リリカル東方恋姫外伝 ネギま編 第九話 『諦めたら、そこで終わり』
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 とある日のこと。ナギたちがアリカと出会い、完全ある世界の情報を収集して時のこと。

 

「…なぁ遮那。なんで、俺たち、女たちの荷物持つしてるんだ…?」

「しょうがねーだろうナギ。デザートおごってやるっと言われて、引き受けちまったんだしー」

 

 嫌な顔をしながら大量の買い物袋とと箱を持つナギと遮那は、ランジェリーショップの店の前に立っていた。

 なぜ、男の二人が女物の店にいるかというと、リズベットとアリカとリーファの買い物をするさい、アリカの命令で荷物持ちとして付き合わされていた。最初は断ったが、リズベットとリーファが付き合えば有名店のデザートを奢ってあげるといわれて、仕方なく荷物持ちを引き受けたのだ。

 

「アリカさん!こっちの色なんてどうかな?」

「うーん、そっちより、妾はこっちの色と柄のほうが好みだ」

「駄目ね二人とも。そんなの古いフッァションセンスじゃー流行に後れちゃうわよ。この流行の女ことリズベットが直々にコーディネートしてあげる♪」

 

 店の奥で、リーファ、アリカ、リズベットのガールズトークがナギたちの耳に入る。三人が店に入ってから約30分が経過しているが、いまだ品選びをしていた。

 

「女ってこぅーも、買い物に時間掛かるんだろうな?そもそも、女物の下着の店の前に立つのがつれぇー」

「まったくだ。男のこっちの身にもなれっよな」

「あ、でも遮那なら違和感ないし、店の中に入れるんじゃねーの?」

「首ちょん切るぞテメェ」

 

 女(シャナ)顔のため、普通に入れそうなのだが、店内にいるアリカ達に何されるかわからないため、絶対に入らないとする遮那であった

 

「リーファ、こっちに爆乳用のブラ在るけど、試着してみる?」

「いいわよ、そんなもの…きゃっ!?アリカさん!?」

「ふむ、やはりデカイ。…おぬしほんとはエルフでなく、牛人の亜人の娘ではないのか?」

「違いますから、後ろから揉まないでくださ…キャッ///!!」

「おぉ…なんとも重量感にやわらかさ。実に良い…」

「ウッ///アリカさんだって…綺麗な胸…アゥン…してるじゃないですか…ウッ…ン///」

「ほぉー感度も高いようだな、かわいいやつめ♪」

「ずるいわよアリカ姫。あたしだって〜!」

「ちょっと、リズまで、やめってって…アゥン///」

 

 淫らな声が店の外まで聞こえてくる。その声に、通行人やカップルたちが顔を赤くし、とある男性人たちは前かがみに股間を手で押さえていた。

 

「………さてと…」

「まって。どこ行く気だ」

 

 微笑んでいるかのような表情で、さりげなく荷物を地面に置くナギを遮那が止めた。

 

「なぁーに、ちょっくら、山六つ拝みにいくだけだ」

「やめとけ、マジで死ぬぞ。両手両足切断されて、胴体と内臓を大鎚で潰された挙句、顔中殴られて死じまうぞ」

「死を恐れて巨大な山に挑めるかよ遮那!俺は行くぜ!そして頂上にあるパワーストンに願掛けするんだ!HaHaHaHaHaHa!」

「駄目だこいつ。もうマダオになっちまってる…」

 

 十代後半であるのナギだが、思考が完全にまるで駄目な男、略してマダオになっていた。

 遮那は彼の横には同じく邪な笑い声を上げる銀の天パがみえたような…。

 

「ほぉー、そなた、いつから魔法使いから登山家になったのじゃ?」

 

 凛として声が店のほうから響き、ナギは笑い声を止め、ギギギギと錆付いたように首を動かす、

 そこには、仏教面で両腕を組むアリカがいた。横には微笑んでいるが頭に青筋を浮かべパルコーを構えるリズベットと、赤くなった顔を伏せて両手で胸を押さえるリーファもいた。

 ナギは引きずった顔にだらだらと冷や汗が流れるのを感じた。遮那に救援を頼もうとする横目で見るが、危険を感じたのか、はたまた、ナギを見捨てたのか、遮那の姿がなかった。

 

「…アリカ姫。もう買い物はよろしいのですか?」

「あぁ、先ほど会計を済ませた。ところでナギよ。おぬし、グーとパー、どちら好みだ?」

「………パーでおねがいします」

 

 パーのほうが比較的怪我が無いと考えたナギであったが、アリカは王家の魔力を右手に溜め、腰を下ろし、右手を上に掲げて手のひらを平行にする。

 

「旧世界の格闘技で手刀でビンを平行に切る余興があるそうだな?では、ビンではなく人の首を当てたらどうなるのかのぉ?」

「………オレ、終わった\(^o^)/」

 

 ナギの耳に、リズベットとリーファ、そして、周りの通行人たちが南無阿弥陀仏と合唱してるように聞こえていた。

 その日、首が折れる音が、青空の下、鈍く響いた。

 

 

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「う〜首が〜オレの首が〜」

「いいかげんおきなさい!この馬鹿ナギ!」

「ん〜はっ!?オレの首!?オレの首はまだ無事かっ!?」

「何言ってるのよあんた?首の骨折を三日で完治したくせに」

 

 壁に持たれてうなされるナギを、リズベットの声で起こされた。

 ナギは落ちた衝撃で気絶してたようだった。そのとき、首の骨折になったときの夢をみていたようである。

 

「おっ、そうか…俺たちあの穴に落ちて…ん?ここは?」

「山の中の洞窟の遺跡よ。あんたが寝てる間、周りを探索したんだけど、どうやらこの洞窟、人の手とかで建設されたらしいわ」

 

 洞窟であるにもかかわらず、まわりは魔法の光で灯されて明るく、綺麗に整えられた道や壁を照らしていた。

 

「にっししし、外れだと思ったけど前言撤回だ。絶対いるぞ伝説のドラゴンが!」

「その根拠は?」

「こんないかにもRPGなダンジョンにいないわけねぇよ!まぁ、あと、オレの勘だけど」

「勘かい!」

「ともかくだ。先進もうぜ。どっかの王座の間的な所に絶対いるはずだ!」

 

 そう言って、ナギは飛ぶかのように起き上がり、目を輝かせながら洞窟の暗い奥の方へ早歩きで進む。

 

「ちょっとまちなさいよー!一刀たちと合流しなくていいの?」

「探索しているうちに合流できるって!それよりも、お宝先だぜリズ!」

「伝説のドラゴンはどうしたこらー!」

 

 リズベットもナギに置いて行かれないよう後を追った。

 

 

 

――ピュンピュンピュン!

