リリカルなのは〜君と響きあう物語〜
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「う〜〜ん。参ったなぁ」

 

部隊長室にて八神はやてが頭を抱えて悩んでいる。

それは六課の決算をまとめた資料。

悲しいことに赤い文字で埋められている。

なぜこんな苦しいことになっているのか。

 

@ コレットやフェイトがうっかり壁に穴を開けたりするから修理代がかさむ。

A スバルやギンガの餌代。

B ロイド達が結構その辺を好き勝手暴れるから。

 

正直言って部隊を立ち上げたとき想定していたモノをとてつもなく超えている。

う〜〜ん、う〜〜ん……狸は悩んだ。

ポンポコ悩んだ。

上に掛け合わせて資金の繰り上げを打診して……。

いや、上がそんな簡単にくれるわけがない。むしろ更に下げられそうなのに。

今年のボーナスだってマンションのローンで消えちゃうと言うのに……。

ゴホン、とりあえず資金を調達しなくては明日から六課の隊舎は空き地の土管だ。

 

「あ〜〜!!どうすればええんやぁ!!……こうなったらフェイトちゃんやシグナムの生下着を裏に流して。ばれなければいいんや……ばれなければ……」

 

お前……金のために友と家族を売るのかよ。

 

「そ〜いえばこの間本部から回ってきたチラシに……」

 

机の上に山と詰まれた紙の中から目的のものを引っ張り出す。

その瞬間山が雪崩を起こしたが気にしたら負け。

つーか電子媒体を主に使う管理局が紙媒体をこんなに……。

なになに?『魔法学園初等科に交通安全教室』

『地域をキレイにしよう。夏の奉仕活動』

『この顔に来たら110番!!−ジェイル・スカリエッティ−』

……まるで交番だな。

 

「……これや。これしかない。ふ、ふふふふ……ふははは!!!!

ふははははははははははははははは!!!!!!」

 

そのチラシに書かれているのは

 

『第一回管理局主催ミス・コン』

 

優勝賞金500万。

まぁ……アレだ。はやてだけに狸の皮算代。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

「というわけで皆にぜひ協力してもらいたいんや」

 

朝一番の会議ではやては皆の前でミス・コンの協力を申し出た。

 

「……ミス・コンってそんなの管理局がやるの?」

 

フェイトが恐る恐る手を挙げて質問をする。

長い間管理局に勤めているがそんなイベント今までやった試しがなかった筈。

管理局はそんな馬鹿な事をするほど暇なんだろうか?

……暇なのだ。

 

「そうや。しかも優勝賞金はなんと500万やで!!

これはもう出るしかないやろ?」

 

目が$$のはやて。

10年前はこんな子じゃなかった……。

時の流れは残酷だ。

 

「でもぶっちゃけ皆なら優勝も狙えるんじゃないか?

フェイトもなのはも……此処にいる皆は全員美人揃いだし」

 

ロイドのいうとおり女性陣のレベルは凄まじく高い。

その辺のモデルなんて目じゃないレベルだ。

フェイトやシグナムなどは裏でファンクラブまであるのだ。

ちなみにその会員の数は管理局以上を誇る規模。

 

「んふふ〜〜。ありがとうロイド君。……やっぱり参加するしかないやろ?」

 

「「「「「ぜひ参加するべきだとも!!!!!!」」」」」

 

男性陣は皆参加するべきだと主張。

……このスケベ野郎ども。

鼻の下がどいつもコイツも伸びきってるぞ。

 

「で、でもミス・コンって水着やきわどい恰好するんですよね?

