真・恋姫(魏)SS 【I'M...】4話
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さて、無事徐州 瑯邪郡のとある邑に到着した俺達だが。

この大陸の広さを改めて痛感させられた。

この近くに邑があるので、そこへ滞在するのだと言っていたのだが、甘く見ていた。

早朝に出発したの俺達だが、実際に邑に到着したのは昼過ぎ。

およそ6,7時間の移動だ。

普通の高校生の体力しかない俺にとってはこの日差しの中ではさながらデスパレードとなっていた。

 

「こら、だらしないぞ!北郷!」

 

「春蘭……いや…お前らが元気すぎるんだよ…」

 

この疲れはたぶん、徒歩だけじゃなくて、この異様なまでに絡んでくる子のせいでもあるんだろう。

 

「姉者、北郷は私達とは違うのだ。無茶を言ってもしょうがないだろう。」

 

「むぅ〜…」

 

この妹はほんとに理解があって助かる。

……ありすぎて困ることもあるが。

春蘭と秋蘭の二人は華琳が許したからと言うことで真名を託してくれた。

ただ、個人的にはまだ認めていないとの事で俺の事は一刀ではなく北郷と呼んでいる。

で、今俺達が何をしているかというと。

 

 

 

「一列に並べ!順番を乱すなよ!」

 

兵の声が聞こえる。

まあ、給仕をしているわけなんだが。

 

「はぁ…」

 

思わずため息をつく。

給仕でここまで疲れるとは…

いや、給仕だけならここまで疲れることもないんだろうが。

 

『はぁ…』

 

こんどはため息がシンクロした。

隣にいるのはさっきのとても理解ある妹。

 

「秋蘭」

 

「ん?」

 

「どうしても、聞きたいことがある…」

 

またの名をツッコミというが。

 

「答えないと…だめか?」

 

「できれば」

 

「……はぁ」

 

「あれは…なに」

 

 

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俺が指差すもの。疲れの原因。

それは―――

 

 

 

「おーーーほっほっほっほ。こんなくたびれた邑に誰が滞在するのかと思って視察に着てみれば、華琳さんじゃありませんの」

 

「………………。」

 

「れ、麗羽さま〜、声大きいですよ〜。皆さんみてますってばぁ…」

 

「何をおっしゃいますの斗詩さん。これはワタクシ達、名門袁家の者を歓迎するまなざしですわっ!」

 

「…それはないとおもうけど…」

 

見るからにお嬢様。それもかなり高飛車なタイプだ。

髪の毛の巻き具合もその態度も華琳の数倍上だし……悪い意味でね。

もう一人の方はそれに振り回されてる感じだが…

というか、あの華琳を誰が鎮めるんだ。

そして、これだけならいざ知らず

 

 

「おいお前!いくらなんでもとりすぎだろ!!」

 

「え〜?でもあたい達いつもこれくらいは食べないと動けなくなっちゃうんだよなぁ〜」

 

「知るかっ!ちゃんと分量は守れ!…というかお前達部外者だろ!」

 

「大丈夫だって、ほら、あんたにもちょっとだけ分けてあげるからさ」

 

「ん、うん?そうか?……でも………しかし…」

 

なぜ揺れ動くか、春蘭。

そこは断固として断るべきだろう!

 

「ほら、曹操にも分けてあげればいいじゃん。それで誰も文句言わないって」

 

「うーむ…そ、そうか…それもそうだな。うむ。なら「姉者!!」…うわぁぁ!!」

 

さすがだよ秋蘭。

まぁ、こっちはあの子に任せるとして…

 

 

 

「こんなところに視察にくる余裕があるなんて、名門とやらはよほど暇なのね」

 

「そんなはずあるわけないでしょ?曹嵩さんの一隊が徐州へ訪れたと聞いて、陶謙さんへの用事の”つ・い・で”に立ち寄ったまでですわっ!」

 

「そう、ならもう気は済んだでしょう?はやく帰ってもらえない?…いい加減あなたの顔も見飽きたのよ」

 

「むき〜〜〜!!!なんですの、そのなめくさった態度は!!」

 

 

この空気にどう介入しろっていうんだ…

一見すれば、華琳があの子をいじめてる感じだが、華琳の許容範囲もそろそろ限界だろう。

 

 

「君も苦労するね」

 

「よく言われます…あはは……はぁ〜……」

 