 

「きゃっ!?壁から矢が飛んできた!?」

「うっわ!でっかい斧も振ってきやがった!?」

 

 

 

――カサカサズクネクネ

 

「いっや〜!?蜘蛛が蛇が虫が床一面にびっしりと〜!?」

「オレに抱きつくなって!?」

 

 

 

――ゴロゴロゴロゴロ!!!

 

「大きい岩が転がってきた!?」

「あそこの角に逃げろー!」

 

 

 

――ウッホ、いい男♪

 

「オカマ軍団の大行進だぁぁあああああ!!!」

「ぜってぇぇええええ掘られてたまるぁぁああああああああああああああああ!?!?!?」

 

 

 

――ガッォオオオオオ!!

 

「今度はワイバーンよ!しかも沢山!?」

「こいつらなら正面突破だぁあああああああ!!!」

 

 

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 二人は洞窟に仕掛けれた罠を潜り抜けるが、洞窟は迷路になっているのか、現在迷っていた。

 

「ぜぇぜぇ、なんだよここ、罠だらけじゃねーか…」

「ハァハァ、途中、ひとつだけ、おかしなもの無かった…?」

 

 さすがのナギも疲労に達し、リズベットは疲れて尻餅していた。

 

「気のせいだ絶対。…それにしても、こんだけ罠があるってことは、伝説の龍神、クリリムゾンなんちゃらいそうだな」

「あんた、ほんとうに長い名前覚えられないの?」

 

 息を整え落ち着こうとするリズベットが、ナギに聞きたかったことを言った。

 

「…ナギ。こんなときに聞くのもアレだけど…あんた、なんで村から出て行って魔法世界の戦争に参加してるの?」

「あぁん?…それりゃーもちろん、つえー奴と戦って、うんでもって最強の魔法使いになるために決まってんだろう。何年、オレと幼馴染してんだよリズ」

「でも、ナギ。あんた、今のままで十分つよいわよ。それ以上の強くなって、どうする気なの?」

「………」

 

 リズベットの言葉にナギは黙った。昔ならただ最強を求め、強いモノと戦いたいという子供ぽい考えであったが、成長し、戦場で歩き、現実を見た自分が、いまさら強くなってどうするなどか考えもしなかった。ただの自己満足。そう、今の自分は強者として今の現状に満足し、戦闘本能に従って戦場を飛びながら餌(強者)を探す猛禽類だとナギは自身を再確認した。

 

「………強いて言えば、居場所が探したかったかもしれないなオレ…」

「居場所?」

「オレってさぁーこの性格だし、村とか学園でいろいろ迷惑かけただろう。そんときいっつも、スタンじいさんになんでみんなと同じ普通なことができないかと怒られてな。そんとき夜に一人、しょぼくれたときもあったんだ」

「あれ、あんたもしょぼくれることもあったの?てっきり、ポディティブ過ぎで忘れたんだと思ってた」

「今の傷ついたぞオイ。…話を戻すけど、そんとき思ったんだ。オレは他人とは違うっ。普通の奴らとは一緒になれないってな」

 

 自身の手をみるナギ。まわりからバグとかチートが言われているナギであった、自身の異常な魔力や能力を自覚していた。

 

「だからオレと共感できる奴とか強い奴を探すために村に飛びだしたんだと思う。うんで、遮那と詠春と出会って、強い奴さがして魔法世界の戦争に参加しったって所かな」

「なら、ナギが出て行ったのは、あたしたちが…」

「ちげぇよ。おまえや、村は悪くねぇ。ただ、オレが普通の奴らとは違う、それだけのことだ」

 

 リズベットが落ち込もうとし、ナギがフォローし、リズベットの前にしゃがんで彼女の頭をわしわしと撫でた。

 

「それによ、オレが強者のおかげで、遮那や詠春、一刀とか、そんで、仲間たちと出会えたんだ。それがオレの求めていた居場所だ」

「………その場所に、あたしも入っている?」

「あたりまえだろう。おまえは紅い翼のメンバーで、オレの幼馴染だ!オレのそばにいてあたりまえだぜ」

 

 にやりと笑うナギの手がリズベットを撫でるのを止めると、真剣な表情をする。

 

「それにな、姫様がオレに世界を守るっていうデカイ使命と目標をくれたんだ。それがオレの今の目的」

 

 今答えられるのはここまでだ、と告げるナギに、リズベットは悟ったように微笑んだ。

 

「フッ、そうね。ナギらしいわ」

 

 そう言って立ち上がると、背中に背負っていたパルコーをもって平行にし、ナギに突き出した。

 

「だったら、あなたが守りたいものを守るために、あたしがこの彩光の聖鎚で、あなたに新しい翼(杖)を与えてあげるわ!」

「…あぁ、頼むぜリズ。この最強の魔法使いナギ・スプリングフィールドに最強の杖を作ってくれよ!」

 

 そう言って、ナギは頷き、パルコーをもつリズベットの手に拳をぶつけた。

 

「うんじゃー、杖を作るためにクリムゾン…RBでいいか。RBを探しに行くわよ」

 

 先ほどの疲れを忘れるほど、元気に洞窟の奥を進み始める。

 

 

ポッチ♪

 

 

「「へっ?」」

 

 捜索再開早々に、リズベットは地面にあるボタンのようなもの踏んだ。すると二人の足元の廊下が崩れ落ち、底が見ない穴が出現した。

 

「リズのあほぉおおおおおお!!」

「ごっめぇぇえええええん!!」

 

 二人は重力に従って、前回と同じくまた穴に落ちていった。

 

 

 

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「…ヴッ、イテテテここは…?」

 

 穴から落ちたナギが目を覚ますと、そこは東京ドーム以上の広で、中央に巨大な赤い岩が鎮座し、壁には聖堂のような装飾が施された神秘漂う空間であった。

 その頭上の壁側には、そこから落ちたとばかりの穴がパッかと開いていた。

 

「あれ?リズ、どこにいるんだ?」

「……あんたの下よ…///」

 

 下から声が聞こえ、ナギが下を向くいて今状況を理解した。なんと、ナギがリズベットに馬乗りになって、自身の両手をリズベットの胸を鷲掴みしていた。

 ナギは赤面するリズベットの胸をもみもみと揉みながら真剣な表情で彼女をみつめる。

 

「…リズ、おまえ結構胸あるな」

 

 

バッキ!!

