真恋姫無双幻夢伝 小ネタ『詠の日記』 |
真恋姫無双 幻夢伝 小ネタ 『詠の日記』
歴史が大きく動いたこの日を記念して、ボクは日記を始めようと思う。
本日、漢王朝が滅亡した。
皇帝自身があの白いやつらに味方しようとした事実はまたたく間に広がり、民衆の信頼を失った。あの戦いの後、ボクたちが皇帝に譲位を迫っても、誰も同情しなかった。ボクたちも絶対に許すわけにはいかなかった。むしろ皇帝自身もこの国から追放すべきだと意見したが、皇帝“代理”となった華琳は、形だけの官位を与えて幽閉した。冷静になってから考えると、その判断はさすがだと思う。だからこそ、彼女はこの天下を平定できたのだろう。
ボクたちの役職も決まった。ボクは月と一緒に、汝南一帯を治めることになった。皆はボクたちの恩賞が少ないと文句を言ってくれたが、ボクは満足している。月も「頑張らないと」と意気込んでいた。だって、あいつの故郷を守ることが出来るのだから。
華雄や霞は、それぞれ平北将軍・征北将軍として北方の警戒に当たるそうだ。あの戦いから帰ってきた後、ボクたちに泣いて謝っていた華雄は、「待っていてくれ。すぐに探し出す」と力強く言った。霞も「絶対に見つけたるで!」と約束して行ってしまった。職務も忘れないように、とは言っておいたが、やっぱり期待してしまう。2人とも、頼んだよ。
凪と真桜と沙和は、親衛軍に配属された。この国の軍隊の中枢を任されることは名誉なことであったが、それよりも3人が喜んでいたのは、春蘭と秋蘭の指導を受けられることだった。「もっと勉強します!」「あっちゅう間に成長するで!」「びっくりさせてみせるの!」と鼻息荒く言っていた。その成果を誰に見せたいのか、それは言わぬが華だろう。でもその姿は、これまでで一番頼もしく感じた。
恋と音々音は……どこにいるのか分からない。役職に興味が無かったらしい。いくら止めても無駄だった。それよりも旅がしたいそうだ。
でも音々音が「あいつが帰ってきたら、また戻ってくるかもしれません」と言っていた。照れくさそうに言ってくれたその言葉に、偽りはないだろう。また一緒に仕事をしたい。そう願う。
この国の形も大きく変わった。今まで漢が与えていた役職は、華琳が任命することになった。呉や蜀は王位を与えられ、魏に隷属する形となった。しかしながら、蓮華や劉備は、洛陽に留め置かれている。じきに魏に吸収されるのだろう。
ボクが汝南の太守に任命された時、華琳と会った。「私は諦めていない」と、彼女は2つ用意した玉座の片方に座って、そう言っていた。「もう一つの椅子に座るべき人が必要だ」と返したら、彼女は寂しそうに笑っていた。
その帰りに、蓮華にも会った。呉に帰りたいのでは、と心配したが、取り越し苦労だった。彼女は言った。「どこにいようと、私は呉や天下のために働ける」。ボクも彼女に負けてはいられない。でも「こっちにいる方が見つけやすい」と言っていた方が、案外本音だったりして。
この国には課題が山積している。荒廃した耕地の管理や人口の減少、異民族との関係など、いろいろな問題が毎日発生している。それでもボクたちは挫けない。焦らないで、一歩ずつ前進していこう。あいつが作ってくれた世界を、あいつが帰ってくるまで、ボクたちは絶対に守ってみせる。
最後に1つだけ書いておきたい。華琳の言葉は間違っている。正解を、代わりに述べておきたい。
「ボク“たち”は諦めていない」と。
説明 | ||
最終決戦のしばらく後、詠が書いた日記 次が最終話 |
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