Dear My Friends! ルカの受難 第2話 電脳街のプリンセス
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 ルカ姫は、ファンタジーの世界へ飛ばされた巡音ルカの事情も知らずに、不思議なトンネルを通って、休日昼間の日本一の電脳街“秋葉原”(以下、アキバ)に到着しました。到着地点は、中央通りからはずれた小道のマンホールの上でした。

 

 マンホールの上にできたトンネルの出口から、ひょいと一歩マンホールに足をおろし、そしてもう一歩足をおろしてマンホールの上に立つと、空中にできた“トンネルの出口”は消えてしまいました。

 

 普通、“通り道の出口が無くなる”というのは非常に怖いことなのに、ルカ姫の興味は、すでに“アキバ”に移っていたのでした。

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ルカ姫:うわぁ〜、面白そ〜♪ どっこからいこーかな!?

 

 こうして、ルカ姫は、幸いだれもいなかった小道のマンホール付近から移動し、昼間で歩行者天国になっており、人がごった返している大通りを秋葉原駅方面へ、周りを物珍しそうに見ながら、ゆっくりと歩いていました。道路の真ん中をどうどうと歩いているわけで、今日が歩行者天国で実に良かったといえます。

 

 「街をお姫様が歩いている」

 

 本来、実に奇妙な光景であり、すぐに職質されそうなシチュエーション…のはずだが、この“アキバ”という街は、特に歩行者天国になっている時は、その“常識”が一変します。

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 メイド姿でビラ配りをしているたくさんの女の子

どこかでコスプレパーティをしているのか、アニメや漫画やゲームのキャラクターになりきってコスプレしているコスプレイヤー達

 

 そう、この時間帯のこの場所では、こういう光景が“普通”であり、他の買い物客も全く不思議に思うことなく、街を歩き、お店で買い物をしている。仮装している人達が歩いていたり、道でビラ配りなどの仕事をしているわけだから、お姫様の姿をしている女の子が道を歩いていても、なんら変わった光景ではないのでした。

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 それよりルカ姫の方が心配になるはずです。どれもファンタジーの世界から来た人物なら、怖がってしまうような物ばかり…のはずである。しかし、魔導師アペンドを友人に持つ、この“ルカ姫”という人物は、好奇心の塊だったのです。怖がるどころか、ますます目を輝かして、感心していたのでした。

 

 痛車と呼ばれる“車体にキャラクターのペイントを施した自動車”が止まっています

 

ルカ姫:うわ〜、随分派手な魔導車両ですわね。絵が描かれているし、車体も金属でピカピカしているし。この街ではこういう感じが流行なのかも。今度アペンドに提案してみようかしら

 

 お店では液晶TVに、発売予定のゲームの画面やアニメが放映されています

 

ルカ姫:うわ〜♪ 随分薄い“魔導投影版”ですね。音も綺麗だし。しかし、この世界ではいろんな所で戦争が行われているのですね。兵士やゴーレムや魔物がこんなにうようよいるなんて。私も気を付けなくちゃ

 

 ルカ姫が観ていたゲーム画面には、最新版のファンタジー3Dアクションゲームの1シーンが映されていたのでした。それとコスプレしている人たちには、それほど強い興味は抱いていなかったのです。なにせ元の世界で、そういう姿の人たちを沢山観てきたため、

 

ルカ姫:ふーん、この世界ではこういうファッションも流行しているのですね

 

 この程度の事をちょっと思っただけだったのです。

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 さて、ルカ姫も人間、当然、“お腹が空く”、わけであります。

 

 ぐーーーーー

 

ルカ姫:あら! あらあら、そう言えばお腹が空きましたね。今は異世界の街を探検中ですから、食べ物を貰うときは気を付けないと行けませんわね。私だって、“食べ物はお金と交換で買う物”って事くらいは知ってますから

 

 ルカ姫がキョロキョロしながら、近くの食べ物屋を探していると、元の世界に似た“露店”の形式で食べ物を売っているお店を見つけました。そこは“ケバブ”屋でした。

 

にーちゃん:お! そこのお姫様のコスプレしたお客さん! ケバブ、オイシイヨ!

ルカ姫:“肉料理”ですか。美味しそうですわね。でも、あの・・・

にーちゃん:どうしたの?

