魔法少女リリカルなのは〜原作介入する気は無かったのに〜 第百三十九話 奪われた7つの聖遺物
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 〜〜葵視点〜〜

 

 現在、戦場になっている運動場は1人の人物の介入によって一方的な殲滅戦になっていました。

 

 「はりゃほりゃ!!」

 

 バキイン!!!!

 

 「うっまっうーーーー!!!!!」

 

 ドガアアァァァンン!!!

 

 仮面を被った人物の手によって次々とロボットが破壊されていきます。

 あるロボットは光を放つ剣で斬られ、またあるロボットは回し蹴りで真っ二つに破壊され、レーザーはバリアで防ぎ、ミサイルは光の弾で悉く撃ち落としていました。

 仮面を被った人物、あれって……

 

 「あ、あの!!!」

 

 「はりゃ?」

 

 ロボットと戦っている仮面の人物に遥さんが声を掛け、仮面の人は立ち止まってコチラを向いた後、首を傾げます。

 

 「貴方は誰なんですか?」

 

 「はりゃほりゃ!」

 

 「え、えーっと……日本語でお願いしたいんですけど……」

 

 「はりゃほ!!」

 

 「あ、あう〜…」

 

 「うまうま!!」

 

 「う〜……」

 

 「ほりゃりゃりゃ!!」

 

 「……………………」

 

 「うまうー!!」

 

 「にゃーーー!!!!何言ってるのか分からないよぅ!!!」

 

 『はりゃ』とか『うまう』とかしか言ってませんものね。

 仮面の人は身体を動かしてパントマイムも加えながら伝えようとしてますけど。

 けど遥さん、全然気付いてないみたいですね。

 私としてはこのタイミングで現れてあそこまで強い人なんて1人ぐらいしか思い浮かばないんですが…。

 というか何故仮面を着けて出て来たのでしょうか?

 

 「葵ちゃーん、あの人の言ってる言葉分かるぅ?」

 

 遥さんが私に助けを求めてきました。

 通訳してほしいとの事です。

 仮面の人……長谷川君と思われる人物は遥さんからコチラに視線を移してきました。

 

 「うまうまう!!」

 

 ふむふむ…。

 

 「はりゃほれ!!」

 

 成る程…。

 

 「うっうまうー!!」

 

 「…分かりました」

 

 「葵ちゃん分かったの!?」

 

 「彼は『俺の名はマスク・ザ・斎藤だ!あのロボット達を撃退するため助太刀いたす!』と言ってますね」

 

 「本当!?」

 

 ええ、通訳を間違えてはいませんよ。現に彼は大きく首を縦に振っていますから。

 

 「凄いね葵ちゃん。あの人の言葉分かるんだ」

 

 パントマイムと妙な言葉しか発していない彼の通訳が出来るのは自分でも不思議に思います。

 何故でしょうかね?

 

 

 

 〜〜葵視点終了〜〜

 

 恭也さんから受け継いだアイテム…『マスク・ザ・斎藤のマスク』を被り戦場に乱入したのは良いが

 

 「(このマスク、マジヤベェ)」

 

 この一言に尽きる。

 何せ被るだけで身体の底から力が沸いてくるのだ。

 リトバス原作でもステータスアップの効果があるアイテムだったが、このマスクも同様の効果があるっぽい。

 仮面のデザインはともかく、こんな便利なアイテムをくれた恭也さんにはマジ感謝。

 ただ、恭也さんが何故この仮面を持ってたのか問うてみたら

 

 『俺が高校生の時、演劇部の演劇に怪我をして舞台に出れなかった演劇部員の代役で出演した際に使用したマスクをそのまま貰ったんだ』

 

 だと言っていた。

 うーむ…中の人繋がりで所持しているという方が個人的には納得出来るんだがなぁ。

 それとこのマスクを被ると何故か上手く言葉を発せなくなる。

 原因は不明。何でだろうか?