恥ずかしいですよ」

 

「「「「「恥ずかしがらなくても良い!!!!ギンガさんなら大丈夫!!!!」」」」」

 

「でも……」

 

「「「「「安心して!!!!キャロは可愛いから!!!!」」」」」

 

男ども……目が血走ってて気持ち悪いぞ……。

 

「まぁ、私が言うのもなんやけど此処にいる皆なら素質高いし優勝できると思うんや」

 

部隊長がそういうなら出るしかないのか……(ティアナ)

最近ちょっと太ってきたんだけど(スバル)

あたしも出るのか?(ヴィータ)

イィィ〜〜ヤァァァアッホ〜〜〜イィ!!!!(六課・ロングアーチ男子)

 

「というわけで優勝目指して頑張るで!!!! 『ミス(ター女装)コンテスト』に(ぼそっ)」

 

「「「「「おぉおおおお!!!!!!…………ん?」」」」」

 

いま変な言葉が聞こえたような……。

ばっ!とジーニアスがミス・コンのチラシを覗き込むとそこには……。

 

「ミス(ター)・女装コンテスト?……世界で一番女装が似合う男を探し出せ?」

 

……ギ、ギギギと油の切れたブリキ人形のように男性陣が女性陣の方に首を向けると、やけにいい笑顔の皆様がいた。

目を輝かせているコレット。

クネクネと腰をふるシャマル。

腕を組んでどうでもよさそうな体をしてるわりにはチラチラと横目で見てくるシグナム。

いつの間に用意したのか古今東西の女物の服がズラリと。

カツラや化粧品も揃っている。

やばい。やばいぞ……。

奴らは……本気だ。

 

「「「「「んふふふ……」」」」」(女性陣)

ジリジリと間合いを詰め寄る。

 

「「「「「あははは……」」」」」(男性陣)

スススと後ろに逃げる。

 

 

 

「安心し。ただ新しい扉を開くだけやから。新しい自分を目覚めさせるんや」

 

男としてその扉を開いちゃうのはまずい気がするであります。

その裏人格はまずい。世間的にまずい。

 

 

 

 

 

「確保!」(パッチン!)

 

 

 

 

 

はやての指パッチンで一斉に飛び掛る女性局員。

イヤァァアアアアア!!!!やめてぇぇえ!!!!と泣き叫ぶ男性局員。

違う……。何かが決定的に間違っているよ。

 

「んふふふ。さぁ、お着替えしましょうか。……あれ?ロイド達がいない」

 

「しまった……逃げられた!!」

 

三十六計逃げるが勝ち。

ロングアーチの名も無き男の屍を乗り越えロイド達ははやて、なのは達から逃げ出した。

 

「フフフ。そう簡単に私の城から逃げられるわけないやろ?」

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

「走れジーニアス!!捕まったら終わりだぞ!!」

 

「嫌だ!!女装は嫌だ!!裏人格はラタトスクだけでいい!!」

 

必死に逃げ続けるロイド達。

まさかミス・コンに出るのが自分達だったなんて誰が予想できたというのか。

それにしても女性陣がこんなに恐ろしいほど興味を示してくるとは……。

敵に回して改めて思う。機動六課女性陣の脅威。

 

「おかしい……」

 

「どうした?リーガル」

 

「隊舎の中が……昨日までと明らかに変わっている。

これは一体?」

 

――ぴんぽ〜んぱ〜んぽ〜ん♪

 

『逃走者諸君。気がついたかな?昨日までと変わったこの新たなNew六課を。

フフフ。シャーリーが一晩で作り変えてくれたんや。

残念ながらアンタらは仏の掌に乗った孫悟空。

に〜が〜さ〜へ〜ん〜で〜〜〜?』

 

そう、この新たな六課は無駄に凝った隊舎に作り変えられてしまっていたのだ。

つーか、こんなことばかりしてるから予算が底をつく羽目に陥ったのではないだろうか。

 

「くそ!!なんだこの無駄に凝った構造は!!下手なダンジョンよりずっと複雑な構造だぞ!?」

 

「ってなんでガジェットや魔物が普通にその辺ウロチョロしてるの!?

ダンジョン内のモンスター扱い!?」

 

シャーリー……こんなのを一晩で作ったのか?

