真・恋姫†無双〜江東の花嫁〜(壱参)
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(壱参)

 

 曹操との戦いから一ヶ月。

 

 久しぶりに訪れた平穏の日々の中で一刀は川辺でのんびりと過ごしていた。

 

 身体の毒は雪蓮の度を越した献身的な介護のおかげですでになく、まだ本調子ではないが歩けるようにはなった。

 

 本当ならば雪蓮が傍にいるはずなのだが、

 

「私もいく〜〜〜〜〜〜、いきたい〜〜〜〜〜〜」

 

「貴女が北郷殿につきっきりで政務が滞っていたのよ。王としてしっかり働きなさい」

 

「え〜〜〜〜〜やだやだ〜〜〜〜〜〜」

 

「雪蓮、そんなに嫌なら北郷殿との時間を割いてでもやってもらおうかしら?」

 

 主君の政務放棄の間、休みを返上してまで代行をしていただけに冥琳は心なしかやつれていた。

 

「せっかくその辺りのことも考えていたのに残念ね」

 

「冥琳のばか〜〜〜〜〜〜」

 

 ということで今も一室に監禁状態だった。

 

 一国の王となると大変だなと同情する一刀の隣に蓮華がやってきた。

 

「隣・・・・・・座ってもいい?」

 

「うん」

 

 どことなく一刀を意識しながら蓮華は座り目の前に広がる長江を眺める。

 

 青空に浮かぶ太陽が長江を輝かしている。

 

「気持ちいいよな。俺のいた日本・・・・・・天の国にはこんなに大きな河はないから」

 

「そ、そうか」

 

 頬を紅く染める蓮華。

 

 遥か後ろには思春が着の影から二人を見守っていた。

 

「も、もう、傷の方はいいのか?」

 

「ああ、誰かさんのおかげでなんとかね」

 

 今頃、冥琳に怒られながら政務をこなしているであろう雪連を思い出して笑う。

 

 それにつられて蓮華も自然と笑みがこぼれる。

 

「か、一刀」

 

「なに?」

 

「い、いや、なんでもない・・・・・・」

 

 慌てて口を閉じる蓮華は周りを見て誰もいないことを確認して、何度か深呼吸をする。

 

「か、一刀」

 

「だからなに?」

 

「そ、その・・・・・・」

 

 いざ言おうとするとなかなか言葉に出来ない蓮華。

 

「そ、その・・・・・・一刀がきてだいぶなるな」

 

「そうだな。色んなことがありすぎて実感がないけれどね」

 

 まるで初めからこの世界で生きている、そう思ったこともあった。

 

 雪蓮や蓮華を初め、いろんな女の子と仲良くなり毎日が楽しく過ごせていた。

 

「初めはどうなることだろうってすごく不安だったけどな」

 

「でも今では一刀がいないなんて考えられないわ」

 

「そう言ってくれると嬉しいかな」

 

 照れくさそうに笑う一刀を見て身体の内が熱くなる蓮華は視線を逸らした。

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「でもここまで俺がこの世界に馴染んだのも雪蓮のおかげだよ」

 

「え?」

 

 一刀の横顔は穏やかな笑みがあった。

 

 それはまるで安心感を与えるものだった。

 

「酒が好きで強引なところがあって、それでいて滅茶苦茶なところが多い」

 

「あのお姉様が大人しいなんて想像できないわよ」

 

「確かにね」

 

 ありのままでいるからこそ雪蓮らしさがある。

 

 そしてそれが羨ましい蓮華。

 

 自分にも同じような行動力があれば今、彼女が抱いている気持ちにも素直になれたかもしれない。

 

「ねぇ、一刀、一つ聞いていい?」

 

「ん」

 

「一刀はお姉様のことが好き?」

 

 その問いは自分の気持ちを遠まわしに伝えようとしていた。

 

 自分にはまだ好機があるかもしれない。

 

 呉の種馬と言われた時のような嫌悪感など今はない。

 

 純粋に一人の女として想いを寄せる男の気持ちを知りたかった。

 

「たぶん・・・・・・うん、好きだよ。俺みたいな奴じゃあ釣り合いが取れないけどね」

 

 雪蓮を好きだと思ってもその隣に相応しいかどうかとなれば、おそらく相応しくないと一刀は思っていた。

 

 天の御遣いと言われても武芸も学問も雪蓮の足元にも及ばないことを誰よりも知っている。

 

 ただ歴史を知っているだけではどうすることもできなかった。

 

「それに今は俺も平和な世の中にしたいと思っている。誰もが笑顔で平和に暮らせる世の中をつくりたい」

 

 一刀の言葉に嘘はなかった。

 

 そしてそれは雪蓮が望むこと。

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 蓮華は羨ましかった。

 

 一刀は気づいていないが雪蓮は彼のことを愛している。

 

 それは姉妹として、同じ女として感じていた。

 