 

 「凄いね葵ちゃん。あの人の言葉分かるんだ」

 

 少し離れた場所では尊敬の眼差しを神無月に向ける遥の姿があった。

 てか神無月も神無月だ。パントマイムも加えてるとは言え、何で俺の言葉を正確に訳せるの?

 アレか?アリサと肩を並べる程の秀才だからか?それとも実はテレサに匹敵する天才とかいう原作に無い設定でも追加されてんのか?

 

 「そうですね。自分でも何故分かるのか不思議なんですが…」

 

 首を傾げる神無月。

 神無月の中の人はリトバスに出てたりはしてないんだがなぁ…。

 

 「そんな事言ってる場合じゃないでしょ!!!」

 

 ふしゃー!!な感じの葉月さんが割って入ってきた。

 

 「アンタ!!変な仮面被ってるけど長谷川でしょ!!」

 

 ……バレてる。

 

 「違うよクルミちゃん。この人は斎藤さんだよ。さっき葵ちゃんの通訳でそう言ってたじゃない」

 

 一方の遥は俺じゃなく斎藤さんだと思い込んでる。

 純粋だなぁ。

 『マスク・ザ・』という単語が抜けて無ければ完璧だったのに。

 

 「んな訳無いでしょうが!!」

 

 「勇紀君の苗字は『長谷川』だよ。自分の苗字を間違える人なんて普通いないよ」

 

 ……純粋にも程があるぞ。

 

 「偽名使ってるという考えに至りなさいよ、このバカ!!」

 

 「…………その手があった!!」

 

 名乗った俺が言うのも何だが、その発想に至るよ普通は。あからさまにこんな怪しいマスク被ってる奴が本名名乗る訳無いじゃん。

 

 スポッ

 

 「む?」

 

 マスク越しでやや狭かった視界が解放された。

 同時に人の気配を俺の真後ろに感じたので振り返ったら

 

 「やっぱり長谷川だった」

 

 ナインがいた。その手に俺が被っていた筈のマスクを抱えながら。

 

 「…何で取るかなぁ」

 

 ツインエンジェルの方に気を取られてたせいで簡単にマスクを奪われ、正体をバラされた。おかげで俺のテンション下降気味である。

 

 「わわ!!クルミちゃんの言った通りだったよ!!」

 

 流石に素顔を見られたら遥相手でも誤魔化すのは無理だろうなぁ。

 

 「何故あんな仮面被ってたんですか?後意味不明な喋り方までして」

 

 「……マスクはともかくあの喋り方はしたくてしてた訳じゃないんだよ」

 

 ナインの隣に移動していたテスラの質問に、頭を掻きながら俺は答える。

 あのマスクを装着すると上手く喋れないという事を。

 けど、真実を伝えてもこの場にいる遥以外の皆さんの視線は疑心的なものである。

 

 「論より証拠だ。ナイン、信じられないならソレ被ってみろよ」

 

 「……………………」

 

 マスクをジーッと見つめた後、意を決したナインはマスクを被る。

 

 「なっちゃん!?」

 

 テスラはまさか本当に被るとは思ってなかったのであろう。俺だって被らずに返してくれるものだと思ったし。

 

 「……………………」

 

 はてさて…ナインの反応は…

 

 「な、なっちゃん?」

 

 「……う……」

 

 「う?」

 

 「うっうまうーーー!!!!」

 

 「なっちゃーーーーーーーーーーーん!!!!!!?」

 

 テスラの悲鳴染みた声が周囲に響き渡る。

 

 「『何か力が沸いてくる』って言ってますね」

 

 今度はパントマイムも無いのに通訳した神無月。

 マジなのかと思い、ナインの方に向くと当の本人は首を縦に振る。

 神無月さん、マジすげえッス。

 

 「あ……はは……なっちゃんが…なっちゃんが奇声を……」

 

