英雄伝説〜運命が改変された少年の行く道〜
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〜エルベ離宮・紋章の間〜

 

「クロウ・アームブラストに関しましては恐らくリィンさん達にとって大切なクラスメイトだからでしょうね……」

「え………まさか”帝国解放戦線”のリーダーは”Z組”に所属していたのですか!?」

リィンの代わりに複雑そうな表情で答えたイリーナの話を聞いたクローディア姫は呆けた後驚きの表情でオリヴァルト皇子達を見つめて尋ねた。

「…………はい。短い期間とは言えクロウさんも”Z組”の一員でしたわ……」

クローディア姫の疑問にアルフィンは悲しそうな表情で答えた。

 

「何らかの形でクロウ・アームブラストの”減刑”をするように求めてくることは予想していたがまさかこの会議で求めてくる所か”蒼の深淵”の減刑まで求めるとはな……――――シュバルツァー。何故”蒼の深淵”の”減刑”まで求める?奴はお前にとって大切な家族であるエリスを誘拐した元凶の一人だろうが。」

腕を組んで考え込んでいたリウイは真剣な表情でリィンを見つめて問いかけた。

「確かにクロチルダさんはエリスの誘拐を企てた首謀者ですが……そのエリスはリウイ陛下達のお蔭で傷一つなく無事に救出されました。クロチルダさんも自分が犯した罪を償うべきですが、だからと言って”処刑”はやり過ぎです。誘拐された本人であるエリスや父さん達―――シュバルツァー男爵夫妻も俺と同じ考えでクロチルダさんの助命嘆願書も書いて頂き、陛下達に嘆願書を提出する為にこの場に持って来ました。」

「え…………」

「―――見せてみろ。」

リィンの言葉にエリゼが呆けている中、リウイは嘆願書を渡すようにリィンに指示をした。そしてリィンはリウイ達に自分とエリス、シュバルツァー男爵夫妻の助命嘆願書を渡し、リウイ達はそれらを読んだ。

 

「まさか助命嘆願書まで用意して来るとはな……」

「むう…………仮にエリゼが処刑に賛成していたとしても多数決でリィン達の意見を優先すべきじゃな。」

「あなた、リフィア。誘拐された本人や家族のほとんどの方々が”蒼の深淵”の”減刑”を嘆願しているのですから認めてもいいのではありませんか?」

「…………………」

嘆願書を読み終えた後考え込んでいるリウイとリフィアにイリーナが指摘し、エリゼは静かな表情で黙り込んでいた。

 

「なお助命嘆願書とは別にクロウやクロチルダさんの減刑を求める署名も集めてあります。」

「なぬ!?」

「…………一体どれ程の数の署名を集めた?」

リィンの口から出た予想外の答えにリフィアは驚き、リウイは真剣な表情で尋ねた。

 

「―――トールズ士官学院の生徒並びに教官全員、第三、四、七機甲師団に所属する方々全員、”鉄道憲兵隊”に所属する方々全員、そしてログナー侯爵とハイアームズ侯爵を含めたノルティア州とサザーランド州の領邦軍や貴族達全員の署名です。もしその署名がこの場に必要ならば今すぐお渡しできます。」

「ええっ!?」

「何と……!」

「それ程までの膨大な数の署名を一体いつの間に集めたのですか?」

リィンの説明にクローディア姫とアルバート大公が驚いている中、アリシア女王は目を丸くしてリィンを見つめて尋ねた。

 

「今回の会議が始まるまでの期間全てを使って集めました。」

「…………会議が始まるまでの期間、”カレイジャス”が毎日頻繁に各地を飛び廻っていたという報告は聞いていたが……その署名の為だったのか。」

リィンの話を聞いたリウイは真剣な表情で考え込みながら呟いた。

「なおその署名には私達―――”アルノール家”も全員署名している。」

「また署名活動をする事を決めた際にまだユミルに滞在していたエイドス様やエイドス様のご家族にも署名して頂きましたわ。」

オリヴァルト皇子の後に答えたアルフィンは微笑みながらエイドスを見つめ

「フフ、そう言えばそんな事もありましたね。」

「無論エイドス様が署名されたのですから、その場にいた私を含めた七耀教会の関係者も全員署名しています。彼が持っている件(くだん)の二人の減刑を嘆願する署名書には記されてはいないが七耀教会に所属する者達は全員署名したとみなしても構いません。何せ我々七耀教会が崇める存在である”空の女神”の意志こそが七耀教会が最大限に尊重すべき事ですので。」