 

 

「こんなとき、なに揉んでいるの、スケベナギ…///」

「今のは事故だろ…;」

 

 殴られた赤く腫れた頬を撫でるナギ。

 二人は、周りを見渡すが、中央にある巨大な赤い岩以外、出入り口などなかった。

 

「いったいどこだここ・・・?」

「教会の聖堂みたいわね…?」

 

 

 

――何のようだ、人の子たちよ?

 

 

「「っ!?」」

 

 どこから重低音のような声が聖堂のような空間に響いた。

 同時に、ゴゴゴゴと聞こえてくると、中央に鎮座していた巨大な赤い岩が動き出した。

 

「岩が動いた!?」

『奏者、こやつ、岩ではありません』

 

 巨大な赤い岩と表面と思われたものが翼を開くように広げ、翼に隠していた胴体と首が現れた。

 

『ここに人が来るのは何万年振りか…』

 

 上半身は鳥の骨のような金色の装甲、黒い筋肉繊維が装甲の隙間から露出し、腕の代わりに鳳凰のような赤い巨大な翼が四対、首には赤い鱗と剣のような尖った背びれ。下半身はトカゲのような細く強靭な四肢が巨体を支え、身体よりも長い尻尾がアッチコッチと先っぽを動かしている。

 そして、頭には牛の角のような金色の双角があり、深紅の眼が、ギロリっと、驚いているナギとリズベットを見下ろしていた。

 

「ナ、ナギ…!こいつ、まさか!?」

「まちがいねぇ…深紅の目の赤翼龍皇(クリムゾンアイ・レットバード・ドラゴン)だ!!」

 

 悪魔的な姿をとるドラゴン、深紅の眼の赤翼龍皇。

 その深紅の瞳と、発させらるオーラと気配で、ナギはキョウスケがいっていた伝説の龍神だと確信した。

 

『人の子たちよ。何用で、我が住処に入った』

「実はな、テメェを探してたんだ伝説のドラゴンさんよ」

『我を?』

「あぁ、最初に自己紹介しとくな。俺は最強の魔法使い、千の呪文の男ナギ・スプリングフィールド!んで、こっちのは幼馴染で仲間のリズベットだ!」

「はじめまして、リズベット・T・ロックベルトです!?」

『我はパルコーです』

 

 リズベットはお辞儀をして挨拶し、パルコーもRBの存在に驚きながら挨拶した。

 

『ナギ、リズベット、そして、パルコーか。我はアヴァロデウス。人は我を深紅眼の赤翼龍皇と呼ぶ。どちらも好きなほうで呼べ」

「んじゃーアヴァロデウスって呼ぶな」

 

 RBこと、アヴァロデウスをナギは名前で呼ぶことにした。伝説の龍神をフレンドリーにいうナギに、リズベットは冷や汗を流していた。

 

『して、ナギよ。おぬしらは我に何の御用だ?』

「単刀直入にゆうぜ。おまえ、俺の杖の材料になれっ!」

『ほぉー…』

「ちょっと、ナギ!もうすこし言葉選びなさいよ!」

 

 不敵な笑みを浮かべてアヴァロデウスに指差すナギ。

 アヴァロデウスは興味を持つかのようにナギを見つめ、リズベットはナギを指摘する。

 

『つまり、おぬしは我の力と魂がほしいのか?』

「そいうこと。俺の新しい杖にはテメェの魂が必要なんでな。むりやりでも、いただくぜ!」

「ナギ、なんかそれ、悪役の台詞ぽいよ」

『まるで、強盗ですね』

『……ふっはははははははは!!面白い!実に面白いぞナギ・スプリングフィールド!!』

 

 アヴァロデウスは笑い出し、頭をナギたちの視線まで降ろし、深紅の眼でナギを見つめた。

 

『我を求めたのは、おぬしで二人目。だが、我に恐れず啖呵を切り、挑むのはおぬしが始めてだ』

「(二人目?)…へっ、御託はいい。俺の杖の材料になるか、ならないかどっちだ?」

『うぬ、そうだな…。我は寿命という概念がないため、長い時間を持て余しておる。たまに外に外出するが、世界に関わるのは乗り気でなく、ほぼ、この地で眠っておるのじゃが、この機会に新たな存在となり、世界とかかわるのも悪くなかろうぉ…』

「えぇーと、つまり、杖の材料になってくれるの?」

『そういうことだ。…もっとも、我が認めればの話だが!』

 

 そういって、頭を上げ、四対の両翼を広げてアヴァローンは吼えた。

 

『運命の空より生まれたし、発展と衰退を司る龍、アヴァロデウス!我が魂、我が力、ほしいのなら力を示せ千の呪文の男ナギ・スプリングフィールド!!』

「よっしゃー!殴り合いはオレの専売特許だ!かかってこいっ!」

「ちょっ、ナギ本気!?相手は龍神なのよ!?私たちで勝てると思ってるの!?ここは、一刀たちに連絡したほうがいぃって!?」

「なにいってんだよリズ。ここで逃げたら男が、いや、紅い翼の名が廃るってもんだろう!」

『そもそも、こんな状況では連絡をとることは、まず無理でしょうし。あきらめましょう、奏者』

「パルコーまで!?」

 

 たとえ、連絡しても到着するまで、アヴァロデウスが待ってくれる保証がない。リズベットは覚悟をきめる。

 

「だあぁあもうわかったわ!こっちも、ハラ決まったわよ!地獄まで付き合ってあげるんだから!」

「そうこなくっちゃな!それでこそ、オレの幼馴染!」

『やけくそですね、奏者』

 

