IS ゲッターを継ぐ者 |
?光牙side?
どうも、光牙です。
決闘騒ぎから早くも一週間が経ち、約束の日となりました。
その間に話を聞き付けた上級生の人が『ISの事教えてあげようか?』とか聞いてきたり(これは織斑先生が教えてくれたので丁重にお断りした)、一組のクラスメイトら、谷本さんとから『戦うの大丈夫?』と話しかけてくれたり、オルコットさんが相変わらず威張っていたりしていた。
ロクな目に合ってない気がするよ。まだ一週間なのに。
とりあえず決闘の日の放課後、僕はISスーツに着替え第三アリーナ、Aピットにいて、他には織斑先生、山田先生、更識さんがいる。
そしてグラウンドにはオルコットさんが青いISを纏い、既に滞空して準備を整えていた。
観客席には戦いを一目見ようと、生徒がたくさん詰めかけているのがピットからも見える。
見世物かよ全く……。
「時間だ。滝沢、行け」
「はい」
織斑先生に促され、僕はガントレットを掲げ叫ぶ。
「チェンジ! ゲッターベーオ!」
ゲッター線の光に包まれ、僕はベーオを纏った。カタパルトへ歩いていき、両足を固定位置に置き、固定される。
『オルコットさんのISは『ブルー・ティアーズ』。遠距離射撃型のISです。頑張って下さいね、滝沢君』
『はい』
『期待してるわ、光牙君』
『行ってこい滝沢。お前をバカにしたオルコットをぶっ飛ばしてこい!』
『は、はあ……』
山田先生は情報と励まし、更識さんは気を使って声をかけてくれるけど、織斑先生ェ……。言葉に気を付けて下さいよ……。
まあいいや。
僕は前傾姿勢になり、発進の時を待つ。
やがてカタパルトに二本の緑の光のラインが灯り、上部のランプが赤から青に変わった。
『進路クリア、オールグリーン。滝沢君、どうぞ!』
『滝沢光牙、ゲッターロボベーオ。行きます!』
お馴染みの台詞を言うと、僕を乗せた台が勢いよく滑り出し、カタパルトから射出され、アリーナのフィールドへ飛び出した。
ゲッターウイングを展開して空中を飛び、オルコットさんの数十メートル前まで飛んでいくと、青いISを纏い、大型のライフルを持ったオルコットさんは驚いた表情をしていた。
『ふ、全身装甲(フルスキン)タイプのISですって!? それが貴方のISなのですか!』
『そう。これが僕の相棒、ゲッターロボベーオだ!』
オルコットさんに言い返す僕。ベーオの装甲が太陽の光で、ギラリ、と輝いた。オルコットさんだけでなく、観客席の生徒もベーオの姿に驚いている様だ。
確かにベーオと普通のISは違う。織斑先生達も初めて見た時は驚いていたし。
驚いていたオルコットさんだが、直ぐに表情をふてぶてしいものにすると、僕に対し言ってきた。
『最後のチャンスをあげますわ』
『チャンス?』
『この勝負。私が勝つのは明白の理。いくらそんなISでも、男の貴方が勝利する未来はありえない。今ここで、土下座して許しを乞うなら許してあげない事もなくってよ』
……何言ってんだか。勝負にきて言う台詞かそれ?しかもベーオが武器のロック解除したって言ってきてるんだけど。
説得力ねー。て言うかライフルでかいな。明らかに機体よりサイズがある。
あのライフルがメイン武器だろう。まあそれだけじゃないだろうが。
ちなみにもう試合開始の鐘は鳴らされているらしく、いつ撃ってきもおかしくない。
機体を分析し気を付けながら、僕は……俺はオルコットに言い返した。
『言いたいのはそれだけか。常識的に考えればそうかもしれないが、こんな言葉がある。“ありえないなんてのはありえない”ってな』
『っ……』
オルコットがそれに眉を吊り上げ反応した。
『勝負吹っ掛けてきたのはそっちだ。早く始めようや』
『……いいでしょう。なら、私に挑んだ事を後悔なさいっ!』
言うなり、オルコットが大型ライフルの銃口を向け、撃ってきた。
迸る青いビーム。
軌道を読み、首だけを動かして、それをかわした。
「なっ、ま、まぐれですわ!」
かわした事に驚きながら、三連射してくるオルコット。
胸、右肩、左足を狙ってきたがその位置をずらしてかわしきる。
それに驚いているオルコット。こっちからも行くか。
『行くぜベーオ! ゲッターマシンガン!』
左手にゲッターマシンガンを呼び出し、オルコットに撃ちまくる。
「っ!」
オルコットは左にへ回避し、ライフルを撃ってくる。それをオルコットと同じ左に移動しかわす。
マシンガンは牽制だ、次の武器を呼び出す。
『ゲッタートマホーク!』
右のゲッタートマホークを右手で握り、オルコットへ突っ込む。
放たれるビームをジグザグに動いてかわしながら、マシンガンで牽制。接近した所でトマホークを振り下ろす。
『そらぁ!』
「くっ!」
後ろに回避するが逃がさねえ。ここでマシンガンを乱射! 近距離で弾丸をオルコットにお見舞いだ!
