温泉泉士ゲンセンジャー 第一話(4)
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第一話(4)

 

「お主……」

おっぱ、いや、少女はちゃぷちゃぷと湯をゆらしながら俺の方へと近づいてくる。

「もしかして、わしが見えるのか?」

猫のように端が釣りあがった目がじっとこちらを見た。小さな鼻と唇。可憐な中にもりりしさがある双葉とはまた違うタイプの美少女が湯のなかに立っていた。

「こ、ここ、おとこゆ、です?」

驚愕のあまりカタコトになる。少女が床に掘られた湯船のなかにいるのと、俺が腰をぬかしてしゃがみこんでいるせいでちょうど目線が合った。ふむ、とつぶやいて小首を傾げつつ伸ばしてきた彼女の手が俺の脚に触れた。

「うっ?!」

次の瞬間ビリッと感電したような感触が脚に走った。

 

「お主……4人目じゃな?」

は、4人目?また『四人目』かよ。それって一体…。

「やっぱりー―!」

背後からいきなり抱きつかれて、ぐえ、と変な声が出た。首にまわされている白くすべすべとした腕は似合わぬ力強さでぐいぐいと締め付けてきた。

「やっぱりだ、謙二郎!ボクの睨んだとおり……君はボクらの仲間、ゲンセンジャーだ!」

苦しい、やめろ、ゲンセンジャーって何だと訴えたいが声が出ない。そして背に当たってくる弾力のあるものは……ええ、胸筋ですよね、わかっていますとも!

「姫が見えるってことは確定だな。歓迎するぜ!ゲンセンジャーのリーダーとして」

苦しさのあまり潤む視界にサムズアップする葵が見えた。歯がまたキラッとしている。そろそろ、その光の光源が気になってきたんだが。

「姫、俺は納得いかない。こんな温泉に入ったことのない奴がゲンセンジャーだなんて」

だからなんなんだよ、ゲンセンジャーって。おい高橋、ああもう求馬って呼んでやる。腰タオルで眼鏡光らせても決まらないぞ。

 

「さあ、来るがよいぞ」

俺の混乱にとどめを刺したのは湯の中の、姫、と呼ばれているらしい美少女だ。恥じらう様子もなく両腕を広げて俺を招いている。彼女の身体から光がにじみだすように発され始めた。やがてそれは湯へとうつり湯船がまるで光の泉のようになった。

なんだこれ――温泉ってのは光るもんなのか?知らなかったぞ、シティボーイだから!

 

「わしのこの湯につかれば、お前は温泉泉士ゲンセンジャーとして覚醒出来る」

「さ、謙二郎早く、ボクも一緒に入るよ」

首から腕をほどいてくれた双葉が俺を立ち上がらせようと腕をぐいと引いた。

湯のなかで裸体をさらし俺を誘う光輝くUMA的美少女、可愛らしく(しかしかなりの剛力で)腕をからめて俺を引いてくる美少女、のようなもの。

この二人にユニゾンで一緒に風呂に入ろうと誘われ、しかも、それを歯を光らせたやけにいい笑顔と眼鏡を曇らせた仏頂面に見守られている。

 

………結果。

 

「おい、お主どこに行く?」

「あ、謙二郎?」

「あっれーどうした?」

「待て!ここまで来て温泉につからないでどうする気だ」

どうもこうもない。俺のリミッターは振り切れた。

「無理無理無理ィ――!」

デ●オか!という求馬のツッコミを背中に受けながら俺は浴場を飛び出し、脱衣場で籠を抱えると腰タオルのまま外へと逃げ出した。

 

はっきり言って犯罪ぎりぎりの格好だったが田舎なので人通りが少なく、また、通報されなかったことは幸いだった。

後にこの話をすると葵が「おんせん県ではよくある光景だからな」と笑いながら言った。マジか。(嘘です)

 

説明
某おんせん県で悪?の組織と戦う戦隊ヒーロー物の第一話の4です。
ようやっと、話が動き始めます。すいません。
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