 最初に動いたのはアヴァロデウスであった。前足の片方を上げ、ナギたちを踏み潰そうとする。

 ナギとリズベットはアヴァロデウスに向かって前に走り、踏み付けを回避する。そのまま二人は左右に別れ、アヴァロデウスの両側に回りこんだ。

 

「オッララララララララ!!!」

「セイッヤァァアア!!」

 

 まずは、足元から崩そうと、ナギは拳で、リズベットはパルコーで、アヴァロデウスの下半身の四肢を殴る、

 しかし、

 

「かってぇ〜!鳥骨に似てるけど、やっぱ、龍だわこいつ〜」

「う〜手がしびれる〜」

『二人とも、龍をなめすぎですよ』

 

 金色の装甲、強靭な筋肉繊維、そして、赤い鱗という堅牢な鎧に包まれたアヴァロデウスの体には効かない。

 逆に、ナギの拳を血で滲み、怪我をしていた。

 

『終わりか?なら、次は我の番だ』

 

 アヴァロデウスは翼を広げ、約600メートル以上の高さがある天井まで飛んだ。

 口を開き、息を吸い込む。

 

「ブレスか!?」

「ナギ、あたしの後ろに!」

 

 リズベットが叫び、ナギはリズベットの後ろに回った。

 

「いくわよパルコー」

『了解』

『カッァー!!!』

 

 アヴァロデウスの口から放たれる高密度のエネルギーを含んだ竜巻の大風(イメージはルストハリケーン)。

 もはや、地上を消し飛ばそうとするハリケーンそのものであった。

 

「聖者を包むベールよ、聖者をも傷つける殺意から、我を護れ。『聖者の衣』!!」

 

 リズベットがパルコーを掲げると、リズベットとナギたちを中心に不透明な布のような膜が展開され、大気と風のブレスを防いだ。

 

『我のブレスを防ぐか』

『あなたが、どんな存在か知りませんが、こっちらは、邪悪なるモノから千以上世界を守った聖獣神。その名は伊達ではありません』

「まだまだいくわよ!痛みをしらぬ愚者に聖者の痛みを繋げろ。『聖者の紬糸』!!」

 

 ブレスが止むと同時に、パルコーの先をアヴァロデウスに向けると、展開されている聖者の衣が、ほつれるかのように無数の糸へと変わり、数本の束となって、アヴァロデウスの翼や首、足などを拘束する。

 

『う、うごけん!?』

 

 翼を封じられ、アヴァロデウスは糸に強く引っ張りて、地面に落下する。何とか動こうと、糸を引き千切るの試みるも糸は頑丈で丈夫。

 さらに、糸を引っ張れば引っ張るほど、体が引っ張られ引き千切れる激痛がアヴァロデウスの肉体に走る。

 

『聖者が紡いだ聖なる糸は捕縛した相手の精神と神経を繋ぎ、一体化します。もし、糸を引き千切るということは腕を引き切ると同等なので、糸が切れないよう動かないことが賢明ですよ』

「名前はホーリー系なのに、グロイわね、この技…;」

「けど、動きは封じられてるぜ!」

 

 そう言って、ナギは拘束されたアヴァローンの周りは走り、ポケットから数枚のコインを取り出した。

 

「こいつでどうだ!連射式レールガン!」

『ぐっぉおおおおおお!?』

 

 連続でのコインを投げ、一発一発がレールガンとなり、超電磁砲の嵐がアヴァローンに襲う。

 連射のため、威力は通常のレールガンの劣るが、連射で全方角により、ダメージが徐々に積み重なり、アヴァローンは怯む。

 このまままいけば…、と押しているナギは思ったが、

 

『……戯れはここまでにしておこう』

 

 アヴァロデウスが低く言うと、拘束していた糸の束が老化するかのごとく、朽ち落ちていく。

 

「あたしの糸が朽ちてる!?」

「くっ、まだまだぁあああ!!」

 

 アヴァロデウスの周りを飛び回り、レールガンの弾幕を張るナギだが、放たれたレールガンの加速が衰えていき、赤い鱗に当たるときにただのコインを投げただけの威力になり、鱗に弾かれる。

 

「オレのレールガンが弱くなってるだと!?」

『いったはずだ。我は発展と衰退を司る龍と。【衰退】とは老い、衰えて終えること。事象や存在に終わりがあれば、我は衰退させ消滅することができる!』

「なにそのチート!?反則じゃない!?」

 

 チート過ぎる力にリズベットが驚き叫ぶ。しかし、アヴァロデウスの力はそれだけでなかった。

 

『っ!?奏者!?大変です!アヴァロデウスの体内エネルギーが増幅、いえ、一固体のキャンパスを越えています!このままだとやばいのが来ます!?』

「嘘、マジ!?」

「やっべ!?リズ、防御――」

『遅いわぁあああああああああああああああああああああ!!!』

 

 咆哮と同時に、アヴァロデウスは全身から放たれる赤いエネルギーの衝撃波を放出した。

 

「うっわぁああああああ!?」

「きゃっぁぁああああ!?」

 

 衝撃波に吹き飛ばされるナギとリズベット。エネルギーの衝撃は壁や地面を振動させ、罅割れや地響きを轟かせ壊す。

 衝撃波が止み終え、二人は起き上がる。眼前には初会ときの比べて気魄、オーラ、殺意、闘気など比べられないほど上がったアヴァロデウスが皇帝のように鎮座していた。

 

『逆に衰退の反対である【発展】は、始まりであり成長、進化すること。あらゆる存在の次元を飛び越え高次元に飛躍させるこそが、我が発展の力なり』

「プラスとマイナスの能力っか、めちゃくちゃだぜ!?」

「まるで、マサトの籠手みたい…」

『いいえ、奏者。マダオもといドライグの力はあくまで増幅です。あれは存在レベルを一段あげる飛躍です。本質が違いまし、パワーアップの質が桁違いです』

「えぇーと、オレにもわかるように説明してくれない?」

『…鳥頭にわかるようにいえば、つまり、マダオはコツコツと貯金を貯めるに対して、社長は株で大儲けという風です。あと、貯めた貯金はパチンコでスリって残高ゼロ円になります』

「なるほど。納得」

「ほんとにわかってる?」

「つまり、ドライグは貧乏でマダオだってことだな♪」

「ぜんぜん、わかってない」

『もっとも、赤トカゲがマダオで変態なのは無理もありませんし…』

「なにげに、毒吐いてないアンタ!?ドライグに恨みでもあるの!?」

 

 

 

 

 

 

 そのころ、筋肉ブラザーズによって崩壊しているマフィアの本拠地では…、

 

『ブアックション!?!』?