 いかんねぇ……。瞳から生気の失せたテスラのメンタルがブレイクしつつある。

 

 「ナイン、お前の姉さん精神的に参りそうだからそのマスク外して俺に返してくれ」

 

 俺の言葉に素直に応じたナインはマスクを外してテスラに謝る。

 

 「姉さん、ゴメンね」

 

 ナインも凄く申し訳無さそうな表情をしていた。

 

 「…………って、のんびり会話してる場合じゃないわよ!!!」

 

 「???」

 

 「私達はそっちの2人と戦ってたし、ロボットだって何とかしなうちゃいけないの!!」

 

 …………ああ、ロボットね。

 

 「問題無い。今の会話中にロボットは全部どうにかしたから」

 

 「「「「「へ?」」」」」

 

 俺の言葉に復活したテスラを含めて全員目が点になった。

 俺達の会話中に破壊音が何時の間にかしなくなっていた事に気付かなかったのか。

 先程まで破壊に躍起になっていたロボット達は全て機能を停止し、その場に佇んでいた。

 

 「い、何時の間に……」

 

 さっきまでの会話中、無防備かつ何もせずにいたとでも?

 俺が放ったアルテミスはミサイルの撃墜だけじゃなく、ロボットの胴体をも容易く貫ける様、貫通性に特化させ、動力部分を貫いてロボットの行動不能に陥らせていたのだよ。

 

 「ロボットを停めた以上、後やるべき事は…」

 

 俺の視線はヴァイオレット姉妹に向く。

 

 「「っ!!」」

 

 俺がちぃっとばかり敵意を当ててみると、距離を取って構えるツインファントム。

 その様子を見ながら俺は言う。

 

 「やってくれたなテスラ、ナイン。まさか文化祭当日にロボットを率いてまで襲撃するとは流石に思わなかった。いや、万が一の可能性としては思い付いたが実行する事はないだろうと思い、勝手に決め込んでたぞ。お前等、何だかんだでクラスに馴染んでいる感じだったからな」

 

 ツインエンジェルが取り戻し、厳重に保管されている((7つの聖遺物|セブンアミュレット))を狙うには今日ほど都合の良い日は無いだろうからな。

 ロボット達が暴れるせいでほとんどの人達は混乱、パニックに陥り、学園側はソレ等を抑えるために躍起せねばならないし。

 保管庫を警備してる警備員でも一般人である以上ロボットには敵うまい。

 

 「違う!!」

 

 だが、俺の言葉をナインは否定する。

 

 「あのロボットの襲撃に私達は関与していない。私も姉さんも知らされていなかった!!」

 

 「その言葉、信じろと?」

 

 「信じて貰えないかもしれませんけど、なっちゃんの言ってる事は本当です。私達だって文化祭を台無しにする様な事……」

 

 テスラも表情を歪めながら言う。

 それは『何故ロボットが?』という疑惑と『文化祭が…』という悲観が入り混じった様な((表情|モノ))だった。

 

 「そっか…知らなかったのなら仕方ないな」

 

 「……って、信じんの早っ!!」

 

 目を見開いて葉月が言う。

 だって知らなかったって言ってるんだし…

 

 「友達が言ってる事ぐらい信じてやらないと。なあ遥?」

 

 「そうだよね。ナインちゃんもテスラちゃんも友達だもん」

 

 「全然説得力の無い理由なんだけど!?」

 

 細けえこたあ良いんだよ葉月。

 俺的には原作イベントの発生時期にズレがあったので、ちょいと確認するために聞いてみただけだ。

 ヴァイオレット姉妹が今回の件を知らないと言うのは原作通り。

 原作と違うのはロボットを全機機能停止させたので((7つの聖遺物|セブンアミュレット))は無事であろうという事ぐらい……

 

 「ユウ君!!転移魔法の反応が!!」

 

 「何っ!?」

 

 ダイダロスが言うや否や、運動場に大きな魔法陣が現れ、新たなロボット群が出現する。

 

