天の御遣い帰還する その6 |
簡単なあらすじ・・・
武将が女の子ばかりという不思議な三国志の世界から戻ってきた北郷一刀。
落胆する彼の目の前に、彼の世界で天の御遣いの訪れを予言した管輅が現れる。
管輅が言うには、この世界は元々一刀が居た世界である。
だが、同時に一刀の望んだ世界でもあるのだという。
一刀の望み・・・それは別れてしまった彼女たちとの再会である。
その言葉通り、管輅と別れた彼は桃香、愛紗、鈴々、朱里、雛里、星、紫苑と再会する。
理事長の計らいで女子寮に住む事になったみんなは、そこを拠点に手分けして他の仲間を捜す事になった。
桃香と星は公園で麗羽、猪々子、斗詩という袁紹軍の3人に出会った。
鈴々と朱里は、翠、蒲公英と再会できた。
他のみんなは誰に出会えるのであろうか。
女子寮を離れ、繁華街の外れあたりを歩く2つの影があった。
1人は、美しい黒髪をなびかせ威風堂々と。
もう1人は、頭にかぶる帽子のつばを持ちながらおずおずと。
対称的なこの2人は、愛紗と雛里だった。
黙々と歩く2人には訳があった。
このように2人きりで何かをすると言う機会が今までほとんど無く何を話していいのかすら判らないためであった。
が、このままでは仲間を捜そうという士気にも関わる。
愛紗が思い切って話しかけた。
愛紗「雛里。それにしても暑いな〜。」
雛里「そうですね・・・。」
以上。
愛紗(会話が続かん・・・。)
さっきからこんな感じでどうにも調子の出ない愛紗であった。
と、気が付くと周りには明るい塗装のされた建物が並ぶ区域に来ていた。
今までとは明らかに違うその建物に驚く愛紗。
愛紗「雛里、ここは今どの辺りなのだ?」
その言葉に雛里は持っていた地図を広げる。
ボーッと歩いているだけのように見えたがそこは名軍師、きちんと地図をチェックしていた。
雛里「ここは、宿泊施設がたくさんある地区のようです。」
愛紗「宿泊施設・・・、これらがか?」
雛里「そのようですね。」
そう言って周りの建物を見渡す2人。
色鮮やかな塗装で一見するとそれが宿泊施設だとは判らない。
ただ、不思議な事にその建物のどれもが入り口が隠されるようになっていた。
その様子に愛紗と雛里は首をひねっていた。
そうは思いながらも誰か見知った人がいないか、その地域をうろついたが誰も見つける事ができずその場を後にした。
お気付きの方もいると思うが、ここはラブホテル街であった。
確かに宿泊施設ではあるが、その目的を聞くと愛紗も雛里も顔を真っ赤にしてしばらく話も出来なかったと言うのは後日談である。
ラブホテル街を後にして再び繁華街へと戻った2人。
先ほどとは違い裏道を歩く事にした。
表とは違い閑散としてはいたが所々で店が開いており、客もまばらながら居た。
だが、目的の人物たちとは再会できないまま裏道も端にまで来てしまった。
愛紗「この辺りには誰もいないのかもしれないな。一度戻るか。」
まだ時間には早いが、この辺りにいても成果はありそうにない。
そう判断し帰宅を提案する。
雛里「そうですね・・・。あっ、あれは。」
愛紗の提案を了承しようとしたが、視線の先に気になる2人組を見つけた。
??「桔梗様。さすがにお昼からお酒はちょっと・・・。」
桔梗「焔耶よ。この状況じゃ。酒を飲まずして何をするか!!」
そう言って桔梗は腰に下げているひょうたんを口に持っていき中の液体を飲み干す。
桔梗「ぷはぁ。さすがわしの良酒じゃ。五臓六腑に響き渡るのぉ。」
焔耶「・・・。」
そんな感じでひょうたんに入っているお酒を飲み続ける桔梗。
だが、そのお酒も無限ではない。
しばらくするとひょうたんは空になってしまった。
