真・恋姫†無双 裏√SG 第45話 |
2年前
俺が賈充の戦死に打ち拉がれていると、突然目の前に巨大な物体が降ってきた。
俺は突然の出来事に目を見開きつつと、持っていたナイフを取り出していた
「んー!この地に降りるのは久方ぶりだなー」
砂煙が晴れていく。
そこには、筋骨隆々の巨漢が立っていた。
一人の男としてなら、少しは羨む気持ちが出るほどの見事に鍛え上げられた肉体。
ただ…
士希「へ、変態だー!?」
そいつはスクール水着を着用していた
王元姫「む、変態とは失礼な。私は王元姫。外史の管理者であり、漢女であり、あなたの伴侶だぞ☆」
王元姫と名乗った変態が、腕を上に挙げてクロスし、クネクネ動きながら近寄ってきた
士希「ぎゃー!?寄るな変態!なんかテカテカしてるー!気持ち悪い!?」
王元姫「何を恥ずかしがる?私とあなたは結ばれる運命なのだぞ☆」
だぞ☆じゃねぇよ!気持ち悪りぃんだよ!
士希「な、なんだお前!何が目的だ!俺の貞操はやらんぞ!」
俺はナイフを構えた。
そして構えて、改めてこいつを見ると、全く隙が無いことに気付いた。
実力は、恐らく俺より上だとも…
王元姫「私の目的…それはあなたの初めてを…」
士希「死ね!このクソ変態!」
漢女がどんなのかは知ってたけど、こいつはなんで俺を襲おうとしているんだ!?
王元姫「ざーんねん!まぁいいわ。今日はちょっと忙しいから、名残惜しいけど要件だけ伝えちゃうね!」
チクショウ…
せめて言葉使いだけでも、男らしいものだったらまだ良かったのに…
士希「で?要件って?」
王元姫「えぇ。あなた、もう戦っちゃダメ」
目の前の変態が、静かにそう言った
士希「はい?」
俺は何を言われたのかイマイチわからず、思わず聞き返してしまった
王元姫「あなたはもう、戦っちゃダメ。これ以上あなたが戦うと、いろいろと不都合なの」
士希「どう言う意味だ?」
王元姫「あなたのお父さんから聞いたことはないかしら?あなたの両親は、もともとこの世界に居ないものだって」
父さんは確かに元々この世界の住人じゃない。
この世界が外史という、正史から逸れた歴史を辿る異世界で、父さんは元々正史に住んでいたと。
だが、母さんはこの世界出身の筈だ。
居ないものとはどう言う事だ?
士希「それは知っているが、母さんは別だろう?司馬懿はこの世界で生まれた筈だが」
王元姫「えぇ、そうね。でも、あなたのお母さんは本来死ぬ予定だった。それを、あなたのお父さんが助けちゃったの」
本来死ぬ予定だった?母さんが?
王元姫「この世界、外史は、天の御使いである北郷一刀が創造したものよ。北郷一刀が、北郷一刀の為に作り出した世界。つまり、この世界は北郷一刀を主軸に回っている」
北郷さんがこの世界を作った?
人一人が、こんな膨大な世界を作り上げたと言うのか?
そして、この世界は北郷さんを主軸に回っている…
ちょっと待て。
本来、正史世界において、この三国を統一するのは晋、司馬炎だった筈だ。
でも、この世界では統一せず、北郷さんを旗に同盟を結んだ。
もしそれが、北郷さんが描いた筋書きだとして、北郷さんがその物語の「主役」だとしたら、司馬家はどうなる?
正史における三国統一の立役者である司馬家は、この物語にとって邪魔な存在なのではないか?
そして管理者は、北郷さんの描く物語を管理する者達だとして、そんな邪魔な存在を放置するのか?
もし放置しなかったとしたら、母さんは…
士希「北郷さんが主役だから、母さんは、この世界に殺されていたのか?」
王元姫「えぇ。どうしても北郷一刀を主役にするのなら、司馬懿は邪魔な存在だっからね。だから、この外史が司馬家が生きている唯一の外史であり、最もイレギュラーな世界」
怒りが湧き上がる。
母さんは、そんな身勝手な理由で殺されていたのか?
士希「命を何だと思っている?」
ナイフを持つ手に力が入る。
今すぐにでも、目の前にいるやつを八つ裂きにしたい
王元姫「それを、あなたが言うのかしら?部隊を率いて、何百、何千という命を奪ったあなたが」
俺は押し黙ってしまった。
確かに俺は、自分達に都合の悪い人間を殺してきた。それが平和へと繋がるから。
つまりは、管理者達とやっている事は一緒なんだ。
彼らは、彼らの安定を望む為に司馬懿を殺してきたのだ
王元姫「でも、それも今日までよ。あなたはやり過ぎてしまった。本来、この世界で司馬家の人間が活躍することはない。ましてや、主役より支持されるなんて事もあってはならない。だからこそ、イレギュラーが生じて、あなたの部下の賈充は戦死した」
ドクンと、心臓が跳ね上がった
士希「どう言う…事だ?」
王元姫「口で説明するより、見た方が早いわ」
王元姫はそう言って、指をパチンと鳴らす。
すると、先程まで夜だった景色が、一瞬にして昼間になり、人気のなかった大通りに人が溢れかえっていた
王元姫「今、私はあなたを転移した。ここは、あなたがいる外史とは別の外史よ。ここには、あなたの家族以外、みんなが平和に暮らしている」
王元姫はとある民家を指し、その中を覗かせた
そこには、幸せそうに、綺麗な女性と二人の子どもに囲まれた賈充の姿があった
王元姫「この世界の賈充は、北郷一刀の腹心として功績を残し、家族に恵まれているわ」
士希「嘘…だろ…」
王元姫「嘘じゃないわ。こことは別の外史でも、賈充は戦死する事なく、家族に囲まれて幸せに天寿を全うするの」
俺は、目の前の光景に釘付けになってしまった。
そこには、本当に幸せそうに笑う賈充がいた。
その姿が、俺の胸を苦しめた。
もし、こいつの言う事が本当なら、あいつの幸せを奪ったのは、他でもない…
王元姫「わかったかしら?あなたが戦えば、死ななくていい人間が死ぬ。ついでに言えば、あなたがこれまで救ってきた人間も、全員等しく救われる。それが彼らの運命なのだから。ただ、あなたが手を加えることで、余計な被害が出るだけなのよ」
いつの間にか、俺が先程までいた夜の許昌に戻ってきていた。
先程見た光景が頭から離れない。
王元姫の言葉が、さらに俺にのしかかってくる。
この世界で人が死ぬのは、俺のせいなのだと
士希「それでも…俺は…」
この世界で、何かを…
王元姫「そう。なら、管理者権限で、あなたの家族を人質にする。それならどうかしら?」
なん…だと…?