「きゃっ!?」
『そこぉ! とらっ!』
「くぁ!」
近接射撃に怯んだオルコットへトマホークの切り払い。確かな手応えを感じながら、オルコットの横腹へ左ミドルキックをかまし、吹き飛ばす。
「くぅぅ!」
吹き飛ばされながも態勢を立て直すオルコット。その目が俺を睨んできて、まだまだと言わんばかりだ。
「くっ、野蛮な戦いを……」
『野蛮? 戦いは勝つか負けるかだろうが。そこに野蛮も何もねえだろ』
俺の反論に苦虫を噛み潰した様な表情になるオルコット。今はISバトルだから野蛮なんて言えるもしれん。だけど、これが命のやり取りならそんな事言ってられるかな?
そう考えていると、オルコットの言葉が思考を中断させた。
「調子に乗るのもここまでですわ! 行きなさい、ブルー・ティアーズッ!」
『アン?』
左手を突き出したオルコットが叫ぶと、敵の機体ブルー・ティアーズのスラスターから四つの細い何かが分離し、不規則な軌道を描きながら飛びかって、時間差でビームを放ってきた。
『おおっ!』
コイツはファンネルか! 驚きながら高速で飛び回る俺。
だが四つの細いのはビームを放ちながら俺を追ってくる。
「さあ踊りなさい! 私、セシリア・オルコットと、ブルー・ティアーズの奏でるワルツで!!」
『そんなもん知るかぁ!!』
ビームを回避しながらオルコットに言い返す。ワルツだがワンツーだか知らねえが、今はあの四つをなんとかしねえと! 上下左右に飛びながら相手を見やる。
不規則に飛び交いながらビームを放ってくる四つの青いファンネル。だが織斑先生がやった訓練のターゲットに比べると動きが単調に見え、それにあのファンネルが動いている間、オルコットは何もしない。
……もしかして。そういう事か。
俺は推測を立てながら、機体を翻し、迫ってきたビームをトマホークで弾く。直後にマシンガンをオルコットに連射。
正面からの射撃だ、意図も簡単に回避するオルコット。だが当たらなくていい。
回避の瞬間、ファンネル四基の動きが一瞬止まった。
確信したとこで次の攻撃に出る!
『そこだぁ! トマホークブーメラン!!』
「なぁ!」
トマホークを投げ付ける。トマホークブーメランが、動きを止めたファンネル二基をぶった切り破壊。戻ってきたトマホークをキャッチしオルコットを見ると、オルコットは信じられないものを見るかの様な目で俺を見ていた。
俺はそれを見て、アーマーの下でニヤリ。
『そのファンネルみてえなやつ。オルコットが指示をしねえと動かねえ。そしてその間、オルコット、お前は制御に集中する為に動けない。そうだろう?』
「くっ……!」
あからさまに図星、という表情をするオルコット。顔が見えるとこういう時は不利だな。ポーカーフェイスは大事だがいつも出来る訳じゃねえだろうし。
やっぱ全身装甲だな。中途半端な装甲はあんまし好きになれん。
そんな今どうでもいい事を考えつつ、俺はオルコットに向き直る。
トリックが分かりゃOKだ、一気に終わらせるぜ!