桔梗「焔耶、お酒が無くなってしまった。持ってきてくれ。」
焔耶「持ってきてくれって・・・。ここはお城じゃないんですよ。」
桔梗「おぉ、そうじゃったな。・・・さて、どうするか。」
腕組みをし考え込む桔梗。
この仕草は、お酒をどうやって確保するかを考えているんだと、焔耶は何となく判断していた。
焔耶(それどころじゃないんだけどなぁ。)
心でそう思いながら呆れてしまう焔耶であった。
と、ここに救いの女神が現れた。
愛紗「桔梗に焔耶!!」
突然真名で呼ばれ驚く2人であったが、声の主が愛紗と判ると安堵の笑みをこぼした。
愛紗と一緒に雛里も2人の元に駆けていく。
桔梗「愛紗に雛里。久しぶりじゃの。」
雛里「桔梗さんに焔耶さんも元気そうですね。」
一通りの挨拶を交わした後、愛紗が尋ねた。
愛紗「お2人はどうしていたんです?」
桔梗「ああ、酒を切らしてもうてのぉ。どのように入手しようか考えておったところじゃ。」
焔耶「そうそう・・・って違いますって、桔梗様。実は・・・。」
焔耶はこれまでの事を話してくれた。
気が付くとこの場所にいた2人。
言葉は通じるが、見慣れる格好に聞き慣れぬ言葉。
それらを判断して、桔梗はここは別の世界なのではないかと結論付けた。
この結論に達したのは、天の御遣いという異分子に出会った事があるためだろう。
しかし、それが判ったところでどうする事も出来ず、お酒でも飲んでいたというわけだ。
ただ、そのお酒もたった今切らせてしまった。
それでどうしようと考えているところに愛紗と雛里が現れたと言うわけだ。
この話を聞き、愛紗と雛里は驚いた。
桔梗の状況判断の良さ、そしてそれに動じない度胸。
この人はただ者ではない、改めて思う2人であった。
桔梗「まあ、ここが別の世界というのはわしの勘ではあるがな。で、2人はなぜここに?」
愛紗「それは・・・。」
愛紗は今までの事を説明した。
愛紗の話を聞き、桔梗と焔耶は納得したような表情をした。
桔梗「やはり、ここはお館様が居た世界か。」
焔耶「桃香様は?桃香様は大丈夫なんだろうな?」
焔耶にとってここが一刀の世界なのかはどうでもよかった。
桃香の安否を聞きたく愛紗の肩を揺する。
桔梗「落ち着け、焔耶!!」
ごちん!!
焦る焔耶の頭に桔梗のげんこつが唸る。
頭を抑えながら、愛紗の言葉を待つ焔耶。
愛紗「桃香様も無事だ。今は星と他の者がいないか捜しているはずだ。」
この言葉に安堵のため息を漏らす焔耶。
雛里「それでは、お2人も一緒に来てください。」
おずおずとしながらもはっきりとした口調で話す雛里。
桔梗と焔耶はお互いの顔を見合う。
桔梗「行くとは・・・、どこに行くのじゃ?」
愛紗「私達の新しい住居です。」
そこには他のみんなも待っているはずだと付け加えた。
桔梗「うーむ、行きたいのは山々じゃが・・・。」
焔耶「桔梗様、悩む理由など無いでしょう。」
そう言って今にも飛び出しそうな焔耶。
しかし、桔梗は腕を組み考え込むばかりだった。
愛紗「何か問題でも?」
なかなか動こうとしない桔梗に愛紗が問う。
桔梗は顔を上げ話した。
桔梗「ところで、愛紗よ。おぬし、お金は持っておるか?」
愛紗「お金・・・ですか?」
雛里「持ってますよ。」
突然聞かれ困った愛紗だったが雛里が救いの手を差し伸べた。
何かあったらと言う事で少量ではあるがお金を持たされていたのだ。
桔梗「なら、それでお酒を買ってくれ。買ってくれればわし達も一緒に行こう。」
愛紗・焔耶「なっ!?」
桔梗の要求に驚く愛紗と焔耶。
ただ、雛里だけは状況を冷静に判断していた。
雛里「判りました。それでは行きましょう。」
雛里が歩き出し、その後ろを桔梗が歩く。
愛紗と焔耶は、雛里の様子に唖然としながらも2人の後を追うのであった。
