恋姫英雄譚 Neptune Spear |
Mission12:Returnees from Rome
第6師団の準備は着々と進んでいた。
兵力はあれからある程度は増えたが、それでも500未満と第1から第5師団と比べたら少ない。
だが第6師団では数よりも兵達の質を重視させているので、数と実戦経験値の2つを除けば高い戦闘力を有している。
俺は第3師団長である霞と共に天水郊外にて行なわれている訓練視察に赴いていた。
「列を乱すな??俺達について来い??」
「訓練だと思って気を緩めないで??実戦だと思って気を引き締めなさい??」
『御意??』
いま実施されているのは迅が大隊長を務める第2大隊配下で雷の第623騎兵中隊による騎馬戦術を用いた訓練だ。
騎兵とは馬の機動力と突破力に飛んでいるので仮想の敵へ迅速かつ密接な連携や編隊を組んで攻撃を仕掛けている。
「どう思う霞?」
「あの2人は連携重視の騎馬戦術やったら大したもんやで。やけど兵達はあまり慣れてへんやろうから右翼みたいに少し遅れ気味になっとる」
第3師団長をしている霞の言葉で俺は双眼鏡で右翼を見る。展開しているのは魚鱗の陣で、中心が前方に張り出し両翼が後退した陣形だ。
騎馬戦術において重要なのは騎兵達同士による連携だ。1人が乱れると部隊全体に影響をきたして壊滅になりかねない。
だからこういう訓練を頻繁に実行して隣同士の癖や移動速度を徹底的に身体に染み込ませるのだ。
因みに第623騎兵中隊の由来は師団、連隊、大隊の番号を繋げたものであり、この場合は第6師団隷下第2連隊第3大隊指揮下の騎兵中隊という意味となる。
一応は師団となっているが数ではまだ大隊規模。だがいずれは本当に師団規模に持っていくつもりだ。
「せやけどリアンはホンマに凄いで」
「何が?」
「ウチの馬鹿姉にあんな風に認められて、しかもあんさんが作った第6師団も思いつかんもんばっかりやで」
「そんなことはない。あの2人がいたからこそこの騎兵中隊が生まれたんだ。俺は射撃に関しては自信はあるけど騎馬戦術はズブの素人だ。この前だってあんたに負けただろ?」
「にゃはは♪あん時はご馳走になったで♪」
そういいながら俺はこの前の騎馬戦を思い出す。騎馬術に関しては全くやったことがないので仕方がないといえば仕方がないが、負けた後に霞に居酒屋にて酒を大量に奢らされ、お陰で今月は早くもピンチになっている。
「ま……まぁいいか……処で教えてくれないか?」
「なにが?」
「今日の演習に関してだ。なんで朝になって親衛隊の第2大隊の一部が参加したんだ?」
双眼鏡を別の方角に向ける。
そこには董卓軍の一般兵が装着する鎧とは違い、数人だが組立て式の板金鎧である‘‘ロリカ・セグメンタタ”に片手剣のグラディウスや短剣のプギオ、盾のスクトゥムという古代ローマ軍の兵装をした親衛隊員が見られる。
「あぁ、それは大隊長がリアンになんや興味が湧いたみたいなんや」
「俺に?」
「せや、第2大隊長が昔羅馬におったんは知っとる?」
「聞いたことはある。確か第2大隊の一部の装備があそこにいる連中みたいにローマから取り寄せた装具をしてるんだろ?」
「その大隊長にとっちゃリアンは自分と同じ未知の軍隊から来たことになりよるんよ」
なるほど……確かに聞く限りではこの漢の軍隊以外で軍歴を持った人間は非常に稀らしい。
そういった人間からすれば俺のような異世界の軍から来た人間は気になるだろうし、俺も少し気になる。
「……霞、その大隊長はあの中に?」
「おるで。なんやったら呼ぼか?」
「頼む」
「よっしゃ。んなら待っときや。すぐ連れて来るさかい」
そういいながら霞はすぐに騎馬隊に向かい、目的の人物を数分以内に連れてきた。
ボサボサ髪のショートで髪の色は茶、瞳は蒼、長身で筋肉で引き締まった体。服装は何だか日本の和服っぽいものを着ていて両手にスパタを手にしている歴戦の猛者の雰囲気を醸し出す青年。
その傍には赤茶のロングで瞳は蒼、身長は馬超ぐらいの槍を手にした少女がいた。
「連れて来たでリアン」
「2人がそうなのか?」
「せやで♪」
「はじめましてだな。俺はリアン・スチュアート。仲良くしてくれ」
そういいながら手を差し出すと……。
「Ciao, comandante di battaglione(こんにちはだな、師団長殿)」
いきなりイタリア語で話し出したので驚いた。
「はははは??やっぱ驚くわな??」
「すみません。驚かれたでしょ?」
「まぁな……それで君は?」
「はい、私は軍師見習いをしています姜維 伯約といいます」
姜維とは……確か年代的に生まれてない筈だろ?
