恋姫英雄譚 Neptune Spiear |
Mission06:Participating Hero
俺が来てから3日が経った頃だ。あれから変わらずみんなから質問攻めを受けて、仕方が無い上にこの世界でなら話しても一切の障害にならないと判断して俺の軍歴を話した。
俺が向こうの世界で所属していたのはNavy SEAL's Team6‘‘DEVGRU”。
正式名称はUnited States Naval Special Warfare Development Group。つまりは海軍特殊戦開発グループのことを示し、俺が知る限りでは世界最強で屈強の兵士が揃う世界最強の特殊部隊だ。
世界最強の面制圧部隊がアメリカ海兵隊なら点制圧部隊はまさにDEVGRUだろう。
しかしまさか俺が一番好きな三国志演義の世界に飛ばされるなんて夢にも思わなかった。
そして全ての尋問が終わった後、俺は張遼に呼ばれて董卓達が待つとされている玉座へと足を運んだ。
「おっ♪来よったで♪」
「すまない。少し遅れたか?」
「大丈夫よ。寧ろ呼んでから来るのが早い位よ」
軽く謝ると彼女達は軽く制しながら口を開く。本当ならもう少し早く到着する予定だったのだが、警邏隊の手伝いや弓兵隊の指導なんかがあって思った以上に時間を食ってしまっていた。
「それで話とはなんだ?」
「あんたが来てから3日。僅かずつだけど治安が良くなりつつあるわ。これもあんたが提示してくれた窓割れ理論のお陰ね」
「わざわざ礼をいう為に呼んだのか?」
「そこであんたに最後の問いをするわ」
「問いだと?………これ以上は聞くことなどないと思うんだが……」
「リアンさん……リアンさんはこの国が今後どう動いていくと思いますか?」
董卓からの質問に俺は詰まらせてしまう。
この国の未来………つまりは後に起こるであろう‘‘黄巾の乱”。そして董卓討伐の‘‘陽人の乱”だ。俺は遥か未来から来た人間であり、三国志という時代は大好きである。
だから董卓という人物が最終的には呂布の謀反により命を落とすことも知っているが、それは悪逆非道の印象が非常に強い董卓だ。
目の前にいるのは3日だけだが慈母のような優しい気持ちに力強い意志を秘めた少女だ。
「前にも話したけど今の王朝は腐敗し切ってるわ。宦官や外戚は自分達のことしか考えていないし、苦しみから生まれた賊が別の民を襲う。だけど連中はそれを止めようとはしないわ」
「せや……うちは強い奴と戦えるんは嬉しいけど……卑怯や卑劣なボケ共は許せへん」
「このまま進んだら……民の皆さんは辛い思いしかせず、平和な世の中は来てくれません」
「そこであんたに聞きたいわ………天界人から見てこの国がどうなるか……」
彼女達の力強い瞳に俺は深く溜息を吐きながら、ポケットの中からタバコの‘フロンティアスピリッツ‘”を取り出し、火をつけて煙を吐き出す。
「………神話にこんな話がある」
「神話?」
「とある神が人間に火を与え、それに怒った別の神がパンドラという少女に‘‘絶対に開けてはいけない箱”を与えた」
「箱?」
「好奇心が強かったパンドラは箱の誘惑に負けて開けてしまい、異形の子供たちや疫病、悲嘆、欠乏、犯罪が地上に蔓延った」
伝説の‘‘パンドラの箱”を話す俺の言葉に玉座にいた全員が耳を傾ける。
「世界に闇が広がり、人の心は汚れていった。だが箱の片隅に残っていた‘‘善”で闇は無くならなかったもの、善悪が大地に深く根付いた」
「つまり……どういうことだ?」
「………この国はあんたの言う処の箱ってこと?」
「そうだ……このまま進んだら間違い無く箱の蓋は開かれ、生み出されるのは果てしなく続く‘‘大乱世”だ。そこで俺からも董卓に聞きたい」
「へぅ?」
「董卓……君が目指したい世界とはなんだ?」
予想すらしていなかったであろう俺からの質問。その質問に董卓達は言葉を詰まらせてしまった。
「今の漢王朝が弱い者を蔑ろにしているのは明白だ。だから俺は‘‘漢所属の董卓”ではなく‘‘本当の董卓”として聞きたい。君が目指す世界とはどんなものなんだ?」
