【F-ZERO】The legend must revive!! Vol.3【ファルコン伝説】 |
★ファルコンハウスへようこそ 〜MEMORIAL〜 より F-ZEROファルコン伝説後日談★
「The legend must revive!!」Vol.3
ゾーダ「へへへ…何もしないで出てくると思ったのかよ??通信はしっかり妨害させてもらってるぜ。
そのマシン一台になるのを待ってたんだよ…リアクターマイトを搭載している、そのマシンだけになるのをなぁ」
ゾーダはじりじりと近づいてくる。二年前に戦法からして、このまま奴に体当たりを仕掛けられるのは目に見えていた。
俺はブーストで逃げ切ろうと考え、それを実行に移したケド、その程度で逃してもらえる程、甘い相手ではなかった。
ゾーダも同時にブーストを使ってぴったりと横に着き、俺のマシンから離れようとしない。
ゾーダ「ほれほれ…どうした?二年前より随分遅くなったんじゃねぇか?」
クランク「くそぉ!!」
俺のマシンが遅くなった…確かに、リアクターマイトの力を封じたこの状態では、そう言われても仕方ないだろう。遅くなったと言う言葉に引っ掛かり、再びブーストを使おうとした自分を慌てて静止する…
そもそもスピード勝負じゃないんだ…このままブーストし続けたらエンジンが持たない……何とかして、奴を止めないと……
俺はとにかく何とかしようと、レーダーに目を通した。
この先は…断崖絶壁だ。真っ直ぐ走っていたら奈落の底へ落ちてしまう。
左側には氷山が迫り、右側にはゾーダがいる…逃げられる状態ではない。
多分ゾーダは、この崖から俺を突き落とす気でいるんだろう。
だったらそれを、逆手に取ってやろうじゃないか…俺は覚悟を決め、ステアリングを握り直す。
ここならまだ、ブースト全開で飛ばしても、崖に転落する事は無い。
俺は再びブーストレバーを引き、猛スピードで吹雪の中を突っ走る!!
そして予想通り、ゾーダもブーストを使って俺のマシンと並走を続ける。
ゾーダ「だーから逃げられないって言ってるだろ〜?」
クランク「誰も逃げたりしねぇよ」
ゾーダ「カー!!可愛くねぇ〜!!」
そのゾーダの台詞が言い終わるか、終わらないかの時だった。
背後にマシンのエンジン音がする…
ルーシー?いや、ジャック??誰なんだよ!?
視界が悪い上、パルスが追えない以上、相手が何者かを確認する事が出来なかっ……
って、あれ?何だ?この感じ……
俺はステアリングの感触から、マシンに何か変化が始まった事を感じる。
突如、制御装置が切れたかと思うと……
ゾーダ「ぅお!?何だこの感触は!!」
この力…これは…
リアクターマイトの反応だ!!それも……共鳴してる!!
俺のリアクターマイトと……後ろのマシンの、リアクターマイトが!!
クランク「ぅわ…ちょっと待ってくれよ!!」
制御装置が切れたマシンを操る事は至難の業…それは十分に分かっていた。ブーストを吹かし、高速を保っている今はまだいい。ブーストが切れて速度が落ちてん最悪失速した時に、俺にマシンを制御出来るかは分からない!!
俺はその時の為に、神経の全てをハンドリングに集中させる。無意識のうちに歯ぎしりし、息をするのももどかしくなる。
後ろにいたマシンは、突如ブーストを吹かしながら、俺の隣…いや、ゾーダを挟んで俺の隣に来る。
三台のマシンが、フルブーストで突っ走りながら並んでいる、この状態……
これは…!!
