扶桑姉妹を活躍させたいシリーズ第六回「航空戦艦・扶桑出渠!」
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chapter:空はあんなに青いのに

(艦娘に会えるファーストフード FUSO burger店内)

長い髪の女性:どうしてこんなことになったんだろう?

 

 私はカウンター越しにお店の窓の外を見ていた。

 そこには真っ青な空が広がっている。

 

ボブカットの女性:でも、私、こういうの、初めてですから。緊張しますけど、ちょっと楽しいです。

長い髪の女性:私だって初めてよ。

女の子:私も初めてです……。でも、お料理、楽しい、です。はい。

長い髪の女性:ま、まぁ、羽黒と潮ちゃんが楽しんでいるならいいけど。

ボブカットの女性→羽黒:足柄姉さんは楽しくないんですか。

長い髪の女性→足柄:うーん。貴重な体験ではあるわよね。

女の子→潮:こんなこと、普段はできませんから。

 

 そんなことを言ってたら、地元の漁師さんたちがやってきた。

 

羽黒:あ、い、いらっしゃいませー!(ぺこり)

近所の漁師:お? 今日はいつものお嬢さんたちとは違うねぇ。どうしたんだい?

羽黒:は、はい。実は……

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(時間はこれより数日前。前回の戦いからは数週間後のこと)

 私たちは敵の偵察部隊とおもわれる艦隊を二度撃退した。でも、あれから、深海棲艦はこのあたりに出ていない。幸か不幸か、わからないけど。

 この泊地――最強青春帝国の正式な閉鎖まで残すところ数日となった。私たちは提督に招集をかけられて提督執務室にいた。

 

扶桑:やっぱり、この泊地は解散なんですね。

提督:あれから深海棲艦はずっと出ていないからな。

山城:でも、また出るかもしれないじゃないですか! もし、また新しい深海棲艦が出たら、このあたりのみんなは誰が守るんですか!?

提督:実は、ここから数百キロ先に新しい鎮守府を建設している最中だ。その鎮守府の面々がこのあたりも担当することになっている。

吹雪:数百キロ!? そんな遠くから……。深海棲艦は待ってくれないんですよ!?

 

 珍しく、吹雪ちゃんも提督に食ってかかる。

 

提督:その鎮守府のあたりには様々な警戒網を敷くことにしている。それで、臨時の出撃にも対応できるようになっている。

 

 提督が一呼吸置く。そして、意志を感じる、力強い口調で私たちに語り掛ける。

 

提督:信じてはくれないか。その新しい鎮守府とそのメンバーを。

 

 私たちは、何も言えなくなった。

 

提督:そうだ。君たちには新しい鎮守府の名前とメンバーを教えておこう。

千歳航:提督、それは……

 

 何か言おうとする千歳さんを提督が手で制する。

 

提督:いや、君たちには知る権利がある。とはいえ、これは重要機密だから、コードネームだが。

 

 私たちは、「重要機密」という言葉に、一瞬緊張し、固唾をのむ。

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提督:その鎮守府の名は……「皆殺しのきゅんきゅん合唱団」という。

扶桑:……え!?

提督:聞こえなかったのか。「皆殺しのきゅんきゅん合唱団」だ。

扶桑・山城・吹雪:ずこーーーーーーーっっっっ!!!

 

 私たちは盛大にずっこけた。

 

千歳航:はぁ……だから、言いたくなかったんです。

提督:何か変だったか?

千歳航:……もう、提督のセンスには慣れましたから。

提督:そうか? まぁ、それは置くとして。今のところ、そこに配置されているのは、潮・時雨・曙・最上の四人だ。もちろん、これからまだ増派するつもりだが、いずれも最精鋭の艦娘だ。彼女たちなら、きっと、この地もしっかり守ってくれるだろう。そして、君たちも、別の鎮守府で、しっかり鍛えてほしい。そうしたら、「皆殺しのきゅんきゅん合唱団」に所属することもあるだろう。

扶桑:鎮守府名がものすごく気になりますが……。私たちが強くなることでここに戻ってこれるかもしれないなら、もっともっと、強くなります……っ!

吹雪:えーっと、あと、借金もどうかしてくれると。

千歳航:みんなの借金の方も交渉中よ。もしかしたら、なんとかなりそうだけど……。

扶桑:そ、そうですか。

提督:それでは、この件はこれまでだ。解散!