「おっ、風邪かドライグ?」

『わからん。ただ、不名誉なこと言われた上に、俺に存在価値が希薄しそうな感じがする…』

「なんじゃそりゃ?」

「お〜い、マサト〜。この悪の組織の倉庫に大量のプロティンがあるんだが、どうする?」

「なんだと!正義の筋肉マンとして、押収だぁぁああ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 プロティン中毒者が筋肉フェッチのマフィアが買いだめしていたプロティンを押収している最中、ナギたちはアヴァロデウスの能力に追い込まれていた。

 

「うっりゃぁ!」

『…ぬるい』

 

 魔力で強化された拳でナギがアヴァロデウスの胸を殴るも、魔力が数段に弱くなり、通常のパンチとなっていた。

 

「俺の魔力まで弱くなってる!?」

『我がいる限り、この地、この場にいる者たちは衰退の道をたどる。そして…』

 

 アヴァロデウスは自身の力のレベルを三段階上げ、筋力が上がった片翼でナギを殴った

 

『我がいる限り、我らは発展し続ける!』

「ぐっわぁあああああああああああああああ!?!?」

「ナギぃぃいい!?」

 

 壁にたたきつけられ、ナギは瓦礫と一緒に埋もれた。

 

「このぉおおおおお!怒涛之大進撃!!!」

『やらせん』

 

 それに激動して激情してリズベットが パルコーを地面に叩き、怒涛之大進撃を放つが、アヴァロデウスが衰退の能力で怒涛之大進撃を弱体化させた。

 よって、地面を陥没するだけに不発した。

 

『やめておけ。ソイツは我と互角以上の存在だが、それは護りの力。なにより、まだ目覚めぬ力では、我を倒すことなどできぬ』

『…やはり、あなたは、我と、おなじ世界より生まれしモノですか…』

 

 パルコーがアヴァロデウスが自身と同じと察した。

 そのとき、ナギが瓦礫を退かし、傷ついた体に鞭を打って立ち上がった。頭から血を流し、体も服はズタボロであった

 

「まだっだ…まだ、おわっちゃいねぇ…」

「ナギ!?そんな体じゃ無茶よ!?」

『……挑戦者、ナギよ。わかっているだろう。我とそなたとの力は歴然だ。それでも挑むのか?』

「あたりまえだ…。俺は…最強の魔法使いナギ・スプリングフィールド…!ぜってぇぇに負けてたまるかよ…!」

『最強…っか。そなたは人として十分に強い…が、それは人の域としてだ。世界、世界の意思、概念より生まれし我らには敵わん。…それでも最強を名乗るのか?』

「当たり前だ…。俺は強い…うんで…強い奴と戦う…それで最強を名乗ってわりぃかよっ」

『ふぬ…ならば聞こう。おぬし、なぜ最強に拘るのかを』

 

 ナギの脳裏に、遮那や一刀、リズベットに、赤い翼の仲間たち、そして、アリカが姿がよぎった。そして、単純に答える。

 

「そんなもん……かっこいいからにきまってるんだろう」

 

 捻くれる者であるナギは、ニィと不敵な笑みで言うのであった。

 

『………フッ。馬鹿な答えだ。だが、我は、嫌いではないぞ…』

 

 そういって、アヴァロデウスナギを潰そうと片足を上げた。

 

『我とここまで戦った敬意を評し、一撃を葬ろうぞ!最強の魔法使いナギよ!』

(ま、まずい…体がうごいてくれねぇ…!?)

「ナギィ、逃げてえっ!?」

 

 体を動かそうとするが、ダメージが大きすぎたため、一歩も動けなかった。リズベットが駆けつけようするが間に合わない。

 

(すまねぇリズ…姫様…オレ…死ぬわ…)

 

 ナギは諦めかけるが、目を閉じず、踏み潰そうとするアヴァロデウスの瞳を見つめる。

 

――遮那…一刀…姫子ちゃんと姫様のことたのむぜ…

 

 ナギがアスナを後悔し諦めかけたそのとき、

 

 

 

ドッガァァアアアアアアアアアアアン!!

 

 

 

 天井が突然崩壊し、瓦礫とともに銅色と鋼色の巨大な物体二つが落ちてきた。

 さらに、

 

「「そこ、どいてくれぇぇええええ!!」」

 

 巨大な物体の頭部らしきところで、それぞれ人がしがみ付いていた。

 

『なに!?――ぐっは!?』

 

 突然の事態にアヴァロデウスは反応するが遅れ、落ちてきた巨大な物体と瓦礫の下敷きとなった。

 

「なっ、何だっ…!?」

「げっほっげほ…!?あっれは……!?」

「イッテテテ…無事かキョウスケ…?」

「なんとかな…ニードル・ワークスが自動で着地してくれて助かった…」

 

 煙が晴れると、騎士甲冑のような巨大ロボットのバスターバロンの頭部に乗る一刀と、同じく騎士甲冑でケンタウロスのような姿のガーディアンのニードル・ワークの頭部に乗るキョウスケが、ナギとリズベットの眼に映った。

 

「キョウスケ!?一刀!?」

「おっ、リズベット。それにナギも!?」

「ここに居ったのかっ。探したぞ。…って、なんでボロボロ?なにがあったのか?」

「それはコッチの台詞だ!おまえらこそ、どうしたここに!?つうか、なんつう登場だよ!?あぶねぇだろう!」

「すまん。襲ってきたワイバーンを片付けて、お前の馬鹿みたいな魔力を辿って、穴に入ったんだけど道が迷路みたいになっててな、今まで迷ってたんだ」

「それで、どこから音が聞こえてきてな。とりあえず近道しようと壁をぶち壊すためにバスターバロンとニードル・ワークを召還したんだけど、二体の重さに耐え切れず地面が崩れて、下の空間に落ちてしまったんだ」