見つめられたエイドスは苦笑しながら答え、セルナート総長は口元に笑みを浮かべて答えた。

 

「ええっ!?あ、あの……今の話は本当なのでしょうか?」

セルナート総長の話に驚いたユーディットは驚きの表情でセルナート総長とエイドスを見つめて尋ねた。

「はい。既に教皇を含めたアルテリアの上層部の方々には私が話を通しておきました。」

「セルナート総長………エイドスさん……」

セルナート総長とエイドスの予想外の助け舟にリィンが明るい表情でセルナート総長とエイドスを見つめている中、アリシア女王とクローディア姫、そしてアルバート大公がそれぞれ視線を交わして頷いた後リィンを見つめて言った。

「リィンさん。もしよろしければ私とクローディアも話に出て来た二人の減刑嘆願の署名をさせて頂いても構いませんか?」

「確かに二人の罪は重いですが……”処刑”以外にも償う方法はあると私とお祖母様は信じています。」

「私もアリシア女王陛下達と同じ考えだ。我がレミフェリアにも”処刑”という処罰はあるが、相当な重罪でない限り”処刑”という方法は取らないしな。」

「あ、ありがとうございます……!―――ヴァイスハイト陛下。図々しい頼みと承知しておりますが三国の皇族達が将来親類関係になるという国際的に明るい話になりますので、どうか二人の減刑嘆願の署名をして頂けないでしょうか?――――お願いします!」

アリシア女王達による予想外の助け船にリィンは明るい表情で頭を下げた後ヴァイスを見つめて頭を下げた。

 

「フッ、まさかここでもお前達の婚姻を最大限に利用して来るとは俺も想像していなかったぞ。………………―――いいだろう。俺の娘と将来の義理の息子に免じて署名してやろう。エルミナとユーディも署名してやってくれないか?」

(お父様……)

リィンの嘆願に感心していたヴァイスは静かな笑みを浮かべて答えた後エルミナとユーディットを見つめ、ヴァイスの答えにメサイアは微笑み

「はい。父の野望に巻き込まれたお二人は私にとっても他人事ではありませんので。」

「……今の状況を考えると署名を断る方が愚策です。」

ユーディットは静かな表情で頷き、エルミナは疲れた表情で答えた。

 

「―――エステルさん。貴女達も署名してあげてはどうですか?」

「へっ!?い、いいんですか!?」

そしてアリシア女王に視線を向けられたエステルは驚いた後アリシア女王を見つめて尋ねた。

「ええ。”身喰らう蛇”の件は彼らと関わり続けて来たエステルさん達にとっても他人事ではないですし。」

「ありがとうございます!――――リィン君、二人の減刑嘆願の署名、あたしもするわ!」

「勿論ミントも!」

「僕も署名させてもらうよ。」

「フウ……仕方ありませんね。ここは空気を読んで私も署名してさしあげますわ。」

「あ、ありがとうございます……!」

「フフ、後は私達だけになってしまいましたね。」

「ハア……こんな展開になるとは予想もしておらんかったぞ。」

(兄様…………)

「……………………」

エステル達もリィンの味方をした事により、場の雰囲気が完全にクロウとクロチルダの減刑の雰囲気になった事にイリーナは微笑み、リフィアは疲れた表情で溜息を吐き、エリゼは優しげな微笑みを浮かべてリィンを見つめ、リウイは静かな表情で黙ってリィンを見つめていた。

 

〜バリアハート・クロイツェン州統括領主城館〜

 

「あいつら…………ったく、どこまでお人好しなんだよ…………」

「フフ……まさか結社の”蛇の使徒”である私を助ける為にここまでするなんて……エマやリィン君達にもそうだけど各国のVIPや七耀教会にまで大きな借りができてしまったわね…………」

それぞれが幽閉されている部屋で端末で会議の様子を見ていたクロウとクロチルダは苦笑しながら呟いた。

 

〜エルベ離宮・紋章の間〜

 

「―――リウイ陛下。恐れながら意見をさせて頂いても構わないでしょうか。」

周囲の様子を見回したリィンは決意の表情でリウイを見つめて言った。

 

 

 

 

説明
第598話
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コメント
本郷 刃様 まあそれぞれ知名度は結構ありますしねw 匿名希望様 確かにある意味夢の共演になりますねw(sorano)
クロスベルとの友好の証として、アルカンシェルで共演させてもいいかもしれませんね。裏の顔を持つならリーシャだっているし。(匿名希望)
ヴィータに関しては歌姫の彼女のファンが居ますからね〜、クロウはなんだかんだで学院の生徒に慕われていましたし(本郷 刃)
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