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chapter:浜を埋め尽くすもの

 そのあと、私と山城、それに千歳さんは引き継ぎのための資料を作っていた。そうしていたら、海岸付近で測量に出ていたはずの吹雪ちゃんが駆け込んできた。

 

吹雪:皆さん! 海岸にものすごい量の資材が!

 

 私たちが海岸に向かう。すると、この前みんなで遊んだ砂浜がたくさんの鋼鉄で埋め尽くされていた。

 鋼鉄は破壊された船や建物の破片という感じでもない。そんなに時間がたっていないせいか、錆びてもいない。ほとんど新品同前だわ。まるで泊地の備蓄資材がそのまま流れ着いてきたような……。

 

千歳航:どういうことでしょう……。

扶桑:さぁ……。

 

 まったく、原因が分からない。私たち二人は首をひねる。

 

山城:姉さま、大変です! 向こうで大破擱座した艦娘が!!

扶桑:えっ!?

山城:今、吹雪ちゃんが救援に向かっています。私たちも行きましょう!

 

 私たちが指示されたところに向かっていくと応急手当てをしている吹雪ちゃんと轟沈してもおかしくないくらいボロボロになっていた女の子がいた。あれは……確か、駆逐艦の潮ちゃんじゃなかったかしら。あれ? でも、彼女、新しい鎮守府所属じゃなかったかしら。

 

扶桑:しっかりして! あなたの所属は確か……

潮:は……はい。わ……私は……極秘建造中の……み、みなごろしの、きゅ、きゅんきゅん……(赤面)

 

 あ。やっぱり、所属する娘(こ)たちも恥ずかしいのね、あの名前。

 

吹雪:潮ちゃん、早く、入渠ドックに!

潮:い、いえ……。その前に皆さんにお伝えしなきゃいけないことが……。

山城:そんなのドックで聞くから、すぐに入渠なさい!

潮:あ、ありがとう、ございます……。

 

 そういうと、潮ちゃんは気を失ってしまった。

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chapter:乾作戦発令!!

(入渠ドックにて)

潮:……あ、えーっと、ここは……?

扶桑:青春最強帝国の入渠ドックよ。体の方には大きな怪我はなかったけど、まだ無理をしちゃダメ。明日まではここでゆっくりと休んでね。

潮:そうでしたか……。有難うございます。って、皆さんにお伝えしなけゃいけないんです!

扶桑:そんなに慌てて。どうしたの?

潮:極秘建造中だった、皆殺しのきゅんきゅん合唱団が……壊滅させられました……

千歳航:ええっ!?

 

 千歳さんが、がらにもなく驚愕している。

 

千歳航:あそこは、建設中だったけど最新の防備施設と精鋭の艦娘を配置していたはずよね。そんなに簡単に壊滅するはずが……。

潮:はい……。私たちも別に慢心していたわけじゃなかったんです。でも、あんなに強い深海棲艦がいるなんて……。

千歳航:……まさか、噂の超々弩級戦艦……!?

 

 長門型をも超えるという超々弩級戦艦……。まさか、本当に存在していたの?

 

潮:いえ。それとは、ちょっと違っていました……。でも、ヲ級やヌ級がいないのに艦載機の攻撃がありました。それに、戦艦並みの砲撃まで仕掛けてきて……。

千歳航:……敵の新型航空戦艦、かしら。

潮:多分……。

 

 潮ちゃんはそこまで言うと、私たちに頭を下げた。

 

潮:お願いします! まだ、合唱団の跡地に仲間が取り残されているんです! みんなを……みんなを助けてくださいっ!!

提督:潮くん。話は聞かせてもらった!

潮:へ!? いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!

山城:こんなときに、ここに来るなぁ!!

 

 どかぁっ!!

 提督はまた、はるか彼方に吹き飛ばされていった。懲りない人ね……。はぁ……。

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(提督執務室)

包帯ぐるぐる巻きの提督:潮くんの話では、新たな深海棲艦によって、皆殺しのきゅんきゅん合唱団が壊滅させられたようだ……。銀河蜜柑船団に命じる!!