『さあ、これでファイナルだ!』
俺はそう言うと、オルコットへ向け突撃する。
「このっ!」
二基のファンネルが撃ってくるがスピードを殺さぬままかわし、マシンガンとトマホークで二基を破壊。
ファンネルは潰した、後はオルコットだ!
そう思いオルコットへ再度突撃しようとした時。
――俺は不意に何かを感じた。何か、違和感の様なものを。
それのせいか少し速度が落ち、それを隙と見て、オルコットが動いた。
「おあいにくですわ。ブルー・ティアーズは六基ありましてよ!」
ブルー・ティアーズの両腰にある白の細い筒。それがグン、とこちらに向き、ミサイルを放ってきたのだ!
『(こんなんあったのか!)』
俺はそれに驚くも、慌ててはいけない。違和感のお陰で鈍ったスピード、ミサイルが当たるまでにほんの少し伸びだ時間で分析し、冷静に対処へかかる。
『おらぁ! アームズシュートォ!』
咄嗟に俺はマシンガンを投げ付け、ミサイルにぶつけた。ガン! ガン! とピンボール再び。マシンガンと激突した二機のミサイルが爆発。よし、今名付けた『アームズシュート』。動きと共に採用!
「な、なんですってぇ!?」
『もう一丁!』
ミサイルの爆発で発生した爆炎。その向こうにいるであろうオルコットにトマホークででのアームズシュート! 同時に突っ込みながら、「きゃ!?」とオルコットの悲鳴で命中を確認した。
『来い! トマホークッ、ブレード!!』
左手にはもう一本のトマホーク。右手には学園で借りた武器、日本刀型近接ブレード『葵』を呼び出す。加速をかけ、一気に爆炎を突っ切り、オルコットの前へ躍り出た。
「なっ――!?」
『クロススラッシュゥ!!』
葵とトマホークでXを描くようにオルコットを一閃。それが決め手となったのか、ブザーの様なものが鳴り響いた。
『試合終了! 勝者・滝沢光牙!!』
『おっしゃあ!!』
それを聞き、葵を持つ右手を上げ思わず叫ぶ俺。
終わったか。
そう思っていると、観客席の方から悲鳴が上がり、振り返ると落ちていくオルコットの姿が。
『んなっ!?』
まさかIS解除されたのか!
いや、今そんな事どうだっていい!
俺は葵とトマホークを捨て、全速力でオルコットの元へ向かう。
「きゃあああああっ!!」
『間に合えよぉぉぉぉ!!』
落下していくオルコットに近づき抱え、そのままグラウンドに着地、いや激突する。
――ガガガガガガガッ!!
『うおおおおッ!』
着地の衝撃でグラウンドを何メートルも滑りながら、壁際でなんとか止まる。
腕の中のオルコットを確認すると、息は荒いが、無事みたいだった。
『あっぶねぇ……』
俺はオルコットを下ろし、ベーオを解除。直ぐ様俺……僕はオルコットさんに尋ねた。
「大丈夫ですか、オルコットさん?」
「は、はぃぃ……」
「そりゃ良かった」
ホッと胸を撫で下ろす僕。
「って、本当に大丈夫なんですか?」
「こ、このくらいなんとも……あう!」
地面に下ろしたオルコットさんは立ち上がろうとするが、力が入らないようだ。
「ほら捕まって」
「あ、ひゃ!?」
「しっかり立たないと倒れますよ」
「は、はぃぃ……」
手をとって立たせてあげる。まだふらつくオルコットさんを支えてあげた。
ま、最後にこんな事があったけど、クラス代表はこうして終わった。
〜光牙sideout〜
〜ナレーションside〜
「お、織斑先生! 止めて下さい!」
「死んじゃいますって!」
「えーい、離せ! 離さんか!」
一方、Aピットでは何と千冬がカタパルトから飛び降りようとしていた。そんな彼女を羽交い締めにし、止める真耶、楯無。
……セシリアを受け止める様子を見て、自分も飛び降りれば光牙が助けてくれると思っているのだ。何やってんだブリュンヒルデ。
「離さんか〜!!」
「た、滝沢君助けて下さ〜い!!」
「早く来て〜!!」
二人の叫びが届いたのかどうかは知らないが、光牙がこの後駆けつけ、千冬の飛び降りは未遂に終わったという……。
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第八話です。 | ||
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