義輝記 星霜の章 その三十五
[全1ページ]

【 久秀からの鎮魂歌? の件 】

 

? 司州 河南尹 鶏洛山付近 にて ?

 

護衛兵が……白装束の兵に蹴散らされた後、仮面の将が近付く!

 

颯馬「うぐぅッ! ひ、久秀殿…………!?」

 

光秀「────久秀ッ!!」

 

般若の面を付けて、しなりしなりと……歩いて近付く小柄の人物は、途中で止まる。 そして、颯馬たちの様子を眺めると、口に手を軽く添え……コロコロと笑う。 

 

仮面を被っているので、素顔が分からないが……声は……間違いなくアノ人物のもの。 特徴的な紫色の長い髪を震わせて……それはそれは……おかしそうに。

 

久秀「ふふふふふっ……大分つらそうなようねぇ? うふふふっ! 策士自らを犠牲にした策、実に見事だったわよ? だけどねぇ……余りにも、自分の身体を蔑ろ(ないがしろ)にし過ぎじゃなぁい? ……颯馬ぁ〜あ?」

 

その言葉に直ぐに反応した凪、愛紗は、颯馬たちの前に出て、近付く者たちの行く手を阻む! 

 

颯馬の……命を懸けて行った奇策を……! 

 

散々自分に刃向かった、愛紗をも救う為に実行した策謀を!! 

 

侮辱する言葉に────二人は怒りを露わにする!!!

 

凪「黙れぇえええッ! 貴様が、貴様たちがッ! 天城さまに、災いを齎した張本人だろうがぁああッ!! この私が居る限り、貴様たちに指一本たりとも……天城さまへ触れさせる事───まかり通さんッ!!」

 

愛紗「………この方に……大きな借りを作ってしまった私だ! 松永久秀とやら! 天城さまを……害する考え未だ捨てぬのなら、容赦なく──我が青龍偃月刀で、貴様の欲望ともに叩き斬ってやるッ!!」

 

凪と愛紗が、それぞれが武器を構え……久秀と思われる将に対峙! 

 

颯馬に近づけば、ただでは済まさない気概を見せつけた!!

 

光秀「お二人共、気を付けて! 久秀の謀略は、颯馬に匹敵する相手! 無闇に行動すると罠に嵌まる恐れがッ!?」

 

久秀「フッ! 颯馬の策に頼りっぱなしの薄情な女共は、黙っていなさい! 自分たちの無知をさらけ出し、久秀に八つ当たりするなんて……大人げなさすぎるわ。 でも、そんなアンタたちの顔も、これで見ないで済むわよ!」 

 

『───────!?』

 

般若面の者は、そう言って片手を上げながら、ある童謡を歌いだす。

 

久秀『♪かぁこめ〜かぁこめ〜! かごの中の鳥は、何時何時出遣る! 夜明けの晩にぃ……♪』

 

日ノ本の童謡───『かごめかごめの歌』を─────

 

★☆☆

 

──────ザザザザッ!

 

白い布を被る異様な姿をした傀儡兵が、久秀の歌に反応して──素早く展開!

 

傀儡兵は一部を除き散開し……颯馬たちを取り囲む包囲網を結成! 

 

颯馬たちに、逃走されないようとの動きか? それとも、包囲した後、一斉に攻撃する気なのか? その意図は……久秀のみが知る!

 

ーーー

 

颯馬「ひ……久秀……どの! その歌は……グホッ!!」

 

光秀「そ、颯馬! 颯馬ッ! しっかりして下さい!!」

 

ーー

 

凪「天城様ッ! 今しばらくッ! 今しばらく……耐えて下さい!!」

 

愛紗「貴様らッ! ───そこを退けぇ!!」

 

ーーー

 

徐々に顔が青ざめる颯馬に、光秀は必死に叫び──手を握りしめて抱きかかえる。 凪や愛紗は、その様子を見て──危惧や焦りを感じとる!

 

しかし、傀儡兵は、それぞれの持ち場に着くと、手に持つ刃渡り三尺(約70a)の剣を煌めかせ、挑発するように……ユラリユラリと……動かす。 

 

まるで、颯馬を気遣う将たちの様子を、敢えて逆撫でするかの如く!!

 

そして、般若面の前には、数人の傀儡兵が集まり、防御にも攻撃にも取れるように陣を敷いている! 

