絡繰人間12号「そうか…………ならば、もう貴様等は用済みだ」

絡繰人間12号は無表情で歩み寄る

雪蓮「………………はぁっ!!!」

ﾌｫﾝｯ!!!

雪蓮は素速く、真横に『南海覇王』を振るも

ｶﾞｷﾝｯ!!

絡繰人間12号「そんなヤワな剣戟でこの俺に勝てるとでも？」

絡繰人間12号は右手で無造作に掴んであしらう

雪蓮「思っちゃ………いないわよ」

強気で言うが、雪蓮の体力には限界がきている

『南海覇王』を一振りしただけで手足が震えており、息が絶え絶えとなっている

絡繰人間12号「切っ先に気が篭っていないぞ？」

雪蓮「余計な……お世話よ!!!」

ﾌｫﾝｯ!!!

今度は真上から振り下ろすも

絡繰人間12号「……………避けられん方が難しい斬撃だ」

絡繰人間12号は両目を閉じ、呆れ果てながら躱す

絡繰人間12号「むんっ!!!」

ﾌｫﾝｯ!!!

ﾄﾞｶｯ!!!

雪蓮「あぁあっ!!?」

絡繰人間12号は雪蓮の脇腹に右足の蹴りをいれ、雪蓮を転倒させる

雪蓮「うぅ…………」

雪蓮は倒れ込んだまま動かない

絡繰人間12号「ふっふっふっ………『江東の麒麟児』も最早これまでだな………」

絡繰人間12号は指の骨を鳴らしながらゆっくりと………本当にゆっくりと雪蓮に歩み寄る

すると

ｼｭﾝｯ!!!

ｼｭﾝｯ!!!

絡繰人間12号「ん!!?」

絡繰人間12号の前に2人、雪蓮を庇うように『空走』をして現れた者がいた

それは

思春「それ以上………雪蓮様に近寄るな………」

明命「これより先には…………行かせません…………!!!」

大陸の隠密を担う、思春と明命であった

互いに得物を持っていて戦う気がマンマンだ

絡繰人間12号「甘寧………周泰………」

絡繰人間12号は意外そうな表情で2人を見る

思春「我々は諦めはしない………」

明命「雪蓮様を……護るのです!!!」

というが、2人も虚勢をはっているだけ

2人も雪蓮や蓮華同様に、『誘導追跡爆弾』を喰らってしまったのだ

体力的にも限界がきている

絡繰人間12号「しつこい奴らだ……どうやら貴様等2人も殺されないと分からないらしいな」

絡繰人間12号が冷酷に話すと

蓮華「しつこいのは思春と明命だけじゃないぞ、絡繰人間」

絡繰人間12号「ん？」ﾋﾟﾋﾟﾋﾟｯ

『万能鏡眼』に強い反応が生じ、絡繰人間12号が振返る

そこには

蓮華「悪いが我々は『天の御遣い』同様、諦めが悪いのでな…………!!!」

蓮華が『南海覇王』の刃先を絡繰人間12号の顔に刺し向ける

蓮華だけではない

小蓮「諦めの悪さは『天の御遣い』譲りなんだよ？」

七乃「何度敗れても立ち上がりますよ………………♪」

亜莎「貴方を倒すまでは何度でもっ!!!」

祭「儂らは立ち上がるぞっ!!!」

雪蓮を残した全員が得物を持ち、立ち上がっていた

絡繰人間12号「これは驚いた…………

誰もくたばっていなかったとはな……」

絡繰人間12号は目を見開いて驚く

明命「勝手に殺さないで欲しいですね…………!!!」

明命はキッと睨む

蓮華「我々がそう簡単に死ぬとでも思っているのか？」

蓮華は堂々と立つも、『誘導追跡爆弾』のダメージが大きく若干ふらついている

絡繰人間12号「ふっふっふっ………ふらふらとして言われても説得力に欠けるぞ？孫権…………」

蓮華「余計なお世話だ、絡繰人間………」

蓮華は『南海覇王』を構える

思春「はあぁぁぁぁぁ……………!!!」

明命「はあぁぁぁぁぁっ!!!」

ｷﾞｭｫｫｯ!!

ｷﾞｭｫｫｯ!!

ｷﾞｭｫｫｯ!!

思春を筆頭に次々と全員が気を溜めていく

蓮華「祭、亜莎………姉様を頼む」

蓮華は亜莎と祭に指示を仰ぐ

祭「はっ!!!」

亜莎「御意っ!!!」

祭と亜莎はすぐさま雪蓮の側に行き、ボディガードとなる

亜莎「雪蓮様……………」

ｷﾞｭｫｫｯ!!

