英雄伝説〜運命が改変された少年の行く道〜 |
〜エルベ離宮・待機室〜
「エ、エレボニア皇帝の代理をメンフィル帝国の皇族が務める上セドリック皇太子の教育をメンフィルに任せたいって……!」
「オイオイオイ……!そんなのアリか!?」
「め、滅茶苦茶すぎるわ!代理とは言え他国の皇家の方に皇帝の権限を渡す事もそうだけど、他国に自国の皇太子の教育を委ねるなんて事をしたら様々な問題が浮上するわよ!?」
端末で会議の様子を見守っていたロイドとランディ、エリィは信じられない表情で声をあげ
「というかメンフィル皇家の方がエレボニア皇帝の代理を務めた上セドリック皇太子の教育までメンフィル帝国がしたら、エレボニア帝国はメンフィル帝国に隷属したも同然状態ですよね?」
「へえ……まさかあんなありえない提案を採用するなんて、マジで驚いたよ。」
ティオは戸惑いの表情で呟き、ワジは目を丸くして呟いた。
〜紋章の間〜
「メ、メンフィル皇家の方にエレボニア皇帝の代理を務めてもらう上、セドリック殿下の教育までメンフィル帝国に委ねるなんて事をしてしまったら……!」
「……メンフィル帝国に隷属したも同然の状態だと思われるが……」
「………………」
「……………………念の為に確認しておきますがユーゲント陛下は先程の話を承知しているのですか?」
オリヴァルト皇子の説明を聞き終えたクローディア姫は信じられない表情で声をあげ、アルバート大公は重々しい様子を纏って呟き、ユーディットは信じられない表情で絶句し、アリシア女王はオリヴァルト皇子達を見つめて尋ねた。
「はい。父もそうですが当事者となるセドリックにも了承してもらっています。」
「なお、”四大名門”の”ログナー侯爵家”と”ハイアームズ侯爵家”の当主の方々にも直接お会いし、事情を説明して納得して頂きました。」
「…………会議が始まるまでの空いた期間にログナーとハイアームズに会っていた理由は”それ”だったのか。」
オリヴァルト皇子とクレア大尉の答えを聞いたリウイは考え込みながら呟いた。
「……お主達、正気か?一時的にとは言え自国を占領した国の皇族に皇帝の権限を渡す事もそうだが、跡継ぎの教育まで余達に任せたいとは狂気の沙汰じゃぞ。」
「メンフィル帝国によってエレボニア帝国が搾取されたり疲弊されたりする事もそうですが最悪乗っ取られる可能性がある事に加えてメンフィルがセドリック皇太子をメンフィルに従属させるような教育をする恐れがある事等を考えなかったのですか?」
エレボニア帝国の正気の沙汰とは思えない提案に信じられない思いでいるリフィアの言葉の後にイリーナが質問した。
「――逆に尋ねさせて頂きますが今回の会議のような国際会議で……各国のVIPの方々がいらっしゃる前でエレボニア帝国と約定したメンフィル帝国がそのような卑劣な事をするのでしょうか?だとすればメンフィル帝国は心が狭く、誇りすらない大国だと思われ、それに付随してメンフィル帝国が謳っている理想――――”全ての種族との共存”にも弊害が出てくると思われます。ここは”勝者の余裕”として各国のVIPの方々にメンフィル帝国の寛大な心や誇りを見せて各国のメンフィル帝国に対する印象を良くしてはいかがでしょうか?」
「!!………………」
「なるほど……確かにリィンさんの言う事にも一理ありますね。」
「ぬう……まさか各国のメンフィルに対する印象どころかメンフィルが掲げている”理想”まで利用してくるとは……」
「に、兄様………」
リィンの主張と提案を聞いたリウイは目を見開いた後目を細めてリィンを見つめ、イリーナは静かな表情で頷き、リフィアは唸り声を上げて考え込み、一歩間違えればリウイ達所かメンフィル帝国自身に対する挑発とも取れる言葉を口にしているリィンをエリゼは表情を青褪めさせて見つめていた。
「―――リウイ陛下。以前のケルディック焼討ちが起こった後にわたくしに持ちかけた”条件”の際にこう仰いましたよね?『我らメンフィルはエレボニアと違い、一度結んだ約束は破らん。』、と。お恥ずかしい話ですがもしエレボニア帝国が存続できたとしても内戦勃発を止める事ができなかった父―――ユーゲント三世がエレボニア帝国を立て直す事は厳しいでしょう。かと言ってまだ未熟なセドリックでは尚更厳しい状況です。なので将来親類関係になるメンフィル皇家の方々の手腕や一度結んだ約束を決して違えないという所を信頼して一時的にメンフィル皇家の方々に頼る事にしたのです。」
