英雄伝説〜運命が改変された少年の行く道〜 |
〜エルベ離宮・紋章の間〜
「構わん。言ってみろ。」
「クロチルダさんは許さず、クロチルダさんと同じ”蛇の使徒”である”鋼の聖女”アリアンロードが”身喰らう蛇”の最高幹部であった事は許し、陛下とイリーナ皇妃殿下の護衛騎士にしているのは筋が通らないと思うのですが。」
「え………」
「”鋼の聖女”――――”劫炎”と並んで”結社最強”と称えられている”第七柱”の彼女がメンフィルに……!?」
「し、しかもリウイ陛下達の護衛騎士だってリィンさんは言ったよね……!?」
「ちょっとリウイ!今の話、どういう事よ!?」
真剣な表情でリウイを見つめて言ったリィンの主張を聞いたクローディア姫は呆け、ヨシュアとミントは信じられない表情で声をあげ、エステルはリウイを睨んだ。
「………………シルフィアの生まれ変わりと言えばお前達なら察する事ができると思うが。」
「ええええええええっ!?」
「あ、あんですって〜!?」
「あのマーズテリアの聖騎士の生まれ変わりが結社の最高幹部だった……と言う訳ですか。」
「まさか彼女がシルフィアさんの生まれ変わりだなんて……(もしかして”影の国”の”試練”で彼女達が現れたのもそれが関係していたのか……?)」
「それもよりにもよって”蛇の使徒”だったなんて……」
リウイの口から語られた驚愕の事実にミントとエステルは驚き、フェミリンスは真剣な表情で呟き、ヨシュアとクローディア姫は信じられない表情をしていた。
「何やら深い事情がおありのようですが今はその件は置いておくとしまして。――――リウイ陛下、今の話が本当だとするのならばリィンさんの主張通り片方の”蛇の使徒”は許した上好待遇で雇用し、もう片方の”蛇の使徒”を許さず処刑するのは罪人の扱いとして余りにも不公平だと思われるのですが。」
エステル達の様子を見たアリシア女王は話を戻して真剣な表情でリウイを見つめて指摘し
「…………”鋼の聖女”アリアンロードは自身と直属の部下である”鉄機隊”の助命、並びにメンフィルに寝返る手土産として”身喰らう蛇”を率いる”盟主”と残りの”蛇の使徒”達の居場所、そして西ゼムリア大陸に存在している”身喰らう蛇”に所属している工房――――”十三工房”の所在地をメンフィルに提供し、更にアリアンロード自身俺達と共に”盟主”を討伐し、更にエレボニア侵攻時には一人で貴族連合軍の将――――”黄金の羅刹”オーレリア将軍を一人で討ち取った。アリアンロードの功績やメンフィルに対する貢献した為メンフィルは”身喰らう蛇”に所属していたアリアンロード達の罪を許し、好待遇で雇用する形となった。」
「なお”蒼の深淵”と”鋼の聖女”を除いた残りの”蛇の使徒”達は全員メンフィルとクロスベルの手によって死亡し、”十三工房”は一部を除き、全て二大国侵攻の際にメンフィルとクロスベルが制圧し、支配下に置いた。」
(”十三工房”を支配下に置いたって事は恐らく結社の技術力を利用するつもりなんだろうね。)
(戦争のどさくさに紛れて何をやってんのよ……でも”一部を除いて”って言っていたけど、その”一部”ってもしかして”あそこ”の事かしら?)