恐ろしい子。

 

なんとか下の階に続く階段まで進んだものの目の前に障壁が。

するとゼロスが自信有り気に進み出て……。

 

「……ここは俺様にまかせておけ」

 

「まかせておけってどうするんだ?」

 

ヴァイスが疑問に思うとゼロスは障壁を発生させている装置をジロジロ見ながら言う。

 

「こんな仕掛けチョチョイと弄ってやれば……。

う〜〜ん。これは……。

クラトス少し手を貸してくれ」

 

「うむ……」

 

ゼロスがクラトスを呼び寄せる。

すると突然クラトスの身体に頑丈なバウンドで何重にも縛られた。

 

「!? 神子!!これは!!」

 

「悪いな……。アンタが一番厄介なんでな。早々に消えてもらうわ」

 

そこにシャマルが転移してきた。

 

「ご苦労様。ゼロス。じゃあクラトスさんをこちらに」

 

「はいよ」

 

「ゼロス!?お前何すんだよ!!」

 

ヴァイスがゼロスの胸元を掴みかかる。

当たり前だ。仲間をコイツは今裏切ったのだ。

許されることではない。

掴みかかったヴァイスの手を払いのけヴァイスを突き飛ばす。

 

「うるせーな。寄らば大樹の陰ってしらねーのか?逃げたって無駄なんだよ。

いいじゃねえか。クラトスだってキレイにドレスアップされる筈だぜ」

 

「ゼロス!裏切るのか?」

 

ロイドが悲しい顔で問いかけるがゼロスは嘲笑に満ちた顔で答える。

 

「うるせーな。俺様はいつだって女性の味方なんだぜ」

 

「フフフ。ゼロスは最初から私達の仲間なの。アナタ達を捕まえるためにね。ね?ゼロス」

 

シャマルが芋虫状態のクラトスを引きずりながら衝撃の事実を言い放った。

 

「……本当なのか?」

 

ロイド達を最初から裏切っていた。

仲間だと思ってたのに……。

 

「神子……貴様」

 

「ゼロス……。いいかげんだけどいいところもあると……思ってたのに」

 

リーガル、エミルもショックを隠せない。

 

「お褒めの言葉あ〜り〜が〜と〜。はやて様がお前達を捕まえれば俺様だけは女装を許してくれるって約束してくれたんでコチラにつくことにしたわ」

 

「女装が嫌か?仲間を売るほどに?」

 

「ああ!!嫌だね。嫌だからこそお前達だって逃げてるんだろ。

誰が好き好んで女装なんてするかよボケ。

たまんねーよ。そんなものから開放されるってんならどんな事だってするわ」

 

「……嘘だ!俺はお前を信じるからな!!信じていいって言ったのはお前なんだぞ」

 

「ばっかじゃね〜の?シャマル様♪さぁ早くクラトスを」

 

ゼロスの背後ではシャマルがクラトスと転移の準備を進めていた。

 

「あとは任せたわゼロス」

 

「ロイド……お前は……生きろ」

 

――クラトスを連れたシャマルが消え、一人残ったゼロスがロイドの前に立ち塞がる。

 

「結局……こうなっちまったなぁ」

 

「……どうしてだ!仲間だったじゃないか!」

 

「仲間……ねぇ。最後の最後に信じてもらえなかったけどな。

まっ……いいってことよ。まぁ実際俺様はお前達を騙してたわけだし」

 

「ほかに何かないのか?これもいつもの冗談なんだろ?」

 

「……まいったね。俺はただ半端者なのよ。自分さえ助かればそれでいい。ただ……それだけだ!」

 

ゼロスの背から黄金の羽が輝き天使化をする。

ゼロスの本気だ。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

「やるからには……本気でやろう。

――雷神剣!!!!」

 

「馬鹿、野郎!!!!」

 

「俺様、ホント馬鹿野郎だな。いくぞ!風雷神剣!!」

 

天使化したゼロスの力は恐ろしいものがあった。

ロイドの剣を捌きカウンターで反撃をかまし、エミルとリーガルの攻撃を紙一重でよけながらエリオのスピードにも対応する。

ジーニアスの魔法も発動の瞬間を視界の隅で確認しながら確実に対応をする。

多対一であるにもかかわらず一歩も引かないゼロス。

 

「――くらいな!!ディバイン・ジャッジメント!!!!