亜莎は雪蓮に両手を添え、『癒療』を開始する

亜莎は基本軍師だが、緊急に備えて武将にもなれる

そういった頭の切れる武将の立場を利用して色々な能力や技に首を突っ込んでいるので、『癒療』といった回復系の技術も習得しているのだ

亜莎「雪蓮様、もう少しの辛抱です…………」

蓮華は亜莎の方を一度見た後、すぐさま絡繰人間12号の方へ振返る

蓮華「行くぞ、皆の者っ!!!」

蓮華を筆頭に絡繰人間12号へ突っ込んで行った

だが、やはり力や体力の残量に差がつき過ぎていた

絡繰人間12号「おぉうりゃああぁぁぁっ!!!」

ﾌﾞｫﾝｯ!!!

ﾄﾞｶｯ!!!

明命「あぅっ!!!」

絡繰人間12号の強力なパンチを喰らった明命は岩に叩きつけられ

ﾌﾞｫﾝｯ!!!

ﾄﾞｶｯ!!!

小蓮「あぅあっ!!!」

小蓮もキックを喰らって派手に吹き飛ばされる

絡繰人間12号が備え持つ強大な力の前では、今のボロボロの蓮華達では太刀打ちが出来ない

戦う者達は絡繰人間12号が放つ攻撃に次々と倒れる

絡繰人間12号「終わりだぁぁぁぁぁっ!!!」

ﾌﾞｫﾝｯ!!!

ﾄﾞｶｯ!!!

七乃「あぐっ!!?」

今しがた、フックを喰らった七乃も然り

絡繰人間12号「でやあぁぁぁぁぁぁっ!!!」

ﾌﾞｫﾝｯ!!!

ﾄﾞｶｯ!!!

思春「がっ!!?」

アッパーを喰らった思春も然りである

戦いの結果は歴然、目に見えていた

だが、それでも

蓮華「はぁ…はぁ……はぁ……………」

思春「ま、まだだ…………」

蓮華達は諦めずに立ち上がり、果敢に絡繰人間12号に攻めて行った

絡繰人間12号「クドいっ!!!でえぇりやああぁぁっ!!!」

ﾌﾞｫﾝｯ!!!

ﾄﾞｶｯ!!!

蓮華「あぐぁっ!!?」

絡繰人間12号は少し力を上げ、蓮華に殴りかかり

絡繰人間12号「おぉうりゃああぁぁぁっ!!!」

ﾌﾞｫﾝｯ!!!

ﾄﾞｶｯ!!!

蓮華「がぁっ!!?」

立て続けに蹴り飛ばした

亜莎「蓮華様っ!!!」

祭「くっ!!!おのれ絡繰人間っ!!!」

祭は『多幻双弓』に矢を数本装填するが

絡繰人間12号「させるか………」

ｷﾞｭｫｫｯ!!

祭「っ!!?」

絡繰人間12号は冷静に右手を突き出し、気を溜め始めた

そして

絡繰人間12号「喰らえっ!!!『気力破』っ!!!」

ｺﾞｵｯｯ!!

ﾄﾞｫﾝｯ!!!

祭「ぐぅあっ!!!」

祭目掛けて赤黒い『気力破』を放った

祭は諸に喰らってしまい、派手に吹き飛ぶ

亜莎「そ、そんな………………」

気づけば今現在立っているのは亜莎のみとなってしまった

絡繰人間12号「ふっふっふっ………後一人か…………」

ｼｭﾝｯ!!!

ｶﾞﾂｯ!!!

亜莎「わっ!!?ぐっ……………!!!」

絡繰人間12号は『空走』をして亜莎の首根っこを掴み、持ち上げる

絡繰人間12号「呂蒙………貴様は邪魔だっ!!!」

ﾌﾞｫﾝｯ!!!

ﾄﾞｶｯ!!!

