もしも11 |
ここは、洛陽への関門の一つ、虎牢関。
完全無欠、難攻不落、七転八倒と言った代名詞がつけられる程の場所だ。
そして、そんな虎牢関の城壁に赤い髪に褐色の肌をした少女が、一人悲しげな眼をして遠く彼方を眺めていた。
その視線の先にある物は、氾水関。
いや、正確に言えば少女が――呂布が見ていたのは氾水関ではなく、そこで戦っている戦友と、少女の半身とも言える最愛の男であった。
「…一刀……みんな…。」
仲間の安否を心配する呂布。
ちなみに、これは余談だが、呂布の一刀の呼称がいつぞやの『だんな様』から『一刀』に戻っているのは、一刀の切実な願いからである。
…と、そのとき。
「恋殿?!!」
そう言って、薄緑色の髪をした少女が、トテトテと走り寄ってきた。
ちなみに、『恋』は呂布の真名である。
「…ちんきゅ。」
ちんきゅと呼ばれた少女、名を陳宮、字を公台と言い、董卓軍(彼女が言うには呂布軍)の智将である。
「篭城の準備が整いましたですぞ!」
「……わかった。…ちんきゅ、休んでて良い。」
「そ、そんな訳にはいかないのですぞ!!」
「………」
無言+困り顔で訴えて来る恋に、
「うぅ…そんな顔しないで欲しいのですぞ…」
陳宮は困っていた。
その時――――――
「も、申し上げます!」
一人の兵士が慌てた様子で駆け付けて来た。
「そんなに慌ててどうしたのですぞ?」
「はっ!先程、氾水関を守る北郷様より通達!多勢に無勢な為、至急、虎牢関より援軍を頼むとのこと!」
「なっ!?北郷の奴は何を考えているのです!そんなの無理に決まっているのですぞ!」
兵士の報告に陳宮は異を唱えた。
実はこの虎牢関、守将が呂布と陳宮の二軍だけなのだ。
そんな状況で援軍に行こう物ならば、虎牢関はもぬけの殻である。
普通は陳宮の様に異論を唱えるのだが…
「…行く。」
「……………は?」
彼女の主君、呂奉先は違った。
「…恋、一刀助ける。霞と刹那も助ける。」
彼女の意志は堅かった。
「うぅ…恋殿ぉ?」
批難めいた声をあげる陳宮だが、実は半ば諦めていたりするのだった。
「はぁ…恋殿がこうではどうしようもないのですぞ…全軍、これより氾水関へ援軍に向かうのですぞ!!」
陳宮の号令で一斉に氾水関へ向かって行った呂布軍――――
―――それが、自分達の考えている世界でない事も知らずに
一方、当の氾水関はというと……
「はぁーーー!!」
ブンッ!!
「せりゃぁああ!」
ヒュン、ヒュン!
「ぎゃあ!!」
「ぐはぁ!!」
「助げごぶぁ!!」
ドサッ…
華雄、張遼の猛攻と一刀の策略により、連合軍に少しずつだがダメージを与えていた。
「ふんっ、連合軍と言えども、所詮は統率の取れぬ烏合の衆か…」
大斧を担ぎながら、鼻で笑う華雄。
「せやけど、油断は禁物やで、刹那。」
飛龍烈空刀を構えながら注意する張遼。
ちなみに、『刹那』というのは、華雄の真名である。
「わかっている。しかし、この程度の団結で我らに挑もうとしていたのか、連合軍は?」
刹那が疑問を持つのも無理はない。
劉備、公孫賛の軍は一刀の計略で混乱しており、曹操と孫策の軍は部隊の配置的に、他の軍より負荷が大きかった。
…袁紹と袁術は言わずもがなであろう。
「…もしかして、ウチら相当嘗められとる?」
「もしかしなくともかなり嘗められているな。」
張遼の疑問に、あっさりと肯定する刹那だった。
「さてと…戦況はまずまずかな?」
氾水関の城壁から、俺、北郷一刀は戦場を…いや、地獄を眺めていた。
周りは炎に覆われ、崖からの奇襲により士気が低下。
おまけに、霞、刹那の二人の猛攻。
互いの兵力に差が無ければ一方的な展開だっただろう。と、
「報告!援軍の要請をした呂布将軍、陳宮様の軍が間もなく到着致します!」
「わかった、ご苦労様。下がって良いよ。」
「御意!」
それだけ言って兵士が下がろうとして…
「…あの、北郷様。一つお伺いしても宜しいでしょうか?」
こちらに向き直り、聞いてきた。
「ん、なにかな?」
まぁ、大方の予想はついてるけど。
「はっ。何故、先程呂布将軍達に援軍の要請をしたのでしょうか。それも、こちらが不利なような言い回しで。」
ほら、やっぱり。
「あぁ、それは…――「報告!呂布将軍、陳宮様が氾水関に到着致しました!」――…っと、わかった。ご苦労様。下がって良いよ。」
「御意!」
タッタッタッ…
兵士が走り去ってから数分後…
「…一刀!」
物凄い勢いで恋が駆け寄って来た…って
速い速い速い速い!?
オリンピックの記録っていうか、人の限界ををゆうに越えてないか、あれは!
「ちょっ、恋!その勢いは危険だから止まれって!?」
「……ッ!!」
キキーーッ!!
俺に言われてすぐに急ブレーキをかけた恋だが、さすがに勢いを消し切れず…
「あ。」
「うぉわ!?」
ドンッ!ガラガラガラガッシャーン!!