「そんなデカイもん召還したら洞窟が壊れるのは普通当たり前でしょうが!?」

 

 制限された空間で巨大であるバスターバロンとニードル・ワークを召還した一刀とキョウスケにリズベットがツッコミをいれた。

 

「まぁ、おかげでナギが助かってよかったけど…」

 

 

 最後には感謝を述べるリズベット。

 アヴァロデウスは二体の巨人と瓦礫に埋もれ、動かないため勝負はついたのだと思っていた。しかし、まだ、なにも終わってなどいない。

 

「ところで、さっきの赤いのってもしかして…」

『…いい加減退け。偶像の巨人よ!』

 

 下敷きにされていたアヴァロデウスが、またもやオーラと衝撃波を放出し、瓦礫と二体の巨人を吹き飛ばした。

 

「どうやら、アレが俺たちが探してた龍らしいな」

「すごい威圧…こいつは本気でやらないとやばいぞ…」

 

 吹き飛ばされたバスターバロンとニードル・ワークスはそれぞれ自動で着地し、キョウスケと一刀は眼前にいるアヴァロデウスが深紅眼の赤翼龍皇だと、気づいた。

 

『今日はやけに客人が来るな…次は貴様らが相手か?』

「気をつけて二人とも!そいつ、周りのやつを弱体化させて、自分だけレベルアップする能力をもってるの!!あたしもナギもそれで苦戦したわ!」

「なに、その赤龍帝の篭手と白龍帝の光翼を合わせて強化したような能力!?チートすぎるぞ!?」

「…キョウスケがなにいってるのかわからないけど、短期戦で倒したほうがいいな!」

 

 バスターバロンは拳を構え、ニードル・ワークは槍と盾を構えて、戦闘態勢をとった。

 

『その偶像で我に挑むか…。おもしろい』

 

 アヴァロデウスは二体の巨人を睨む。

 そのとき、アヴァロデウスンと二体の巨人の間に、ナギが割って入る。

 

「一刀、キョウスケ。わりぃんだけど、手を出さないでくれるか。…あいつはオレとリズで倒したい」

「へっ///!?」

「何いったんだナギ!相手は龍神だぞ!ここは俺たちで倒したほうがいい!そもそも、そんなボロボロで勝てるわけが――」

「まって、キョウスケ」

 

 抗議するキョウスケを一刀が止めると、一刀はナギと向き合う。

 

「ナギ、勝算でもあるのか?」

「勝算があろうがなかろうが、関係ねぇ。ただ、ここで仲間に助けてもらっちゃーオレが、諦めたことを認めちまうんだよ!仲間を裏切っちまうだよ!」

 

 一瞬、すべてを諦め、仲間に思いを託してしまったナギ。それは仲間と共に、アスナを助け、世界と戦うという約束を破るということであった。

 

「それによー。あいつはオレ…オレとリズの獲物だっ。欲しいものは自分の手で狩る!うんでもって、オレは本当の最強になって、約束を、大切な仲間を護り通す!」

 

 真剣でまっすぐな眼で言うナギに、一刀は恩師の面影をみた。

 

「…わかった。ただし、危険だと判断したら強制介入するからな。親友たちが死ぬ場面なんてみたくない。それでいいかキョウスケ?」

「…いいだろう」

 

 二人はバスターバロンとニードル・ワークを操作し、二体を地面に膝をつかせた。もしものときに動けるように、するためであろうが、その姿は騎士たちがナギたちの戦いを見守るようであった。

 

「へっへへ、サンキューだぜ♪」

 

 笑うも、すぐさま真剣な表情になる。

 すると、パルコーを肩に置くリズベットがナギの横に立ち並ぶ。

 

「すまねぇなリズ。勝手につき合わせちまって」

「…もういいわよ。もともと、杖を作るために材料が欲しいあたしと最強の杖が欲しいあんたとの問題よ。それに、最初に言ったでしょう?地獄まで付き合ってあげるって。もっとも、あんたの最強の杖作るんだから、生き残るけど♪」

「…そうっ。じゃぁ、もしも、あの世に行ったら、お前のどんな命令、なんだって聞いてやるよ♪」

「なによそれ〜せめて生きて帰ったらにしてくれない〜」

 

 笑みをこぼすリズベットはパルコーを構え、ナギは懐から閉まっていた予備の杖を取り出した。

 

『その偶像の使い手たちと合わせれば勝機があるにもかかわらず、それでもまだ、貴様らだけで、我と戦うのか』

「あたりめぇだ。どんだけテメェ強かろうが、勝つまでオレは諦めねぇ!」

「どんなにボロボロになっても、あたしたちは勝つまで戦う!」

『くっくっく…ほんとうに…馬鹿だ…馬鹿を通り越した大馬鹿だ!おぬしらっ!!』

 

 アヴァロデウスが先ほど以上に咆哮し、轟音が空間に響き渡る。

 ナギとリズベットは臆せず、不敵な笑みで叫ぶ。

 

 

 

「「大馬鹿は大馬鹿でもこっちとら最強の大馬鹿ティーンエイジャーだコノヤロー!!!」」

 

-6ページ-

 

 

 

BGM【碧羅の天へ誘えど】

 

 

 

 アヴァロデウスが先に動き、突進してくる。ナギは通販で買った杖をアヴァロデウスに向ける。

 

「見せてやるよ最強の魔法使い千の呪文の男の最強魔法を!呪文以下省略、千の雷!!」

『この程度…――なに!?』

 

 放たれた千の雷は、前へ進むアヴァロデウスと均衡し受け止めたうえに、数歩ほど、アヴァロデウスを押し出した。

 同時に、ナギの杖がナギの魔力に耐えれきれず亀裂が生じる。

 

(魔力を衰退化させておるのにも関わらず、この魔力量…こやつ底なしか…?)