ルカ姫:あの、私、ここに初めて来たもので、あの…

 

 ゴソゴソ

 

 ルカ姫は探検用の小袋から、元の世界では一流料理フルコースが食べられる額に値する金貨1枚をつまんで、店主に見せました。

 

ルカ姫:この通貨、ここで使えますか?

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 店主は、眉間にしわを寄せて金貨をマジマジと眺めていたが、首を横に振って、結論を述べました。

 

にーちゃん:あー日本初見の外国人か。日本語が喋れるのも不思議だけど。お客さん、悪いね、外国人のお客さんも多いんだけど、少なくてもここ“アキバ”のお店では、この“円”しか通用しないんだ

 

 そういうと、キャッシャーから“500円玉”1枚をつまんで、ルカ姫に見せた。

 

ルカ姫:これですか…

にーちゃん:うん。そのコインも観たこと無いんだけど、これ1枚に“両替”してくれれば、売って上げるよ。うちの特製ケバブ1個500円だから

ルカ姫:残念ですが、仕方ないですわね。でも、良いこと教わりましたわ。その“両替”ってどこで出来ますか?

にーちゃん:今日は日曜だからなぁ〜、銀行休みだし…。悪いけど、僕は銀行以外は解らないよ、ごめんね

ルカ姫:銀行? いえ、有り難うございました。他を当たってみます

にーちゃん:でもその金貨、綺麗だし、なんかの記念金貨かもしれないから、質屋に入れてみるのもいいかも。そこの道を横に入った所にあるよ

ルカ姫:わざわざありがとうございます。では

にーちゃん:お金作れたら、また来てね

 

 こうして、お腹ぺこぺこだったのだが我慢して、その“質屋”に向かってみる事にした。

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(質屋)

 

 ルカ姫は少々迷ったが、なんとか“質”と書かれた看板のあるお店を見つけて、中に入りました。

 

ルカ姫:あの〜

店主:ん? 質入れですか?

ルカ姫:はい。この金貨1枚なんですが、500円で売れますか?

 

 質屋の店主は、ルカ姫が持っていた金貨を受け取り、カウンター越しで調べていたが、比較的短時間で、ルカ姫に金貨を返しました。

 

店主:お客さん、ごめんね。『おもちゃ』の買い取りはここでは行っていないんだ。でもなんか高そうなおもちゃだから、この先の“おもちゃ買い取り店”で、売ってみたらどうですか? えっと、小さい人形とかおもちゃとかプラモデルとか、そういうのがたんまり店先に置いてあるお店…あ、お客さん、外人さんか。えっと、ここね

 

 店主は親切に、ここからそのお店までのルートを紙に書いて、ルカ姫に渡しました。

 

店主:そこに行けば多分、買い取ってくれるよ

ルカ姫:有り難うございます。行ってみることにします

 

 “ルカ姫の受難”が本格的に始まったのでした。

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(おもちゃ買い取り店)

 

 ルカ姫はさすがに、かなりお腹が空いてきたのでした。もう周りの珍しいお店とか看板に目を輝かせている余裕もなく、ルートの通りにお店に直行しました。

 

 お客さんをかきわけ、ルカ姫はカウンターだと判断した場所に行って、店主にいきなりお願いしたのでした。

 

ルカ姫:こ、この金貨、500円で買い取って下さい!

店主:ちょ、ちょっと待って下さい。今、調べますから

 

 店主はルカ姫から金貨を受け取り、色々調べたのだったが、ルカ姫にまた返してしまったでした。

 

店主:お客さん、悪いんだけど、“ハンドメイド”の変身メダルは、うちだけでなく、どこも買い取ってくれないよ? 初めてみる形だけど、このグッズは、勝手に作っちゃだめですよ? とにかく、これは買い取れません

ルカ姫:そこをお願いします! もうお腹ぺこぺこなんです!

店主:腹が空くとか、ウチでは関係ないよ。とにかくダメです!

ルカ姫:じゃ…じゃあ、これはどうです!

 

 半ばヤケになったルカ姫は、小袋に手を突っ込んで、掴んだ物をカウンターに、ドンっと置いた。

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ルカ姫:どれか売れる物があったらお願いします! どれも王家謹製の高価な物ばかりです!

