おにむす!H
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「気がつけば、私は薄暗い部屋の中にいたの、偶に誰かが部屋の外を歩く音がするだけの何もない部屋」

秋穂の言葉を矢崎は黙って聞いている。

「初めてその部屋を出たとき、双波さんが私を抱きしめてくれたの」

「あぁ、私はここから出られたんだって、これからに大きく期待もしたの」

秋穂の顔色は話の内容とは反比例して悪くなっていく。

「でも、待っていたのはおかしな実験器具だった・・・、電流、薬、この世にありうる苦痛を一編に受けた様だった」

「そうしていく内に、体に違和感を感じ始めたの」

「違和感?」

ここで初めて矢崎が言葉を挟んだ。

秋穂は小さく頷くと、言葉を続けた。

「自分の中に違う誰かがいる様なそんな感覚だったの」

秋穂は自分の胸元をぎゅっと握った、そこにいる『何か』を確かめるように。

「今でも時折感じるの、私の意志を押しのけて体に居座ろうとする存在を・・・」

矢崎の頭にあの冷酷な笑顔がよぎった。

「実験によって得たのは違和感だけじゃないの」

先程、矢崎を押し倒した力、あれもその実験とやらの産物だろう。

「今は、自分の意思で力を使えてるけど、使うごとに意識が誰かのに塗り替えられていくのを感じる」

「そんな危険な力をなんで使ったんだ?」

まっとうな意見だった、使わなければどうと言うこともないのだ。

「わかってる、でも私の中の誰かが『受け入れない人間は殺せ』って私の体に出てくるの」

もしあそこで受け答えを間違えていたら、死んでいたかもしれないと矢崎の背筋が凍った。

「そして、体の中の小さな鬼は少しずつ大きくなり、いずれは不死の殺戮兵器の出来上がりってとこね」

「!?」

矢崎は声のした方へ顔向ける。

「アリス・・・」

矢崎はアリスと秋穂の間に立って睨みつける。

「そう怖い顔すんなよ、その子がそこまで喋ったんだ、この時点であたしはあんたの敵じゃない」

「どういうことだ?」

「言ったろう?依頼をこなしてるだけだって、あたしのクライアントはその子なんだよ」

「なっ・・・」

秋穂は申し訳なさそうに、俯いている。

「あんたの前にも父親ってのがいてね、そいつはその子の正体を知って拒絶、再起不能にされたよ。そこに別件で居合わせたあたしにその子が依頼したんだよ」

ゆっくりと矢崎から秋穂へ目を移し、口を開く。

「誰にも気づかれないように鬼を殺してくれってな」

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