 

その者は、余程の重要人物だと……ハッキリ示していた!!

 

ーーー

 

久秀「クスクスッ! 『♪籠の中の鳥はぁ、何時何時〜出遣るぅ?♪ 夜明けの晩に、鶴と亀が滑った?』 ………この意味が分かる? 聡明な光秀なら、解けると思うけど〜なぁ? これが、貴女たちの結末……!」

 

光秀「………私が包囲網から逃れる術は無い。 すなわち、夜明けの晩……この世に存在しない刻限! 鶴と亀……吉兆の象徴が転ぶと云うのは、即ち死を表す! この包囲網の脱出する事なく、全員……殺されるワケですか!?」 

 

『────────!』

 

久秀「流石ね……! でも……颯馬だけは……意味が違うの!」

 

光秀「────どういう事ですかッ!?」 

 

久秀「鶴と亀の意味は合っているわ。 だけど『夜明けの晩』……それはね……『颯馬と久秀の死に場所』よ!」

 

光秀「───────!?」

 

久秀「久秀の命数も……あと少しで尽きるの。 だからぁ久秀が、颯馬だけを別の場所に連れて行くわ。 貴女たちは、この場で傀儡兵どもに無様に殺されなさい! 颯馬を同じ場所で死なすなど、久秀の美意識が許さない!!」

 

光秀「な、何を勝手な──ッ!?」 

 

久秀「……于吉が話す『暗く冷たい星の海の世界』という場所。 そこは、夜が明けても暗いまま。 天空に輝く夜空の中で、二人とも……誰にも邪魔されずに、永久にその姿を留めて一緒に居るの。 ───素敵だと思わない?」

 

光秀「久秀ッ! 貴女に何の権利があって、そのような真似をするのですかッ!? そもそも颯馬は──私を選び共に生きるとッ!!」

 

久秀「ふんッ! 久秀の方が、早く颯馬と関係を持ったのよ! 言い掛かりなんて──片腹痛いわ! 颯馬は、久秀と共に死ぬの。 もう……二度と離れる事なんか無いのよ! 邪魔なおなご共の手の届かない場所で!!」

 

光秀「────そんな事! 誰がぁあああッ!!」

 

久秀「───誰が決めたのかって? それは──久秀が決めたの!」 

 

光秀「───────!」

 

久秀「あの日、颯馬が久秀の下より離れた時からッ! もう二度と───離さないって! 絶対に……颯馬を離したくないのよッッッ!!!」 

 

ーー

 

凪「────き、貴様ぁ!!」ザッ!

 

愛紗「行くなぁ! 迂闊に攻め掛かっては──ッ!!」ガシッ!

 

凪「何をするッ! 早く手を離せぇえええッ!!」ブンッ!

 

ーーー

 

凪が、久秀の言上に苛立ち、向かわんとすれば、愛紗が止めに入り攻撃を止めさせる! しかし、容態が悪化する颯馬の様子に、凪は焦り──荒々しく、止める愛紗の手を振り払う!

 

ーーー

 

愛紗「頼むッ! 私と同じ──過ちを犯さないでくれぇ!! あの兵は神出鬼没、何処から現れるか分からん! 私たちが離れれば、天城様や光秀殿の命が危ないんだーッ!!!」

 

凪「───ハッ!? くぅううう………おのれぇ──ッ!!」

 

ーー

 

久秀「ふん……つまんない。 義輝に遊ばれたこと、思い出しちゃたのかな? 二人で単純に……久秀へ近付いてくれればねぇ。 光秀を容易く討ち取れて、颯馬も奪えたのにぃ……残念〜!」パチンッ! 

 

─────ムクッ! ムクッムクッ!

 

??は指を鳴らすと……二人の傍より……二体の傀儡兵が地面より浮かび上がり、攻撃を仕掛ける! 

 

ーーー

 

傀儡兵「──────!」ブン!

 

凪「ハァァァ───ッ!」ドゴッ!

 

傀儡兵「ーーーーーーー!」シュッ!

 

愛紗「でぇりゃぁあああ───ッ!!」ズバッ!

 

ーーー

 

二人は、互いに近付いた傀儡兵を撃破!

 

愛紗の予見が正しかった事を……示したのだ!