後の諸葛亮の後継者である姜維が董卓軍にいるなんて予想すらしていなかったが、この際だが歴史通りの三国志は忘れた方がいいだろう。
「ははっ……すまない。通じないわな流石に……」
「Tale cosa non puo essere trovata.(そんなことはないぞ)」
若干のお返しも含めて俺もイタリア語で返答してやる。すると青年は驚いた表情で話し掛けて来た。
「Lui fu sorpreso…….Puo parlare sulla lingua di Roma?(驚いた……ローマの言葉を話せるのか?)」
「Quello e corretto. Puo parlare, se e conversazione solamente generale anche se e perfettamente impossibile.(そうだ。完璧には無理だけど、一般会話だけなら話せる)」
「E misterioso……(凄いな……)……あぁ。俺のローマ語は限界だ。普通に話さないか?」
「助かるよ。俺も限界だった処だったからな」
互いにローマ語が限界なのでようやく普通に話すこととなった。因みに俺はDEVGRUの影響でイタリア語の他にフランス語、ドイツ語、中国語、ラテン語、日本語の6ヶ国語が日常会話程度ならば話せる。
「君のことは霞達から聞いてる。なんでもローマ軍にいたそうだな?」
「李誕 元代だ。羅馬には3年ほどいたけど8年の間で5年は移動に費やしたけどね」
「それは凄いな……姜維もか?」
「いえ……私は鷹たか様が帰国される際に拾われて従事しています」
「ん?……姜維はこの国の人間じゃないのか?」
「は……はい………その……」
不意に思ったことを聞こうとしたら姜維はなにやら言いにくそうな声でこちらを見る。
それに気が付いた霞と李誕が割って入る。
「あ?……そこだけは聞かんといたってくれんか?」
「………訳ありか?」
「こいつは羌族と漢人の混血児でな。母親がいなくなってから俺が引き取ったって訳だ」
「……それはすまない」
「い…いえ??リアン様はご存知ではなかったのですから致し方無いです??」
「そう言ってくれて助かる。それと俺は大した存在じゃないから様付けなんて不要だ。気兼ねなくリアンとよんでくれ」
「いえ??天界の戦士様を呼び捨てにするなんて出来ません??」
「はぁ………確かに師団長を任されてはいるが董卓軍ではまだ新参者だ。だから遠慮しなくていい」
「は……はい。で……ではリアンさんで……」
「呼び捨てでも構わないんだがな……まぁいいか」
「しかし凄く面白い人だな。霞達からは聞いてはいたが予想以上だよこれは…」
「ホンマやで♪やっぱリアンは面白いわ♪」
「面白いってな……」
「決めた。俺の真名をあんたに預けるぜ。これから俺のことは鷹(いん)って呼んでくれ」
「あの??……私は燕(えん)といいます??」
「……いいのか?」
「構わないぜ。あんたとは話が合いそうだし、何よりも楽しそうだ」
「私もです。あの……もしよかったら私に天界の知識を教えて頂いても宜しいでしょうか?」
「知識……軍略や戦術とかでいいのか?」
「はい、私は詠様や鷹様から様々な知識を伝授されています。ですから羅馬の軍略と天界の軍略を織り交ぜて貢献したいんです」
そういうと燕はじっと俺の顔をみる。天衣無縫で人懐っこい印象が強い好奇心旺盛な年相応の女の子。それが彼女の第1印象だ。
そんな状態が続いていると俺の横にいた霞が頭を小突いて来た。
「な?にやっとんねん」
「いや……なにが?」
「知らんわい。んで、どうすんねん?」
「……なにを怒ってるんだ?」
「怒ってへんわい………ふん」
あからさまに不機嫌だ。鼻息を出すと霞は不機嫌なまま何処かにいってしまう。
「なんなんだ?」
「リアン……あんたって朴念仁か?」
「なんでそうなる?」
「はぁ………」
「ん?…….…まぁいい。燕、軍略に関しては暇な時でよかったら教えても構わない」
「ありがとうございます」
「あぁ、すまんが俺は行く。またな……」
そういいながら俺は鷹と燕の2人と別れて何処かにいった霞を追いかける。
ローマ軍からの帰還兵に天界の戦士。2人が肩を並べるのはもう少し先になるのであった……………。
説明 | ||
ローマからの帰還者がリアンと出会う。 | ||
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