 

 響き渡る声に、私たちはおもわず、背筋を伸ばす。

 

包帯ぐるぐる巻きの提督:銀河蜜柑船団は皆殺しのきゅんきゅん合唱団跡地に向かい、潮くんの僚艦を救出せよ!

扶桑・山城・吹雪:はいっ!!

 

 私たちは一斉に敬礼する。

 

包帯ぐるぐる巻きの提督:この作戦を「乾作戦」と名付ける! 出撃時間は明日の1100とする。それまで、休養や準備をしておくように。それと、千歳。

千歳航:はい。

包帯ぐるぐる巻きの提督:至急、高速修復材を、頼む……。

千歳航:潮ちゃんに使うんですか。

包帯ぐるぐる巻きの提督:潮くんは、今夜一晩ゆっくりしてもらう。それは、自分用だ……。

千歳航:あー。はいはい。

扶桑:(小声)高速修復材って、提督にも効くのかしら?

山城:(小声)さぁ……。

吹雪:(小声)いつものことみたいですから、効くんじゃないですか。

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chapter:航空戦艦・扶桑

(夕刻)

 潮ちゃんの話だと、敵には航空戦艦がいる……。それに対抗するには、私も航空戦艦になった方がいいかもしれない。改造、すべきよね。

 

扶桑:提督、千歳さん……。

提督・千歳航:うん?

扶桑:私……改造して、航空戦艦になろうと思います。

千歳航:航空戦艦になると、これまでとかなり勝手が変わりますよ。それでも、いいんですか。

扶桑:ええ。敵に航空戦力がいる以上、こちらも航空戦力が必要です。航空戦艦ですから、空母ほどじゃないにせよ、いくらかの足しにはなるはずです。

提督:……わかった。至急、改造の手続きをとることにしよう。

 

 私たちは早速工廠に向かっていった。航空戦艦、か。自分で申し出たとはいえ、少し緊張する。妖精さん達の力で、今夜中にはなんとかなりそうね。

 

吹雪:あのー……山城さん。

山城:どしたの。吹雪ちゃん。

吹雪:えっと……山城さんの必殺技、私にも教えてください!!

山城:私の必殺技!?

吹雪:はいっ。司令官を二度もふっとばしたあの、必殺「山城パンチ(仮)」です。

山城:あれ、いつの間にか私の名前がついてる!?

吹雪:私、駆逐艦だから、火力が弱いですし……。少しでも火力を補いたいんです! ダメ、ですか?(上目づかいでうるうる)

山城:う……。私の名前がついているのはちょっとアレだけど……。ま、まぁ、いいわ……。

吹雪:ありがとうございます!!

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 0800。

 出撃まではもう少し時間がある。私たちは皆でお店の一角にいた。

 

山城:航空戦艦の姉さまも素敵です(キラキラ)

吹雪:私も航空機運用したいです……(キラキラ)

千歳航:あらあら。扶桑さん、随分慕われているみたいね。

扶桑改:え、ええ。

 

 山城と吹雪ちゃんの視線、こそばゆいような恥ずかしいような……。

 

扶桑改:こほん。0900から出撃に向けた作戦会議を開きましょうか。

千歳航:そうですね。

吹雪:あのー……。このお店どうしましょう。

山城:しばらく、休業ね。

千歳航:そのことなら心配いりませんよ。

扶桑改・山城・吹雪:え!?

千歳航:交渉の結果、ブルネイ哨戒温泉の足柄さんと羽黒さんがお店の手伝いをしてくださるそうです。それに、潮ちゃんもリハビリを兼ねて手伝ってくれることになりました。

吹雪:千歳さん……手際がいいというか、なんというか……。

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chapter:リプレイパート

※いつもの筆者代理のご隠居提督と香取の会話形式です。

 

ご隠居:さて、いよいよ。「暇だったのに」前半戦だね。

香取:では、まず導入フェイズからですね。

ご隠居:まず、潮たちが所属する極秘建造中の鎮守府名から決めるか。(サイコロ、コロコロ)

 

 サイコロを振った結果、鎮守府名は「皆殺しのきゅんきゅん合唱団」に決まった。

 

ご隠居・香取:……

ご隠居:あははは……(乾いた笑い)

香取:すごい鎮守府名になりましたね(汗)

