人達もいたわ。」
「そんな……!ゲルドの事だから、その街や村にケルディックの時のような事が起こる所を予知能力で見えたからその人達に警告したんだよね!?それなのにどうして……!」
寂しげな笑みを浮かべるゲルドの答えを聞いたエリオットは悲痛そうな表情で尋ねた。
「…………人々のその反応はある意味当然よ。予知能力の事を知らなければ、ゲルドは自分達に対して不吉な事を言い残して災いを呼び寄せようとする疫病神にしか見えないのだから。」
「そうね…………遥か昔では自国の未来の為にその能力を持つ者達を”予言士”として重用していたそうだけど……予知能力の事を何も知らなければそんな反応になっても仕方ないわね……」
複雑そうな表情で語ったセリーヌとエマの話を聞いたその場にいる全員は暗い表情で黙り込み
「……ゲルド。辛い事を聞いてすまないと思うが、ゲルドが死んだ原因はなんだったんだ?オレ達と大して変わらない年齢で死ぬなんて、余りにも若すぎる死だぞ……」
「まさか疫病とかかしら?」
ある事が気になったガイウスとサラ教官は辛そうな表情でゲルドに尋ねた。
「ううん、私の死は病死じゃないわ。」
「びょ、病死ではないという事は後に残っている可能性は……!」
「―――自殺か、何者かに殺されたとしか思えないよね〜。」
「ミリアム!」
「貴様……こんな時くらいは奥歯に衣着せるような言い方はできんのか?」
ゲルドの答えを聞いてある事を察したセレーネは信じられない表情をし、ミリアムの推測を聞いたアリサは声をあげ、ユーシスは厳しい表情でミリアムに指摘した。
「…………ゲルド、実際の所はどうなの?」
「………………私は希望を紡ぐ為に私が見た”私の最期”を受け入れた……ただそれだけよ。それと私はどんな絶望があっても、自分から命を絶つような事は絶対にしないわ。―――先に行っているわね。」
フィーに尋ねられたゲルドは静かな表情で答えた後エルベ離宮へと向かい
「ゲルドのあの言い方だとゲルドの”死因”って……」
「”何者かに殺された”しかありえないよな……」
ゲルドが去った後エリオットとマキアスはそれぞれ暗い表情をした。
「一体誰よ、あんなに優しいゲルドを殺すなんて……!」
「その方だけは絶対に許せません……!」
「……人から恨みを買うような性格とはとても思えないゲルドを何故殺したんだ……?」
アリサとエリスは怒りの表情で身体を震わせ、ガイウスは静かな表情で考え込み
「……あたし達の世界ともプリネ達の世界とも違う世界の話だから、少なくてもゲルドの命を狙っている奴はいない事が唯一の救いね。さ、切り替えて離宮に入るわよ!」
サラ教官は複雑そうな表情で呟いた後アリサ達を見回して号令をかけ、アリサ達と共にゲルドの後を追ってエルベ離宮の中へと入って行った。
その後ロビーで待っていたゲルドと合流したアリサ達は離宮内を一通り見て回った後自分達が待機する部屋に向かい、部屋に備え付けてある画面端末で会議の様子を見守り始めた。
説明 | ||
第579話 | ||
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コメント | ||
本郷 刃様 ガガープは戦闘システムがもう少し充実していたら言う事なしなんですけどね(苦笑)(sorano) ゲルドの死因は確かに他殺ですが、それさえも踏まえて受け入れていたことから彼女自身は自殺とも思っているかもしれませんね・・・ガガーブシリーズも好きだな〜(本郷 刃) |
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