 何よりも命を懸けてお互いを助けようとしていた姿を目の当たりにしているだけ、より強く感じられた。

 

(私ではお姉様に勝てない)

 

 勝てないからこそ僅かな望みを探している自分がいることに気づいた蓮華は苦笑した。

 

「そうね。今は平和になることを考えるべきだ。一刀もしっかりお姉様に力を貸すのだぞ」

 

「もちろんだよ」

 

 笑顔を向ける一刀。

 

 蓮華の気持ちに気づきもしない優しい笑顔に彼女は少々意地の悪い事をいうことにした。

 

「も、もし、お姉様があなたのことが好きで添い遂げたいと言ったらどうするの?」

 

「なっ・・・・・・!」

 

「どうなの?」

 

 自分でもおかしくなるのを我慢して一刀に問う。

 

「もしそうなったら一刀は私や小蓮の義理の兄になってことよね?」

 

「あ、あ、義兄!?」

 

 その言葉に慌てる一刀。

 

「私としてはこんな軟弱な義兄を持つのは少々困るわ」

 

「あ、あの蓮華さん?」

 

「そ、それとも、わ、私や小蓮も、そ、その・・・・・・、め、め、め・・・・・」

 

 さすがに恥ずかしくなってきたのか顔が赤くなる蓮華。

 

「妾にするというのか!」

 

「れ、蓮華!?」

 

 とんでもないことを口走る蓮華に驚いた一刀の目の前を何かが通り過ぎた。

 

 地面に小刀が刺さっているのを見ると、遠くから思春が怒りに満ちた表情で一刀を睨みつけていた。

 

「そ、そんなことするわけないだろう!思春もそんなもの投げてくるなよ!」

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「北郷〜貴様という奴は・・・・・・」

 

 怒りゲージMAXの思春に何を言っても無駄だった。

 

「お、落ち着け。蓮華も変なこと言うなよ」

 

「ご、誤解をするな。べ、別に一刀のことが好きだとは言っているわけでは・・・・・・」

 

 完全に自爆している蓮華と狙いを定めて小刀を今すぐになげようとしている思春に一刀は身の危険を感じた。

 

「と、とにかくだ。そのことはこ、今夜、しっかりと聞くわ」

 

「マジか・・・・・・」

 

 真っ赤になって恥ずかしがる蓮華を見て一刀は素直に可愛いと思った。

 

 しかも彼女にしては大胆にも「今夜」と言った。

 

 そんな二人を見て思春は一刀に対する言いようのない怒りがこみ上げていたが、背を向けて元いた場所に戻っていった。

 

 彼女にとって蓮華があまりにも「恋する乙女」の顔をしていること、そしてその相手が一刀だということに驚いていた。

 

 一方の一刀は命の危険が去ったおかげでようやく一息つけた。

 

「そ、それと一刀・・・・・・」

 

「こ、今度は何?」

 

 さすがにまた小刀が飛んでくるような質問は勘弁して欲しかった一刀は恐る恐る聞き返す。

 

「そ、その・・・・・・なんだ・・・・・・」

 

「う、うん」

 

「お、お姉様と・・・・・わ、私では・・・・・・ど、どちらが・・・・・・た」

 

 肝心な部分になると声が小さくなり一刀の耳まで届かない。

 

 だが一刀は何が言いたいのか理解できた。

 

(下手に答えたら明日から顔が見れないぞ・・・・・・いやいやそれよりも思春に殺される!?)

 

 遠く離れていても殺気だけは届いている。

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「え、えっと、それは今答えないといけないのことなのかな?」

 

「なっ・・・・・・」

 

 自分から質問しておきながら言葉を詰まらせる蓮華。

 

 自然と拳を握り締めていく。

 

(わ、私は何を期待している・・・・・・)

 

 素直に好きだといえばそれでいいはずなのにそれがどうしても口にすることが出来ない蓮華。

 

「べ、別に答えたくないなら答えなくていいわ」

 

 強がってみるが可能性が残っているのならば聞きたい。

 

 その思いが蓮華の身体を熱くさせていく。

 

 気まずい空気が二人の間を流れていく。

 

 変に黙ってしまったために声をかけずらくなっていく。

 

 高まる鼓動。

 

 熱を帯びていく頬。

 

 そして見つめあう二人。

 

 木の陰から見ている思春は思わず小刀を握り締める。

 

「お、俺は・・・・・・」

 

 息を呑む蓮華。

 

 もし姉よりも自分を選んでくれるというのであればどれほど嬉しいことか。

 

「俺は・・・・・・」

 

 一刀が答えようとしたまさにその瞬間だった。

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 激しい音と共に河の中から何かが出てきた。

 

「きゃっ」

 

「なっ」

 

 思わず蓮華は一刀に飛びついてしまった。

 

 そして河から出てきたのは黒髪の明命と小蓮だった。

 

「一刀さま?それに蓮華さま?」

 

