恋姫英雄譚 Neptune Spear
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Mission20:Hero in Chaotic

 

 

 

霞達が賊討伐に向かったその日の夕方、俺達は瞬く間に忙しくなった。

長安の文官より勅令が下され、‘‘涼州にて叛乱を起こした韓遂及び辺章の軍を速やかに鎮圧せよ”というのが内容だ。

 

隣国でもあるうえに董卓軍で最良の友好国でもある涼州連合を見捨てる筈もなく、月達は了承した内容を文官に渡すが同時に違和感を覚えた。

 

俺は周辺諸国に所属している要人達の資料を予め入手しており、それによると韓遂は忠誠心に溢れた武将であり、羌族とも親しい人柄のようだ。

つまり辺章はとにかく韓遂に叛乱する動機がなく、今回の勅令そのものが策謀の臭いがしてならない。だがこれが勅令である以上は従わなければ次は月達が逆賊にされかねないのも事実だ。

 

仕方がないので第6師団が今回の任務に従事することとなり、軍備を整えて集合地点である潼関に軍備を進めた。

 

 

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「よく来た。俺が西涼の馬騰だ」

 

 

叛乱軍討伐の長を任されている西涼の馬騰 寿成が本陣の天幕にて挨拶をする。

茶髪のポニーテールをした幼さが相見えるシュッとした顔立ちで前に会った馬超の服装にスパッツを追加したような服装。

顔だけ見たら美青年とも取れそうだが出てる箇所は出て引っ込む箇所は引っ込んでいる大人の女性が馬騰の印象だ。

 

馬騰の他にライトブラウンで髪質が違うのかふわりとした地面につきそうなロングヘアで眼鏡をかけた女性。

 

黒のロングヘアと水色のショートヘアをしていて赤と青というデザインが似た女性の前にブロンドのツインテールをカールして髑髏の髪飾りをした覇気が途轍もなく強く感じる女の子。

 

後は漢軍の将であろう男達がいた。

 

 

「んじゃ、まずは自己紹介でも始めっか?」

 

「駄目よ葵(あおい)、またそんな適当にしか聞こえない喋り方をしては……」

 

「固えことは気にすんなって桜杏(ろーあん)。けどこっちの方が俺に合ってんだよ♪」

 

「もぅ……洛陽から派遣された左中郎将をしてる皇甫嵩 義真よ」

 

 

旧知の仲なのか、気さくに話し合う馬騰と左中郎将の皇甫嵩。そして次に立ち上がったのが先程からこちらを見ていた覇気が強い女の子だ。

 

 

「私は頓丘県令をしている曹操、字を孟徳。後ろに控えているのが我が手足にもなる夏侯惇と夏侯淵よ」

 

 

俺は顔には出さなかったが驚いていた。まさか目の前にいる中学生位の女の子が後に‘‘乱世の奸雄”とされる三国志にて知らない者はいないとされる曹操 孟徳とは………。

次に続く格諸侯の武官達が自己紹介を始める中、曹操は興味を示さないで先程からこちらばかりを見ていた。そして順序的に最後に俺の差し掛かった。

 

 

「俺は漢王朝董卓軍第2軍団隷下第6師団師団長のリアン・スチュアート。こっちにいるのが副師団長の張麗 公越に副官代行の姜維 伯約だ」

 

 

所属と名前を聞いて周りがざわめき出す。

 

 

(ふふっ……あれが噂の男ね……なかなか興味が湧いてきたわね…)

 

(へぇ、あいつが翠すいの言ってた外人か……月もなかなか面白そうな奴を配下に加えたもんだな)

 

(うほっ??渋くていい声??しかもいい男??こりゃ私にも転機が?)

 

「?」

 

 

何故か知らないが曹操、馬騰、皇甫嵩がこちらを見ていた。

 

それから馬騰を中心とした格諸侯の配置が決まり、俺達は前衛左翼。叛乱軍の情報を共有し合うとその日の軍議は終了。各自がそれぞれの陣地に戻ろうとしていたので、俺もHK416にスイベルを取り付けて天幕を出ようとした。

 

 

「待ちなさい」

 

 

呼び止められたので振り向くと、そこには曹操、夏侯惇、夏侯淵の3人が立っていた。

何やら分からない雰囲気なので思わずHK416のセーフティを解除して何時でも撃てる態勢を整えていた。

 

 

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「あんたは……曹操か…」

 

「貴様??華琳様になんて口の利き方を??」

 

「春蘭しゅんらん、別に構わないわ」

 

 

口の利き方が気に入らなかったのか、黒髪の女性が食って掛かって来ようとしたら曹操がそれを片手で制する。

 

 

「あなたよね?最近になって噂になってる‘‘天界の戦士”っていうのは?」

 

