英雄伝説〜運命が改変された少年の行く道〜
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〜オーロックス峡谷〜

 

「「秘技――――百烈桜華斬!!」」

「「グッ(キャッ)!?」」

互いに同じ技を放った二人は同時に吹っ飛ばされ、それぞれ空中で受け身を取って着地した。

「―――驚きました。かつてユミルの雪山でエリスと私を守る為に使った”あの力”も使わずに、”皆伝”に到った私と互角……いえ、互角以上に戦うなんて。」

「みんながいなかったら、ここまで強くなれなかったさ。―――勿論エリゼ。お前もその内の一人だ。」

「兄様……………私だって兄様がいなければ、きっとここまで”到って”いなかったでしょう……私が強くなると決めた一番の理由は私が心から愛している兄様の”支え”になる為だったのですから……」

「エリゼ…………一つ聞いてもいいか?」

エリゼの話を聞いて呆然としていたリィンは気を取り直してエリゼを見つめて問いかけた。

 

「何でしょうか。」

「エリゼは”本来のエリゼの運命”を知っているのか?」

「!!―――はい。本来なら私がアルフィン皇女……いえ、アルフィン義姉様の友人としてエリスの役割をしていた事や、エリスが本来の歴史では存在していなかった事も全て知っています。―――キーアさんには今でも私の運命を変えてくれた事に心から感謝しています。」

リィンの問いかけに目を見開いたエリゼは静かな表情で答え

「理由を聞いてもいいか?」

「キーアさんは私が心から愛している兄様の”支え”となる為にずっと必要と思っていた事――――地位や力、そしていざという時に私達の味方になってれる後ろ盾を得る切っ掛けを作ってくれました。その結果辺境の男爵家の子女から大国の皇帝の跡継ぎである皇女の専属侍女長にして”八葉一刀流”の”皆伝”の一人へと成長した私がこの場にいます。”本来の運命”と比べれば地位も力、そして人脈もあり、あらゆる面で兄様の助けとなり、”支え”になる事もできます。それに本来ならいなかった妹もいますしね。」

「姉様…………」

エリゼの本心を聞いたエリスは呆け

「―――アルフィン義姉様……いえ、今だけは”姫様”と呼ばせて頂きます。姫様には大変失礼ですが、私は本来の運命――――姫様の付き人でなくてよかったと今でも思っています。」

「エ、エリゼ!?」

「……何故でしょうか?」

エリゼがアルフィンの付き人でなかった事を良いことと断言した事にリィンが驚いている中、自分が侮辱されたにも関わらずアルフィンは怒る事なく静かな表情で問いかけた。

 

「私が姫様の付き人を務めていたとしても、姫様では私が望んでいるもの―――地位や人脈の用意もそうですが、後ろ盾になれるとはとても思えません。」

「そ、それは……………」

「……何故それほどまでに君は地位や人脈、後ろ盾を求めているのだい?」

エリゼの言葉にアルフィンが辛そうな表情で言葉を濁している中、オリヴァルト皇子は真剣な表情で尋ねた。

「全ては兄様の為です。」

「え……………”俺の為”ってどういうことだ、エリゼ!?」

「兄様が”尊き血”を引いていないからという下らない理由だけで、帝国貴族の方々は父様と母様を罵倒し、その結果父様達は社交界から離れ、ユミルに引きこもりました。その事を知った時私は悔しかったです……何故”尊き血”ではないという下らない理由だけで兄様が……私達の家族が否定され、罵倒されなければならないのか、と。そして同時に思いました……シュバルツァー家に地位や人脈があれば、そのような事にはならなかったではないのか、と。現にユーシスさんは母親は”平民”の血を引いていながらも、”尊き血”を重要視する帝国貴族達からは”貴族”として認められています。」

「姉様……」

「エリゼ……」

エリゼの話を聞いたエリスとリィンはそれぞれ複雑そうな表情をし

「……まさかお前は帝国貴族達を見返す為に地位や人脈、後ろ盾を求めたのか?」

目を伏せて黙り込んでいたユーシスは目を見開いて真剣な表情で尋ねた。

 

「いえ。ただ私は兄様を認めて欲しかった……―――それだけです。ですがその為には帝国貴族達ですら逆らえない後ろ盾が必要で、その後ろ盾を手に入れる為には人脈や地位が必要です。」

