恋姫英雄譚 Neptune Spear |
Mission22:Miscalculation of Hero
あのリアンとかいう男……初めてあった印象は胡散臭い奴だけど実績は本物。部下や董卓とかいう州牧からの信頼も厚い。
しかも味方からは‘‘天界の戦士”、敵からは‘‘茶髪の山賊狩り”や‘‘斑目の弓兵”と謂われて恐れられてもいる。
見たこともない服装に装具、更には天界の弓矢らしい黒い筒のような武器。何よりもその天界の知識は私の下……つまりは覇道で発揮させることで真価を出せる。
そう考えてあの男を董卓より引き抜こうとした。だけどリアンは私にこう言った。
‘‘覇道が乱世を終わらせるとは思えない”
その言葉を聞いて私は怒りを持った。
我が覇道がこの腐り切った国を救い、身分を気にせず皆が力を出して生き抜く。そんな私の信念をあの男は真っ向から否定したのだ。
だからあの男に分からせたかった。私の考えが正しく、私の考えに共感させて引き込もうとした。
「華琳様、董卓軍の部隊が動き出したようです」
「見えてるわ」
韓遂の攻撃開始に合わせてあの男が指揮する部隊も動き出した。
あの男に劣勢を味あわせることと実力を測る。その為に第1次攻撃の後に私が皇甫嵩に進言して奴の部隊を左翼から韓遂の攻撃が集中する中央に配備替えを進言させ、私が右翼に回った。
これなら奴の実力を測れるだけではなく、味方の損害も抑えられる。そしてガラ空きになった側面を私達が攻撃して奴に実力を見せ付けてやる。
その準備を済ませて愛馬‘‘炎豪”に跨り、得物の大鎌‘‘絶”を手にして機会を秋蘭と共に伺っていた。
「展開の速度がかなり早いようですな……」
「そうね……それで秋蘭。あなたはあの行動をどう思う?」
「あれは……大盾に弓兵……どうやら奴は正面から攻撃を受け止めてすぐ後ろの弓兵で突撃を阻止するようです」
確かに敵が突撃を開始したら大盾を用いて弓兵や弩兵で敵の突撃を鈍らせる。
しかしそれは数が互角か槍兵が充実している場合に用いる戦術。
みたところあの男に槍兵は少ないし、数や地形も使うには不適切。あんな間違った戦術を使うのは漢軍のみと思っていたわ。
私の見込み違いだったのかしら?
そう考えていると董卓軍の攻撃が開始された。放たれた弓矢が次々と叛乱軍部隊に降り注ぐが何か違和感があった。
いくら正面から突撃してくるとはいえ、数では董卓軍が少ない。だから損害を無視して突撃を続ければ何れは取り付かれる。
それなのに叛乱軍の兵士は一向に攻撃を受けた場所から全く近づけずにいた。
「どうなってるの………」
「華琳様……よく見るとあの大盾に弩が取り付けられてます」
「弩にしては間隔が短過ぎるわ……なんなのよ……あれは……」
「華琳様、攻撃が止みます」
盾を利用して向かって来る敵が足を止め、それに合わせてあの男が部隊を率いて突撃を始めた。
しかも部下の全員が弩の先端に小刀のようなものを取り付けて、弓矢を放ちながら突撃。そして敵に衝突すると敵に刃を突き刺した。
「なんなの……なんなのよ………あの攻撃は……」
「華琳様?」
董卓軍……否……あの男の部隊に目立った損害はない。しかし叛乱軍の前衛は混乱を極め、瞬く間に中軍に繋がる道が切り拓かれ、それに合わせて奴の副官が指揮する騎馬隊が突撃を始めたがこちらも異常だった。
待ち構えた槍兵が騎馬隊にぶつかる直前、いきなりその騎馬隊から放たれた弓矢により隊列は崩され、そこから開いた穴から突撃していく。
少数の部隊で何倍もの敵軍を蹂躙する。
言葉では簡単だけど実戦じゃあかなり無謀な戦術。だけどあの男の部隊は既に中軍の内部深くにまで食い込んでいて、あと少しで後軍にたどり着こうとしていた。
「……….…」
「華琳様……我々もすぐに動かなければあの男に武功を全て持って行かれてしまいます」
「………見誤っていたわ……あの男を……」
「華琳様?」
「秋蘭、戦が終わったら何としてもあの男を手に入れるわよ。董卓とかいう奴には過ぎた力………」
「御意。しかし今は目の前の敵を片付けましょう」
「そうね………全軍??董卓軍にばかり活躍させてはならぬ??我々も攻撃に加わり、敵本陣と総大将の首は我等が手にする??」
『御意??』
「全軍突撃??」
手柄を総取りされる前に私も突撃を開始した。それに合わせて馬騰と皇甫嵩の軍勢も突撃を始めて混乱していた叛乱軍部隊は完全に敗走した。
しかし戦で最も功績を残したのは董卓軍……あの男達になる。
私はあの男を過小評価していたわ……。
味方になれば頼もしいが敵になったら間違いなく我が覇道の障害ともなる。だから何としても敵になる前に董卓軍から引き抜いてみせるわ。
絶対にね……………。
説明 | ||
策を使った曹操。だが彼女は誤算をしていた………。 | ||
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