Run! Run! Run! ボカロット猛レース! 第6話 デッドヒート!
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 理不尽に勝負を挑まれたアペンド刑事、そして、挑んだ張本人のミク、それぞれが、製作ボカロット試験用コースの各自のピットで、各自のボカロットの最終調整をしていた。

 

 「飛行しない等、コースを極端にショートカットしてしまう装置は付けない」

 

 これだけを守ったボカロットなら構わない。これがミクがアペンド刑事に突きつけた“唯一のレギュレーション”だった。当然2体でのレースだから、予選はなく、スタートラインに並んでスタートする。但し、ミクは知り尽くしているコースだが、アペンド刑事は全く知らないコースで、不公平なので、アペンド刑事には、10周だけ愛機に乗って、コースを回る事が許されたのだった。

 

 最終チェックをしたアペンド刑事は、消耗する装備を外した『ネギロイド02』に搭乗し、コースを走ってみることにした。

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(アペンド刑事の試験走行)

 

 ガシャン!ガシャン!

 

 『ネギロイド02』は、当然だが走行モードになって、ピットからスタートラインに移動し、位置に着いた。そこへミクのピットからミクが連絡に来た。

 

ミク:アペンド刑事、10周あるから、十分にコースを知ることは出来ると思う。私は“いい勝負”がしたいの。メカニックとしての全てを注いだ愛機『ネギロイド∞(インフィニット)』と、アナタが作って運転するオリジナルの『ネギロイド02』、メカニックとしてもパイロットとしても、どちらが上なのか? その「答え」を知りたい。負けたら、どちらも諦めて引き下がるわ。でも勝ったら、好きにさせて貰うわよ

 

アペンド:わかった。私もガチの現場をくぐり抜けてきたんだ、少々特殊だが、こういう勝負も悪くない、そして、負けることは許されない、キミの親御さんのためにも、キミのためにも

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 START!

 

 ギュイーーーーーーン! バシュ!

 

 『ネギロイド02』は軽やかにバーニアを点火させ、ブーストと歩行ユニットにより、かなり高速にコースを走っていった。

 

ミク:ブーストの出力とタイミング、歩行ユニットの出来、機体バランス、とても“刑事”が作った物とは思えないわ。あの人、一体…

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(コース説明)

 

 ミクのコースには、トラップ類は仕掛けられてなかった。純粋に“走るテスト”を行う所だった。

 

START

第1直線

第1右カーブ

第2直線(広い)

第1左カーブ

第3直線(狭い)

第1S字クランク

第1急傾斜直線

第2右カーブ

第4直線(狭い)

第2左カーブ

第1右バンク

最終ロングストレート

START

 

 これがコースの全容だった。カーブは多めで、直線には狭い、広い、急傾斜、ロング、等多種多様だった。しかし、ボカロットのレースは武器有りの設定、2台以上でレースする訳なので、そんな簡単に良いタイムで周回を重ねればいい、というわけではなかった。

 

 そのコースをアペンド刑事の『ネギロイド02』は、走り始めたのだ。

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(第1直線)

 

アペンド:まずは直線か。広めで武器による妨害で出鼻をくじくのも手だが、少なくても1周目は様子見か。ミクが攻撃してきても、これだけ広ければ、回避も楽だろう

 

(第1右カーブ)

 

アペンド:おそらく私が後ろを走っているだろう、このコーナーは、1周目は後ろから牽制、以降は大胆に攻撃してしまっても構わないだろう。直線ではかわされやすい攻撃でも、曲がっているときは逆に仕掛けやすいからな

 

(第2直線)

 

アペンド:ここも広めか。展開からして、相手が仕掛けてくるな。ここでのバトルは避けられないか

 

(第1左カーブ)

 

アペンド:左のカーブか。さっきの直線からのカーブだから、おそらくここは、激しいライン取り合戦になるな

 

(第3直線)

 

アペンド:ここはやたら狭いな…。バトルは双方とも、無理だな。ということは、さっきのカーブから出る時の位置取りが難しいな

 

(第1S字クランク)

 

アペンド:でかいS字クランクだな。まぁボカロットは両方歩行タイプだから、速度は落ちても、問題なく通過か。バトルは無理だな

 

(第1急傾斜直線)

 

アペンド:逆Vの字の上り坂と下り坂か。攻撃の効果はかなりあると思うが、それは向こうも同じか。ここは状況によりけりだな

 

(第2右カーブ)

 

アペンド:下り坂のすぐ後にカーブか。速度制御が難しいな。バトルは無理だな

 

(第4直線)

