Run! Run! Run! ボカロット猛レース! 最終話 ゴール!
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(東京 ネオアキバサイバーシティレース場 第4直線出口付近)

 

 ミキのボカロット『ラブリースター』が、先ほどの☆型ビームを撃ったマシンだった。☆型発射口から熱を持った煙が立ちこめていた。コクピットで操縦桿を握って、冷や汗垂らしているミキの所に、AHSチームのピットにいるテルから無線が入った。

 

テル:ミキ、無事か!?

ミキ:ぶ、無事だけど、これが“いろはさん”が用意していた『最終兵器』なの?

テル:いや、その、それがね…、僕が出力の調整をするとき、間違って、2つ桁数が大きい数値で設定しちゃったらしいんだよ。つまりいろはが設定していた出力の“100倍”のエネルギーのビームが発射しちゃったんだ…、いやーごめん、てへ☆

ミキ:てへ☆、じゃないですよ!!!! 暴発してたら、このレース場ごと全部吹き飛んでいたんですよ!!!!

テル:まー、いーじゃないですか。ちゃんと発射できて、悪党をやっつけて、ミクさん救えて、結果オーライですよ♪

ミキ:あぅ…(はぁ〜、やっぱり専務を呼びつけての急ごしらえメカニックじゃ、だめだったみたいね…)

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(東京 ネオアキバサイバーシティレース場 最終バンク付近)

 

 『ラブリースター』の☆型ビームの直撃を喰らった、ジャックの『ヨーモノ改』は、バンクの外側の外壁にめりこみ、全身から煙をあげて、大破していた。とりあえず今の状態では動きそうもなかった。

 

 『ネギロイドZ』のコクピットから、それを呆然と見ていたミクに、ジャックから無線が入った。

 

ジャック:や・・・・やるじゃねーかよぉ〜・・・・ちーとぉ、痛かったぜぇ〜・・・・それより、こっちは動けねーぜ? トドメ差したらどうだよぉ〜、え〜ミクさんよぉ〜

ミク:トドメって…

ジャック:俺はこのレースを中止寸前まで追い込み、お前の命を狙い、アペンドとその娘を殺し、誘拐した連中も殺し続けた『殺人鬼』だぜぇ〜。この国から“死刑”は撤廃されちまったから、いい弁護士雇えば、刑も軽くできるし、巧くいけば『心神喪失』とかになって、無罪だぜ? 俺を殺せる機会は、もうここしかねーぜ?

 

ミク:う…う…

 

 ギーーー ガチャ!

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 『ネギロイドZ』の左腕に装備されている電磁誘導式の銛『パイルバンカー』が作動し、大破している『ヨーモノ改』のコクピットの前に銛の先が移動して止まった。

 

ジャック:そーそー、それでいいんだよぉ〜。この国のザル法にかかるくらいなら、殺しちまった方がいいだろぉ〜。やっちまいなよ、ザクッとよ〜

 

 ガチャ

 

 ジャックは右手で左下のレバーを握った。

 

ミク:こ・・・この外道・・・おまえなんか・・・おまえなんか・・・

ジャック:そうそう、一気にやっちまえって!

 

 ギュイーーーーーーン!

 

 パイルバンカーの銛が電磁式スライドを伝って上にせり上がった。発射準備の動作だ。

 

ミク:お前なんかーーー!!!

ジャック:かかったな! ナイフでひと突きだぜ!

 

 ズガン!!!!!

 

ミク:うわ!!!!

ジャック:なに!?

 

 どこからか飛んできた実体弾が、『ネギロイドZ』の左腕を直撃し、銛を発射寸前になっていた『ネギロイドZ』の左腕ごと吹き飛ばしていた!

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 その実体弾の発射地点は、最終バンクを越えてすぐの所にある、センターの特殊ボカロットのガレージ前だった。開かれたガレージの手前のコースに、警察用特殊ボカロットが、遠距離ライフルを構えて立っていた。発射口からは、まさに先ほど撃ったときの煙が立ち上っていた。

 

ミク:な・・・なんで私が撃たれるの・・・

 

 『ネギロイドZ』と『ヨーモノ改』のコクピットにあるメインモニターに、映像交信可能の緊急用スクリーンが浮かびあがった。そこにはコクピットに乗っている“アペンド刑事”が映し出されていた。

 

ジャック:アペンドのやろう、何のマネだ?