「そして君が求めていた後ろ盾とはリフィア殿下―――いや、メンフィル皇家である”マーシルン家”か…………エリゼ君、帝国貴族達が仕える存在―――エレボニア皇家であるアルフィン殿下――――”アルノール家”では何故役不足なのだい?」

エリゼの答えを聞いて重々しい様子を纏って呟いたアンゼリカは真剣な表情で問いかけた。

「その理由は到って単純です。リウイ陛下やリフィアは”百日戦役”で活躍した事によって、当時のエレボニア帝国の人々に恐れられた存在だからです。エレボニア帝国にとって恐怖の対象であるメンフィル帝国の皇族ならば、例え帝国貴族と言えど逆らう事はできませんから。」

「……ま、エリゼの言っている事は真実じゃな。実際夏至祭の際リィンを罵倒した愚か者達を余やリウイが一睨みして注意した途端、腰を低くして余達の顔色を窺うように謝ってきたからな。」

「そんな………!ただ”強い”という理由だけでアルフィン殿下達―――”アルノール家”を見限ったの!?皇族の人達の戦闘能力が高くて、戦場で活躍するなんてことはエレボニアの皇族達を含めて普通はありえなくて、プリネ達―――マーシルン家が特別なだけなんだよ!?」

エリゼの言葉にリフィアは静かな表情で肯定し、エリオットは信じられない表情で声を上げて反論した。

 

「私が求める後ろ盾は”強い皇族”です。”強い皇族”であるメンフィル皇家の方々の加護を受ける事ができれば、”尊き血”を重視する貴族達も兄様を認めてくれる……当時まだ幼かった私はそう思いました。そしてメンフィルに留学してマーシルン家の事を知れば知る程マーシルン家があらゆる意味で”強い”事を知り、レン姫やルクセンベール卿の存在によって、私の推測は確信へと変わりました。」

「え……あ、あたしとレンさんがですか?」

エリゼの答えを聞いたツーヤは戸惑い

「…………うふふ、なるほどね。レンとツーヤ……二人とも元は”平民”で、しかもリィンお兄さんと同じ、当時は両親が誰なのかわかっていなかったものね。」

ツーヤと違い、理由を察したレンは口元に笑みを浮かべて答えた。

 

「あ…………」

「……言われてみればレン姫とツーヤはリィンと共通している点がいくつかあるな。」

「厳密に言えばツーヤは元は正真正銘の王女―――”尊き血”を引く者ですが、私の専属侍女長兼親衛隊長に任命された当時は記憶がまだ戻っていませんでしたから、その頃のツーヤは”平民”として見なされていました。」

レンの答えを聞いたツーヤは呆け、ガイウスとプリネはそれぞれ静かな表情で呟いた。

 

「兄様と様々な共通点があるお二人は皇族として……貴族として認められ、”尊き血”を重要視する帝国貴族達も決してお二人の事を侮辱する事なく接しています。更にファラ・サウリン卿とルーハンス卿……お二人も平民でありながら、”尊き血”を重視している貴族達からも貴族として見られています。以上の事からエレボニア―――いえ、ゼムリア大陸にとって”最強”の存在にして”強い皇族”であるマーシルン家の方々に目をかけて頂ければ、兄様の事を認めなかった貴族達も兄様を認めてくれる……そう思ったのです。」

そしてエリゼはリフィア達等一部の者達しか知らなかった自分の本音をその場にいる全員に語った。

 

 

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リフィアの専属侍女長というメイド達の誰もが敬遠する(コラッ!)大役をエリゼが自ら望んだ理由がようやく語られました。ちなみに光と闇の軌跡のエリゼも同じ理由だと思ってもらって構いません

説明
第614話
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コメント
本郷 刃様 確かにw 匿名希望様 どう考えてもアルノール家を怖がっていなかったからかと思いますよ。現に貴族連合は王族達を利用したのですから(sorano)
シュバルツァー家が周りからめちゃくちゃに言われてるのは、原作でもそうですけど、あれって変な気がしますね。そもそも皇帝陛下と所縁のある家に対して、文句でも言おうものなら、皇帝からどんな罰が与えられるかわからないのに。(匿名希望)
まぁ真実という蓋を開けてみれば、リィンもレンもツーヤも家柄や親をみれば相当だったりそれなりのものですけどね(本郷 刃)
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