真・恋姫無双 別たれし御遣い 第三十七話
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〜一刀視点〜

「おい、そろそろ時間だぞ」

座敷牢のような部屋に閉じ込められている俺を牢番が呼びに来る

牢番と言っても普段は離れた所に立っている為、普段は話しも出来ないのだが・・

牢の鍵が開けられ、それに従い俺も牢から出る

向かう先は、皇帝陛下の元

何故か?それは半月ほど前に遡る

 

〜回想〜

「北郷一刀、着いてきなさい」

華佗と共に閉じ込められて、半月 

身体は回復してきているが、まだ本調子には程遠い

そんなある日、司馬懿が俺を呼びに来た

 

「何処に連れて行くんだ?」

正面に司馬懿、両脇と後ろに四人の兵士が取り囲んだまま歩いている

俺の問いに

「皇帝陛下の所よ」

「なに?」

何故皇帝陛下が俺に?

そもそも皇帝陛下は俺が洛陽に居る事を知っているのか?

「貴男が洛陽に居る事は役人だけでなく一般兵や市井の者でも知ってるわ

 その情報を流したのは私だもの

 ただ陛下がその噂を耳にして、貴男に会って話がしたいと仰っているのよ」

俺の心を読むかのように、疑問点を教えてくれた

そして、皇帝に謁見した

 

「貴男が北郷 いえ『天の御遣い』ですか

 顔を上げなさい」

言葉に従い、顔を上げる

そして、目に入った皇帝陛下の姿に息を飲んだ

艶やかな黒髪に、整った顔立ち、強い意志と慈愛を含んだ瞳、豪奢な衣装を着ていても起伏が分かる体型

絶世の美女、と云う表現が見事に当てはまる

陛下に見とれていた俺に

「貴男を呼んだのは貴男の居た『天の世界』とはどのような所なのか

 それを教えて欲しいのです」

 

陛下に言われて、元居た世界の事を色々と話した

「陛下、そろそろ」

側近に促された陛下が

「そうですか

 北郷、貴方の話は実に興味深いものでした

 これからは毎日私に話を聞かせに来て下さい」

そう言って去って行った

                               〜回想終わり〜

 

それ以来、毎日陛下の元に話をしに行っている

流石に司馬懿は初日以降、着いてこないが

身体が回復しているが、脱走は出来ない

華佗が人質状態(同じ座敷牢に監禁中)なのに加えて、司馬懿の策略が分からない

うかつに動けば孫呉の致命傷になりかねない

それに、陛下は何か考えている

何かは分からない

「天の世界の話を聞く」事を口実に、何かを画策している

それを知る為に、今日も陛下の元に向かう

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〜雪蓮視点〜

洛陽から明命が襄陽へ移動した私の所へ帰還した

「どうだった明命?」

「はい、一刀さんは洛陽にいらっしゃいました

 この目で確認したので間違いありません」

この報告に私を含めたこの場にいる全ての将が喜びの声を上げる

「一君、良かった〜」

特に鞘華は涙を流している 無理もないわね

しかし私は何かを感じていた

「雪蓮、直ぐに使者を派遣して一刀の引き渡しを要求しよう

 なにか条件を出されるかもしれんがな」

冥琳の言葉に考え込んでしまう

「どうした、雪蓮?」

「なんだかね〜

 それをするのが当然なんだけど、それをしたら詰んじゃうような気がするの」

何故、何が詰むのか、それが説明できない

「それは勘か?」

「うん、でもね〜」

鞘華が睨んでいる

鞘華だけでは無く、他の面子も此方を厳しい表情で見つめている

一刀の消息が分かったのに何の動きもしないのか、そう責められているかの様ね

無理もない 赤壁の戦いで最大の功労者は一刀なんだから

「冥琳、洛陽に使者を送るわ

 行くのは・・・冥琳 貴女に頼むわ」

鞘華が

「それなら私も!」

「却下よ 鞘華が冷静さを失う事もあり得るわ

 そう云った何かが起こる可能性が有るのよ

 護衛は粋怜、お願い」

「御意」

勘が外れて欲しいと思ったのは始めてよ

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〜司馬懿視点〜

「孫呉より使者が参りました」

「直ぐに此処へ通しなさい」

遂に来た

一日千秋の想いとはこの事なのだろう

孫呉が私の計略に嵌った

 

「早速の目通り、感謝します

 呉より参りました周瑜と申します」

「同じく程普と申します」

孫呉の大都督と筆頭武官とはずいぶんな大物を遣わしたわね

それだけあの北郷一刀が大切と云う訳か

だからこその策なんだけどね

「ようこそ参られた

 で此度の用向きは?」

我ながら芝居がかっていると思うが、それが必要な時だ

「はい、この洛陽で我等呉の将 北郷一刀が保護されていると聞き及びました

 それが真ならお引渡しの程を」

予測通り 私の策は成功したわね

「それは出来ぬ

 それと言葉に気をつけられよ」

「どういう事ですかな?

 出来ぬだけでは無く、言葉に気をつけろとは!?」

ふふふ、動揺してるわね

「言葉に気をつけろとは北郷様に対する敬称の事

 北郷様は皇帝陛下といずれ吉日を選んで、祝言を挙げられる予定だ

 陛下の婚約者を引き渡すことは出来ぬし、呼び捨てを咎められるのは当然ではないか?」

「なっ!」

この罠からは逃れられないわよ 孫策、いえ孫呉

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〜あとがき〜

 

前回のラストの人物は劉協でした

「舞い降りし剣姫」「雌雄の御遣い」に続いての登場です

 

司馬懿の策がまた少し、見えてきました

全貌は今後にて

 

更新はゆっくりになるかもしれませんが続けるつもりです

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

説明
司馬懿の策謀が進む
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コメント
さて、既に致命傷を負っていたことに誰も気付いていなかったんだな……こんな状況でも嫉妬とかが先に出てしまうのは、少々いただけないと前回も思っていたが。そんな場合ではない事態に。でもまだ嫉妬が先に出るんだろうな……鞘華だけは冷静でいてほしいが。鞘華が一番危ない立場に立たされるわけだし。あらま〜。(Jack Tlam)
やばいな、何がやばいって一刀の結婚を聞いた鞘華の反応が怖いわw(nao)
この司馬懿、情報の扱いに力を入れている様なので、荊州における蓮華の失態についても当然情報は得ているでしょうね。行商人はもちろん荊州から魏に逃げてきた人達など、情報源には事欠かない筈ですから。……冥琳は「策士策に溺れる」という言葉の意味を身を以て味わう事になるでしょう。(h995)
タグ
真・恋姫無双 北郷一刀 司馬懿 雪蓮 

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