(―――”ローゼンメイデン工房”ですわね。)
(あそこはレンちゃん達が一時期お世話?になっていた所だからあそこは襲わなかったかもしれないね……)
リウイとヴァイスの説明を聞いたヨシュアは真剣な表情で推測し、ジト目でリウイとヴァイスを見つめていた後ある事に気付いたエステルの小声の続きをフェミリンスが答え、ミントは苦笑しながらリウイを見つめていた。
「ええっ!?み、”身喰らう蛇”のトップである”盟主”に加えて他の”蛇の使徒”達がメンフィルとクロスベルに討ち取られたんですか!?」
「しかもオーレリア将軍と言えば他国にもその名を轟かせているエレボニア帝国の領邦軍の”英雄”ですな……」
一方驚愕の事実にクローディア姫は驚き、アルバート大公は信じられない表情で呟いた。
「――――確かに”鋼の聖女”のメンフィルへの貢献や功績を考えれば陛下の仰る通りメンフィルに罪を許され、好待遇で雇用させて貰ってもおかしくありません。―――ならばクロチルダさんにも”鋼の聖女”同様償いの機会を与えるのが”筋”だと思います。」
「!!………………」
そしてリィンの主張に目を見開いたリウイは真剣な表情で考え込み
「―――リィン様。一つ尋ねてもよろしいですか?」
エリゼは静かな表情でリィンを見つめて尋ねた。
「エリゼ……?」
「リィン様は何故敵対関係であったお二方の為にそこまでするのですか?」
「……俺自身が二人を救いたいという気持ちもあるけど……先輩達に”約束”したからな。――――クロウを何とか学院に連れ戻し、先輩達と一緒に卒業させるって。叶えられなかった俺とクロウの”約束”の代わりにせめて先輩達とした”約束”だけは叶えたいんだ。」
「リィンさん…………」
「!……………………クロウさんについては理解しました。では”蒼の深淵”についてもクロウさん同様他に理由があるのですか?」
リィンの答えを聞いたアルフィンは辛そうな表情をし、目を見開いて驚いたエリゼは複雑そうな表情をした後気を取り直して続きを促した。
「ああ、理由があって当たり前だろう?”紅き翼”の方針は”学院の関係者を保護する”事もその一つだ。エマにとってお姉さんであるクロチルダさんも俺達にとって”関係者”だ。」
「!!……………兄様……………」
リィンの口から語られたある意味予想していた答えを聞いたエリゼは複雑そうな表情で呟いた後黙り込み
「―――お願いします!どうか二人に償いの機会を与えてください!」
リィンはリウイ達を見つめて頭を深く下げた。
〜待機室〜
「な、なななななななっ!?み、未熟者の分際で至高の存在であるマスターを利用するとは……!絶対に許しませんわ!」
リィンの主張を待機室に備え付けてある端末で見ていたデュバリィは怒り心頭の様子で部屋から出ようとしたが
「!アイネス!」
「ああ!」
「なっ!?エンネア、アイネス!何のつもりです!?離してください!マスターを利用したあの未熟者に裁きの鉄槌を降さなければなりません!」
デュバリィの行動に逸早く気付いたエンネアとアイネスに背後から抑えられた。
「もしここで貴女があの場に突撃して彼に斬りかかるような事をしたらメンフィルどころか、マスターにまで迷惑がかかる事がわからないのですか!?」
「グググググググッ……!貴女達はマスターが利用されている事に怒りを覚えないのかしら!?」
エンネアの正論に反論できず唇を噛みしめていたデュバリィは声を上げたが
「私は彼の度胸や優しさに驚きを通り越して感心しているくらいだぞ?敵対していた相手である”C”と”蒼の深淵”の為だけに”英雄王”に真っ向から逆らった所かマスターまで利用する事に。」
「私も同じようなものですわね。第一そのマスターが全然怒っていないのですからそこまで目くじらを立てる必要はないと思うわよ。」
「へ……………」
アイネスとエンネアの言葉を聞き、呆けた表情でリアンヌを見つめた。
「フフ、もはや勝負は決しましたね、陛下…………」
自分を利用したリィンに対して怒る所か感心しているリアンヌは微笑みながら端末に映るリウイを見つめていた。
〜バリアハート・クロイツェン州統括領主城館〜
「ったく、敵である俺達の為にそこまでするなんてあいつらしいな………」
「私達を助ける為に”英雄王”に真っ向から逆らった所か”鋼の聖女”すらも利用するなんて……どうしてそこまで………特に私は君の大切な妹を誘拐した元凶だって言うのに…………そんな私を君達の”関係者”扱いするなんてどこまで優しいのよ、君は…………」
それぞれの自室で端末でリィンの様子を見守っていたクロウは苦笑し、クロチルダは辛そうな表情で涙を流しながら端末に映るリィンを見つめていた。
説明 | ||
第599話 | ||
総閲覧数 | 閲覧ユーザー | 支援 |
2027 | 1781 | 2 |
コメント | ||
本郷 刃様 今回ばかりはリウイ達も何も言えませんねw サイバスター様 まあ、実際権力振りかざして正論を通らせない事もありますしね 匿名希望様 確かにデュバリィでは返り討ちにされますね(sorano) 裁きを下すどころか、マジ切れして鬼化したリィンに返り討ちにされるかもしれない。最悪ヴァリマール召喚が待っている。(匿名希望) ↓言っていいことと悪い事にも気づかないですか…?黙ってみていても罰は当たらないと思うんですが。(匿名希望) いくら正論を言っても通らないこともあるけどね現実は(サイバスター) 今回はリィンが正論ですね、成果があるからというのならヴィータもその温情を受けて良いですし、シルフィアの転生体だからというのはこの会議の場では関係の無いことですからね(本郷 刃) |
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