もう手のつけられないところまで行ったと判断し、唯一まともそうな子は俺の近くへと避難していた。

ココ以外の給仕は順調に進んでいるにも関わらず、ここだけがずっと止まったままだ。

 

「仕方ないな…」

 

「え?」

 

不思議そうにしているのを放置して、二人に近づく。

 

「ねえ?」

 

「あら、なんですの?あなた」

 

「一刀?」

 

「ん、俺は北郷一刀っていうんだ。昨日から華琳のところで世話になってる」

 

「その北郷さんがワタクシに何の御用かしら。まだ華琳さんとの話がおわってないんですけれど」

 

「ごめんね。今日歩き通しで華琳疲れてるんだ。話もあると思うけどまた今度にしてもらえるかな」

 

俺はできるだけ愛想よく、微笑んで言った。………つもりだ。

 

「――っ!…ま、まぁ、そうですわね…。疲れている華琳さんを相手にしても楽しくないですし。」

 

「ん?顔赤いけど、君も大丈夫?」

 

少し心配だったので熱を見てあげようと額に手を当てた。

 

「――――っ!!!!」

 

「あ…」

 

少し触れたところで振り払われてしまった。

 

「だ、大丈夫ですわっ!斗詩!猪々子!いきますわよ!!」

 

「あ、麗羽さま、まってくださいよ〜〜」

 

「文ちゃん、これどうするのよ〜〜」

 

3人が行ってしまった。

はぁ、マジで疲れた。。。

 

 

グリッ

 

 

「ぐはぁっ!!……あ、あの華琳さん?」

 

「……何?」

 

「いや、何って何故に俺の足を――ぐぁ!」

 

「何!?」

 

「……なんでもないです」

 

 

なんなんだ…

 

 

 

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――――――――――――――。

 

 

 

 

「ところで、北郷さん」

 

「はい?」

 

夜、話があるということで曹嵩さんのところに来ていた。

 

「そろそろ北郷さんが何者なのか、お聞きしてもいいですか?」

 

「何者……ですか」

 

「はい。字がなく、真名すら知らない。そしてその奇妙な服装。一言でいうなら異常です。」

 

そう、なってしまうよな。どう考えても。

いきなり川でヒトが倒れていた。

そこまでならばただの行き倒れだろう。

ただし、俺の場合は違う。

 

「俺も、今の自分の状況がとても信じられないので、曹嵩さんに信じてもらえるかどうか不安なんですが…」

 

「……話してください」

 

俺は、話した。

俺が元々ここの人間ではないこと。

正確にはここより1800年以上後に生きていたこと。

眠りにつき、気がつけばあの川に倒れていて、この人に救ってもらった。

真名や字がないのは俺のいた場所にそういう文化がなかったから。

俺の国では名前というのは姓と名で構成されたものだ。

この服もこことは文化が違うため…としか説明できなかった。

この時代の人にはとても信じられるものではないだろう。

未来から来たのだ。と言われても実際には変な服を着た変わった奴程度にしか思えない。

でも、これはおそらく事実。

 

「………胡散臭いことこの上ないですね」

 

「はっきり言うなぁ…」

 

「ふふ…でも、それが事実なら戸惑うのは私達よりも貴方自身なんでしょうね」

 

「そうなんでしょうか…」

 

「自覚がないというのも困ったものですね」

 

ふふっとまた笑いかける。

この人は本当に優しく笑う。

華琳のことを可愛いと思ったときがあるが、この人の場合はやはり綺麗に笑うんだと思った。

どこかに華琳のような子供っぽさを見せながら、それでも大人の綺麗さを持っていた。

 

「迷惑ではないですか?」

 

「迷惑です」

 

「う…」

 

本当にはっきり言う人だ…

 

「食料も1人分余計に消費しますし…なにより華琳や他の子達が少し心配ですし♪」

 

「いやいやいや、最後だけは否定させてください」

 

「あら、そうですか?」

 

この人と話す時はいつも振り回されるな…

まぁ、それが年のk―――(チャキ

 

「なにか?」

 

「いえ!」

 

 

 

……これからは気をつけよう…。

 

 

…………………。

 

 

分かりましたよ。ちゃんと気をつけますから…

 

 

………だからはやく俺の首に掛かってるその鎌をどけてください!!