 

 店主は、面倒な客が来たなぁ、と思いつつ、とりあえず置かれた物を観てみたが、手をどけて、首を横に振った。

 

店主:あのねぇ、どれも知らない物ばかりだし、市販グッズでもないでしょ? 少なくてもアキバじゃ売れないよ、こういう物は

ルカ姫:うっ・・・うっ・・・・

 

 ルカ姫はとうとうメソメソ泣き出してしまったのでした。店主もコレにはビックリして、オロオロしてしまいました。

 

店主:お、お客さん、困りますよ!

ルカ姫:だ、だって…うっ…うっ…

 

???:あーーーー!!!!! やぁーーーーーーーっと見つけた!

 

店主:?

ルカ姫:ふぇ?

 

 魔法使いのコスプレをしたネギ色のツインテールの娘が一人、ルカ姫の所まで駆け足で近づき、ルカ姫の目の前で、プンプン怒っていました。

 

???:もう!!! 休憩するからって、いなくなったと思ったら、全然帰ってこないし、お腹を鳴らしながら街をうろついている姫様がいるって、町中で噂になっているから、心配で探したら、こんな所で泣いているし!

ルカ姫:ア・・・・アペンドーーーー!!!!!

 

 ガバッ!!!

 

 ルカ姫は嬉しさのあまり、その娘に抱きついてしまいました!!

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???:な!!! どうしたの!? ルカ!!!! 私は“ミク”でしょ!! こんな所でコスプレ寸劇の練習はいいから!! それにアペンドって知らないし!!

ルカ姫:ふぇ・・・・・・・・え?

ミク:私は“初音ミク”でしょ!? もう、サイフでも落としたの? そんなお腹グーグー鳴らして! もう、その“小物”は片付けて、今日はアパートに帰るよ!?

ルカ姫:え?え?え?

ミク:私たちのアパート!! あなた“ルームメイト”でしょ!? もうどうしちゃったのよ!? 熱中症にでもなって、混乱しちゃっているの?

ルカ姫:アパート…? ミク…?

ミク:もう! 帰って休もうよ!

 

 こうしてミクは、小物をざざっと小袋に入れて、店主に謝って、ルカ姫の手を掴んで、お店を出て、ルカ姫と一緒に歩いてアキバの歩行者天国を抜け、町はずれのアパートに向かって更に歩いていきました。

 

ルカ姫:え?え?え?

ミク:いーから、来るの! しかし、今回の小物も王冠も靴も、そんな“豪華”だったっけ???

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(ミクとルカのアパートの部屋)

 

 二人はようやくアパートの部屋に到着しました。そこは白い壁の二階建てのちょっとお洒落なアパートで、部屋も女性二人が暮らすには標準的なものでした。作りがお城のメイド達の部屋に似ていたので、ルカ姫はシブシブだが部屋を受け入れる事が出来ました。

 

 扉を開け、部屋にはミクが先に入りました。ルカ姫は玄関で靴を脱がなかったので、ミクにまた怒られたので、ルカ姫は訳も分からずに靴を脱いで、そろそろとフローリングの板間に足を乗せ、慎重に歩いていき、ソファにバフッと座ったのでした。

 

ルカ姫:な…なんとか、安心できる所に着いたわ… あ、先ほどは有り難うございました

ミク:なに言ってるの!? 私もルームメイトだし、自分の部屋でしょ! とにかくお腹空いているみたいだから、なんか作るから

ルカ姫:お願いします

ミク:もう! 堅苦しいのは無し! やっぱ、暑さでやられたのかなぁ???

 

 こうしてミクは台所に移動し、冷蔵庫から、ネギやら魚やら色々出して、調理を始めました。

 

ルカ姫:う…インタネ共和国の学歩さんが食べている料理のような、美味しそうな香り…

 

(20分後)

 

 テーブルには、葱焼きやら、鯵の開きやら、ご飯やら、おみそ汁やら、いかにも“純和風”の料理が並んでいました。ルカ姫の前にも勿論並んでいたが、難関だと思われる“箸”も並んでいました。

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ルカ姫:えっと……この2本の棒は、学歩さんが使っていた“ハシ”というものですね。私も興味本位で学歩さんから教えて貰って、使えるようになりました。なので、フォークとナイフは結構ですわ

ミク:????????・・・・・あー、もういいから。ちゃちゃっと食べようよ

ルカ姫:はい、頂きます

 

 意外にもルカ姫は箸を器用に使って、まずは“ライス”=ご飯を口にしました。すると、目から涙がこぼれてきました。

 

ミク:ちょ!!! どうしたの!?