「………………」
「………少し質問がある。」
アルフィンの説明を聞いたリウイが黙って考え込んでいる中、ヴァイスが横から口をはさんだ。
「はい、何でしょうか。」
「取引とは関係のない俺が口を挟んで申し訳ないがオリヴァルト皇子。他国に任せるくらいなら貴方がエレボニア皇帝に即位した方がよほどリスクは少ないと思われるが。」
「……オリヴァルト皇子はアルフィン皇女同様内戦終結に向けて積極的な活動を行っていた事から民達もオリヴァルト皇子には好意的な目で見ていると思われる為、セドリック皇太子が即位するまでの”繋ぎ”としての役割は十分に果たせると思われますのに、何故わざわざ他国の皇家の方に頼む必要があるのでしょうか。」
「そこに付け加えて”尊き血”を重視する貴族の方々は殿下が即位する事に反対する可能性は考えられますが、その貴族達は内戦を引き起こしてエレボニア皇家である殿下達に反逆したという”重罪”がある為エレボニア皇家の判断に反対できる立場ではありません。よって今の状況ですとオリヴァルト殿下の即位も容易だと思われるのですが……」
「……確かにヴァイスハイト陛下達の仰っている事にも一理あります。ですが皇帝の権限を一時的に渡す……これが今のエレボニア帝国がメンフィル帝国に対してできる最大の謝罪と誠意の行動なのです。」
ヴァイスやエルミナ、ユーディットの意見に頷いたオリヴァルト皇子は静かな表情で語った。
「…………”取引”と言ったな。仮にメンフィル帝国がエレボニア皇帝の代理を務める件とセドリック皇太子の教育の件を引き受けた場合、エレボニア帝国はなにを”代償”にするつもりだ。」
一方黙って考え込んでいたリウイはオリヴァルト皇子達を見つめて尋ねた。
「”救済条約”の第4項の放棄と”救済条約”を実行した際に相殺されるはずであった”戦争回避条約”の第9項の実行を代償にする所存です。」
「”救済条約”の第4項というと……メンフィル軍に爆撃されたバルヘイム宮の修繕費の7割をメンフィル帝国が負担する件ですな。」
「更に”戦争回避条約”の第9項を実行するという事は……ええっ!?」
「……エレボニアは”帝国”の名を捨てるおつもりなのですか?」
クレア大尉の答えを聞き、アルバート大公に続くように資料にある”戦争回避条約”や”救済条約”のコピーを読み直したクローディア姫はある事に気付いて驚き、アリシア女王は信じられない表情でオリヴァルト皇子達を見つめて尋ねた。
「はい。”百日戦役”や”クロスベル問題”、そして内戦勃発を始めとした多くの不祥事を起こした挙句”国”自身が存亡の危機にまで陥ったエレボニアには”帝国”を名乗る資格はないと判断し、今後は”王国”を名乗るつもりです。」
「――以上がメンフィル帝国とクロスベル帝国にエレボニアの存続を認めて頂き、領地の一部を返還して頂きたい”理由”です。どうか御慈悲をお願いします……!」
オリヴァルト皇子の後に説明をしたアルフィンは頭を深く下げ、アルフィンに続くようにオリヴァルト皇子達も頭を深く下げた。そしてその場は静寂に包まれていたがやがてエイドスがリウイ達とヴァイス達を順番に見回して口を開いた。
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第594話 | ||
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コメント | ||
本郷 刃様 まあそれでもエレボニアにとっては帝国の名を捨てるには決意表明のつもりなんでしょうね 匿名希望様 そこはあれでしょう。レクター達情報局の働きで何とかなるかとw(sorano) これはマズいんじゃないかな? このまま頷いてしまうと、他国の国民からは、属国にしたと思われかねない。メンフィルの狙いと理想である共存どころか慈悲の何もない国だと非難されるかも。いくら国のトップが条約をかわしたと言っても、政治家の言葉には裏があると思ってしまうから。(匿名希望) 実は“帝国”の名を捨てたところで意味はほとんどないんですけどね、対外的な国の見方が変わるだけで国の在り方そのものが変わるわけではないので・・・領土もそこそこ大きいですし、ディル=リフィーナの宗教も入ってくるからむしろ帝国のままの方がいいんですがね(苦笑)(本郷 刃) |
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