 「ロボットが増ちゃいましたよ!?」

 

 神無月の言葉に誰もが反応し、そして驚愕する中

 

 「流石にこの展開は想定外だが……増援のロボットも機能停止させれば問題無い!」

 

 俺はクリュサオルを握り、ロボット群に突貫する。

 まずは横に一閃。

 一番近くにいたロボットを真っ二つに斬り伏せる。

 爆発したロボットの爆音に反応した他のロボットが一斉にコチラを向き、ミサイルや機銃で応戦してくる。

 俺はソレ等が発射された直後に『剃』を使い、一気にロボット群の中へ。

 同時に拳に炎を纏わせ、小さく息を吸いこんでから纏っていた炎を放つ。

 

 「火拳!!!」

 

 巨大な炎の一撃がロボット数体を巻き込み炎の中で爆発。

 

 「文化祭を台無しにしやがって。食らいやがれ!!」

 

 炎と魔法を駆使して確実にロボットを対処していく。

 転移魔法を用いてきたという事は原作にいなかった存在…魔導師が相手側にいるという事。

 こりゃ、俺も敵の首領…ブラックトレーダーに会いに行く必要あるかもな………。

 

 

 

 〜〜テスラ視点〜〜

 

 「……本当に一方的な展開ですね」

 

 私は突如現れた新たなロボット相手に臆さず向かっていく長谷川君の姿を見て思わず呟いていた。

 流石は裏の世界でトップクラスの実力を持つ人物、『長谷川泰造』の息子ですね。

 ツインファントムである私となっちゃんとの接触以降、彼の素性についても調べましたが父親の経歴を見て納得出来ました。

 そんな中、また地面が輝いたかと思うと、次の瞬間には新たなロボット達が。

 それを見て長谷川君は眉を顰めますがそれも一瞬の事。新たなロボット群にもすかさず攻め込みます。

 今度のロボット達は出現と同時に所構わずミサイルを撃ちまくってきます。

 その内の何発かが私達の頭上を越えていきます。

 

 「っ!!大変!!動物たちが!!」

 

 ミサイルの着弾、そして爆音を聞いてから水無月さんが最初に反応します。

 その言葉が聞こえたなっちゃんも

 

 「っ!!」

 

 ミサイルの墜ちた方向に目を向けました。

 そこは学園の動物達を飼育している飼育小屋のすぐ側。

 飼育小屋に直撃こそしていませんでしたが下手をすれば…

 

 「葵ちゃん、クルミちゃん。私、動物達を避難させてくる!!」

 

 「分かりました。ミサイルやロボットが近付いて来ない様に、私達がしっかり見ておきます!!」

 

 「長谷川が無双してるとはいえ、油断は出来ないんだから早く行きなさい」

 

 「うん!!ナインちゃん、テスラちゃん!!」

 

 水無月さんは私達にも声を掛けてきます。

 

 「お願い!動物達を避難させる間だけで良いから葵ちゃんとクルミちゃんを手伝ってあげて」

 

 「……私も動物達の避難を手伝う」

 

 「なっちゃん!?」

 

 なっちゃんが自分から手伝うと言った事には驚きました。

 

 「姉さん、動物達を巻き込む訳にはいかないから」

 

 なっちゃんは動物好き。だからこんな戦場で命を落とす事を良しとしないのは明らかです。

 私は数秒呆然としてましたが、すぐに頷いて返事します。

 なっちゃんが水無月さんと共に行ったのを見て私は通信機を取り出し、連絡を取る。

 連絡先の相手は私達のお父様だ。

 

 「お父様…」

 

 『テスラか?』

 

 「((7つの聖遺物|セブンアミュレット))は私となっちゃんで手に入れてみせます。だからロボットを全て引き揚げさせて下さい」

 

 『……………………』

 

 しかしお父様からの返事は無い。

 

