IS~歪みの世界の物語~
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19.クラス代表戦当日

 

「シグさ〜ん。…………??」

 

 クラス代表戦で様々な人たちがアリーナに集まる中、結羽はシグを探している。さっきから、あの少年の姿が見当たらない。

 

「あ、隼人さん」

「あれ、結羽さん?アリーナに行かなくていいの?」

「いえ、シグさんを探していて……」

「シグを……?そういえば、教室で姿を見てから見かけないな」

「ですよね……どこに行ったか分かりますか?」

「いや……結羽さんがわからないなら僕も知らないな」

「ですよね………」

 

 うぅ……と、親からはぐれた子猫のように不安そうにあたりを見わたす結羽。

 そう言えば、と思い、実はあまり話す機会が無かった少女に聞きたいことを聞いてみる。

 

「結羽さんって、シグのことが好きなの?」

「…………。……………………?………………(ポッ)?」

「わぁ………」

 

 凄い時間差で、彼女自身の髪と同じくらいに顔が赤くなった。

 

「い、いいいいえ別にそんな感情持っていなくていえ別に好きなんですけどそれは親に抱くような感情でしてその私親がいないから」

「好きなんでしょ?」

「………………はい」

 

 追い打ちに聞いてみると、素直に白状してくれた。

 

「はははっ、そっかそっか〜」

「………うぅ、やっぱり、難しいですかね?」

「え〜っと…………いや、なんというか」

 

 まさか『異世界の住人』だから難しいかも、なんて言えるはずが無い。

 

「で、でも結羽さんは可愛いし、大丈夫だよきっと!」

「……でも私、セシリアさんや箒さんみたいに綺麗じゃないですし」

「大丈夫、僕も手伝うから」

 

 告白されたシグがどんな行動をするか、考えてみるだけでも面白そうだし。

 

「とりあえず、アリーナに行ってみたら?もしかしたらもう言っているかもしれないし」

「はい、ありがとうございます!」

 

 律儀に頭を下げ、トテトテと歩いて行く結羽。

 そんな彼女を見送りながら、楯無のような小悪魔のような雰囲気で、楽しそうに微笑む。

 人の恋愛などに関してはけっこうSな隼人であった。

 

 

 

 

―――――ピピピッ、ピピピッ!

 

「……ん?」

 

『プライベートチャンネル』の簡易式にした装置から、知らせがはいった。

 この世界の「けーたいでんわ」と言うものを持てていないので、ISを作る過程に作ったのだ。

 通信範囲はかなり広く、どこに居ても通じるのだが、相手はISを起動させないといけないためかなり使い勝手が悪い。早く、手に入れたいな……楯無と一緒に買いに行けば何かオススメとかも―――………。

 

「楯無……」

 

 そういえば、最近会っていない。……けど、そういえば一度だけ遠くから睨まれた。

 かなり怒っていた様子だし……何か悪いことでもしたのかな?

 

「どうした、隼人?」

『………まだ誰か言っていないんだけど』

「まぁ、この機械自体、お前ら兄弟しか知らせていないからな」

 

 ついでに、隼人の専用機である『月影』にも展開させずにチャンネルを開ける仕組みにしている。

 

『それで、シグは今どこにいるの?結羽さんが探していたよ?』

「あぁ、昨日お前が言っていたことの対策」

『……襲撃の事?』

 

 昨日隼人が「小説の通りなら明日襲撃がある」と伝えてくれた。

 先にそれを知らせてくれるなら、こちらも手を打ちやすい。

 

「俺はその襲撃対策で忙しいからな。結羽には行けないと伝えてくれ」

『……何する気なの?それに、別にそこまで気を張らなくても兄さんは死なな』

「―――――その油断が、命取りになる。

 もし、一夏のISに異変が起きたらどうする?瓦礫か何かが一夏に落ちたらどうなる?」

『そんなこと、さすがに……』

「ない、とは言い切れないだろ?」

『…………………』

「ま、俺の対策は念のためだ。何もないならば、それでいいからな」

『…………わかった』

「すまないな、隼人。ところで試合はいつから―――」

 

 ワァァァァァァァッ?