「ちっ、やっぱ通販じゃー駄目かっ!あと二発で壊れちまうっ!?」

「ナギ!真正面で力押しはだめよ!攻略法を見つけないと!!」

「攻略法…攻略法なぁ…」

 

 ナギは考える。考えるのは苦手でも、それでも使える手を考える。

 アヴァロンデウスの能力…衰退と発展…強化と弱体化…。

 自分たちの技…二発しか撃てない攻撃魔法…リズベットの技…。

 これらで、使える手を…アヴぁロンデウスを倒せる手を…。

 そして、ナギは頭をフルを動かし、ある手をおもいついた。

 

「おっ、そうだ!リズ!俺が合図したら、さっきの糸のやつでアイツの体と俺の左腕を繋げてくれ!!」

「はぁぁ!?どうする気よぉ?」

「いいからやってくれよな!」

 

 そういって、ナギはアヴァロデウスへと走る。

 アヴァロデウスは翼を広げて、翼から硬化された羽を反射するも、ナギは走りながら避け、魔力で強化した脚力でアヴァロデウスの頭上までジャンプした。

 

「狙うは一点…呪文以下省略、雷の斧!!」

『ぬっぉ!?目潰しか!』

「もうひとつおまけに雷の斧!!」

 

 雷の斧でアヴァロデウスの両目を潰す。二発撃った為、杖が砕け壊れたが、数秒ほどは視力が戻らないはず。

 うろたえるアヴァロデウスに隙ができる。

 

「今だっ!やれリズ!!」

「えぇいっ、ままよぉ!聖者の紬糸!!!」

 

 もう一度、聖者の紬糸を放ち、アヴァロデウスを拘束するリズベット。

 ナギの言われたとおり、拘束した糸の先をナギの左腕につなげて拘束した。徐々に視力を回復させたアヴァロデウスが自身の今の状況を把握した。

 

『無駄だ。こんなもの、また、衰退させ老化させる』

「それはどうかな…?」

 

 完全に視力を戻したアヴァロデウスがみたのは、にやりと笑うナギとナギの体から溢れ出す人外を超えた紅い魔力のオーラであった。

 

『馬鹿な!そなたの魔力はもはや衰退したはず!?なのに、その一固体を超えるほど魔力の高さはいったい…まさか!?』

「すげぇなぁ、おまえの発展の力っていうの?魔力が…力が爆発してるみてんぇにあふれてきやがる!」

『おぬし、どうやって我の力を!?もしや、この糸が!?』

「この糸って、神経と精神が繋がるみてぇだし、お前と繋がればお前と一緒にレベルアップするんじゃねぇかと思ったけどビンゴだったぜ!」

 

 ナギは聖者の紬糸をラインにし、アヴァロデウスと同調、発展の力でレベルアップするアヴァロデウスと同じく力と魔力をレベルアップさせたのだ。

 

『くっ。ならばもう一度、衰弱で弱めれば――』

「おっと、今、俺とお前は繋がっているんだぜ?俺が弱体化すれば、お前も弱体化なって±0になる。それでもいいのか?」

『……たしかに。だが、元の力に戻ろうと貴様と力の差は埋まらん』

「なにいってんだ?お前と戦ってるのはオレだけじゃねーだろう?」

 

 アヴァロデウスが拘束する糸を衰弱化させようしているとき、前方にリズベットがパルコーを構えていた。

 

「パルコー…いくよっ」

『ほんとうによろしいのですのか奏者?今未熟である、あなたが使えば、タダではすみませんよ』

「いいの!ただ一撃。アレを倒すための一撃だけを、あたしに頂戴!」

『…わかりました。それでは、緊急限定覚醒を実行します!!』

 

 パルコーの金具の部分の一部がスライドし、両側に蝶の片羽の形をさせたように配列されたパイプのようなブースタが、大きいほうに五本、小さいほうに三本と分かれて突起した。羽のようなブースタからエンジン音が鳴り響き、七色のエネルギーと金色の粒子を放出する。

 

『まさか、ここにきて覚醒を…いや、違う。限定的に覚醒させたのか!?』

「い、いくわよナギィッ!!」

 

 リズベットが叫び、限定解除されたパルコーを振り上げる。そのとき、アヴァロデウスの足元に金色の魔方陣が出現する。

 

「聖なる鎚よ!命の息吹の火花と共に、汝を封殺せよ!『封火陣之一打』!!」

 

 パルコーで金色の魔方陣を叩くと、魔方陣から高密な金色の粒子が放出され、アヴァロデウスの肉体に付着する。粒子は超高熱を発熱させ、アヴァロデウスの肉体を焼き付ける。さらに、粒子は神経まで及ぼし、麻痺させ動きを封じる。

 

『ぐぅうう、忌まわしい技を使いよって…!』

「こいつで終わりだ!オレのオリジナル魔法!第二弾!!」

 

 膨大な魔力を右腕を集めるナギ。右腕は赤い魔力に覆われ、魔力で変換させた紅い雷がバチバチと飛び散り、螺旋状に右腕に纏わりつく。

 そして、つながっている糸を左腕で引っ張り、アヴァロデウスに向かって飛び掛った。

 

「紅帝の鉄拳ンンン!!!」

『ぐっわぁあああああああああああああああ!?!?』

 

 超電磁砲の原理で放たれた右ストレート『紅帝の鉄拳』が、アヴァロデウスの喉元を貫く。喉もを押され、さらに、発展で規格外まで上げられた魔力とレールガンの応用で、アヴァロデウスは悲鳴を上げながら、衝撃で後方に吹っ飛び壁に激突。そのまま地に伏せ、沈黙する。

 

「ハァハァ、もうだめ…限界…ガック」

「リズッ!?」

 

 ナギが地面に倒れたリズベットへ駆けつける。同時に、一刀とキョウスケもバスターバロンとニードル・アークから降り、リズベットに元へ走る。

 変化したパルコーはリズベットが手から離すともとの形に戻っていた。

 

「大丈夫かリズ…」

「大丈夫、ちょっと、疲れただけだから…」

『まだ、成熟していない状態で、無理に覚醒をしたのです。あと数分、使用してたら、命を削るところでしたよ、奏者?』

「アッハハハ、あたし、鍛冶師の神様に愛されてるいるのよ!ナギの杖を作るまで死んでたまるもんですかっ」

「まったく、おまえってやつは…」

 

 強気に笑うリズベットにナギは一安心した。一刀もキョウスケも同じく、一刀は二人の怪我を治そうと、回復薬を渡そうとした。

 そのとき、地に倒れて沈黙していたアヴァロデウスが、いつのまにかナギたちの背後で見下ろしていた。

 