ゾーダ「うわぁ!?何だ〜!?!?」
クランク「サンドイッチバースト……!!」
二台のマシンのブーストの波動に押し出され、真ん中にいたゾーダのマシンは勢い良く飛び出して行き……そして視界から消えた。
あのスピードと崖までの距離を考えると…急ブレーキも急ハンドルも、間に合わなかったんじゃないかな……
と同時に、これで俺もフルブーストで飛ばしている目的が無くなった。とにかくブレーキを踏み、自分が崖に落ちないように注意を払う。
幸い、崖の手前で俺達のマシンは止まり、事泣きを得た。
マシンが停止したと同時に、リアクターマイトの共鳴も止まった。
良かった…このまま共鳴していたら、周囲の氷山を全て吹き飛ばしていたかも知れない…それくらいこいつは、強力なパワーを秘めたものなんだ。だから悪党は、この力を欲しがるんだ。
クランク「ふぅ……」
極寒の惑星だと言うのに、俺は汗だくになっていた。
一息ついて、やっと隣にいるマシンを見るだけの余裕が出てくる。
隣にいたマシンは、案の定と言うか…何と言うか。
予測はしていたケド、まさか、本当に…ここで会えるなんて!!
クランク「リュウ…??リュウなんだろ!?」
俺は慌てて、そのマシンと通信を繋ぐ。
妨害電波を発していたのはゾーダのマシンそのものだったみたいだ…そのマシンが無くなった今なら、問題無く通信が取れる。
リアクターマイトを搭載しているマシンは、今の所、ドラゴンバードと、ブルーファルコンしかない筈だ。
当然、隣にいたのは…ブルーファルコンだった。
この酷い吹雪のせいで、マシンの中のリュウの姿を伺う事は出来ない。
クランク「あ…もぅファルコンって呼ぶべきか」
リュウ「リュウでいいよ…その名前で呼ばれるのは、まだ早いからな」
通信機から聞こえてきた声のトーンは、意外と明るかった…それと、元気そうだった。悲壮な感じは、何もなかった。
先ずはその事を確認出来て、俺は安堵する。
リュウ「俺はまだ、ファルコンの出す課題を完全にクリア出来た訳じゃないからな」
クランク「課題…???」
リュウの話はこんな感じだった。
キャプテン・ファルコンの指示でこの惑星に降り立ち、ずっと訓練を続けていたらしい。
でも、この惑星に来たのは、訓練とやらの為だけじゃないようなんだ。
その答えと言うのが……
リュウ「……囮だよ」
クランク「囮!?囮って、ゾーダの!?」
リュウ「いや、奴に限った話じゃない…俺だって、まさかゾーダが、まだ生きているとは思ってなかった」
さっきも言ったケド、リアクターマイトの力は強大で、あらゆる悪党が狙っている品物だ。
アルカトランドには誰も住んでおらず、そんな波動があれば、簡単に感知出来る。波動を妨害するようなものが、何もないから。
そこにわざわざ侵入してくる輩は…そう、餌に釣られてトラップに入るネズミと同じLvだ。
ゾーダが生きていて、今、ここで活動を再開しようとしている…
俺もその事には危機感を持っていたケド、リュウの持っている危機感は更に深く、重大だったみたい。
ゾーダの話に変わった途端、通信の向こうからでも、重苦しい空気が満ちているのを俺は感じ取る。
重い沈黙の後に、リュウが、これまた俺が想像だにしなかった事を告げたんだ。
リュウ「ゾーダが生きていると言う事は、ブラックシャドーも生きている可能性がある…」
クランク「え?どう言う事??」
俺は驚きを隠せなかった。
だって奴は二年前に、俺達の前から姿を消し……
リュウ「そうか…お前は、ダークマターリアクターを間近で見た事がなかったんだな。
ゾーダは、そのダークマターリアクターの中に幽閉されていた。
…つまり、あの時の大爆発があった時、最も爆心に近い所にいた筈なんだ…普通に考えたら、生き延びる事が出来る訳がないんだ。
だが、奴は生きて帰って来た…
その方法までは、俺も知らないが」
…知っていた所で、どうにかなる訳でもない。
リュウは口にはしなかったケド、そんな感じに取れる口調で話をしてた。
奴は宿命の敵…自分が倒すべき相手である事には変わらないと。
そんなリュウを前に、何か話そう、何か話そうと俺は思うんだケド、会話が、続かなかった。
重い空気に全てが飲み込まれ、口をきくのも許されるような雰囲気じゃなくなっていたんだ。
リュウの背負っている使命がそうさせるのか、それに対する威圧感がそうさせるのか、ゾーダを目の当たりにしたと言う緊迫感が、そうさせるのか…それは全然分からないケド…俺が踏み入れる領域じゃないって、誰かに告げられているような感じがするんだ。
クランク「リュウ…あの……」
それでも俺は必死で口を開く。こんな雰囲気の中で話すような事じゃない…それは分かっていた。ケド、どうしても、言っておきたい、伝えておきたい事があったんだ…
クランク「…今日は、ジャックとルーシーも来てるんだよ。
時期に、俺のパルスを追って、ここに来るんじゃないかな?