ご隠居:き、気を取り直して、キャラメイクしようか。

香取:やっぱり、扶桑さんは航空戦艦にするんですか。

ご隠居:うん。やっぱり、索敵は必要かなってね。というわけで、姉さまのキャラメイクから。

 

【扶桑改】

〈装備アビリティ〉

・大口径主砲:火力2:指定個性「お嬢様」

・大口径主砲:火力2:指定個性「面倒見」

・偵察機:偵察9

・改良型艦本式タービン:回避修正+1

〈フリー個性〉

・弱点:索敵

〈ギャップ〉

・5.航海と6.戦闘の間。

〈戦術・固有アビリティ〉

・見敵必殺(制空・サブ)

・士気高揚(便利・サブ)

・火力だけは自慢(固有)

 

香取:扶桑型戦艦らしい攻撃型ですね。

ご隠居:うん。それに、「士気高揚」も取って、行動力不足を補うつもりだよ。

香取:なるほど。それでは、山城さんと吹雪さんはどうしましょう。『抜錨ノ書』掲載スキルへの変更も考えられますよね。

 

【山城】

〈装備アビリティ〉

・大口径主砲:火力2:指定個性「おしとやか」

・副砲:火力1:指定個性「えっち」

・副砲:火力1:指定個性「待機」

〈戦術・固有アビリティ〉

・迎撃(継続)

・援護射撃

・嫌な予感(継続)

 

香取:山城さんは装備とアビリティ1つ追加ですね。

ご隠居:姉さまが持っていたものを渡したよ。固有アビリティはとりあえず継続かな。

 

【吹雪】

〈戦術・固有アビリティ〉

・高速機動

・白兵戦闘

・がんばります!(継続)

 

香取:吹雪さんはアビリティを大きく変えましたね。

ご隠居:航行序列を調整するのと、「白兵戦闘」で火力を補おうと思って。

香取:確かに『願いは海を越えて2』では、「白兵戦闘」が猛威をふるっていましたね。

 

●白兵戦闘

 短距離砲撃フェイズで使用できる。自分と同じ航行序列の敵艦の中から目標一人を選ぶ。指定個性の判定に成功すると、目標に損傷〔1D6の半分(切り捨て)〕を与えることができる。指定個性の判定に失敗すると自分が損傷を一つ受ける。

 例・小破(損傷1)した戦艦ル級に白兵戦闘を使い、1D6で6が出ると、あたえられる損傷は3になる。そのため、戦艦ル級は小破から一気に轟沈(損傷4)する。

 

ご隠居:どうしても駆逐艦は火力が弱いしな。

香取:結局、固有アビリティは『抜錨ノ書』掲載版にはしなかったんですね。

ご隠居:うん。まだ、ちょっと様子を見ようと思ってね。

香取:そうですか。では、次は感情値設定です。

ご隠居:そしたら……

 

〈感情値〉

・扶桑→吹雪1(二人目の妹)

・山城→吹雪2(可愛い)

・吹雪→扶桑3(心配)

 

ご隠居:今回はプレイヤーキャラのみの感情値だね。

香取:『抜錨ノ書』で追加された「名誉点」はどうします。

ご隠居:ちょっと、ズルしているみたいだけどね(汗)。ま、これまでのセッションは2回だから、そこまで極端な変化はないということで。(装備カタログを見る)うーん。迷うなぁ。とりあえず、これも今回は見送るか。

香取:そうですか。それでは、導入フェイズの最後に、シーン決定を。

ご隠居:(サイコロころころ)……2か。

 

 2.流出した資材 この浜辺の海域に資材が流れてきたという。それを拾い集めれば、役に立つかも。でも、この資材はどこから? このセッションでは、遠征シーンの代わりに航海シーンが使用され、「航海イベントを一度以上達成すること」が任務として加わる。また、任務を達成した時点で流されていた資材を手に入れて、好きな資材が8個増える。

 

香取:では、ここで航海イベントを一回は入れなければいけませんね。

ご隠居:鉄か燃料がほしいところだね。

説明
『艦これRPGぼっちプレイ 空はあんなに青いのに』(富士見書房)に収録されている机上演習シナリオ「暇だったはずなのに」(pp.238-258)のリプレイです。
今回は導入フェイズのみです。

pixivのものと同じです。
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リプレイ 艦隊これくしょん 艦これRPG 扶桑 山城 吹雪 千歳 足柄 

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