 「お願いです。私達を信じて下さい。これ以上学園内での破壊行為に意味は……」

 

 喋っている最中、私の視界に映る飼育小屋に辿り着いたなっちゃんと水無月さん。

 しかし2人の側の足元に紋様が浮かぶと、中からまたロボットが現れた。

 

 「「っ!!?」」

 

 ロボットは2人に向かって突進します。

 このままではなっちゃんと水無月さんが…。

 

 「こんのおおおぉぉぉぉぉっっっ!!!!」

 

 私は特大の雷球をロボット目掛けて投げつけます。

 ロボットに命中し、爆発したのと2人が無事なのを確認していたらお父様から再び通信が。

 

 『どうしたテスラ?状況を報告しろ』

 

 「……どうして信じてくれないのですか?なっちゃんにも攻撃するなんて」

 

 『っ……』

 

 通信越しにお父様が小さく息を呑んだ音が聞こえました。

 

 「私は…お父様が信じてくれる限り、信じ続けようと思っていたのに」

 

 『テスラ、何を言っている?状況を……』

 

 お父様の声を最後まで聞かずに私は通信機を強く握りしめ、壊します。

 

 「にゃああぁぁぁぁっっっ!!!!」

 

 同時に水無月さんの悲鳴が周囲に響きます。

 先程破壊したロボットの爆煙の中からまた現れたロボットに不意を突かれる形で攻撃されたからです。

 水無月さんもなっちゃんも攻撃に対応出来ず、吹き飛ばされます。

 その後、ロボットは飼育小屋に狙いを定めます。飼育小屋にはまだ動物達が!!

 

 「止めろおおおぉぉぉぉぉっっっ!!!!」

 

 私は叫びながら雷球を作り出すが間に合わない。

 ロボットがミサイルを複数発放ち、飼育小屋に到達するかと思われた時

 

 「プラズマランサー、ファイヤ!!」

 

 頭上から降り注いだ金色の光がミサイルを全て撃墜します。

 ロボットはその様を見て胴体を反転しますが

 

 「はあああぁぁぁぁぁっっっっ!!!!!」

 

 聞き覚えの無い声色と共に私のすぐ横を((何か|・・))が通り過ぎました。

 

 「(金色の……閃光?)」

 

 そう見えた何かは次の瞬間にはロボットの胴体を真っ二つに斬り裂いていたのです。

 閃光の正体は……女性でした。

 見惚れる様な金色の髪を両サイドでリボンで束ねたツインテール。服装は黒を基調とした服の上に白いマントを羽織っている。

 

 「(彼女は確か……)」

 

 ロボットの襲撃が来る少し前に、小さな男の子を連れてクラスのメイド喫茶にやって来たバニングスさん達の幼馴染みの女性だ。

 クラスに来た時とは服装が変わっていますが、間違いありません。

 

 「(教室に来た時とは雰囲気が違う)」

 

 クラスでバニングスさんに紹介された時は連れの男の子を大切にする優しい姉、もしくは母の様な印象だったのですが、今目の前にいる彼女は戦場に立つ戦士の様な勇敢さと凛々しさが感じられます。

 この様な一面があるとは微塵も思わなかったのですが…

 

 「(とりあえず、彼女のおかげで動物達は助かった)」

 

 その件に関してお礼を言わなければなりませんね………。

 

 

 

 〜〜テスラ視点終了〜〜

 

 〜〜フェイト視点〜〜

 

 「《彼との約束を違えてしまって良かったのですか?》」

 

 私の手が握っているデバイス、バルディッシュに尋ねられたので私も念話で返す。

 

 「《確かにね。けどこのロボット達、最初は普通に現れたけど後からは転移反応と同時に現れた。それって何者かがこのロボット達を魔法で送り込んできたって事》」

 

 そして魔法が使える以上、その何者かは十中八九魔導師だ。

 