それまで、ちょっと待っててくれよ…」
…何か、それを言わないと…リュウは、とっとと立ち去る雰囲気が出来始めていて……
別に、リュウはルーシー達の事を嫌って立ち去ろうとしている訳じゃない…それも、分かるんだ。何て言うのかな…雰囲気で感じるんだ。俺達を振り切って、無理して走り出そうとする、その姿勢を。本当は会いたいケド、会っちゃいけないとリュウ本人が決めているような、そんな空気を。
リュウ「……」
実際、リュウは返事に困っているみたいだ。
別にリュウを困らせる気は無いんだ、無いんだケド…やっぱり、いきなり「ハイさようなら」されたルーシーとジャックが会いたがってるって…その気持ちも、凄く分かるんだよ。
…こんな事、リュウには言わない方が、良かったかも知れない。
でも、言わずにはいられなかったんだ…
だって、二年も経っているんだぜ?この気持ちを溜め込んだままで……
リュウ「…ごめんよ」
クランク「え??」
…??
不意をつかれたその言葉に、俺の思考回路は、一瞬真っ白になった。
リュウ「…俺のわがままと言えばわがままなんだが、今はまだ、会えない……」
とてもか細い、その声を聞いた時…俺は、言いようのない感情に襲われる。
そう…だよな……
置いて行かれた俺達も辛いケド…一番辛いのはリュウ…なんだよね…
リュウ「ファルコンが、命がけで俺を救い…世界を救った。
そんなファルコンの名前を名乗り、ファルコンのマシンを駆る……
俺が、自分の腕が自分で納得のいくLvに達しない限りは…会う訳にはいかない……
彼の名を、汚してしまいかねないから」
俺は胸が熱くなり、言葉に詰まる。
ある日突然“跡を継げ”と言われて……その継ぐものが、リュウの中では、あまりに大きい存在で……
その偉大さ、プレッシャーに押し潰されないように、必死で戦っているんだ……
リュウは、そんな俺の様子に気付いているのかいないのか、止めていたマシンのアクセルを再び踏み込もうとしている。
クランク「待って!!ちょっと待ってくれよ!!」
俺は思わず風防(キャノピー)を開け、極寒惑星の外へと飛び出す。
クランク「リュウ、開けてよ!!ジャック達の事じゃなくて別件で!!」
俺はブルーファルコンの前に立ちはだかり、彼が立ち去ろうとするのを阻んだ。
…いや、俺は別に、嫌がらせで飛び出した訳じゃない。
渡したいもの…いや、渡さなきゃいけないものがあるんだ。
リュウは黙ったまま、ブルーファルコンの風防(キャノピー)を開ける。
俺はコックピットに座ったリュウの姿を見て、驚きを隠せなかった…
リュウが着ていたのは、見慣れたいつものTシャツでもジャケットでもなかった…
ファルコンの、あのレーススーツ…あれを着ていたんだ。
あのヘルメットは、被ってなかったケド……リュウの事だから、堂々とファルコンの名を名乗れるようになるまで、被らないつもりなのだろう。
リュウも、俺の姿を見て驚いたに違いない。
リュウ「背、伸びたな」
クランク「へへ、成長期なんでね…もう子供じゃないよ」
リュウ「どうだか…?は、いいとして…俺に渡したい物って何だ?」
クランク「…これだよ…」
俺は、あの日以来、ずっと持ち歩く羽目になった“ある物”を手渡す。
リュウ「これは…マグレット??」
クランク「そう…リュウのマグレット。登録は抹消してないから、銀河警察のあらゆる施設に入れるままだよ。
もう乗らないかも知れないケド、ドラゴンバードのキーも、そのままだから……」
リュウは受け取ったマグレットを、何だか懐かしいものを眺めるように見つめてる。
リュウ「ジョディに返してなかったのか??」
クランク「誰からも返せって言われなかったから、ずっと持ってたよ。
多分、ジョディの事だから、もし渡したとしても俺に返されたと思う…そのままね。
誰もリュウに辞めて欲しいだなんて、思ってないよ」
リュウ「でも、俺は……」
口を濁したリュウが、何を言わんとしているのかは分かっている。
ファルコンを襲名する以上、高機動小隊の一員としては戻れないと言う事…だろ?