「さぁな……確かに周りからはそう呼ばれてはいるが俺はそんな大層なものじゃないと自負している」

 

「随分と謙虚なのね?」

 

「褒め言葉として受け取っておこう」

 

「ふふっ……やはりあなた面白いわね」

 

「なんの話だ?」

 

「あなたの噂は頓丘まで響いているわ。五胡を配下に加えたり、警邏専門の傭兵部隊を作って国益を担っている。是非とも私も雇いたいものよ」

 

「‘‘髑髏蛙”の派遣なら天水の本部で正式に手続きをしてくれ。そうすれば必要人数と種類を判断して似合った料金分を計算してやる」

 

「なら、今度使わせて貰うわ」

 

「それで……他に言いたいことは?」

 

「あら?なんのことかしら?」

 

「惚けるな。俺はまどろっこしいことは嫌いなんだ。さっきから探るように伺われるのははっきりいって気に食わない」

 

「貴様ぁ…??もう我慢ならん??ここで斬り伏せてやる??」

 

 

本音を言ったらいきなり夏侯惇が背中に預けていた大剣を鞘から抜き取り、飛び上がると俺に斬り掛かって来た。

 

 

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霰と燕はすぐに得物を構えるが片手で制してからすぐに夏侯惇の右手首を掴み、そのまま右腕を掴むと一気に地面に叩きつけた。

そこから足で左腕、左手で右腕を押さえつけてMk25をホルスターから抜き取り、額に突き付けた。

 

 

「姉者??」

 

「くっ??は…離せ??」

 

「あまり侮るなよ……新米が……」

 

「し…新米だと??私は何度も戦に勝ち続けているのだぞ??我が武功を侮辱するのか??」

 

「いったいどんな戦を潜り抜けて来たかは知らんが、俺とお前じゃあ潜り抜けて来た戦の質が違う」

 

「…………」

 

 

それだけいうとMk25をホルスターに戻し、その場に立ち上がった。霰と燕は未だに警戒していたが2人の側に移動して警戒を解いてやる。

 

 

「もしこれが敵同士だったらお前の額に風穴を開けていた……それだけは覚えておけ」

 

「………」

 

「……すまなかったわ。部下の失態は上の失態。心から謝罪するわ」

 

「別に構わん」

 

「そう………話は変わるけどやはりあなたって面白いわね」

 

「そりゃどうも」

 

「それで………私の下に来ないかしら?」

 

 

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そう言われて軽く困惑してしまう。なにせ曹操から直々に勧誘されているのだから。

 

 

「あなたの武と知は本当に魅力的よ。だけどあなたの今の主より私があなたの能力を存分に発揮させれる自信がある。もちろん能力次第だけどあなたの部下達も纏めて面倒みるわ」

 

「か……華琳様??このような奴を配下に加えるなど「黙りなさい春蘭」………」

 

「いま私は彼と話している。あなたの意見は聞いていない。分かった?」

 

「……御意」

 

 

反対意見を述べた夏侯惇に曹操は覇気だけで黙らせた。その能力はまさに‘‘覇王”として必要な能力の一つであろう。

 

まだ子供だというのに親はどんな帝王学を受けさせたんだ?

 

 

「どうかしら?あなたとしても好条件だと思うけど?」

 

 

そう再び尋ねる曹操の瞳には絶対的自信が感じられる。恐らくは俺が断る理由はないだろうと思っているのだろうが、俺の考えは決まっている。

 

 

「一つ聞きたい。君の目指すは覇道だな?」

 

「そう、我が覇道こそが疲弊しきった国を救うことが出来る。だからあなたも私に従い、あなた自身の使命を果たしなさい」

 

「………悪いが断る」

 

「貴様??華琳様の命が聞けないのか??」

 

「………理由を聞いてもいいかしら?」

 

「まず第1に俺は軍人だ。軍人が主や国に忠義を尽くすことは当然。第2に俺が主体の政策も既に進んでいる。俺が抜けたらはっきりいって停滞してしまう。そして第3、これが一番の理由だ」

 

 

そう言おうとして俺達は体を返して天幕の入口に立ち止まり、振り返らずにポケットからフロンティアスピリットを口にし、火を付けて煙を吐き出しながら口にした。

 

 

「……俺は覇道が乱世を終わらすとは思えない」

 

 

そう言い放った瞬間、曹操が静かに怒気を高めていくのを感じるが気にせず2人を連れて天幕を出た。

 

曹操 孟徳………予想以上に危険な人物かもしれない。知略、武勇、人材の3つが揃う人物はどんなに数が少なくてもいるだけで脅威となる。

 

その曹操に脅威を感じながら充てがわれた天幕に向かうのであった……………。

 

説明
天界の戦士、乱世の奸雄と相対する。
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