「…………戦いのない……誰もが笑って明日という希望を持つ……そんな世界を作りたいです」
「……………」
「私は詠ちゃんみたいに賢くないし、戦場じゃ霞さんや嵐さんの足下にも及ばないです。だけど……だからといって何も悪くない人達が傷付くのは嫌です」
「だが……戦いは必ず誰かが傷付き、命を落とすことになる。俺も数え切れない位の敵を始末してきた。だが命を奪うことは果てしなく重い………君に重みを背負う覚悟はあるか?」
「…………戦いは嫌いです……だけど…誰かが傷付くのはもっと嫌……怖いけど………みんなを守れるんだったら私も……その重さを背負います」
はっきりと答えた董卓の瞳を見た。それは幼さが残る瞳であるが、激しく強固な意志と覚悟を決めた強い人間のものだった。
そして心の中で俺は素直に思ってしまった。
‘‘これは……まさに指導者としての覚悟”
そして危なっかしくて、優しい女の子を放っておけないと感じた。俺が口を開こうとした直前に董卓が先に口を開いた。
「ですからリアンさん……私達はこの国を変えたい……だから………私達に力を貸してくれませんでしょうか?」
暫く考えてしまう。董卓に力を貸して欲しいという願い。その願いには本当に国を変えたいという気持ちが込められており、同じように俺を見る賈?や張遼、華雄達も同じ願いを秘めた力強く、固い決意を秘めた輝きに満ちた瞳をしていた。
口に咥えていたタバコをポケット灰皿に放り込み、それをポケットにしまうと彼女を再び見た。
「………いいだろう」
「……………」
「だが俺も人だ。だから君達がいう‘‘天界の戦士”なんていう神々しい存在じゃないし、奇術なんかの類も使えない。だが君達の目指す未来に興味が湧いた。俺の知識や力を有効に使ってくれ」
「ありがとうございます、リアンさん。それとこれから私のことは‘‘月”とよんでください」
「………いいのか?」
「はい♪」
「まっ………まぁ…月がいいっていうんなら構わないわよ。ボクの真名は‘‘詠”。呼びたかったら呼べは?」
「ウチは霞や。しっかり覚えたってや♪」
「我が主が認められたのだ。これからは私のことは‘‘嵐”と呼ぶがいい」
「………確かに預かった」
そういいながら俺は辺りを見渡して敬礼をする。まさか董卓軍に身を置くことになるなんて思わなかったが、流れに身を任せるのも悪くないだろう。
これから待ち構えるのは群雄割拠の乱世。俺は俺にしか出来ないことで彼女達の期待に応えてみせるとしよう……………。
余談
参加を決めたその日の晩。俺は充てがわれたにて装備を確認していた。
5.56mm弾を使ったから今後が気になるところでひとまずはP-MAGを確認するが………。
「おかしい………なんで弾薬が元の数になってるんだ?」
弾薬が元の数になっていたのだ。非常に気味悪い。
「そういえば………確認したときに変なバンダナがあったが………なんだ?」
俺はひとまず腕に巻いていた、いつの間にかポケットに入っていたODカラーのバンダナを取り出したが、そこから1枚の紙が落ちてきた。それを広げると………。
‘‘どぅふふ?♪これはゲームでお馴染みの無限バンダナよ?ん♪
弾切れを起こしたマガジンをポーチに戻して暫くすれば元通りになるというひっじょ?っに便利なグッズよん♪
これ一つで弾薬はもちろん手榴弾やメンテナンス用パーツなんかも出て来る♪ 一粒で何個も美味しい機能付き??これを駆使して外史世界を堪能してねんねん♪
外史の管理者にして魅惑の踊り子の貂?ちゃんより♪”
手紙にはそう太いながらも達筆で書かれていた。この機能は素直に嬉しい。これからの戦闘に支障なく行なえるが………。
「なんだろう………読んでただけなのに寒気と目眩がしてきた……」
………手紙の送り主は間違いなく‘‘オカマ”だ………。
説明 | ||
リアンが来てから数日後、乱世に生きる覚悟を見せる。 | ||
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