short-short ラドル&アリナの章2
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この時期になるととても不思議な現象が起きる場所がある。ラドルはそれをどうしてもアリナに見せてあげたかった。

「こっちだよ」

星明りを頼りに暗い森を進む。モンスターの気配はない。

「ランプを使えばいいのに…。暗いから気を付けてね」

「使うのは目的地に着いてからさ。大丈夫。あと少しだから」

そうして、もう暫く歩いた後、一際真っ暗闇の空間が二人の前に現れた。

「ここ…?」

「そう。ちょっと中に入ってから明かりを入れるからね」

ほとんど何も見えない暗闇の中、ラドルがようやくランプに火を点ける。

「見てて」

幾つかの光の粒がランプの周りを漂い始めたかと思うと、瞬く間にそれは拡大し、光の洪水となって空に舞い上がって行った。赤、黄、青を初めとした様々な色の光が一張の帯のように止め処なく棚引く様はえも言われぬ美しさだ。

「凄い…!!わたし、ずっとこの森に住んでいたのにこんなことが起きるなんて知らなかった!」

「精霊は森の中で火を熾さないからね。それに、この場所じゃないと起きないことだから知らないんじゃないかなとは思ってた」

「綺麗…」

ラドルはニコッと笑うと、明るくなった夜空を見上げる。

「こうやって夜空に星を増やすんだ。虫の命を頂いて光の道標を作るんだよ」

「この光は虫なの?」

「そうだよ。絶命した時に出る光なんだ」

「命の輝きが星になるのね」

「そうだね。そうして輝きを失った星がまた虫になるんだ。そうやって命はずーと、ずーと循環していくんだろうね」

アリナは不意に不安気な表情を見せた。

「ラドル…」

絶え間なく光と化す虫。森は沈黙を守る。

「目的を遂げるまでは死ねないよ」

夜明けはまだ先。

説明
オリジナルのshort-shortです。ナンバリングはしてありますが、時系列は沿っておらず読み切りなので、どのナンバリングからでも読むことが出来ます。※short-shortの定義に関しましては自分の場合は2000字までとしております。
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