4人が辿り着いたのはコンビニだった。
雛里はこういう事態に備え、お酒などが売っている店をあらかじめ一刀に聞いてあった。
店員「いらっしゃいませ・・・。」
最初は元気よく挨拶をした店員であったが、その客の姿に唖然となってしまった。
大きめの帽子をかぶりおずおずと入ってくる小柄な子の後ろからは、胸元が大きく開いた大胆な衣装の妙齢の女性。
その後ろからはボーイッシュな感じながらスタイルのいい女性と黒髪の綺麗な女性。
4人とも美女もしくは美少女と呼んでも差し支えない美貌の持ち主なものだから唖然となるのも当たり前だった。
桔梗「のう、お酒はどこにあるかの?」
桔梗は唖然となっている店員に聞いた。
店員は一瞬戸惑ってしまったが。
店員「・・・お酒ですか。こちらになります。」
店員は店の奥にあるお酒売り場へと4人を案内した。
そこには、ビールから日本酒。ウィスキーにワインまで一通りのお酒が用意されていた。
桔梗「どれがなんだか判らぬのう。まあ、どれもお酒らしいから適当に買っていくか。」
そう言って桔梗は目に付いたものを数点手に取った。
そして、その横にあったつまみにも目がいく。
桔梗「これも美味しそうじゃのぉ。」
つまみも何点か手に取った。
愛紗「おい、雛里。お金は大丈夫なのか?」
雛里「大丈夫ですよ。」
小声で話す愛紗と雛里。
桔梗「おい、行くぞ。」
小声で話をする2人に店内をうろつく焔耶を呼びレジへと向かう。
桔梗「これでいくらじゃ?」
店員「はい。お待ち下さい。」
桔梗の持ってきた品物をレジに読み込ませる店員。
その様子に驚く4人だったが、あっという間に読み終えてしまった。
店員「3800円になります。」
桔梗「だそうじゃ。雛里頼むぞ。」
雛里「はい。」
雛里はポケットから財布を取り出しカードを取り出した。
そのカードはこの周辺のお店なら大抵はフリーパスという魔法のようなカードだった。
もちろん、このコンビニも対象である。
店員「このカードは・・・。判りました、この品物はお持ち下さい。」
そう言って袋詰めしたお酒とつまみを桔梗に手渡す。
桔梗「なんだか判らないが、すまんのぉ。」
お酒を受け取り意気揚々と店を後にする桔梗。
焔耶は、その後ろでため息をつきながら出て行く。
愛紗と雛里もそれに続いていったが
愛紗「雛里、さきほど渡したものは何なのだ?」
雛里「なんでも自由に買い物が出来るもの・・・だそうです。」
愛紗「そんな便利なものがこの世界にはあるのか・・・。」
愛紗は関心するばかりであった。
約束通りお酒を購入し、女子寮に戻る・・・かと思いきや桔梗はそのまま先ほどに場所に戻ってしまった。
これには、さすがの雛里も驚いた。
雛里「あわわ・・・、桔梗さん。一緒に来ていただける約束では?」
焔耶「そうです、早く桃香様に会いに・・・、じゃない皆の元に。」
焔耶に加え愛紗も焦りだした。
だが、当の桔梗は涼しい顔だ。
桔梗「せっかく買ったお酒だ。早く飲まないと勿体ないであろう。」
愛紗「そうかもしれませんが・・・。」
桔梗「大丈夫。これを飲み終えたら行くから・・・。む!?開け方が判らん。」
袋からビールの缶を取り出したのはいいが、缶の開け方が判らない。
仕方ないので道行く人に開け方を聞く桔梗。
早速開けたビールを飲み干す。
桔梗「ぷはぁ。なにやらこの苦みが癖になりそうな酒じゃのぉ。」
1人で酒盛りを始める桔梗に呆れる3人。
桔梗「そんなに惚けておらんでお主らも飲め。ほら。」
そう言って袋からお酒を取り出し愛紗らに手渡す。
昼からお酒を飲む事に抵抗感を持つ3人であったが、飲まないと後でどうなるか判らないと思い、愛紗と焔耶は飲み始めた。
