恋姫英雄譚 Neptune Spear |
Mission17:Rumors of heaven warrior
リアンの董卓軍武将としての噂は広がっていった。旅商人がその噂を次の街に広めていき、それを聞いたまた別の旅商人が次の街に広めていく。もちろんその噂は後の‘‘英傑達”にも広がっていた。
・冀州頓丘県令邸
「‘‘天界の戦士”?」
「はい、何でも董卓が治める天水に降り立ち、今は董卓軍に身を置いて賊の討伐に従事しているようです」
県令邸の執務室にて仕事をしている金髪のツインロールテールをした少女は右目を水色の髪で隠した落ち着きを見せる少女の報告を受けていた。
彼女は後に‘‘乱世の奸雄”と呼ばれ、魏の基礎を作り上げることとなる性は曹、名は操。字を孟徳。
そして報告をしているのは曹操の従姉妹で‘‘曹操四天王”の1人である性は夏侯で名は淵。字を妙才。
彼女は始め洛陽にて北部尉の任に就いていたが、張譲率いる十常侍の厄介払いに遭い片田舎の頓丘に県令という役職につかされていた。
しかし彼女もただでは転ばなかった。
到着して早々に賄賂を渡して地位を守って私腹を肥やそうとしていた無能者の首を刎ね飛ばしたのだ。
「確か管路とかいう与太話に出てくる人間よね?あなたもあんなつまらない予言を信じるのかしら?」
「私とて、まだ見ぬ者を噂のみで信じはしますまい。しかし実際に天水の治安は改善されていき、兵の質や数も徐々には高まっているようです」
曹操は夏侯淵が持ってきた報告書に目を通す。そこに書かれている内容はリアンが創設した第6師団や彼が提示した政策、訓練、更には五胡を配下に加えて独自の部隊を編成している。
その内容を見た曹操は頬杖をしながら軽く笑みを浮かべる。
「ふふっ………なかなか面白いことをしているようね。このリアンという男は……」
「どうされますか?」
「暫くは様子見ね。だけど天水にも密偵を回しておいて頂戴」
「御意」
そう返答すると夏侯淵は執務室から退出し、曹操は窓の外を見ながら考えに耽るのであった……………。
・荊州長沙孫堅邸
「母様、天水の噂って聞いた?」
「あぁ、‘‘天界の戦士”だろ?」
長沙に点在する孫家の本宅。そこの中庭に2人の美女がいた。2人とも長い桃色の髪で額に何かの印が描かれていた。
片方は現在の長沙太守で江東にて水族退治で名を馳せた‘‘江東の虎”という異名を持った英傑の性は孫で名を堅、字を文台。
その孫堅によく似ていて明るさを強めた女性が後に‘‘江東の麒麟児”とも‘‘江東の小覇王”と呼ばれる性は孫、名を策。字は伯符。
れっきとした親子であるがスタイル抜群でよく似た顔立ちから姉妹とも見えてしまう程の大人の女性だ。
「なかなか面白い男みたいよ。しかも武勇や知略も優れてて天界の弓を持って賊からは‘‘斑の戦神”って呼ばれてるれしいわよ」
「民に受け入れられてて、しかも優将としても名高いらしいじゃないか」
「そっ♪私も管路の予言なんて只の与太話だと思ってたけど、これだけ噂が伝わってくると信じざるを得ないわね」
「ほぅ……お前にしては珍しいじゃないか………我が愛娘は何を考えてるんだい?」
「えぇ………もし噂が本当なら孫家で戴いちゃって血を入れてみるのもいいなぁ?ってね♪」
「ほぅ………つまり子作りでヤらすっていうんだね♪」
「あったり♪もちろん同意があったらの話だけどね♪もし成ったら孫家100年の安泰が実現するし、上手くいけば美羽みうちゃんも私達の義妹に出来ちゃうかも知れないしね♪」
「ははっ、相変わらずお前は面白い奴だ。だが今は区星残党を討伐するのが先決だよ雪蓮(しぇれん)」
「分かってるわよ炎蓮(いぇんれん)母様♪」
そういいながら孫堅は自身の得物である両刃剣‘‘南海覇王”。孫策は九環刀‘‘虎罫刀”を手にして馬小屋へと向かった………。
・幽州琢県楼桑村
「‘‘天界の戦士”ですか?」
「うん♪」
「桃香(とうか)お姉ちゃん、なんなのだそれ?」