 

ーーー

 

久秀「───ウグゥ! ハァッ、ハァッ………! お遊びは……どうやら……ここまでのようね? 于吉の術で強化された傀儡兵が暴れまくっているけど……どこまで持つか分からないし。 これで、終わりにしてあげる!!」

 

般若面の人物は………一緒……苦悶の言葉を挙げるが、身体は平気らしく、足早々に数歩前へ出る! 同じように周りの傀儡兵も、包囲網を縮めさせた! 

 

凪「────諦めないッ! 絶対ッ!!」

 

愛紗「ご主人様……先に……逝く事、お許し下さい! ですが……悔いはありません! 私は自分の義に従い、最後まで戦い抜きますッ!!」

 

光秀「────颯馬!!」ギュッ!

 

凪は前方で構え、愛紗が後方を守り、光秀が颯馬を抱きしめながら、刀を抜いて抵抗する様子をみせる……! 颯馬を守るため、三人は覚悟を固めた! 

 

 

◆◇◆

 

【 危機を知らせる乙女心 の件 】

 

? 同上 龍驤軍陣内 にて ?

 

一存「コ、コイツらぁ! 急に歯応えが出てきやがったかぜぇ! 姉さん! そっちは大丈夫かい?」

 

長慶「あぁ──心配するな! これしきの事で、音を上げていたら……颯馬に笑われてしまう! それに、私は生きて戻れれば──叱ってやらねば! 姉や兄に心配なぞ掛けるなと………な、なんだぁ一存ッ! その顔は──ッ!?」

 

一存「い───やぁ、何でも無い! 何でも無いよッ!! さっきまで暗かった顔が……魅力的な笑顔になったなぁと思ってね! (姉さんも……バレバレ何だから……颯馬に早く伝えればいいのに………!!)」

 

長慶「な、何を馬鹿な事!? 一存こそ、愛紗が逆に……颯馬へ手を貸していたと聞いて、ホッとしているのだろう!」  

 

一存「当然! いや、そんな事するような愛紗じゃねぇって、確信していたぜぇ☆!」

 

長慶「───フッ、どうだかぁ! それより一存! どちらにしても、この勝負勝たなければ、喜ぶ事も叱る事も出来ん! 更に奮戦するぞ!!」

 

一存「了解だ、姉さん!!」

 

ーーー

 

三好姉弟は、最右翼《龍驤軍(戦極姫軍勢)》を担い、鳥丸兵を追い散らした後、傀儡兵からの攻撃を阻み続けている。  

 

当初は、颯馬が久秀側の策謀により……愛紗の手に掛かったと聞き及び、涙を流し悲憤慷慨! 『久秀に組する者たち許すまじ!』とばかり、弔い合戦の様子を見せていた三好姉弟。

 

後になり……颯馬が現れ、愛紗に刺されたのは策の一環! 敵を罠に嵌める為の偽計だったと聞き及び、歓喜の涙を流して……力を奮っていた!!

 

ーーー

 

義輝「長慶! 一存! しばし、此処の守りを頼むぞ!!」

 

長慶「義輝公!? ──どうかなされましたッ? 何事か御座いましたか!?」 

 

義輝「うむっ……あの馬鹿者を、叱り付けてこようと思っての! わらわが想いを告げたと云うに、あのような策を立ておって!! ま、まぁ……颯馬の様子も……ついでに尋ねて来るつもりじゃ!!」

 

一存「あっ! 俺が行きましょう! 義輝公が行くほどの事じゃ───!」

 

義輝「…………鈍い奴じゃの………」

 

長慶「…………申し訳なく………」

 

ーーー

 

一存「ちょっ! どういう意味だ──『はっ! 簡単な事だ!』──!?」

 

信長「主が……『おなご』の乙女心を意に介さぬからだ……一存!」

 

一存「の、信長!? お前まで言うのかぁ!? っていうか、お前まで言われたくねぇ!! 第一……お前こそ分かるのかよッ!?」

 

信長「当然だ! 私も恋する乙女だぞ? 颯馬を心配するなら、私も同じ事を考える! あの光秀が居るから安心なのだが……万が一もあるからな! 私も義輝に付いて行くぞぉう! お前たちに────後は任せた!!」

 

一存「お、おいっ! 何を勝手な事を!?」

 

ーーー

 