ミク:アペンド刑事・・・なんで・・・

 

アペンド:ミクさん、『ヨーモノ改』の右手を見てみなさい

 

 ミクは頭部を回して、『ヨーモノ改』を見た。そこには、もしそこに『ネギロイドZ』がいたら、確実にナイフでコクピットを貫かれていたであろう位置に配置された、“ナイフを握った右手”、があった。

 

アペンド:ジャックは、その残り一撃分動ける事を知っていた。だからキミを挑発して、攻撃範囲までおびき寄せ、カウンターに近い攻撃で、キミを殺そうとしたんだよ

ジャック:くっ!

ミク:あ・・・・あぅ・・・・

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アペンド:ミクさん!!! こんなクズ野郎を殺して、一生を棒に振ってはダメだ! キミには明るい未来が待っているんだろ? 殺しなんてやっちゃだめだ! それに、私と約束したでしょ、このレースに優勝するって

 

 アペンド刑事はスマートフォンのアイコンをクリックした。姿がモザイクに代わり、一人の女性に戻った。

 

ミク:咲子さん!!!!

ジャック:な・・・・・なんだとぉぉぉ!!!!!!!

 

 センターでも叫んでいた人物がいた。

 

コーシー:咲子さん!!!!!

 

ジャック:や・・・やっぱり、アペンドの野郎は俺が確実に殺したんだ

咲子:そう、私はアペンドの妻の、“豊田咲子”。夫が殺された後、お前を捕まえるまで、変装していたのよ…。ミクさん、さっきはあなたをそいつから引き離すため、そして、こいつの機体を爆発させないために、あなたを撃っちゃってごめんなさい。でも、壊した武器はあなたには不要な武器よ

ミク:咲子さん・・・

ジャック:お・・・お前を殺さなかったのは、最大の失策だ・・・くそぉぉぉおおおお!!!!!!

咲子:これまでの交信記録は全部警察が記録している。ボカロットをプロ以上に操縦でき、交信も出来る、そんなヤツを“心神喪失”で逃がしてたまるものですか! 私の夫、そして、娘や被害者のためにも、お前を最大の極刑にしてやるから、楽しみにしていなさい!!!!

ジャック:くっ・・・・

 

咲子:ミクさん、この攻撃は保安上の事で、まだレースは続行しているの。このクズの事は、私たち警察に任せなさい。あなたが向かうところは、殺人者ではなく、あのゴールラインよ

 

 咲子のボカロットは、少し先にある黄色い“ゴールライン”を指さした。

 

ミク:で、でも、まだAHSグループのミキさんが・・・

 

 そこにミキの『ラブリースター』から無線が入った。

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ミキ:ミクちゃんごめーん〜! テルのアホが間違って設定しちゃっていたビームを撃っちゃったから、私の機体、エネルギー0で、もう動けないの〜!

咲子:センター! ミキさんを助けてあげて! 残念だけど、AHSグループもリタイヤよ

 

 センターから救護車が『ラブリースター』が立っている位置に向かい、救護を始めた。

 

咲子:このレースで最後に残ったのは、あなただけ。だから、レースも、アナタがあのゴールラインを踏めば、終了になることになったの

ミク:咲子さん・・・みんな・・・

 

咲子:さぁ、立ち上がって、ゴールラインに向かいなさい。全てに決着をつけるためにね♪

ミク:はいっ!!!

 

 ガッチャ!

 

 ミクの『ネギロイドZ』は左手損傷とはいえ、走行できる状態だったので、ゆっくり立ち上がり、そろそろとコースに戻って、最終バンクを抜け、最終直線に入っていった。

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(最終直線)

 

観客達:ミーク!! ミーク!!

 

 大歓声の中、ゆっくりと直線を歩き、そして、遂にゴールラインを越えたのだった!

 

 パーン! パンパカパーン!!!

 

ヒーゲ:おめでとうございます! 優勝はただ一人完走できた、『ナガネギーコーポレーション』チームのミクさんです!!! そして合計ポイント68で、今年度の総合優勝です!!!!!