美しぃ〜〜!!」

 

大人数を纏めて攻撃する広域攻撃。

通常のジャッジメントの倍に匹敵する光に飲まれていくロイド達。

これで勝負は決まった。

 

「悪く、思うな……これも俺が助かるためなんだ……」

 

光に飲まれたロイド達はすでに全員戦闘不能の筈。

そう判断してゼロスはその場から離れようとした。

あとはコレット達がボロボロになったロイド達を回収すれば終わりと。

 

しかし。

 

「ゼロス…………。

覚悟はいいか?」

 

「てめえェ、よくも1人だけ裏取引かましてやがるんだ?

俺達を売った償い。受けてもらうぜぇぇええ!!!!」

 

「――天光満ちる所に我はあり。黄泉の門開く所に汝あり。出でよ、神の雷」

 

「――ストラーダ。カートリッジ、ロード」

 

「神子。歯を食いしばれ。特別に足ではなく拳を使ってやろう」

 

そう簡単にはいかなかった。

自分だけ助かろうとしてやがるゼロス。

断じて許しておけない。

完全にロイド達を怒らせてしまっている。

 

「ちょ、ちょっと待てぇ!み、皆目が血走ってる!!落ち着けって!!」

 

「「「「「ゼロス……O☆HA☆NA☆SHIしようか」」」」」

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

「派手に……やってくれちゃったな……」

 

全員に殴られ蹴られ必殺技のオンパレードを受けたゼロスは地面に無様に転がっていた。

 

「……ゼロス……」

 

「……これで……いい。あきあきしてたんだ。生きてることに……」

 

「……そんな事いうな!」

 

「クラトスは……今頃はやてちゃん達に着せ替え人形とされてるだろうぜ。

……お前達もはやく……逃げろ」

 

「い、いまさらそんな事言うなら何で俺達と戦うんだ!」

 

「女装なんてするくらいなら……死んだほうがマシだ!!!!」

 

「まさか、お前そのために……」

 

「ひゃひゃ……ついでだよ。ちゃんと後でライフボトル……使ってくれよ……」

 

――ガクッ……。

事切れたゼロス。ロイド達は俯いてばかり。

行こう……ゼロスの死を乗り越えて。

 

「……と上手くいくわけないよな。お〜〜い。コレット!!」

 

「なに?ロイド?」

 

シュタっと何処からか現れたコレット。

 

「ゼロスをキレイにドレスアップしてやってくれ。

戦闘不能状態だから抵抗されずに済むぜ」

 

「うん。わかった。じゃあ早速ゼロスをはやて達のところに連れてくね」

 

「おう。よろしく頼むな」

 

鬼畜ロイド。

ゼロスがあんな嫌がっていた女装をさせるとは。

 

「自分だけ助かろうとするからだ。行こうぜ皆」

 

 

 

 

 

部隊長室からクラトスとゼロスの断末魔の声が聞こえるが2人の犠牲を踏み越えロイド達は脱出への道を進む。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

六課の隊舎を駆けるロイド達一行。

次に現れたのは。

 

「駄目だよロイド。逃げるなんて……」

 

「おとなしく捕まりなさい!!」

 

スバルとティアナが女性武装局員を引き連れ一行に襲い掛かってきた。

 

「な、なんだ!?この軍勢は!?」

 

「来るぞ!!」

 

「くそっ、これじゃキリがねえ!!」

 

「今のうちに奥の通路まで走れ!!」

 

「わかった!」

 

――一行のしんがりを務めていたリーガルが柱を壊して通路を塞ぐ。

 

「リーガル!!」

 

「ここは引き受けた。はやく行け!!」

 

「何言ってんだよ!そんなことできるわけないだろ!」

 

「わかってるはずだ。このままでは皆とんでもない目に合わされるということに。

一刻も早く此処から逃げるんだ」

 

「リーガル……」

 

「早く行け」

 

「……わかった!リーガル、死ぬなよ。アンタの女装姿なんて見たくないからな」

 

「フッ、当たり前の事を。

……此処から先は通さん!!」

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

しばらく先を進むと通路にガッチリと厳重にシャッターが降りていて行き止まりとなっていた。

この道を進まなくては外に逃げられないというのに。

 