義輝「………長慶! すまんが……此処を頼む!」

 

長慶「………心得ました。 されど、我々も長くは保ちません。 お戻りは……なるべく早めに! どうか───弟を、宜しくお願いします!」

 

義輝「ふふふっ……後の義姉上殿に頼まれてしまったか! 委細承知! 吉報を待っておれ!!」

 

信長「そうかッ! 颯馬と婚礼を挙げると、一存は義兄上になるのか! これは───クククククッ! いやぁ〜楽しみではないか! 義兄上殿!?」

 

一存「お、おいっ! 冗談じゃないぜぇ! タダでさえ、姉さんに頭が上がらない身の上の俺が……義妹達に公方様と信長までか〜!? か、勘弁してくれよぉ!!」

 

義輝「───ムッ! いかん! 気配がより高まった! 後を頼むッ!」ダッ!

 

信長「────それではなッ!」ダッ!

 

一存「公方様─────って……行っちゃったか。 まぁ……しょうがねぇなッ! 鬼十河の力、改めて味あわせてやるぜッ! 見てろよ、颯馬! お前の策──絶対に無駄なんかさせねぇからなッ!!」

 

長慶「────颯馬ッ! 無事必ず……生きて戻って来いッ!!」

 

 

◆◇◆

 

【 順慶 最後の願い の件 】

 

? 同上 曹操軍陣営 天幕 にて ?

 

この中に……筒井順慶が、縄と鎖で捕縛されて、寝かされている。

 

数々の怪力を見せ付けた将の為、捕縛に使う物は、特に頑丈な物を吟味して用意されいた。 しかし、今度の戦いは……天下分け目の戦ゆえ、絶対に邪魔されないように───念の入った方法を採られていたのだ!

 

順慶「…………う、うぅぅうぅぐぅぅ─────ッ!!」

 

??「順慶殿! 順慶殿ぉ!!」

 

順慶は、自分に声を掛ける声に反応して、目を覚ます。

 

味方が居るハズの無い天幕で、自分に『敬称』を付けて、呼び掛ける者など普通は居ない! 于吉たちとも、別行動をして……それぞれの役割を果たすと、決別を済ました身の上、助けに来る事など無いのだ!

 

しかし、現に自分を呼び掛ける人物が居る! 

 

順慶は、頭を少し左右に動かしてハッキリさせ、相手の顔を見た。

 

順慶「ぐぅ………はっ! だ、誰ぇ──!? さ、左近! な、何で………貴女が………!?」

 

そこには、自分を心配そうに見ている──島左近が正座して座っていた。

 

左近「曹孟徳殿より、順慶殿の見張りを依頼されたんだ! 順慶殿のような得体の知れない将は、天の御遣いに見張り役を任せたいと。 毒を制するには毒を使うというワケで、私が役目を受けたのだ!」

 

順慶「…………そう。 ぅぐぅぅぅ───ぐぅ…ッ!!」

 

左近より、納得のいく説明を受けたが……同時に身体の異変をも感じる! 今まで睡眠状態のため、体内の身体機能が最小限の生命維持をしていた。 

 

しかし、身体が完全に目覚めた為、新陳代謝が活発化して、負担が重くのし掛かる!! つまり、身体の氣が───急激に減る! 氣の発生が間に合わない程に!! その事は───順慶の死を意味するッ!!

 

左近「順慶殿ぉ!?  そ、その顔は───ッ!?」

 

順慶「み、見ないでぇ! わ、私の身体の氣が……尽きようとしてる──ッ! 寿命が……氣の力、生命力が尽きようと! だからぁ──ゼェゼェ……ダカら……身体ガ……干からビテいくのよ………!」

 

左近が、順慶の顔を見れば……顔の半分が数十年分、一挙に老けたように思われるほど、皺だらけになる! 

 

顔を隠そうと動かす順慶だが……両手両足が捕縛された身の上に、無理な話。

 

左近が、驚きの顔を示して……順慶に問い掛ける!