 

 ミクはコクピットで操縦桿を握ったまま、大泣きしていた。でもそれは勿論、“嬉し泣き”だった。

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 咲子はジャックの『ヨーモノ改』に近づいて、ボカロットを降り、銃を構えながら『ヨーモノ改』のコクピットを強制開放し、銃口をジャックにつきつけた。

 

ジャック:観念したよ。煮るなり焼くなり、好きにしな

 

 咲子はオートマチック手錠をジャックにかけ、コクピットから引き出した。

 

咲子:…アナタも、あの祝福されているミクさんを見なさい

 

 ジャックは意外に思ったが、ゴールラインで歓声を受けているミクの『ネギロイドZ』を眺めた。

 

咲子:ジャック、犯罪の事を取り除けば、あなたのボカロットの操縦技術、メカニックの腕、どれも、ミクさんに引けを取らないものだったと思うわ

ジャック:…

咲子:でもあなたは、人生を犯罪に向けてしまった。あなたにどういう過去があったのかは、これから調べることだけど、犯罪に手を染めなければ、私のライバル、そして、ミクさんのライバルにもなれた、そういう世界が待っていたかもしれないな

 

 ジャックはうなだれながら、無言で泣いていた。どうやら、過去に“志望”、をしていた時期があったのかも知れないことは、容易に想像できた。

 

 こうして、1つのレース、1つのパイロットの勝負、1つの事件が、終わったのだった。

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(東京 ネオアキバサイバーシティレース場 表彰台付近)

 

 ミクが壇上に立っていた。これから表彰式だったのだ。

 

ヒーゲ:それでは、本レースの1位であり、チームの総合優勝を獲得した、ミクさんに、優勝カップを授y

 

???:ミーーーーーーーーーーークーーーーーーーーーーー!!!!!!

 

 ミクのピットから、一人の男性が全速力で走ってきた。

 

ミク:お父さん!!!!

三久:もうレースが気になって気になって、マッハ戦闘機で駆けつけたぞ! よかった! 本当に良かった!

 

 スリスリ

 

 三久はミクの頬にスリスリしていた。

 

ミク:お父さん、わかったから、とりあえず表彰式は済ませようよ

三久:えぐえぐ、す、すまんかった。ではヒーゲさん、頼みます

ヒーゲ:は、はい。では。はい! 優勝カップです!!!

 

 ミクは大きな優勝カップをヒーゲから手渡され、高々と掲げた! 観客の祝福の声が一段と高まった!

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 ワーーー!!!! ワーーー!!!!

 

ヒーゲ:おめでとうございます!! さて、このレースはご存じの通り、ミクさんの将来を賭けたレースでもありました。ミクさんは、見事優勝できましたので・・・えー、お父さんには申し訳ないですが、ミクさんのこれからは、ミクさんの意志で決めて良いことになりましたが、お父さん、本当にそれでいいですか?

 

三久:勿論! それが約束ですから。ミク? 何か“将来”について、決めている事って、あるかい? なんでもいいぞ?

ミク:・・・・・・・・なんでもいいんだね?

三久:ああ! 勿論

 

ミク:・・・私、ボカロットレースのパイロットにはならない

三久:そ・・・そっか・・・残念だが仕方ないな・・・

ミクオ:ねーちゃん・・・

 

 ちょうどその場を横切っていた咲子さんが、血相変えてミクの横に駆けつけてきた。

 

咲子:ミ、ミクさん! やっぱりあの施設か何かで、メカニックになるの!?

 

 ミクは咲子さんの顔を見つめて、ニコっと笑った。

 

ミク:レースのパイロットにはならないけど、警察のボカロット隊に入るの、メカニック兼任で!

咲子、三久、ミクオ:え!!!!????

 

ミク:私、今回の事件とレースでよくわかった。この世界には、守らなければ行けない人たちがいて、そのために自分の技術と経験を使っている人、そう、アペンド刑事みたいな人がいっぱいいるんだって

咲子:ミクさん・・・

ミク:レースで勝つ技術も勿論大事だと思うけど、私はこんな事件にも勇敢に立ち向かうために、メカニック技術とパイロットテクを使いたいんです。事件に荷担した私がいうのもおかしいけど、それでも、私はそういう事に力を使いたいんです! だから、

 

 ザッシ!

 

 ミクは咲子さんの前で土下座した。

 

ミク:咲子さん、いえ、アペンド刑事! 私を弟子にして下さい! 国家資格も取ります! もっともっと勉強します!