 周りの歓声が大きくなり、鈴が、そして一夏がISをつけてフィールドに姿を見せる。

 

「……今からか」

『そうだね。あぁ……鈴ったら、まだ怒っているのか』

 

 何かがあって、初日に見た時よりもさらに機嫌の悪い鈴を見たからか、隼人の声が苦笑じみている。……相談者も大変だな。

 

 

 

 兄さんと鈴が短く言葉のやりとりをした後、二人が動き出す。

 小説と同じように、鈴の武器を兄さんが『雪片弐型』で受け止める。そして、兄さんが警戒して後ろに下がった直後――――

 

 スッ――――――ドンッッ?

 

「………………?」

 

 見えない空気の衝撃波。

 わかっていても、ほとんど見えない衝撃波に思わず息を飲んでしまう。

 

『………なるほど。空間に圧力をかけてあの衝撃波を生み出すのか……。』

「シグ、あれって『月影』の「剣の反射鏡」使えるかな?」

『あの能力はまだわからない事が多いから何も言えないが……同じ空気である俺の技も返せたんだ。能力を発動できる可能性は高いかな』

「う〜ん……なら大丈夫なのか?ちなみにシグはアレをどうやって対処するの?」

『一応見えているからな。基本避けてあとは煌煉で打ち砕く』

「………見えてるの?あれ」

『だてに、魔法のある世界に暮らしていないからな

―――――お、一夏が勝負に出るみたいだぞ』

 

 シグの言葉につられてアリーナを見ると、兄さんが『雪片弐型』の能力「零落白夜」を発動していた。

 

「…………シグ」

『ん、どうした?』

「来るよ。『敵』が」

 

―――――――――ドォォォォォンン??

 

 言葉が終わると同時に、強い衝撃が起きた。

 小説の通り、襲撃の時間も同じタイミ………ン……グ。

 

『……なるほど。体全体に装甲を張っているISか。これがお前の言っていた侵入者』

「――――――シグ!今すぐ兄さんたちの所へ行って!」

『……あの敵、お前が言っていた襲撃者とは違うのか?』

「いや、合っている!姿かたち全部同じ!

 

 

 

―――――――けど、『二体』も敵はいなかった?」

 

けれど遅い。

 襲撃者の一人が鈴にめがけてビームを放ち、一夏が鈴を抱きしめるように一緒に避けた。

 ここまでは小説の通り。けど、今は二体目が一夏達に銃砲を向けていた。

 死ななくても、この攻撃が当たれば小説の通りに進まなくなる。

 

「――――――鈴、兄さん?」

 

 隼人の叫び声は届かず、高出力のレーザーが二人のISに――――………。

 

 

 

『――――――だから、任せろっていっただろ?』

 

 ガァァァンッッッ??

 鈍い音が鳴ると同時に放たれたレーザーは、兄さんとは見当違いの方向へと飛んで行った。

 

 

 

 

 

 

「シグ?」

「ちょっ、あんた、何でここにいるのよ!?」

「気にするな。最初から入っていただけだ」

「最初から?センサーには何も反応無かったわよ?」

「ISのセンサーを無効化にする結界を作ってみたからな。まさか成功するとは思わなかった」

「だからってあんたね!」

「―――シグ、鈴!来るぞ!」

 

 一夏の声に反応して俺と鈴は即座に回避行動に移る。

 二体の銃撃は激しく、俺も一夏も鈴も、かするほどにビームを受けてしまう。

 

「……っ、このままじゃ埒が明かないか」

「シグ?」

「何で前に出てるの?」

「俺が一体引き受ける!お前ら二人でもう片方を頼む?」

「な、無茶だシグ!」

「俺がやられると思うなら、さっさと一体倒して援護に来てくれ?」

 

 会話を強制的に終わらせて、棍棒である煌煉を具現化し、衝撃波を一体に当てた。

 隼人は、襲撃者は一体だと言っていた。つまり、物語通り俺が一体を引き受ければ、最悪の事態にはならないはず……!

 

「おっ……!」

 

 侵入者の一人が俺に、もう一人は一夏達の方へと向かった。

 ちょうどいい。さっさと倒してみせる!

 

「“金輪撃”!」

 

 体を回転させながらがら空きの体に煌煉を当てる。

 だが、それにダメージを受けた様子もなく、ビームの発射口が俺の目の前に持ってこられる。

 

「うぉっ?」

 

 避けるのが遅れ、ビームが頬を擦れたぶんシールドエネルギーが減らされる。

 ―――――けど、捕えた!

 

「――――“零距離の衝撃波”」

 

 手のひらから強い衝撃が送られる。追撃にもう一度煌煉でガンッッッッ?