 

アペンド:この展開で更に狭い直線か…。ここまでの3つのコンボは気を付けないと

 

(第2左カーブ)

 

アペンド:バンクの前のカーブか。ここで仕掛けるのは、状況に応じてだな

 

(第1右バンク)

 

アペンド:そして、最後のストレートの前に大きな右バンクか。仕掛けるならここしかないな。ここで、し損じると最後の直線は逃げ切られる…

 

(最終ロングストレート)

 

アペンド:そして、スタート地点までのロングストレート。展開からして、ここに入る前に先頭に立ったボカロットが逃げ切れるわけだ。周回関係なく、ここで大きく離されると、攻撃での牽制すら出来ない状況になるということか

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 アペンド刑事の『ネギロイド02』は、ミクが立っているSTART地点に戻ってきた。しかしアペンド刑事はボカロットを止めてしまった。

 

ミク:あら? まだ9周残っているけど?

アペンド:どんな物かと思ったが、トラップなどの仕掛けがないから、1周あれば十分だ。エネルギーを回復させて、レースを開始しよう

ミク:そう。解った。じゃあ、私の『ネギロイド∞』を持ってくるわ

 

 アペンド刑事は『ネギロイド02』を一度ピットに戻し、エネルギーをMAXまで入れてから、スタート地点に戻ってきた。ミクは首を傾げながら自分のピットに戻り、準備が整っていた愛機『ネギロイド∞』に搭乗して、スタート地点の『ネギロイド02』の横に移動した。

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(以下、各自コクピットから“無線”で話してます)

 

アペンド:君は試験走行しなくていいのかい?

ミク:ここはもう数え切れないほど走ったコース、前にも言ったとおり、熟知しているわ

アペンド:了解。で、スタートの合図は?

ミク:さっき自動でカウントするランプのスイッチを入れたわ。どっちのボカロットもスタートラインに並んでいるし、平等よね

アペンド:わかった。ではランプを見ていることにしよう

 

 その5秒後、カウントダウンのカウントダウンランプが光り、運命のレースは幕を上げようとしていた。

 

赤、 2秒前

黄色 1秒前

青  スタート!

 

パーーーーーン!

 

アペンド、ミク:引き離す!

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 ギュルン!

 

 両方のボカロットの歩行用アクチュエーターが動き出し、2台はほぼ同時にスタートした! どうやら“第1直線”でやろうとしていた事は、同じだったようだ。お互い、武器類での牽制や攻撃はせずに、フルスロットにしたバーニアを使って、滑るように脚部で走行していった!

 

 2台は並んで同時に“第1右カーブ”に差し掛かった! イン側がアペンド刑事、アウト側がミクだった。

 

アペンド:“第1右カーブ”は貰った!

ミク:そうはいくか!

 

 まだ1回目のカーブだというのに、ミクの『ネギロイド∞』は右腕を強引に横に突き出し、アペンド刑事の『ネギロイド02』の左横っ腹にジャブを入れた! 『ネギロイド02』が右のコーナーラインギリギリまで吹き飛ばされ、姿勢制御のため、減速せざるを得なかった。

 

ミク:1回目だから、強引な走行はしないだろうなんて、なんて保守的な走りを想定していたの?

アペンド:コレくらいの減速、想定内だ。逆に礼を言おう、『最内角』でカーブを曲がらしてくれた事を、な

ミク:!

 

 そう、ミクは“コースアウト”を狙って、内側にはじき飛ばしたのだったが、コースアウトにならず、減速が付き物である“最内角でのカーブクリア”を許してしまったのである。アペンド刑事は、“攻撃が来たら来たで”、策を用意していたのであった。外にはじき飛ばされたら、最悪の状態にならない程度に膨らみ、姿勢を整えよう、内側に巻かれたら、逆に利用してしまう、と。

 

アペンド:では、“第2直線”は、頂く

 

 アペンド刑事の『ネギロイド02』はわずかではあるが、『ネギロイド∞』より速くカーブを脱出し、第2直線に先に躍り出た。

 

ミク:くっ…。このアペンド刑事、ただの刑事ではない…、おそらく私に変身する前から、パイロット経験があるはず。でなければ、こんな“プロ”の発想、リアルのレースで、出てくるはずがない!

 

 グィ! バフォン!

 

 ミクも負けられない。バーニアを最大にふかして、半ばホバリングに近い状態で、『ネギロイド02』を追いかける形で、第2直線を疾走していった!