 

左近「………それが……あの魔神の如き……力の代償!」

 

順慶「この力の代償ハ……自分の命。 自分の命ヲ氣に変換させテ……力を倍増させル方法。 だから……力を使い過ぎレバ……命が亡くナル!」

 

左近「………馬鹿な事を! 颯馬が知れば……悲しみますぞ!!」

 

一度は、洛陽で戦い……左近は順慶に殺されそうになった経験がある。 

 

しかし、戦の勝敗は時の運! 命があれば儲け物! 左近ほどの戦上手は、そう考えて、恨み辛みを以降の場面に持ち込まない! それは、戦いを侮辱する行為だと考えていたからだった!!

 

順慶「ふふふ………ざ、残念だけド……颯馬さまには、醜い姿を見られているから……! それに、颯馬さまは……既に……この世には……居ない。 く、悔いは無い……『颯馬は──生きていますッ!』───えッ!?」

 

順慶は───既に死を受けて入れていた。 

 

自分は颯馬共に生き、颯馬と共に死す。 愛紗に刺殺された様子を、久秀と共に目撃したのだ。 そうなれば、この世に未練など無い! 『自分も早く、あの世に向かい、颯馬を探さなくては!』 そう考えていた!!

 

それが───左近の口から───不定されたのだ!

 

左近「颯馬の、颯馬の死は………偽装! 北郷一刀の命を救う為、アイツは自分の死を欺き……生きて指揮を取っている! だから、順慶殿が向かっても、アイツには───逢えないッ!!」

 

順慶「そ、そんなぁあああッ! 颯馬……さぁマァァッ! た、確かめタイ! 死ぬ前に……一度……お逢いして……確かめタイッ!! だ、だけど……この顔では………お逢いデキ……ないッッッ!!!」

 

左近「………………………」

 

左近は、そんな順慶を見て……思案にくれるのだった。

 

 

◆◇◆

 

【 後ろの正面は……誰? の件 】

 

? 司州 河南尹 鶏洛山付近 にて ?

 

 

白装束……傀儡兵は包囲網を縮めながら……散発的に攻める。

 

久秀「───人はねぇ……図星の事を指摘される腹が立つものなの! お前たちのように、力で物事を解決しようとする愚か者共が……私の傀儡兵を遮れると思うの!?」

 

しかも、波状攻撃で三人、四人と数を変えて、攻撃方法も上下左右とパターンを変化! 光秀たちに出血を強いる!

 

ーーー

 

凪「はあぁぁ───ッ!!」

 

────ドオォォォン!!

 

──────ザシュッ! キンッ! 

 

─────クルッ! ドドドドドドッ!!

 

愛紗「───クッ! まだだぁ! まだまだぁあああッ!!」

 

光秀「はぁーっ! はぁーっ!」

 

凪「だ、大丈夫ですかぁ!?」

 

光秀「わ、私は………まだ大丈夫!! だけど……颯馬が!!?」

 

颯馬「……………………」

 

愛紗「天城様!! しっかりして下さいッ!!」

 

ーーー

 

凪、愛紗は……生粋の武人ゆえ、このくらいの攻撃には耐えられる。 しかし、光秀は文武両道の名将と云われるが、鉄砲の名人であるがゆえに称される。 

 

つまり、接近戦においては不慣れ! しかも……颯馬を守り抜き、尚且つ心配しながらでは、披露の蓄積等……二人より遥かに大きい!!

 

その颯馬も……既に意識を失っていた!

 

久秀「くっ! ──あ、貴女たち、馬鹿なの? 颯馬を……自分たちの自己満足で、苦しみを長引かせる気なの? 全く……口で言う割には、久秀と……変わり無いじゃない! サッサッと諦めて───颯馬を渡しなさいッ!!」

 

久秀の声は、少し前に比べて精彩を欠く。  

 

『命数が尽きようとする』と言う言葉通り、命が尽きようとしているのか?

 

しかし、仮面の将は……精力的に指揮を繰り返し、まるで死が近い人物とは思えない! 久秀の策の可能性もあり、三人は困惑するッ!

 

久秀「い、いい加減に───しなさい! 颯馬の命数が、久秀の命数が尽きれば、予定が狂ってしまうわ! 仕方ないわね……こうなれば、久秀自身が引導を直接渡して上げる!!」

 

だが、焦る気持ちは……相手も同じか?

 

久秀の焦る声が響くと……白装束の傀儡兵たちと仮面の将が、同時に接近してきた。 剣を片手で持ち上げ、強烈な殺意を振り撒きながら!!