 

「――――え?」

 

 敵の腕が、俺の腹にめり込んだ。

 予想外の事に踏ん張りが利かず、一気に体が飛ばされた。

 

「――――……………? 馬鹿な……!」

 

 いつもの威力だと装甲があるせいで中にいる人間に威力が届かない事はわかっている。だから本当に殺す気で撃ったのに……。

 

「…………隼人。こいつら―――――………?」

 

 通信機を使うが、ザーザーとノイズの音しか聞こえない。電波障害か、クソっ。

……まぁいい―――――試してみれば、速いか。

 

「来い『死闇』!」

 

 手元に黒い霧が集まり、大きな鎌が具現化する。

 それを見てか、敵は自身の体を回転させながらビームを放ってくる。

 

「当たるか……よ!」

 

 そう言った瞬間に頬にビームがかすった。

 少し冷や汗をかきつつ死闇を大きく振りかぶる。

 

“闇の波紋”

 

 黒い鎌を敵の腕にめがけて振り下ろす。

 だが、敵は回り始めた自身の体を強制的にとめ、即座に後ろへ下がり回避。一瞬の回避行動に思わずシグは

 

「ま、それは予想通りだ」

 

 ニヤリとシグが笑みを浮かべた瞬間、敵の右腕が胴体と切り離された。

 

「残念だったな。“闇の波紋”は俺が切り裂いた瞬間に衝撃波を生み出してくれるんだよ。当たればより深く。当たらなくても追撃してくれる」

 

 代償としてかなりの魔力を食うのだが、別にそれはどうだっていい。

 シグの視線は、敵の『血が出ていない腕』に向けられていた。

 

「やっぱり……てめぇ機械か!」

 

 俺の言葉に答えるように、機械が左うでにつけられた銃先を向けてきた。

 

「当たるかよ!」

 

 今度こそ銃撃を全て避けながら、ポーチに入っていた琥珀色の魔法石を取り出し、敵に向けて投げる。

 魔法石が地面に着いた瞬間に地面が変形し、下から上に盛り上がるように円錐型の槍へと形を変える。

 上空に跳ばれて敵が槍の餌食になるのを回避。そして、予定通り――――地面が変わった時に吹き飛ばされた敵の腕が、俺の足元へと転がってきた。

 

「一夏、鈴!!」

 

 戦っている二人にめがけて、敵の腕を投げる。一夏が受け取り、驚愕の表情を浮かべたのが見えた。よし!

 

「相手は機械だ!遠慮せずに殺せ?」

「――――――。――――?」

「――――!?――――――??」

 

 声は聞こえないが、二人で何か作戦を立てるような雰囲気。

 敵が人か機械かで戦い方も変わってくる。とりあえずは向こうの事は二人に任せて……

 

 後ろに向き直り、元々俺の相手をしていた敵の体当たりを死闇で受け止める。

 

「……人間でないなら、こっちも遠慮する必要は無いんでね!

――――“拘束魔法1/2”」

 

 一閃。死闇を使い、敵の首を切り離した。

 さらに、敵の体を強引に引き寄せ、バチバチッと千切れた回線が見える首元に手を乗せ“零距離の衝撃波”を打ち込む。

 人間のようにビクンッ!と敵は動いた後、ゆっくりと後ろに倒れギュンッッ?

 

「うぉっ!!?……あぶねぇ」

 

 倒したと思った直後、悪あがきかビームを放ってきた。

 けれど、首と片腕を落としたおかげかビームは明後日の方向に―――――

 

 

「ぐぁっ!?」

 

 後ろから、一夏の声。

 

「一夏!?どこから来たのよ、このビーム……!」

 

 驚いたような鈴の声。

 ………『どこから来た』?

 

 嫌な予感がして後ろを向く。

真後ろに、そして、先ほどのビームの射線上に一夏が倒れこんでいた。

 

「やられた……!」

 

さっきの射撃は、俺を狙ったんじゃなかったのか!

 そう思っている間に、一夏たちに任せていた敵が動く。

 

「一夏!あんた、どきなさいよ!!」

 

 敵が動いた目的を察したとっさに鈴が衝撃波を放つ。しかし、その衝撃波は簡単に敵が打ち砕いた。

 

そして―――――倒れている一夏に向けて、敵はビームを放った。

 

説明
19話目です!
更新遅くなってすみません……
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