クランク「…かと言って、高機動小隊に戻って来いって、言ってる訳でもないんだ。
バートのおっちゃんがやっていたように、俺達を後ろから支えてほしいと思って」
リュウ「クランク……」
クランク「高機動小隊はどうしても大きなチームだから、小回りが効かない。
何かあった時は、リュウ…いや、ファルコンがピンで行動出来た方がいいだろう?
今はゾーダだけだケド、この先、何が起こるか分からないし」
リュウ「ああ……」
リュウはそれだけ言うと、そのマグレットを握りしめたまま、黙り込んでしまった。
俺も、リュウにかけるべき言葉が見つからなくて、そのまま黙って立っていた。
また、この場が重苦しい雰囲気に包まれていく……
その雰囲気のせいか、どうしても、ゾーダの事を考えずにはいられなくなる。
ゾーダが復活して……それで、ブラックシャドーも生きているかも知れない、リュウはさっき、そう言ってた。
と、なると…!?
ひょっとしてリュウは……
クランク「ねぇ、リュウ……最期に一つだけ聞かせてくれよ。
キャプテン・ファルコン…いや、バートのおっちゃんは……生きていると、思う??」
俺は恐々と、そんな質問をした。
二年前、惑星タンカルに導いた、あのディスプレイ上のファルコンを、リュウはどう見ているんだろう?
今も特訓の指示を飛ばしていると言う、そのファルコンを、リュウはどう見ているんだろう?
…それが、妙に気になったんだ…
リュウ「俺は、生きてると思ってるよ」
躊躇なく言うリュウの瞳には、強い輝きが宿っていた。心の底から、そう信じて疑う事がないと言わんばかりの輝きが。
リュウ「何か理由があって、帰れなくなっているだけだと思うんだ。もしくは、俺に名前を継がせたくて、どこかに隠れているか、隠居を決め込んでいるか」
クランク「リュウ……あれは……」
リュウ「俺も初めて見た時、ホログラフか何かだと思っていた。けれど、俺達の事をよく知っているし、飛ばしてくる指示もリアルタイムで的確だ。俺の事を直接見て、自分の口で語っているとしか思えない」
…そうか…
リュウは信じているんだね…おっちゃんの事。
それを知った時、俺の中に妙な悲壮感が広がってゆく。
俺は…本当の事を知っている。
リュウは150年前から来た男だから、こっち方面の知識は薄いと思う。
俺の考えている“信実”を、リュウに告げるのは簡単かも知れない。
ケド……
俺は言葉に詰まり、リュウのその姿だけを眺めていた。
そのうち、吹雪の風の音に混じって、エンジン音が響いてきた。多分、ジャックとルーシーが、俺のマシンのパルスを追って来たに違いない。
クランク「リュウ…!!」
もう時間はない。
俺は最後のチャンスであろう今に、リュウを必死で呼び止めて……今度こそ立ち去ろうとする彼に、俺はその“信実”を告げようかと、思ったが……
リュウの、その瞳を見ていると…
そんな事は、言えなくて…
言え、なくて……!!!
クランク「……えーっと……おっちゃんに伝えて欲しいんだ!!