 

ーーー

 

凪「────勝機ッ! 三連猛虎蹴撃!!」

 

傀儡兵「───────ッ!!」

 

愛紗「どけぇえええッ!!!」

 

傀儡兵『ーーーーーー!!!』

 

ーーー

 

凪は、仮面の将の周りに居る傀儡兵たちを、猛虎蹴撃の三連発で瞬時に弾き飛ばし、その目の前に降り立つ!

 

愛紗も、颯馬の周りに近付く傀儡兵を、手早く一掃して、凪を追い掛ける!

 

久秀と目される将は、そんな中でも泰然として、剣を頭上高くに上げ、凪に振り被るが───凪の戦闘方法は、接近戦こそに真価が発揮される!

 

凪「でぇえええぃいいいッ!!!」

 

凪が、颯馬から教授された『天地陰陽の構え』を取ると、両手を挙げる!

 

仮面の将の剣は、凪の拳に当たるが、凪の武器『閻王』に当たり、弾き返される! そして、凪の左手が……掌となり、将の胸に軽く当たった!

 

凪「天城様直伝『仙人殺し』!!」

 

その将に、当てた左手を右手で重ね合わせるように、叩き込んだ!!

 

??『グワァアアアッ!!』

 

凪「──────!?」

 

仮面の将は、奇声を上げて退く! そして、愛紗が追撃を掛けたッ!!

 

愛紗「天城様に仇なす者よッ! この世から消えろッッ!!」

 

凪「────ま、待てぇッッ!」

 

──────ザシュッ!!

 

愛紗も青龍偃月刀で、将を一閃!!

 

そして………仮面が真っ二つになり………落ちて顔が露わになった! 

 

★☆☆

 

凪「────あ、貴方は!!」

 

愛紗「────ちょ、張譲さまぁ!!」

 

般若の面より現れた顔は、醜く歪んだ笑顔を見せる! 生前と変わらず、皺だらけの顔を愛紗たちに見せ付けた後、叫んだ!!

 

ーーー

 

張譲「グフッ! グフッグフッ! グフフフフッ!! 久秀サマァ! 今デスゾォオオオッ!!」

 

『───縛ッッ!!!』

 

凪「─────しまったッ!?」

 

愛紗「───────何ぃ!?!?」

 

二人は、金縛りの術に掛けられて、首から下が自由に動く事が出来ない! 

 

張譲「久々ノ激痛ゥウウウッ!! キタコレッッッ!!!」

 

仮面の将……元十常侍『張譲』が、青ざめた顔で御満悦の表情を浮かべる! 

 

凪「た、確か……先の反董卓連合の混乱で……亡くなったと……」

 

愛紗「ま、まさかっ! あの虎牢関攻めの将たちと……同じ方法で!!」

 

張譲「応エル必要ナド無イナ! オ前タチハ……策ニ引ッカカッタ愚カ者共ニ久秀サマノ術ヲ理解デキマイ! ソシテ……見ヨ! 久秀サマハ───其処ニイラッシャルノダ!!」

 

ーーー

 

張譲の指を示す方向は───光秀と颯馬が居る場所!

 

一人の傀儡兵が、光秀の後ろに立つ!

 

ーーー

 

??「『後ろの正面───誰?』 普段の光秀なら、簡単に解ける謎だけど、颯馬に気を取られている……今の光秀に解るかな〜? クスクスクスッ!」

 

光秀「────ひ、久秀ぇッッ!!」

 

久秀「そう、久秀よ! ───松永久秀! 颯馬を最も愛憎する……日ノ本の梟雄! そして……最も必要とする戦乙女!!」

 

光秀が抵抗しようにも、術が掛かり……身動きが取れない!

 

光秀「行かせませんッ! 颯馬は───私と共に生きるんですッ!!」

 

久秀「明智光秀! お前さえ……お前さえ居なければ! 颯馬はね、久秀のモノになっていたのよ! ───邪魔よ! そこを退きなさいッ!!」グイッ!

 

光秀「────くっ!? そ、颯馬ぁあああッ!!」バタッ!

 

ーーー

 

そんな光秀を、久秀は憎々しげに視線を送り、乱暴に颯馬から離して突き飛ばすッ!!  身動きが取れない光秀は、抵抗できずに地面に伏す……!