村の食堂にて昼食を摂る3人の少女。
1人は桃色の髪にパッチリとした大きな目。更には大きな胸が特徴で天然な印象が強そうな女の子で性は劉で名は備。字を玄徳。
もう1人は長い黒髪をサイドテールにして、先程の女の子と色違いのデザインが似た服を着て、同じく負けない位の巨乳である目力が強い女の子。性は関で名は羽、字を雲長。
最後の1人は背が小さく、赤いおかっぱ頭で虎の髪飾りを付けている元気活発の女の子だ。性は張で名を飛。字は翼徳。
この3人の共通点というと同年代の中で恐らく超が付く程の美少女で、年頃の男子は間違い無く振り向くだろう。
性も名も出生も違う3人だが劉備の民を救いたい信念に共感した関羽と張飛。数奇な巡り合わせで義姉妹となった。後に‘‘桃園の契り”とされる。
そして長姉である劉備が天水から帰って来た旅商人よりリアンの噂を聞いて義妹の関羽と張飛に話していたのだ。
「うんとね、管路さんの占いに出てくる‘‘天界の戦士”っていう天の国から来た人が天水にいてね、村の人を助けてるんだって♪」
「姉上……あんな与太話を信じられない方が宜しいですよ。もしかしたらただ噂が一人歩きをしているだけかも知れませんし……」
「でも天水から帰って来た人が言ってたよ?名前もリアンっていうこの国じゃない名前で、格好も見たことがないって言ってたよ?」
「にゃは?……鈴々には難しくて分からないのだ……」
姉2人の話に付いてこれないのか、末妹の張飛は目を回していた。
「それでね、もし私達の理想が一緒だったら私達と一緒に戦ってくれるかな?」
「姉上、まだその者が善なのか悪なのか分からないのです。もし配下に加えられるのだったらしっかり下調べを…「違うよ愛紗(あいしゃ)ちゃん」」
「配下じゃなくて私達の‘‘ご主人様になってくれるか”だよ♪」
劉備の唐突な話に関羽は呆れてしまっていた。しかしそんな天真爛漫な考えこそが劉備の‘‘人を惹き付ける”能力であり、2人もそれに惹き付けられたのだ。
「まぁ……その話は後回しにして………」
「えっ?」
「食べた分を働かないと………」
「あぅ……現実に戻さないでよ………」
………言い忘れていたが、3人は金がない状態で飲食してしまっていたので、豪快な女将さんにより食べた分だけタダ働きさせられていた………。
・洛陽温徳殿宦官執務室
「天界の戦士だと?」
「はい、噂では天水に現れたようですぞ」
洛陽の中央に位置する宦官の執務室。ここに10人の宦官がいた。その1人が中央にいた老人にリアンの噂を報告していた。
物腰は柔らかく笑みを浮かべているが、その鋭い眼からは計り知れない‘‘野心”が見え隠れしている。この宦官こそが王朝腐敗の要因の一つである‘‘十常侍”筆頭で宦官の頂点に位置する張譲だ。
「天水といえば確か……董卓とかいう田舎者が太守をしておった筈ですな」
「この国の天と言えば陛下であらせられるというのに困ったものです」
「ふむ……ならば勅令を発して直ぐさま呼び出し首を刎ねればなりませぬぞ」
「そうですな「いや……まだ必要ではないぞ」張譲様?」
「その天界の戦士……会ってみたいものだな」
「はい?」
「お言葉ですが、そのような怪しき者に会うなどどうかと思いますが……」
「ふふふっ………お前達もまだまだ甘いな…….もしその者が本物であれば、利用価値はあろうぞ」
「利用価値でありますか?」
「うむ……このまま邪魔者を始末し、我らが国を手中に収める利用価値だ。だが今は時ではない。くれぐれも天子様のお耳には入れるではないぞ」
「御意」
野心に満ち溢れた瞳で若い宦官に命じると張譲は引き続き自身の得にしかならない仕事をする。
漢室の衰退、それは張譲を中心に宦官が蝕んでいたのは目に見えていた………。
説明 | ||
リアンの噂は瞬く間に全土に広がり、様々な人物の耳に飛び込んでいった。 | ||
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