俺の親父…ロイの事なんだケド、ドクターが、何とかなるって、この間言っていたって。
もし、もしもミュートシティに戻ってくる事があったら、親父にも会ってくれって…!!」
俺は必死に、その事を伝えた。
そうだよ……
リュウの中では、おっちゃんは、ずっと生きているんだ…ずっと…
リュウは右手を上げて“分かった”と合図をすると、猛スピードで、吹雪の中に消えていった。
レーダーからも姿を消し、彼の後を追う事は出来なくなってしまう。
ジャック「クランク…クランク〜!?オ〜イ、お前は凍死する気か!?何でマシンから降りてるんだよ??」
案の定、その二台のマシンはジャックとルーシーだった。
クランク「…あ……」
外の気温が異様に低い場所である事が、俺の頭の中から抜けていた。
それでも俺は暫くの間、その場所から動く事が出来なかった。
俺はマシンに戻り、二人に一部始終を話した。
ゾーダと戦った事、リュウに会った事、そしてリュウは、まだ会える状態じゃない事……
そしてリュウは、おっちゃんが生きてるって信じている事も。
ジャック「…クランク…リュウを導いているファルコンって言うのは…」
クランク「……分かってるよ、俺には……
おっちゃんはきっと、決戦に出る直前に、自分の思考回路をバックアップしてたんだろ…?」
ジャック…そんな事をハッキリ俺に言わせないでくれよ……150年前には、そんなシステムは無いから、リュウには分からないんだよ、きっと…
この時代じゃ、優秀な軍人や個人の脳内のデータを全てPCの中に写し、本人が亡くなった後でも、オペレーターとして利用する事は、よくある事なんだよ……!!
ジャック「…それ、リュウに言ったのか…?」
クランク「言える訳がないだろ!!」
俺は思わず憤慨した。
あの様子を見たら、そんな話をする気なんか起こらなくなる……とてもじゃないが、俺には言えなかった……
俺は思わず頭を抱える。
俺だって、おっちゃんが生きている事は信じたいよ、信じたいケド…ケド…!!
ルーシー「生きているって事実が、嘘だとしても構わないじゃない?」
妙に取り乱し、落ち着きを失った俺に、静かに彼女がこう言った。
ルーシー「例えそれが嘘であったとしても、リュウさんは、キャプテン・ファルコンが生きている事を信じているのよね…
生きているって事実が嘘だったとしても、生きている事を信じてあげれば……
その信じているリュウさんを、クランクが信じてあげたら?」
その瞳は優しさに満ち、混乱していた俺の心の中にも染み渡っていくようだった。
クランク「…信じる…??」
あの時のリュウの姿を思い返す。
確かに、あのリュウの瞳に、嘘なんか無かった。
事実を無視し、あの瞳だけを信じれば……
確かに、バートのおっちゃんは、どこかで生きているんじゃないか?
そんな希望が、湧いてくる。
希望が湧くのと同時に胸の中が熱くなり、思わずステアリングを握りしめる。
俺は…俺は……
もっと早く、強くなりたい。
ゾーダと対等に戦えるだけの、仲間達を守るだけの、リュウ…いや、ファルコンの力になれるだけの…強さが、欲しい。
もしも、何か有事が起こった時に、仲間の前でぶざまに傷つかないくらいの、強さが、欲しい。
もしも…もしも、おっちゃんが戻って来た時に…堂々とレーサーを名乗れるだけの、強さが、欲しい。
そう、だよな…
リュウはブルーファルコンの名に相応しい走りを目指している。
俺だって、このマシン…ドラゴンバードに相応しい走りを、目指さないといけない。
このマシンだって、F-ZERO界の中じゃ、立派に伝説になっているんだ…無名のパイロット、リュウ・スザクが駆っていたマシン…たった一年足らずで、ファルコンには及ばなかったものの、それでも相当数の優勝経験を誇る…ダークマターの世界崩壊の危機が無ければ、確実に新人賞は取れていたであろう、このマシン……
俺は今まで、余り深く考えずに、このマシンを駆っていたけれど……
自然に手に力が入り、神経が研ぎ澄まされる。
クランク「ジャック!!帰ったら、俺の走行練習付き合ってもらえる?