「くそぉ!!なんとかなんねえのか!!」

 

「ちょっと待て……見ろ。ロイド」

 

ヴァイスが指差したところにはゼ○ダの伝説でお馴染み。パチンコや弓矢で開閉する目玉スイッチ。

 

「これは……間違いないね。あれで扉を開ける仕組みだ」

 

ライフルで的を狙うヴァイス。

 

「(目玉を狙う……か。何の因果なんだろうな。……だけど撃ち抜く!!)」

 

ヴァイスの放った弾丸は見事的に当たり扉が開いた。

 

しかし。

 

「ヴァイス!?どうした!?顔色が真っ青だぞ!?」

 

「はぁはぁ……トラウマか……悪い。俺は此処までのようだ。……皆の足手まといにはなりたくない。

……俺を置いていってくれ」

 

「バカヤロウ!!恰好つけてる場合か!!お前を背負ってでも連れてくぜ」

 

「大丈夫だ。ただの……貧血。ちょっと休憩したら動ける。

俺も後から追うからさ」

 

「……本当だな」

 

「絶対さ。だから……」

 

「……わかった。待ってるからな」

 

ヴァイスを置いてロイド達は先へ進んだ。

 

「……俺も馬鹿だね。折角の活躍シーンなんだからもうちょっとでしゃばっても良かっただろうに……。まっ、そんなガラじゃないか。ロイド……しっかりやれよ」

 

 

 

ロイド達を見送ったヴァイスは女性局員に捕まり連行されていく。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

「くそ!また妙な仕掛けが……」

 

今度は機械仕掛けの扉の前で立ち往生する。

どうでもいいがこの仕掛けの数々に妙なデジャブを覚えるロイド。

 

「此処は僕に任せてください」

 

「グリフィス……お前いたのか?」

 

「いましたよ!!空気扱いしないで下さい!!!!

……どうやら此処から操作するみたいですね。此処は僕に任せてください」

 

「グリフィス……早く!!」

 

「急かさないで下さい。これですね」

 

操作盤を操作し扉を開くと同時にグリフィスの足元がガバッと開いた。

 

「え?」

 

――グリフィス君。ボシュートです♪

 

そして奈落へと落ちてゆくグリフィス。

 

「……操作盤を操作する人が穴に落ちると言う仕掛けか。……グリフィスお前の犠牲は無駄にしない」

 

涙を流しながら先へ進む。ロイド・ジーニアス・エミル・エリオの4人。

最後までこの4人は生き残れるのだろうか。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

仲間を次々に失っていくロイド達。

更に先へと進むがまたもや扉の前で立ち往生してしまう。

 

「中からロックされている……だめだ。開かない」

 

「ロイドさん。アレを見て」

 

「アレ?」

 

「あそこから部屋の中に入れるかも。やってみます」

 

「でも1人じゃ危険だ」

 

「大丈夫です。此処は僕に任せてください」

 

「……わかった。気をつけるんだぞ」

 

「はい」

 

――操作盤がある部屋に入ったエリオがロックを解除すると、上から巨大な影が。

 

「ムギュ!?」

 

上から落ちてきたフリードに踏み潰されたエリオ。

こんな事をするのは……。

 

「エリオ君。捕まえた♪さあ帰ろう。フェイトさんもカメラをスタンバイして待ってるよ」

 

やはりキャロだった。

そしてやはりいつもどおりのフェイトだった。

 

「エリオ!」

 

「来ちゃだめ!来ちゃ……ダメです。早く、行ってください」

 

「出来ないよ。俺は、俺は……!」

 

「ロイドさんは優しい人です。でも、優しさに惑わされて判断を誤るなら……ただの甘い人です。アナタは逃げて生き残らないといけない。それを忘れないで下さい。

でないと僕は、アナタの事を軽蔑……します。僕なら、大丈夫です。だから、早く」

 

「ごめん、エリオ」

 