士希「人質…だと?」
王元姫「もしあなたが戦えば、あなたの大切な家族をこの世界から消していく。それでも、あなたは戦うの?」
そんな事、出来るわけがない。
俺の願いを通して家族を犠牲にするなんて、俺には絶対に出来ない。
こいつはそれを分かった上で言っている
クソッタレが…
士希「俺が身を引けば、家族の安全は保障されるんだな?」
感情を押し殺す。冷静であろうと努める。
しかし、殺意だけは、滲み出ていた
王元姫「えぇ。あなたが今後、表舞台に立たない限りは」
なら、俺の答えは決まっている
俺は自分の願いより、家族を取った
現在
霰「それじゃあこいつが…」
甄姫「全ての元凶…」
この場の、璃々さん以外の瞳には殺意が滲み出ていた。
璃々さんは割と落ち着いた様子で話しを聞いていた。
どうやら、北郷さん辺りから聞いたのだろう
士希「あぁ。だが今回だけは、俺も戦わせてもらう。大事な部下と、家族が戦っているんだからな。俺一人傍観なんて出来ない」
王元姫「そんな事したら、どうなるかわかってるの?」
王元姫の脅しとも取れる発言に、霰が俺を引っ張って下がらせて、王元姫から俺を守るように立った
霰「悪いけど、あんたにはこの場で死んでもらうで」
甄姫「当然ですわね。私達がバラバラになった元凶が来たのだもの。生かしてはおけませんわ」
見れば、他の隊員も、王元姫を取り囲むように立っていた
王元姫「ほらね、あなたは万人に慕われる。だから危険なのよ。北郷一刀を脅かしてしまう」
王元姫は周りを囲んでいる兵士を見て呟いていた
士希「一つ、わからない事がある。何故父さん達が戦っているのに、管理者は止めに入らないんだ?」
俺は少し気になった事を聞いてみた
父さん達はイレギュラーだ。国が関わるような戦には出ないのがルールみたいなものだ。
だが、今回はそのルールを無視して戦場に出ている。
表舞台に立ってはいけないというルールを父さん達が破っているのに、何故管理者は動かない?
王元姫「それは簡単よ。彼らが北郷一刀救出の為に動いているから。そして、あなたの半身である司馬師、彼女は彼らの裏で動いているから」
!そういうことか…
士希「なら、なおさら俺も行かせてもらう。俺がやるのは、あくまでうちの人らの支援だ。俺の名前が残る様な活躍はしない」
王元姫「……それなら構わないわ。あなたが目立たなければ、私達は手出ししない。それじゃあ、私は行くわね」
そう言って、王元姫は転移しようとした。それも、随分とあっさりしていた
士希「待て、一つだけ聞きたい」
王元姫「あら?何かしら?結婚ならいつでもしてあげるぞ☆」
士希「死ね!そうじゃなくて、お前は、俺を守っているのか?」
俺が抱いた疑問。それは、こいつが異様に俺に執着していること。そして、わざわざ俺に忠告してくる事
もし管理者が本気で消しに来るなら、わざわざ忠告なんてしない筈だ。
もともと何の前置きもなく司馬懿を殺して来たこいつらなんだ。
人を黙って消すくらいはしてもおかしくない。
だが、こいつは俺に忠告して来た。
今回だって、わざわざ「裏で動けばお咎めはない」とまで言いに来た。
本気で邪魔なら、俺なら警告なんてしない。
それに今だって、まるで理想的な、あらかじめ予期していた答えを得たように満足気に笑い、帰ろうとしている
王元姫「ふふ!あまり察しが良過ぎると、モテないぞ☆」
そう言って、王元姫は消えていった。
恐らく転移したのだろう
璃々「ねぇ、もしかして…」
璃々さんも気付いたらしく、俺に耳打ちしてきた
士希「えぇ、恐らくは」
どうやら俺は、あいつに守られていたらしい。
どういう理由かはわからないが、あの時とは違い、今なら冷静に考えられる。
頭から管理者全員を否定するのは、早計だったかもしれない
士希「さて、じゃあ少し休んだら、洛陽に向かう。ちょっともう、寝ないとヤバイ…」
とにかく一休みだ。四日間ぶっ続けで戦って、これからまた戦うのは、流石に辛い
外史…【晋】…友紀…そして俺…
外史に振り回されっぱなしの俺たちだが、今回ばかりは負けられない
BAD ENDもDEAD ENDも許さない
HAPPY ENDを掴んでみせる
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こんにちは! Second Generations司馬昭伝其二 |
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コメント | ||
冷酷に見えて実はいい奴だったんだな王元姫。やっぱり士希ははやてと一緒に居るのがいいよ(ohatiyo) | ||
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