やっぱり、スピンブースターを習得しておかないと…ゾーダと直接対決になった時に分が悪いからね!!」
ジャック「ああ、いいぜ!!
いいねえ〜、その強い瞳…今のお前なら、出来ない事は何もないんじゃないか?」
ルーシー「フフフ。マシンの整備は私に任せてね」
俺達はアルカトランドを後にし、ミュートシティに戻った。
戦うと言う、強い意志を秘めた状態で……
【そして、ゾーダとリュウ、高機動小隊の小競り合いは続いた。
しかし、互いに今だ傷ついた身体を抱え、思うような本領を発揮出来ずにいた。
だが、更に三年の月日が流れ、最も傷が深かったであろうF-ZEROグランプリも癒えたようで、五年振りに、レースが再開される事になった。
そこに高機動小隊の面々が来る事も、そしてリュウが……ファルコンとして戻って来る事も、この喫茶店の女主人、ハルカは事前に知っていた。
恐らく、ゾーダが姿を見せるのではないか?と言う事も……
実は彼女、リュウと密かにメールで互いの状況を報告しあっていたのだ。
ただ、リュウの強い希望でそれを公にしていなかっただけである…今後もその事は、誰の耳にも入れる事はないだろう。
甲斐甲斐しく接客をしながら、彼女はモニターを見つめている。
そこにはドラゴンバードと、ブルーファルコン…二台のマシンが映し出されていた。】
モニターと風防(キャノピー)越しに、クランクとリュウの表情が見えるわ。
クランクはここ数年で、立派にパイロットとして成長した。顔つきまで見違えるようになって…昔のリュウそっくりね…でも、要領の良さは、クランクの方が上かしら?
リュウも…以前よりたくましく感じるのは気のせいかしら?そのメットも、よく似合ってる。
もう少ししたら、レースは開始されるわ。
お客さんも、モニターに視線が集中してる…そうよね、この喫茶店は、本来はそんな場所だった。
店に飾られている色々なF-ZERO関係のグッズが、それを物語っているわ。
リュウの希望もあって、店の内装とかはそのままにしてあるの。思い出の場所だから、下手にいじってほしくなかったのでしょうね。
そのうちの、壁に飾ってある写真を見て思うのよ……
今の世の中では五年も経過していれば、全てが過去の事…遠い昔の事になってしまう。
この店に飾ってあるファルコンの写真と、今、モニターの向こうにする貴方…それが別人だと気付く人は、何人いるのかしらね?
…最も、私にとっては、ファルコンでもリュウでもなく、貴方は最愛の人。それに変わりはないわ。
私もお客さんにつられてモニターに視線を向けていたら、別のお客さんからオーダーが入ったの。
そうね…レースがあると言っても、店は立派な営業時間内なんだわ。
ハルカ「ブレンドと、アレのカレーですね?ハイ、かしこまりました」
この方はここ最近、うちのお店に来てくれるようになったお客さんなの。
毎回注文が固定なのよ…よほどこのカレーが好きなのね。
顔に傷がある、とても紳士な叔父様よ。いつもカウンターに座っては、モニターの方をじっと見てる。
…何故かしら…この人を見ていると、とても、懐かしい感じがする。
あ、レースがそろそろ始まりそうね。
…リュウ、頑張って…
貴方は貴方が信じた道を、真っ直ぐに、歩み続けて……
〜Fin〜
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何を血迷ったのか、今から約10年前に発行した同人誌「ファルコンハウスへようこそ 〜MEMORIAL〜」(2005.8.12発行)の中から、小説「The legend must revive!!」をお送りします。 推奨閲覧時期 アニメのファル伝 全51話 視聴後 (じゃないと意味が通じません) Vol.1→http://www.tinami.com/view/772454 Vol.2→http://www.tinami.com/view/772459 Vol.3→いまここ |
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