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(第1左カーブ)

 

 第2直線ではお互い仕掛けられず、『ネギロイド02』が前、『ネギロイド∞』が後ろの状態で、最初の左カーブに侵入していった。ミクは“微妙な姿勢制御が必要であるカーブ”で仕掛ける事を信条としているのだろう、今回も内側を疾走している『ネギロイド02』の後方目がけて、バーニアを過出力気味にふかして、タックルを仕掛けた。

 

ミク:喰らえ!

アペンド:ぬっ! このカーブでも仕掛けるか!

 

 『ネギロイド∞』の“過出力”はアペンド刑事の想定していた物より、遥かに強力だった。今回はミクの勝ちだった。『ネギロイド02』は後方、背中の中央に、『ネギロイド∞』の強力なタックルを喰らって、カーブの外側に大きくはじき飛ばされてしまった!

 

アペンド:くっ! さすがメカニックとパイロット、両方の天才、こんなピーキーなチューニングが出来て、更に乗りこなしている!

ミク:お褒めいただき、光栄よ。このカーブは私が頂いたわ

アペンド:今回はくれてやる。だがすぐに追いつく!

 

 『ネギロイド02』は速度を落とし、すぐに姿勢を直して、『ネギロイド∞』の後を追いかける形でカーブを曲がり、第3直線に入っていった。

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(第3直線)

 

 狭い直線だった。前に『ネギロイド∞』、後ろに『ネギロイド02』。残念ながら、ここではアペンド刑事は仕掛けられなかった。離されないような丁寧な運転で、直線を抜ける事にした。

 

(第1S字クランク)

 

 大きなS字になっているクランクに2台が入っていった。当然“ショートカット”は許されない。『ネギロイド∞』も『ネギロイド02』も、共に減速し、バーニアを最小限にして、丁寧にS字を歩行していった。アペンド刑事がツイていたのは、S字に入る前の段階でもほとんど離されずに、後ろにピッタリくっついていたことだった。車の“テイルトゥーノーズ”や“スリップストリーム”まではいかないが、パンチ攻撃がギリギリ当たらない程度の距離を保っていたのだった。

 

 ガシャン! ガシャン!

 

 2台はゆっくりとS字をクリアーしていた。が、ミクはここでも“掟破り”を仕掛けてきたのだった! 『ネギロイド∞』の左手に仕込んであった長めの“パイル”が、S字である事を利用して、『ネギロイド∞』が上のカーブ、『ネギロイド02』が下のカーブを曲がりきる瞬間に射出されたのだった! そう、パイルを直線的に射出すれば、“そのまま当たる”、軌道だ!

 

 バシュ!

 

アペンド:ぬぅぅ!!! こんな所でこんなものを!

ミク:電磁式パイルバンカー! これで終わりだ!

 

 しかし、アペンド刑事のパイロットスキルは、性能差的な物以外なら、“瞬時に対応を思いつく”レベルだった。

 

 ガシッ!

 

ミク:な!!!! パイルバンカーを“掴んだ”!?

アペンド:後ろで寝ていろ!

 

 グィッ!

 

『ネギロイド02』が右手で掴んだ、『ネギロイド∞』のパイルを思いっきり引っ張り、『ネギロイド∞』ごと、S字クランクの入り口付近まで、吹き飛ばしてしまった! 『ネギロイド∞』はゴロゴロ転がりながらすっ飛んでしまったので、姿勢制御バーニアで体制を整え、速度をある程度落とし、S字クランクをもう一度歩行して、クリアーした。その間、『ネギロイド02』はとっくにS字クランクをクリアーし、第1急傾斜直線の入り口にたどり着いていた。

 

ミク:ぬっぅ…、だ、だが、この先は急傾斜、速度はどうあっても落ちる…。まだだ、まだ終わらんよ…

 

 ミクも本気だった。

 

(続く)

 

CAST

 

アペンド刑事:初音ミクAppend

ミク:初音ミク

 

その他:エキストラの皆さん

説明
☆当方のピアプロユーザーネーム“enarin”名義で書いていました、ボーカロイド小説シリーズです。
○第14作目の第4話です。
○今回もミクさんを軸に、今まで書いてなかった“レース物”、“サスペンス”、“ちょっと良い話”で作ってみました。

☆ようやっと、レースらしい展開を書くことが出来ました。
☆車のレースと違って、攻撃で邪魔できるのがポイントです。

☆キャラも多めで、一応ロボレース&探偵物ですが、相変わらず色々なテーマを詰め込んでます。
○娯楽物とお考え頂いて、お楽しみ頂ければ幸いです。
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タグ
Vocaloid 初音ミク 初音ミクAppend 

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