 「《魔法を行使してるのが誰かは知らないけど違法魔導師という可能性が考えられるしね。執務官として現場に介入するには十分な理由だよ》」

 

 休暇中に事件に巻き込まれる事や、捜査の応援に呼び出される事なんて執務官をやってるとよくある事だ。

 ただ、今日はエリオを連れて来てるからエリオには申し訳無いと心から思う。

 エリオの事はアリサ達に任せてきたけど心配だ。早く戻ってあげよう。

 

 「(それはそうと…)」

 

 私としては気になる事がある。

 それは今、ここにいる女の子達……先程メイド喫茶でメイド服を着て働いていた私の幼馴染み達が高校で出来た友達だと言って簡単に紹介された子達の事だ。

 

 「(この子達が今着てる服は間違い無くバリアジャケット…)」

 

 という事はここにいるのは全員魔導師っていう事だけど…。

 何故か皆認識阻害の魔法を用いてる。

 私やなのは達の様な高ランク魔導師なら認識をズラされる事は無いけど、何も知らない一般人ならまず正確な認識を出来ないだろう。

 正体を隠すためなのかな?

 

 「あの…」

 

 私が思案していたら1人の子が声を掛けてきた。

 

 「あのロボットを止めてくれてありがとうございます」

 

 自分じゃ間に合わなかったので、との事でお礼を言われた。

 

 「気にしないで良いよ」

 

 もし放っておいたら大変な事になっていたしね。

 

 「うぅ…痛たたた……」

 

 「……動物達は?」

 

 少し離れた所で倒れていた2人が起き上がり、ゆっくりとコチラにやって来た。

 

 「「遥さん!!(遥!!)」」

 

 「なっちゃん!!」

 

 戻って来た2人に飛びつく様に3人の子が駆け寄っていく。

 

 「遥さん、大丈夫ですか!?」

 

 「あ、葵ちゃん。うん、大丈夫だよ。ちょっと派手に吹き飛ばされたけど」

 

 「なっちゃんも、何処か怪我とかしてませんか!?」

 

 「問題無い」

 

 「全く……心配させるんじゃないわよ」

 

 3人の子がそれぞれのパートナーの身を案じていた。

 

 「皆、怪我無さそうで良かったよな」

 

 「うん、本当に……って」

 

 私の横から発せられた言葉に頷いて返す途中で言葉を止める。

 だって私の隣には誰もいなかった筈なのに何で声が聞こえて来るのか疑問が沸いたから。

 で、横を向くと5人の子に視線を向けたままの勇紀の姿があった。

 

 「え!?勇紀!?何時の間に!?」

 

 「今来た所」

 

 「……全く気付かなかった」

 

 「魔力は使わず、『剃』で来たからな」

 

 『剃』ってシュテル達も使える高速移動だったよね。

 

 「…で、フェイトさんや。何故この場にいるのかご説明願いたいのだが?」

 

 「何でって…転移魔法の反応を感知したからだよ」

 

 てか勇紀、私が介入した理由に気付いた上で尋ねてきてるよね?

 

 「一応確認しとこうと思ってな」

 

 「そっか……所でここに来て良いの?」

 

 他の場所でロボット達と戦ってたよね?

 

 「もう転移反応は無いし、増援も来ない。向こうのロボットは全機潰したからコッチの様子見に来たんだよ」

 

 成る程、納得だよ。

 

 「ねえ勇紀、あの子達の事だけど…」

 

 私は聞いておかなければいけないと思った。

 あの子達が何故バリアジャケットを纏っているのか。纏っている以上は魔導師なんだろうけど、この事管理局には報告してるのかとか。

 勇紀は少なくともあの子達が魔導師だという事に気付いて無かったなんて事は無いと思う。あの子達からは私達位の魔力を感じるし、リンカーコアもあるみたいだし。

 

 「…確かにアイツ等はバリアジャケット纏ってるけど、デバイスは所有してないし本人達も『自分が魔導師』だなんていう自覚は無いぞ」

 

 「そうなの!?」

 

 てかデバイス無いのにバリアジャケット纏える事が有り得ないと思うんだけど!?