「オイオイ、どんだけバグキャラなんだよお前…?バグキャラのオレでも、さすがに絶望的だぜ…;」

『……もうはや、戦う必要はない。貴様は我に十分に力を示した。そして、貴様は汝の強さを証明したのだ』

 

 もはや、戦う力がないナギとリズベット。戦っていない一刀とキョウスケが身構えるが、アヴァロデウスは戦意がないことをいう。

 さらに、アヴァロデウスの肉体が、光に包まれ、まるで朽ちるかのように消滅しかけていた。

 

「おまえ、身体が!?」

『発展と衰退。性質が反対である二つの力は、もはや、我の身体には耐え切れなくなった。あのまま、おぬしたちと戦えば、いずれ我が身体は滅ぶのは定めだ』

「……あなた、最初っから死ぬ気だったの?」

『…運命という意思より生まれし我は、もともと役目も目標など存在しない。ただ、怠惰に時間を過ぎるの待つ人生を送るだけ。もともと、我、自身、なにか新しい人生を…生き方を見つけようという意思があったが、その気になれなかった。最初に出会った者に、なにかとキナ臭かったしな』

「おまえ強い割りに、中身ニートだなっ」

『そのニートに、コッテンパンにされたマダオが何を言う?』

「ハッハハハ、そうれもそうだな♪って、お前まで、オレをマダオ扱いかよ!?つうか、何千年、引きこもっていた奴がなんでマダオ知ってるんだ!?もう一度、打ん殴るぞゴラァ!!」

「ナギ、どうどう」

 

 マダオと言われて怒り狂うナギ。それを一刀が宥める。

 その様子を、アヴァロデウスはおもしろそうに見つめていた。

 

『フッ…だが、こうして終わってみれば、おぬしたちとの戦いは楽しいものであった。永遠の時より、永遠無き時が充実した人生はよいものだな』

「アヴァロデウス…」

『ナギ・スプリングフィールド。リズベット・T・ロックベルト。我、肉体が滅びようが、その魂、決して滅びぬ。約束道理、我は魂となりて、杖の材料となろうぞ。…そして、我を新しく人生と、目的を与えてくれ』

「…わかった。あたしが必ず、あなたをナギの杖…うんうん、世界最強の杖に生まれ変わらしてあげる!」

「うんでもって、オレと一緒に戦ってくれ!最強を目指すために、オレと護りたいものを護るために!」

『…承知した』

 

 

 

『我が魂、我が力、最強の魔法使い、千の呪文の男、ナギ・スプリングフィールドに運命のご加護があらんことを』

 

 

 

 そう言い残し、アヴァロデウスの体は光とともに消滅し、赤黒い光の球体だけが残った。

 球体はリズベットの手元に収まり、紅い光沢と茶色い錆がある、鋼の心臓の形へと変わった。

 無機物感があるにもかかわらず、ドクドクという動脈が鈍く打ち、また、温かみと寒気が感じられた。

 

「すっげぇ…これが、アヴァローンの魂か…」

「まるで心臓みたい」

「発展と衰退…それは人が未来に進もうとするとき必ず起こる機転。まさに人生の波乱万丈ということかな」

『まさに運命が生んだ、人と世界の人生の化身かもしれませんね』

「人と世界の人生っか…」

 

 アヴァロデウスの正体。それは、何なのかナギや一刀たちにはわからない。

 わかっていることは、アヴァロデウスは生きているということ。そして、ナギの杖として生まれ変わるということだった。

 

「よっーし、これで杖に必要な材料は揃ったな」

「早く工房にもどってナギの杖をつくらないと♪」

「俺も、手伝うよリズ」

「それじゃー、遮那たちの班と合流して帰るっか…」

 

 そのとき、洞窟が大きく揺れた。

 

「なにっ!?この揺れ!?地震!?」

 

 揺れはさらに激しさをますと、突如、壁や地面、天井に真っ赤に燃え滾るドロドロのマグマが破水し、流れこんできた。

 

「「マ、マグマぁぁああああああ!?」」

「漢字では溶岩んんんん!?」

「なにげに、漢字に変換した?」

 

 突然流れ込んできたマグマに驚く、ナギとリズベットとキョウスケ。ついでに、最後にツッコミをいれたのは一刀だった。

 そのとき、魂の状態だったアヴァロデウスが言葉を発した。

 

『言い忘れていたが、この山はもともと火山でな。住処を探していた我が衰退の力を使い溶岩を衰退させ地下深くに静まらせたんだ。溶岩の道だったものが固まり空洞になったところを、我が最初に者に頼んで、我と我を慕う飛竜との棲家にしてもらったんだ。我の力がなくなると、地下に静まらせた火山の溶岩がまた活動をはじめるから、早く逃げたほうがいいぞ』

「そういうことは早くいえぇええええええええええええっ!?なんつう、危険な物件に住んでんだよお前はぁっ!?」

「一刀!?あの、ヘラスに転移したテレポートで脱出できないの!?」

「こんな状況でテレポできないって!?」

 

 

 さらにマグマが溢れ出し混乱する一刀たち。転移しようにも混乱しているため、一刀のテレポートもキョウスケのディメンションARMを創造することもできない。

 

「とにかく今は逃げるんだぁ〜!!」

「「「異議なしぃいいいいいい!!」」」

 

 キョウスケの言葉を一刀たちは賛同し、いまだ顕現しているバスターバロンに一刀とナギが、ニードル・ワークにはキョウスケとアヴァロデウスの魂を持ったリズベットが急いで乗り出す。

 ナギとリズベットはいまだ満身創痍だが、この際、怪我など気にしてる場合ではなかった。

 一刀とキョウスケは二体の巨人を操作して、壁を壊し、まだ無事である洞窟へと繋げて、その場から逃げた。

 その後、複雑な洞窟の迷路に入ってしまい、迷いながら、後ろから追ってくる溶岩から逃げることになるのだが、このとき、一刀たちは予期もしなかった。

 そして、そのまま遮那たちとタイミングよく合流することになろうとも知らずに。

 

 

 

つづく

 

説明
そろそろ、まじであとがき書かないと…;
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クロスオーバー ネギま 一刀 転生者複数 オリキャラ&その他オリキャラ化 恋姫 その他 

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