 

久秀「颯馬ぁ……待たせたわねぇ! 光秀の位置は──颯馬の横に相応しいのは久秀! この久秀なのよ! 今度こそ……貴方を、久秀の手で確実に仕留めてあげる! そして……颯馬と共に……ずっと───!」

 

颯馬が──うっすらと目を開けて、嗤う久秀、嘆く光秀を見て……状況を瞬時に把握した! 

 

ーーー

 

颯馬「み、光秀………に、逃げろぉ!」

 

光秀「そ、颯馬ぁあああッ!!」

 

ーーー

 

愛し愛し合う二人は、互いに互いを気に掛けて───呼び合う!

 

だが───それが久秀の感情を破裂させた!!

 

久秀は、懐より取り出した短刀を持ち、頭上に持ち上げる! いづぞやの自分の死を偽装した短刀と同じ柄だが……中身は、しっかりとした造りの名刀!

 

急所を刺せば───必ず死ぬ!!

 

ーーー

 

久秀「き、聞きたくないッ!! 他のおなごの名を呼ぶな! 天城颯馬ぁあああ! 貴方は、久秀と共に逝くの! 一緒に逝くのよぉおおおッ!!!」

 

愛紗「止めろぉおおおッ! 止めてくれぇえええッ!!」

 

凪「天城さまぁ────ッ!!」

 

光秀「颯馬ぁ─────ッ!!」

 

張譲「クーッハハハハハハッ!!」

 

ーーー

 

制止の声が多数響き渡るが───久秀は意に介さず!

 

颯馬の横に、ペタンと座った久秀は、地面に仰向けで寝る颯馬の……心臓部分に───それを落と──────!

 

───────ガシッ!!!

 

ーーー

 

??「間に合いましたね〜! ケホッケホッ!」

 

??「久秀……貴女ニモ問ウワ! 後ロノ正面……誰ダガ解ル……?」

 

久秀「──────お、お前はッ!? 何で、この場所に! 久秀を、久秀を止める事が出来るのよぉおおおッ!!」

 

??「『久秀』ハ……久秀ヲ止メニ来タノ! 今度コソ、止メルタメニ!!」

 

『─────!?!?』

 

ーーー

 

振り落とす直前に、久秀の腕を掴む者が現れ、一緒に佇む人物『竹中半兵衛』がホッとした様子で、○○に声を掛けた!

 

そこには───久秀と同じ服装、姿をした『松永久秀』が───涙を流しながら……久秀を睨みつけていたのだった!

 

 

ーーーーーー

ーーーー

 

あとがき

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

 

そろそろ、話も完結にしたいのですが………どうも話を長くする傾向が多くて、なかなか終わりません。

 

次回は、いつになるのかな? 出来れば5月に出したいな……と考えていますが……。 

 

その時は、宜しくお願いします。

説明
義輝記の続編です。 
総閲覧数 閲覧ユーザー 支援
1612 1479 5
コメント
ブラック様 お越し頂きありがとうございます! 久秀(と順慶)の寿命は……残念ながら次回まで。 流石に此処まで進めると変更は……ちょっと。 久秀たちには、何らかの『救済処置?』はしますよ、はい。 長慶の結ばれる結末も、見たいのですが……今回は無理っぽいです。(いた)
影分身Σ(゚д゚lll)個人的に久秀はデレて生き伸びて欲しい!‥今更だけど、ヒロイン光秀から長慶にならんかな?(笑)(ブラック)
スネーク様 コメント? ありがとうございます! ??「お化けよりSteamed Dumplings(饅頭が怖い)ネッ!」(いた)
(゜д゜)… (つд⊂)ゴシゴシ… (゜д゜)…(スネーク)
mokiti1976-2010様 早速のコメントありがとうございます! どこぞのゲームの設定じゃありませんが正解です。 元ネタは次の回に説明致しますが、リアルでも稀にある『分身現象』から取りました。 人の死期が近付くと現れる『もう一人の自分』だそうですが。(いた)
そっくりさん…なわけは無いでしょうから、封印されていた久秀の心が形になって現れたとかいうような事ですかね?(mokiti1976-2010)
タグ
真・恋姫†無双 戦極姫 

いたさんの作品一覧

PC版
MY メニュー
ログイン
ログインするとコレクションと支援ができます。

<<戻る
携帯アクセス解析
(c)2018 - tinamini.com