ただ、雛里だけは抵抗し続けた。
桔梗「どうした、雛里?お主が買ったお酒じゃ。遠慮せず飲め。」
そう言って抵抗する雛里に無理矢理飲ませる。
桔梗の腕力に敵うはずもなくお酒を飲まされる雛里。
愛紗「それはさすがにまずいのでは?」
焔耶「そうですよ、桔梗様。」
2人が止めようとしたがすでに遅かった。
雛里は缶の半分くらいのビールを飲まされてしまった。
そして、黙り込んでしまう。
愛紗「雛里?」
雛里の顔を心配そうに覗き込む愛紗。
すると・・・
雛里「私だって・・・私だって・・・。」
愛紗・桔梗・焔耶「!?」
突然顔を上げ泣き出す雛里。
その様子に驚く3人だった。
雛里「私だって立派な軍師なんだから〜!!いつも朱里ちゃんのオマケみたいに言わないでー!!」
泣き出したかと思ったら今度は叫びだした。
愛紗「雛里・・・、誰もそんな事思ってないぞ。」
驚きながらもなんとか収めようとする愛紗。
すると、愛紗の胸めがけて雛里が飛び込んできた。
雛里「愛紗さんはいいですよねぇ。このおっぱいでご主人様を籠絡できるから。」
愛紗「なっ!?」
胸を揉まれながらとんでもない事を言われる愛紗。
桔梗「かっかっかっ。」
愛紗と雛里のやりとりに笑いがこぼれる桔梗。
と、それを聞き、今度は桔梗の胸へと飛び込んだ。
雛里「桔梗さんもいいですよねぇ。」
桔梗のその豊満な胸を揉みながらうらやましがる雛里。
そんな雛里に、桔梗は笑顔で話した。
桔梗「雛里よ。いつかお主もこんな感じになれるぞ。」
雛里「本当?・・・ほん・・・とう・・・で・・・すか・・・。」
そのまま桔梗の胸の中で眠りだしてしまった。
愛紗と焔耶は一気に疲れが出てお酒の酔いも醒めてしまった。
桔梗は酔いは醒めなかったものの、雛里にはもうお酒を飲ますまいと心に誓うのであった。
あとがき
現代に戻ってしまった天の御遣い北郷一刀君の物語その6です。
その5にもたくさんの支援&コメントありがとうございます。
雛里・・・壊れすぎました(笑
雛里はお酒を飲むとなんかこんな感じになりそうというイメージで思わず。
桔梗は、いつも豪快なイメージなので、現代に放り出されてもこんな感じでやっていけるんじゃないかなぁ。
焔耶は途中から空気状態になっちゃいましたね。
話に絡ませるのがなかなか難しいです。
雛里の出したカード・・・クレジットカードではありません。
この近辺だけで使える魔法のようなカードですが、その正体は後の話で明かそうかなと思います。
今回もご覧いただきありがとうございました。
説明 | ||
天の御遣い帰還するのその6です。 今回は、愛紗と雛里の話となっております。 そして、雛里のキャラが崩壊しておりますので、ご了承のうえご覧下さい。 また、かなり長めになってしまいました。 誤字脱字報告、感想をお待ちしております。 |
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コメント | ||
ブラックカードかとおもったぜ・・・(Alice.Magic) 雛里はそままでいいんだよ^^(零壱式軽対選手誘導弾) 雛里面白かったですよ。やっぱり胸ですか。(ブックマン) カードが黒フラグたちまくりですよwwwってか雛里wwww(りばーす) カードが出たよ。一刀の外史へ飛ばされる前の暮らしから言って、有り得ませんが、黒ですか?(クォーツ) 魔法のカード・・・俺も欲しいなw さて、次回はどうなるのかな?愉しみですー^^w(Poussiere) カードも理事長の手回しか?(セイン) |
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