 

 「アイツ等がどうやって纏ってるかは本人達に聞けば良い」

 

 勇紀の口からは教えてくれないみたいだ。

 

 「とりあえずアイツ等のとこに行くべ」

 

 勇紀が歩いていったので私もその後を追う。

 執務官として色々確認しておいた方が良いよね………。

 

 

 

 〜〜フェイト視点終了〜〜

 

 さてさて…。

 ツインエンジェルとツインファントム。お互いのパートナーが無事だったのは喜ばしい事だが

 

 「ツインファントム、お前等はこれからどうするんだ?」

 

 率直に疑問をぶつけてみた。

 

 「テスラちゃん、ナインちゃん。これから一緒に…」

 

 遥が俺に続いて言葉を発するが、彼女の言葉が言い終わる前にテスラが遮る。

 

 「もう((学園|ここ))にいる理由は無い」

 

 それはこの学園を去るという事。

 

 「行きましょう、なっちゃん」

 

 「……………………」

 

 ナインはチラリと遥の方を一瞥して、テスラと共に背を向け去って行こうとする。

 

 「まあ待てって」

 

 その後ろ姿に声を掛け、呼び止める。

 テスラが顔だけを向けると、俺は1つのUSBメモリを投げつける。

 テスラは疑問符を浮かべながらもソレを受け取り、視線で『コレは?』訴えてくる。

 

 「俺が知る限りの『火災事故』の真相がそのメモリに入れてある」

 

 そう言うとテスラとナインは目を見開いて受け取ったUSBに視線を移していた。

 

 「今後、お前等がどう行動するのかは知らんが、その中身を見てからゆっくり考えるのが良いと思うぞ」

 

 「……何故今更私達に真実を?」

 

 尤もな疑問だな。今まで俺はコイツ等に真相を教えなかったし、教えたのは火災事故に絡んだ『時空管理局』という組織の名前ぐらいだし。

 

 「気まぐれだよ、気まぐれ」

 

 テスラは俺の意図を読み取ろうと思案してたみたいだが、結局結論は出なかったのだろう。小さく頭を下げ、礼を言ってからナインと共に去り、俺達はその後ろ姿が見えなくなるまで見送るのだった。

 ツインファントムが去ったのと同時に『ピーピーピー』と音が鳴る。

 音の発信源は神無月の胸の谷間から。

 自分の手を谷間に突っ込み、中からポケてんを取り出す。

 ……そういやこの子、ポケてんは胸の谷間に仕舞ってるんだったよね。

 

 『お嬢様、大変でございます!』

 

 「爺や、どうしたのですか?」

 

 ポケてんには携帯の様にメールや通話機能も備わっている。

 どうやら相手は平之丞さんみたいだ。

 

 『してやられました。((7つの聖遺物|セブンアミュレット))を奪われてしまいました』

 

 「「「「はああぁぁっっ!!?」」」」

 

 俺、遥、神無月、葉月の4人がその台詞を聞いて叫ぶ。

 オイオイオイ!!ロボットは1機も残らず潰した筈だぞ。転移反応も無かったし、どうやって……

 

 『どうやら避難してる一般人の中に保管庫に侵入した輩がいた様で、その者に奪われてしまった模様かと』

 

 「……そういう事か」

 

 俺は苦い表情で小さく舌を打つ。

 

 「にゃ?どういう事?」

 

 …遥ぁ、それぐらい想像つくだろ。

 

 「バカ遥!!私達がツインファントムやロボットと戦って保管庫の警備が手薄になった所を狙われたのよ!!」

 

 「ロボット達は普通の警備の人達じゃ太刀打ち出来ませんし…」

 

 「まあ、ロボットの襲撃は本命であり囮でもあったってとこだろ」

 