「ロイドさん。……どんなことがあっても捕まっちゃダメです。逃げて、生き残ってください。

アナタなら……出来るはずです」

 

「エリオ。約束するよ。必ず生き残ってみせる。誰もが男らしく生きる世界を作ってみせる!!」

 

 

 

エリオはフリードに咥えられ部隊長室へ連れて行かれた。

また1人大事な仲間を失ってしまった。

だけど悲しみに浸る時間はない。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

「またトラップか!」

 

左右の壁が徐々に迫ってくる。

 

「やべぇ、逃げろ!!」

 

必死に逃げようとするロイド達だが壁のほうが早い。

このままでは皆此処でお終いだ。

 

「こうなったら、俺とおまえとエミルで同時に攻撃して、あの壁をぶち抜くぞ!」

 

「そんな事できるの?」

 

「ドワーフの誓い、第16番。成せばなる!どうせ失敗したら地獄のミスコン行きだ。全力で行くぞ!」

 

「あはは、ロイドらしいや。いいよ。やろう」

 

「いち、にのさんで行くぞ」

 

「……ロイド」

 

「……ううん、なんでもない。僕の方は準備完了だよ」

 

「よし!いち、にの、さん!!」

 

「「さん!!」」

 

「今だ!!」

 

――壁に開いた穴に潜り抜けるロイドとエミル。しかし、ジーニアスは……。

 

「ホラ見ろ!うまくいっただろ?」

 

「ロイドの作戦にしては上出来だったよ。唯一の誤算は僕の運動神経の鈍さかな」

 

「「ジーニアス!」」

 

「へへっ、失敗しちゃった」

 

「おまえ……俺達を逃がすために?」

 

「ち、ちがうよ!!」

 

「嘘だ!こうなるとわかってだんだな!? ならなんで!!」

 

「ロイドだって……立場が逆なら、同じ事をしたんじゃない?いつだって、困ってる人を見ると放っておけなくてさ。後先考えずに飛び出しちゃって。でも、そんなロイドが僕のあこがれだった。僕も、ロイドみたくなりたかった」

 

「おまえ……」

 

「さあ!早くいってよ。手遅れにならないうちにさ」

 

「ふざけるな!!おまえをおいていけるかよ!」

 

「そうだよ!!ジーニアス。あと少しで出口なんだよ。もう少しで自由なんだよ!!」

 

「いってったら! 僕は……臆病者なんだ。いざとなったら、身体が震えてきちゃって……最後にかっこ悪いところ見せたくないんだ」

 

「「ジーニアス……」」

 

「いけよ、いけったら!!」

 

「バ、バカ野郎!!」

 

「大好きだよ……ロイド。僕の、一番、大切な友達……」

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

多くの仲間を犠牲にしロイドとエミルは走った。

走って走って……走り続けた。

そして、とうとう外という自由な空間に脱出できた。

 

「やった……やったよロイド!!僕達は逃げられたんだ!!」

 

「ああ!!やったな!エミル俺達は自由だ。もう女装なんて恐怖に怯えなくてすむんだ!!」

 

ヒシっと抱き合い喜び合う2人。

だが。

 

「スターーライトォ・ブレイカーーーーーー!!!!」

 

ちゅど〜〜ん。

 

「ふぅ……ロイドとエミル。撃破。捕獲確認しました」

 

……知っているか?魔王からは……逃げられないという事を。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

ミス・コン当日。

会場裏出場者控え室。

 

 

 

 

「もう!なにやってんのロイド!エミル!折角僕達が必死に逃がそうと助けてあげたのに結局捕まっちゃうなんて!!」

 

「うるせえ!!俺達だって無事逃げおおせたと思ってたところにいきなりスターライト・ブレイカーだぞ!!あんなのどうしようもないじゃないか!!」

 

ゴスロリ服を着せられたジーニアスとセーラー服を着せられたロイドが待合室で言い合っている。

似合っているかどうかは皆さんの頭の中で想像を浮かべてもらいたい。

 

「うぅ……僕、もうお嫁にいけない……」

 

「キャーーー!!!!可愛いエミルゥ!!!!私の目に狂いはなかったわね」

 

マルタにメイド服を着させられたエミルはシクシクと涙を流すのだった。

 

ちなみにここにいる女装男性全員涙を流している。

みんなケバい化粧や目に毒な服装。

ノリノリでやった女性陣も「うわ〜、これは引くわ」と言う。

そんな事言うなら何故やった?