そのまま正面衝動してしまった。
「…イツツ。…大丈夫、恋?どこか…怪我…は…」
体を持ち上げると、眼の前に恋の顔があった。状況的には、俺が恋を押し倒している格好である。
「あ…///」
よく見ると恋も顔が少し紅潮していた。
「恋…///」
だんだんと二人の顔が近づき…
「かず…と…///」
そして、おたがいの唇と唇が―――――
「ち?んきゅ?キィィック!!」
ドガッ!!
「ぐはぁ!」
―――――重なり合うことはなかった。
「どさくさに紛れてなにしてるですか、この変態は!!」
「いやいや、これはあくまで事故でして?!」
凄い剣幕で迫り来る音々音(陳宮)に必死に弁解する俺。
「そんな言い訳が通じるわけが…まぁ、良いですぞ。それよりも、戦況はどうなっているですぞ?」
「はっ!それは自分が報告致します!」
納得してない感じで問い掛ける音々音に近くに居た兵士がこれまでの戦況を報告する。
初めの方は音々音も興味深げに聞いていたが、だんだんと訝しむような目つきになり…
「…と、言うわけで北郷様の策略により我らが優勢であります!」
プツン――――――
あ、キレた。
「…どこが苦戦しているのですぞ!!というか、これだとねね達の出番は全く無いのですぞ!?」
ごもっとも。
「…一刀、恋達に嘘ついた?」
…恋さん?そんな、不安と批難が入り交じった眼で俺を見ないで下さい。
「いや、俺は嘘は言って無いぞ?」
「………………?」
俺の答えに疑問符を浮かべる恋。それから…
「なにを言うのです!現にこうして伝令の報告した内容と一致しないのです!」
異論を申し立てる音々音。
「あのさ、音々音。伝令さんからは、なんて報告を受けたんだい?」
「だから、多勢に無勢だから援軍を寄越せt……え?」
そこまで言って音々音は気がついた。
「『多勢に無勢だ』って言っただけで『苦戦してる』なんて一言も言って無いよね?」
俺の問いかけに、音々音は渋々ながら頷いた。
「さて、誤解も解けた事だし作戦の説明をするよ。」
そう言って俺が説明した策に対し、恋と音々音は肯定してくれた。
「ハァ…そろそろ雑魚の相手も飽きてきたな…」
「ホンマやなぁ…」
溜息まじりに呟く華雄に賛同する張遼。
そこへ…
「「「待て!(待つのだ!)」」」
三つの制止の声がかかった。
「…なんや?」
「誰だ、貴様らは?」
「我が名は関羽!!苦しむ民草の為に立ち上がった大徳が矛なり!」
「我が名は趙子龍!敘州が太守、劉玄徳が家臣にして、常山の昇り龍である!」
「鈴々の名前は張飛なのだ!燕人張飛とは鈴々のことなのだ!」
「なに?…そうか、先程のは貴様らだったのか。」
「随分と言ってくれたやないの。」
相手の正体が解った途端、戦闘態勢に入る華雄と張遼。
その時――――――
「「「オォォォ!!」」」
ドドドド…
謎の軍勢(何故謎かと言うと、旗がたっていないから。)が敵の後方…つまり、華雄達から見れば、前方から突っ込んで来たのである。
しかも、敵を一撃で仕留めながら。
「お、おい霞!何なんだ、あの軍勢は?!」
「そんなん、ウチが知っとる訳無いやろ!?」
そんな口論をしていると、軍勢の先頭を走っていた人物が、華雄達と関羽達の間に割って入るように横切りながら、馬を降りた。
その者の鎧は白銀に煌めいていた―――
その美しさは例えようが無く―――――
己が存在を、ここぞとばかりに主張していた―――――――
そして、その者が兜を外す。
その者の顔は―――
突如華雄達の前に現れた謎の軍勢―――
果たして、華雄達の運命やいかに―――
次回を見るのですぞ
反省兼あとがき
ども、作者の呂布です。
なんかネタが浮かばない&久々に投稿したんで思い付くまま書いてみました。
んで、一つ思ったことが…
音々音似てねぇぇ!
ってか、軽くキャラ壊れてねぇ?!
…コホン。すみません、少々取り乱しました。
ともかく!こんな駄文を読んで頂き、ありがとうございます!
次回作品も楽しんで読んでいただければ嬉しく思います!
では、またいつか!
説明 | ||
いやぁ?、中々ネタが浮かばないですね。 そんな事態で書いた文なんで、十割中九割九分九厘皆さんのお気に召さないと思いますが、それでも宜しければどうぞ。 |
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コメント | ||
はやく・・・続きが読みたいです・・・(水上桜花) 続きまってますねw(ななや) 一気に読ましていただきました!たのしみだぜ〜〜〜(motomaru) 謎の軍団。敵か味方か?(ブックマン) 誰だ!・・・さて続篇が愉しみです^^w(Poussiere) 気になる終わり方して!続編待つしかないじゃない!(笑)(混沌) 誰だ!気になるううううう!!!次回期待!(atuantui) 続編おつですー!正面から来た軍…敵軍増援なのか?はたまた…気になるぜー!執筆頑張ってください^^(だめぱんだ♪) おおおおお!誰だ!誰なんだ!!!!?(いずむ) そのお気持ち分かります。頑張って最後まで執筆してください!(タンデム) |
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