 

 

 

「ふふ」

 

カチャっと自分の座っている椅子の後ろへ鎌を直す。

考えることすらタブーらしい。

 

 

「まぁ、行くあてもないのでしたら、改めて私達と共に行きませんか?」

 

「いいんですか?…といっても他にアテなんてないですけど。あれ、でももう邑に着いたんだから移動することもないんじゃ?」

 

「いえ、もうすぐこの国は大きな乱世へと入っていくでしょう。そしてこの邑とていずれ戦に巻き込まれます」

 

「………」

 

「…あの子達をそれに巻き込みたくないんです。ですから―――」

 

「わかりました」

 

「北郷さん…」

 

「…戦が始まる前にできるだけ安全な場所へ行かないと…ですね」

 

「ええ…」

 

俺が、この人たちに出来ること。

俺の役目…

それが見えた気がした。

求めたものだが、手に入れたくはなかったもの。

だけど、これは俺がしないといけないことだ。

何故ここに来たのかは分からないけど、すくなくとも俺は

この人たちが望む………生きると言うことを手伝わなければならない。

 

 

「それにしても、曹嵩さんだってそれなりの地位があるんじゃ?兵士も結構いるし」

 

「いえ…私など、所詮名ばかりの身分です…。この地の州牧である陶謙様や、今この地に来訪している北の袁成様に比べれば…。それでも私についてきてくれた兵にはとても感謝していますが」

 

「…そうなんですか…。」

 

「………」

 

言っておかないと。

俺がここにいる意味を。

 

「俺に…」

 

「え?」

 

「これから一緒にいるわけですから、俺に出来ることはなんでもしますよ。だから、なんでも言ってください。よほどの事は無理でも…大抵のことなら手伝えるはずですから」

 

「はい♪お願いしますね!」

 

「……あれ?」

 

あれ、なんだこの違和感。

 

「ふふ…”なんでも”お願いしちゃいますね♪」

 

「あれ、…あれ?」

 

「これからもよろしくお願いしますね♪”一刀”さん」

 

「あ…は、はい」

 

なんだろう………なんなんだろう……。

 

 

 

……猛烈に嫌な予感しかしないんですが。

 

 

 

 

 

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あとがき

 

 

はい。4話でした!

今更になってもう一度恋姫をプレイしてキャラ確認とかしてる和兎です。

華琳の過去ということで今回は麗羽達に出てもらいました!

史実では幼い頃は悪友とされている華琳と麗羽の二人ですが、恋姫の中ではどうなんでしょう(’’?

この二人の話で花嫁泥棒なんて話もありますけど、イマイチ僕の中でその話と恋姫の世界をつなげることが出来なかったので、この時点ですでに仲は微妙です(´・ω・`)

まぁ、今回はそれの仲介?役として一刀に頑張ってもらいましたけど。

ただ、書いてても思ったんですがやっぱり麗羽はキャラ濃いですねぇ…

お母さんが飛んでいきそうになりましたよorz

それから、陶謙や袁成なんて三国志でもほとんど最初のほうしか出てこない名前も出しちゃいましたけど、大丈夫かな…

史実での実際の身分などはきちんと把握できているわけではないので、もし曹嵩のほうが陶謙よりも地位上じゃね?とかあった場合は申し訳ないですが、ここでは曹嵩のほうが下という事でお願いしますm(__)m

 

では、毎回のことですが少し短いけど次は5話で!!

(`・ω・´)ノシ

説明
真恋姫無双 魏ルートのSS。
華琳の過去に原作より少し前の一刀が絡んでいく話です。


1話⇒http://www.tinami.com/view/77375


前⇒http://www.tinami.com/view/77722
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コメント
華琳が首を刎ねるのが好きなのは遺伝だったんですねwww(フィル)
「何でも」 一番怖いことばですね〜ww(YOROZU)
曹嵩様の性格が怖い・・・だって華琳の母親だし。(ブックマン)
は、母君の反応が意味深だ・・・Σ(´д`ノ)ノ (cheat)
この外史では誰が食われるのか?それが気になる今日この頃です。(乱)
ああ・・・・曹嵩様がどうなるのか・・・すげぇ・・・愉しみですわww 次投に期待です^^w(Poussiere)
魏の種馬は生まれるのか?曹嵩の運命や如何に・・・。暗殺や曹操(華琳?)の虐殺は防げるのか? 次作期待(クォーツ)
若しかして、お母様も!?続き期待してます!!(タンデム)
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真・恋姫無双 I'M... 華琳 

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