 

「僕の純潔が……」

 

「あぁ、なんか新しい扉を開けちゃった……き・ぶ・ん?」

 

いろいろ見てて気分が悪くなる光景だ。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

「いよいよ始まりました。女装コンテスト。『Miss・ター・女装コンテスト』

実況はこの私。ちゃっかり初登場・エイミィ・ハラオウン。

審査員はコチラの方々です。

実は無機生命体じゃね?でお馴染み。リンディー・ハラオウン。

この人も割りと暇人?聖王教会・教会騎士団のカリム・グラシア。

ちゃっかり唯一助かった男性局員・ゲンヤ・ナカジマ。

以上の方々です」

 

「ふふ。女性の年齢を訊くのは失礼よ。女はいつだって若いものなのよ」

 

「これも仕事なんです。暇じゃないです」

 

「……よかった。審査員でよかった。女装なんてしちまったらクイントに見せる顔がなかった……」

 

多分だけど……クイントさんが生きてたらゲンヤさんも女装コンテストに参加させられていた気がします。

 

「各審査員の方々には10点満点で得点をつけてもらいます。なお見るに耐えないと判断された場合などは強制失格で退場してもらいます。

早速いきましょー。エントリーナンバー1番。ゼロス・ワイルダー」

 

スポットライトに照らされ姿を現したのは『ワキ巫女』の衣装を着たゼロスだった。

 

「ワキ巫女って……なんでそんなマニアックな恰好をさせられるんだっつーの」

 

「これは……案外ポイントが高そうです。

なんだかんだで女装が似合う男・ゼロス。

……なんだか女のプライドが傷つけられた感じがしますね。

審査員の気になる得点は」

 

8点

9点

7点

 

合計24点

 

なかなか点が上がりませんでしたね。

審査員のカリムさん」

 

「なかなか似合うと思いますが普段も似たような恰好してますのでもっと意外性のある恰好をしてもらいたかったです」

 

「なるほど……。では次回はもっと色物になって参加してもらいたいですね。

続きましてエントリーナンバー2番。クロノ・ハラオウン」

 

婦警のコスチュームに身を包んだクロノ。

応援席には子供達。

 

「お父さんがんばってぇ〜」

 

「お父さんファイト〜〜」

 

お父さんは涙で顔を覆ってます。

子供達の応援が嬉しかったのでしょうか?

いいえ、これはおそらく子供達の言葉がグサグサと心を貫いてしまった痛みの涙でしょう。

しかも実況にいるのは自分の妻。

審査員の1人は自分の母親。

 

「……世界は、いつだってこんな筈じゃなかったことばかりだ」

 

もっともである。

 

9点

8点

8点

 

合計25点

 

妻と母親の評価。

 

「昔のクロノならもう少し可愛い恰好させられたんですけどね」

 

「昔のクロノなら小さかったですしもっと女の子らしくできたんですけどね」

 

「……クロノ提督。酒つきあうぜ?」

 

「……ありがとうございます。ゲンヤ二佐」

 

 

 

 

 

「エントリーナンバー3番。クラトス・アウリオン」

 

どこかの有名女子中学生の制服を着たクラトス。

 

「コメントをどうぞ」

 

「……ジメント」

 

「え?」

 

「ジャッジメントですの〜〜〜〜〜〜〜!!!!」

 

イカン!!錯乱している!!

 

「これはいけません。暴走してしまったため残念ながら退場です」

 

クラトス失格。

 

 

 

 

 

「エントリーナンバー4番。ユーノ・スクライア」

 

上品なドレスに身を包んだユーノ

女顔っていうのもあって結構可愛い……。

 

「さすが優勝候補。幼馴染のなのはさんやフェイトよりある意味おしとやかで女らしいだけはあります。

得点は?