「あれ〜〜〜〜〜。二人ともこんなところで何してるの?」

 

 水が滴る二人を見て一安心した一刀と蓮華だったが、問題はその先だった。

 

 よく見れば明命も小蓮もなぜかいつも服装ではなく晒しを巻いているだけだった。

 

「あ〜〜〜〜〜一刀、何処見てるの?」

 

「あ、い、いや」

 

 慌てて視線を逸らす一刀。

 

「いいよ、一刀だったらシャオの全てをみ・せ・て・あ・げ・る♪」

 

「はわわ・・・・・・」

 

 どこかの軍師の口癖をしながら自分の姿に気づいた明命は両手で胸を隠す。

 

 対照的に小蓮は大胆にも一刀に見せ付けるようにポーズをとっていく。

 

「し、小蓮!な、なんて格好をしているの!」

 

「お姉ちゃん、一刀に抱きついているからぜんぜん説得力ないよ?」

 

「あっ」

 

 妹に指摘されるまでまったく気づかなかった蓮華は間近にある一刀の顔をあった。

 

 初めて近くでみる一刀の顔。

 

 彼の瞳に自分が写っていると思うだけで胸が弾む。

 

 そう二人っきりであれば大胆な行動に移れたが残念なことに長江のそれも小蓮や明命、それに思春が見ている前だった。

 

「い、い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!」

 

 渾身の一撃を一刀の顎に喰らわせた。

 

 それは後年、小蓮と明命が子供達に、

 

「人は空を飛ぶ事が出来る」

 

 と語るほど一刀の身体は上空に飛翔したという。

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 その様子を見ていた雪蓮と冥琳、それに祭。

 

「もう〜人がやっと仕事終わらせてきたっていうのにもう盛り上がってるわ」

 

 溜まっていた政務を片付けてきた雪蓮はムッとしていた。

 

 もちろん本心からでは・・・・・・ないはずだった。

 

「それにしても一刀が来てからというもの、皆がああやって楽しげにしている姿をよく見かけるようになったの」

 

「まさに天の力というものかしら」

 

 祭と冥琳は温かく一刀達を見守っている。

 

 一刀という存在は彼女達にとってもすでにかけがえのないものだった。

 

「雪蓮、そんなに羨ましいのなら行けばいいでしょ?」

 

「いいの?」

 

 それは物凄く嬉しそうな笑顔だったと冥琳は後で一刀に語った。

 

 彼女の喜ぶ顔を見るとつい甘くなってしまう自分に苦笑しながらも冥琳は頷いた。

 

「どうせ止めても無駄でしょう?」

 

「さすが冥琳♪」

 

 そう言い残して目の前の賑やかな場所に走っていく雪蓮の後姿に二人はやれやれといった感じだった。

 

「儂らもいくとするかの」

 

「そうね」

 

 二人が歩みだすと、その後ろから穏、亞莎が祭の命で酒を持ってやってきた。

 

 そして長江の水辺で賑やかな宴が始った。

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(座談)

 

水無月:日付が変わったのでとりあえず平穏な一コマをお送りいたしました〜。

 

雪蓮 :う〜〜〜〜〜ん、一仕事終えた後のお酒は美味しいわ♪

 

冥琳 :まだ話自体は終わってないわよ?

 

雪蓮 :いいのいいの。こういうときは呑むお酒があるってことは人生得しているってことよ♪

 

冥琳 :まったくこの子は・・・・・・」。

 

水無月:ところで今回思ったのですが、このままいけば一刀をめぐっての争いでも起きますかね?

 

雪蓮 :それはないわね。

 

水無月:その心は?

 

雪蓮 :呉の種馬だから♪

 

水&冥:あ〜〜〜〜〜〜・・・・・・(妙に納得してしまう)

 

祭  :それよりも一刀のあのヘタレぶりをどうにかしないとなるまい。

 

水無月:無理でしょう♪

 

一刀 :テメ〜〜〜〜〜!(泣)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蓮華 :一刀と一緒に・・・・・・(ポッ)

 

思春 :蓮華様・・・・・・。

 

 

説明
本日第二段。
といってものんびりとした日常生活です〜。
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コメント
思春がいつおちるか気になります。(ロックオン)
遥か後ろには思春が着の影から二人を見守っていた。←木の影(トウガ・S・ローゼン)
思春以外は全員おちたか。(ブックマン)
もう、ヘタレっぷりが板についてきちゃいましたね(;^^)(minazuki)
一刀・・君にはヘタレの称号がぴったりさ!(笑)(ショウ)
いいねぇ〜 そして、便利な言葉 た ね ば w(Poussiere)
蓮華の「お義兄様」になる日がくるかもです!(;゜∀゜)(minazuki)
蓮華から兄と呼ばれるのか?羨ましすぎるぞwwwww(フィル)
一刀いいなぁ〜 さすが種馬w(本郷)
タグ
「雪蓮」「平和」「一刀」「長江」

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