咲子:・・・・・・・・私は厳しいよ?

ミク:覚悟してます!

 

 咲子は三久の方に視線を移した。

 

咲子:えーーーーお父さん? こういうことだけど、一応訊きます。いいですか?

三久:ええ、勿論! ミクの意志で決めた事に従う約束ですし、私としても娘を誇りに思います!

ミクオ:ねーちゃん、すげーぞ!

 

咲子:では、私が娘さんをお預かり致します。メカニックもできて、一流のパイロットで、そして立派なスペシャル刑事に鍛え上げます!

三久:宜しくお願いします!

 

咲子:じゃ、ミクさん、これから、宜しくね♪

ミク:はい! 先輩!

 

 こうして、長く厳しい事件は、大団円を迎えたのだった・・・

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(夜 ミクのピットのガレージ)

 

 夜、ミクは一人で、これで最後になってしまうレース場のピットのガレージにやってきたのでした。そこには、左腕が破損している『ネギロイドZ』が静かに佇んでいました。

 

ミク:私のボカロット、これでキミとは最後になっちゃうね

『ネギロイドZ』:…

ミク:ごめんね、キミのパイロットを選ばなくて・・・

『ネギロイドZ』:…

ミク:もうレースでキミと一緒に戦う事はないけど、たまには家に戻って、キミの整備を手伝う事にするわ

『ネギロイドZ』:…

ミク:私も一生懸命頑張るから、キミもレースで頑張らなきゃだめだよ?

『ネギロイドZ』:…

 

ミク:…じゃあね

 

 カツカツカツ

 

 ミクは後ろを振り向いて、ピットを出ようとした、その時だった。

 

『ネギロイドZ』:コレマデアリガトウ

 

ミク:え?

 

『ネギロイドZ』:…

 

ミク:? 気のせいかな

 

 カツカツカツ バタン

 

 ミクはピットを後にして、咲子さんの所に戻ったのでした。

 

 そして、ピットは、また、深い静けさに包まれていったのでした。

 

(了)

 

CAST

 

アペンド刑事(豊田咲子):初音ミクAppend

ミク:初音ミク

 

ゼッケン00)メイコ酒蔵株式会社

メカニックのアカイト:アカイト

パイロットの咲音ちゃん(18歳):咲音メイコ

 

ゼッケン01)ナガネギーコーポレーション

メカニックのミクオ:ミクオ

 

ゼッケン02)ジナラシ組

パイロットの鏡音リン:鏡音リン

パイロットの鏡音レン:鏡音レン

 

ゼッケン03)タコルカー鮮魚組合

メカニックのトエト:トエト

パイロットの巡音ルカ:巡音ルカ

 

ゼッケン05)印種(インタネ)不動産

メカニックの勇気めぐみ:GUMI

パイロットのリュウト:リュウト(ガチャッポイド)

 

ゼッケン06)AHSホールディングス

専務だけど仮設メカニックのテルさん:氷山キヨテル

パイロットのミキ:miki

 

ゼッケン07)アシュグループ

パイロットの弱音ハク:弱音ハク

パイロットのネル:亞北ネル

パイロットのテト:重音テト

 

ゼッケン08)海外用品卸商・フォーリナー

パイロットの偽トニオの姿:Tonio

本物のトニオ((死体):Tonio

メカニックのミリアム:MIRIAM

プリマ:Prima

他の開発チーム:海外ボカロ

 

ヒーゲ:ヒゲのあの方

 

フナ・コーシー:とある刑事役の役者さん

 

ジャック、その他:エキストラの皆さん

説明
☆当方のピアプロユーザーネーム“enarin”名義で書いていました、ボーカロイド小説シリーズです。
○第14作目の第4話です。
○今回もミクさんを軸に、今まで書いてなかった“レース物”、“サスペンス”、“ちょっと良い話”で作ってみました。

☆大団円です!
☆これまでのご閲覧、コメントなど、まことに有り難う御座いました!

☆キャラも多めで、一応ロボレース&探偵物ですが、相変わらず色々なテーマを詰め込んでます。
○娯楽物とお考え頂いて、お楽しみ頂ければ幸いです。
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タグ
Vocaloid 初音ミク 鏡音リン 鏡音レン 巡音ルカ 年長組 インターネット家 AHS 海外組 亜種 

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