 もしロボットがそのまま((7つの聖遺物|セブンアミュレット))を奪えればそれで良し。奪えなかった場合は一般客に紛れて文化祭に来ていた敵さんの部下が直接回収するという算段だったのだ。

 してやられたか。

 

 「ふえ!?そ、そそそれって((7つの聖遺物|セブンアミュレット))を護るのに失敗したって事!?」

 

 「まあ、そういう事だ」

 

 「そんなぁ…」

 

 ツインエンジェルが落ち込む中、クイクイとバリアジャケットの裾が引っ張られる。

 フェイトだ。

 フェイトだけは何の事だか分からず、俺に説明を求めてくる。

 

 「ねえ勇紀、私としては何の事だか分からないんだけど。『((7つの聖遺物|セブンアミュレット))』って何なの?」

 

 「そいつは後で教えるよ。…それでそこの3人、お前等このままで良いのか?大切な物を奪われたのなら取り返せば良いだけだろう?それが天ノ遣であり『怪盗天使』を名乗るお前等の使命だった筈だが?」

 

 「……そっか、そうだよね。取り返せば良いんだよね」

 

 この立ち直りの早さは遥の美点かねぇ。

 遥に当てられて神無月、葉月も気を取り直したし。

 という事でツインエンジェルと俺は((7つの聖遺物|セブンアミュレット))を取り返すため、敵さんの本拠地に殴り込みに行く事を決断した。

 

 「けど先に教室に戻るぞ」

 

 このまま帰る訳にもいかん。皆に心配させるし。

 俺は教室でなく調理実習室に戻る訳だが。

 おそらく文化祭は中止になる上、何日かは休校だろう。壊された一部の場所の修繕もあるし。

 

 「(俺としては((7つの聖遺物|セブンアミュレット))よりも転移魔法を用いてた魔導師を対処せにゃいかんな)」

 

 当然ながらツインエンジェルの原作には無い展開。違法魔導師にせよフリーの魔導師にせよ、文化祭を台無しにしてくれた礼はせねばなるまい………。

 

説明
神様の手違いで死んでしまい、リリカルなのはの世界に転生した主人公。原作介入をする気は無く、平穏な毎日を過ごしていたがある日、家の前で倒れているマテリアル&ユーリを発見する。彼女達を助けた主人公は家族として四人を迎え入れ一緒に過ごすようになった。それから一年以上が過ぎ小学五年生になった主人公。マテリアル&ユーリも学校に通い始め「これからも家族全員で平和に過ごせますように」と願っていた矢先に原作キャラ達と関わり始め、主人公も望まないのに原作に関わっていく…。
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コメント
ロボット?これに出てくるロボットってどんな形してんの?(青山大臥)
マスク・ザ・斎藤wwwww.この騒動みた学生たちはイベントと思ってくれますかな。事後処理が大変そうですねwww(アサシン)
これは・・・勇紀無双に着目すべきなはずなのに、「マスク・ザ・斎藤」の方にばっか意識が逝ってしまう・・・。あとは勇紀を怒らせた相手が果たして無事に終われるのかどうか・・・多分無理だね(-_-;)(海平?)
↓確かに。まぁ状況的にムスカの時とは違うから殺されはしないと思うけど、サウザーに「殺さなければ何してもいい」と言ったら…南ー無ー。(プロフェッサー.Y)
さて、楽しみにしていた学園祭を邪魔されて、頭にきてる勇紀が本気で戦う以上、敵対する相手に未来は無いですね。どんな殲滅戦になるのか、楽しみです。しかし、敵の中にいる魔導師がどんな相手なのか、気になりますね。(俊)
凄いな、「マスク・ザ・斉藤」。被るだけであれだけの力を発揮するなんて。そしてその言葉を通訳出来る葵も見事。今後マスク・ザ・斉藤が登場した時には葵の通訳は必須ですね。(俊)
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