ルカ姫:お・・・・・・美味しい・・・!

ミク:お腹空いているからだと思うけど、まぁそんな感動してくれると嬉しいけど、ホント、どうしたの? このお米、別に高級品じゃないよ?

ルカ姫:ミクさんは、毎日、こんな美味しい物を食べているのですか?

ミク:もう、大げさだなぁ、それに、ミク“さん”はやめようよ。“ミク”でいいよ

ルカ姫:は、はい。ではミク、他の物も頂きます

ミク:遠慮なくどうぞ

 

 次に、鯵の開きを食べました。魚料理は勿論宮廷でも出るのだが、干物は初経験でした。

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 パクッ

 

ルカ姫:お…美味しい…、このスープは?

 

 ズズッ…

 

ルカ姫:適度の塩気がたまらない! この焼き物は?

 

 シャリ

 

ルカ姫:お・・・美味しい! 野菜のおいしさが引き立っている!

ミク:あ、それは知っていると思うけど、私の好物で、自慢料理よ

 

 こうして、空腹から来るものだが、食べ物に何度も感謝しながら、自分の分の料理は全て平らげたのでした。

 

ルカ姫:はぁ〜、とても美味しかったです!

ミク:それは良かった。じゃあ、片付けるから、ゆっくりしていってね

ルカ姫:そうさせて貰います

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 ミクは食べ終わった食器を片付けているとき、1つ重大なことに気づいたのでした。

 

ミク:ミクミク〜♪・・・・・あ・・・・あれ・・・・あああ!!!!

ルカ姫:! どうしたんですか!?

ミク:ご・・・・ごめん!!!! 私用に作った“タコ刺し”、ルカの方のお皿に出しちゃった!!

ルカ姫:タコ刺し? ああ、あのタコのサラダですか。美味しかったですよ?

 

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・

 

ミク:・・・・・・・食べられたの?

ルカ姫:ええ、美味しかったですよ

 

ミク:・・・・・・・・・あなた・・・・・誰?

ルカ姫:え!?

ミク:“ルカ”は・・・・タコが大嫌いで食べられないのよ・・・・・

ルカ姫:え!?!?

 

ミク:ルカにそっくりだけど、あなた、誰よ!

ルカ姫:わ、私は“ルカ姫”ですが…

ミク:ふざけないで! 姫とか! あなた、ルカじゃないでしょ!

ルカ姫:だから、私は“ルカ姫”なんです! クリプトン王国のプリンセスです!

 

ミク:・・・・・・・・・・警察には行かないで置くけど、でも、事情だけは聞かせて貰うわ。事件性がなければいいんだけど…

 

ルカ姫:(こ…困ったぞ…こりゃ…)

 

(続く)

 

CAST

 

ルカ姫、巡音ルカ(ルカ):巡音ルカ

初音ミク(ミク):初音ミク

魔導師アペンド:初音ミクAppend

 

インタネ共和国の神威学歩:神威がくぽ

 

その他、店主、にーちゃん等:エキストラの皆さん

説明
☆当方のピアプロユーザーネーム“enarin”名義で書いていました、ボーカロイド小説シリーズです。第15作目の第2話です。
☆今回は1話分を短めにした、ファンタジーRPG風味の長編です。

☆当時は2期を意識してなかったのですが、本作は最新シリーズ“Dear My Friends!第2期”の第1期という作品になり、第2期のシナリオやカラクリに、第1期となる“本作”の話も出てきますので、これから長い長いお話になりますが、長編“Dear My Friends!”として、お楽しみくださいませ。

☆この作品はナンバリング的には“第1期”となります。
☆主役はルカさんなんですが…。

☆ファンタジーの世界と日本のアキバの世界の、2つが1セットで展開していくので、今回はアキバ側です。
☆興味本位で使った魔法陣で行った先は、思ったような都合のいい世界では無かったようですね。
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コメント
W-ネームレス様、コメントありがとうございます! この作品はこの”第1期”と今他所で連載している”第2期”で構成されてます。既に原稿はありますので今日中にも第3話をアップしますね♪(enarin)
これはどうなっていくのか…楽しみですね!(W-ネームレス)
タグ
巡音ルカ 初音ミク Append 

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