 

9点

10点

9点

 

合計28点!!

高得点です!!」

 

「……うれしくないよ」

 

リーガルのチャイナドレス姿は見るに耐えないと失格。

ロイドは女装コンテストの点数も赤点。

エリオのロリブルマ姿やジーニアスのメイド服がなかなか高得点をたたき出した。

エミルはコンテスト中にラタトスクモード発動!しかしソレが「クール」な一面もあると29点をたたき出す。

ヴァイスやグリフィスを20点ちょっと。

地味な点だった。

その後まだまだ女装コンテストは続いていく。

 

「続きましてエントリーナンバー31番。ジェイル・スカリエッティ……。

…………わいせつ罪の現行犯で逮捕!!」

 

「待て!?まだ私は何もしてないのに!!?」

 

「うるさい。黙っていろ犯罪者」

 

「犯罪の意味が本編とはまったく関係ない物を指してないかい!?」

 

ジェイル・スカリエッティ逮捕。

――StS  完――

 

「あっ、逃げたぞォオ!!追え〜〜!!」

 

……どうやらもうちょっと話は続きそうです。

 

「最終エントリーはこの人!!まさかのミトス・ユグドラシル!!」

 

麦藁帽子を被り、白のワンピース姿。

中性的な顔付きと華奢な身体つきがどう見ても女性のソレだ。

どうやらナンバーズ全員で決死の覚悟でミトスに着替えさせエントリーさせたらしい。

ちなみにナンバーズ全員ただいま治療ポット収容中。

 

「こ、これは……なんと言う事だ……完全に……負けた……男に負けた……」

 

ガクっと膝から倒れるエイミィ。

 

得点は……

 

10点

10点

10点

 

30点!!満点!!

 

優勝はミトス決定!!

……しかし、優勝した筈のミトスはブルブル震えている。

 

「……屈辱だ。……こんな、こんな恰好をさせられるなんて……」

 

やばい。ミトスが怒ってる……。

だが此処で世界で唯一ミトスを止められる人が登場。

 

「……ミトス」

 

「姉さま……?どうして此処に?」

 

「私は今回の特別ゲストとしてきたんです。列車のダイヤルが狂って遅刻してしまいましたが。

それより、ミトス。

あなたはなんということを……」

 

「姉さま?ああ、この恰好のことですか?これにはワケが……。待っていてください。今元の服装に戻りますから」

 

「ミトス。そうではないのよ。私が言いたいのは何故私のコーディネイトでないということよ」

 

「え?」

 

「忘れてしまったの?アナタを着せ替えして遊んでいた4000年前の頃を。

アナタは男物以上に女物が良く似合う可愛い男の娘だったのよ?

その恰好も悪くはないけど私の趣味ではないのよ。こんな服装はやめてもっとアナタに似合う恰好を……」

 

「嘘だ。……姉さまがそんな腐女子みたいな事を言うなんて。

姉さまがそんなこと言うはずがない!!……はは……ははは……あははははは!!!!」

 

マーテルさんが更にとんでもない事をしでかしてくれました。ミトス大暴走。

 

 

 

 

 

ミトスの暴走にてミスコンは大混乱の中終幕を迎えたのだった。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

「はぁ……とんでもない目にあった」

 

「ホントホント。もう女装は勘弁だぜ」

 

「でも誰も優勝できなかったし優勝賞金は獲得できなかったね」

 

資金の調達に失敗してしまったのだからこのまま赤字経営で行くことになるのか?

 

「その事なら大丈夫や。

ロイド達の女装姿を撮った写真がネットオークションでなかなかいい値段で売れるからな。

これでしばらく資金調達は問題なしや」

 

 

 

 

 

「「「「「ネットアイドルは嫌ァああああああああ!!!!!!」」」」」

 

 

 

 

 

※ 許可なく他人の写真を売買するのは犯罪です。やめましょう

 

説明
以前にじファンで掲載していた番外編の話です。
本編とは時間軸がちょっと違いますので出てきていないキャラもいますが細かいところは気にしないでね。

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