亜莎「がぁっ!!?」

絡繰人間12号により、投げ飛ばされた亜莎は地面に強く叩きつけられ衝撃で動けなくなってしまう

亜莎「あ…………あぅ…………」

絡繰人間12号「ふん…………さて、いよいよ孫策…………」

絡繰人間12号はニヤリと嗤いながら、左手で倒れ込む雪蓮の首根っこを掴み、持ち上げる

雪蓮「あっ!!?…………あぐぁ………っ!!?」

雪蓮は苦痛の表情で呻き声を掠らせながら洩らす

絡繰人間12号「貴様の公開処刑を執行しようか………………」

絡繰人間12号は空いている右手の指をワキワキと動かす

雪蓮「ぐぅっ!!!うぅっ!!?」

雪蓮は亜莎により何とか回復した手足を動かし、絡繰人間12号に抵抗する

だが、結果は目に見えていて何も解決しない

絡繰人間12号「無駄な抵抗はやめろ……………

大人しく先に逝っているがいい…………すぐさま孫権や孫尚香………そして、北郷一刀もあの世に送ってやる」

絡繰人間12号は満面の歪んだ笑みを浮かべ雪蓮に語りかける

雪蓮「ぐっ……………(私、このまま死ぬの…………？)」

雪蓮の目には薄っすらと涙が浮かんでいた

雪蓮「(乱世を生き延びて………大陸に平和が訪れて………桃香や華琳………一刀と出会って…………)」

雪蓮の目から涙の道筋が頬へと流れ落ち、くっきりと浮きあがる

雪蓮「(まだ…………一刀の子供、出来てないよ…………)」

唇を噛み締める雪蓮

その全ての行動に悔しさが滲み出ている

雪蓮「(私、まだ………死にたくないよぉ………………)」

雪蓮の瞳からは留まることなく涙が滴り落ちる

絡繰人間12号「さぁ…………別れの時間だ………心の臓を貫いてやるぞ……………」

絡繰人間12号は右手の指を揃えて手刀の形に変える

雪蓮「(………助けて…………一刀……………一刀ぉ………)」

雪蓮が泣きながら心の中で一刀の名を呼び続けた

絡繰人間12号「死ねっ!!!孫策っ!!!

龍天様の栄光の時代の礎となれっ!!!」

そして、絡繰人間12号の右手が雪蓮の身体に向かって一直線に貫きかけた

正にその時だった…………………

ｼｭﾝｯ!!!

絡繰人間12号「ん？」ﾋﾟﾋﾟﾋﾟｯ!!!

ﾌｫﾝｯ!!!

ﾊﾞｷｯ!!!

絡繰人間12号「ごふぇあっ!!?」

ﾌｫﾝｯ!!!

ﾌｫﾝｯ!!!

ﾄﾞｶｯ!!!

ﾊﾞｺｯ!!!

絡繰人間12号「うぐぁあっ!!?なにぃっ!!?」

突如、絡繰人間12号が何者かに殴られ、蹴られ始めたのだ

？？K「はっ!!!」

ﾌｫﾝｯ!!!

ﾄﾞｶｯ!!!

絡繰人間12号「うごあぁあっ!!?」

最後に強烈な右の拳が絡繰人間12号の鳩尾に入り込み、絡繰人間12号は派手に吹き飛ばされた

雪蓮「きゃっ!!?」

雪蓮の身体は絡繰人間12号の右手から離れた為、空中に放たれてしまった

だが、

？？K「よっと…………」

何者かが雪蓮の身体を優しく受け止め、お姫様抱っこをする

雪蓮「………………………っ!!?」

雪蓮は現れた者の顔を見て絶句する

その正体は

一刀「大丈夫…………じゃなさそうだな、雪蓮」

我等が『天の御遣い』、北郷一刀であった

雪蓮「か、一刀………………？」

雪蓮は口を開けて呆気にとられる

まさか本当にこのタイミングで助けに来てくれるなどと思っていないからだ

あまりの事態に思考が追いつかない

一刀「全く………左慈から話を聞いたけど…………無茶のし過ぎだぞ？」

一刀は雪蓮のおでこに軽くデコピンをする

雪蓮「んんっ!!?」

雪蓮は驚いて思わず片目を瞑る

だが、そのお陰ですこし冷静のなれた

一刀「だけど………もう大丈夫だからね……………誰一人として死なせはしないから……」

一刀は優しく微笑む

雪蓮「一刀…………一刀ぉっ!!!」

雪蓮は大泣きをしながら一刀の首に腕を廻して強く抱きつく

一刀「おっと……………」

一刀は雪蓮の頭を優しく撫でる

周りの皆が一刀に気が付きゆっくりと立ち上がり、少しずつだが身体を引き摺らせて歩み寄ってくる

蓮華「本当に…………一刀なの……？」

思春「助けにきて……くれたのか……？」

一刀は無理をさせないように皆をその場に座らせてしゃがむ

一刀「当たり前だろ？助けに来ない訳ないじゃないか」

七乃「ですが………どうやって？」

七乃は痛んでいる左腕に右手を添えて一刀に聞く

亜莎「左慈さんとの連絡は戦闘開始前に切ってしまった筈ですが………」

亜莎も腑に落ちない様子で聞く

一刀「それはね………………」

一刀は落ち着いて周りを注意しながら話し出した………

…………一刀が駆けつけてくる数分前のこと

一刀が左慈曰く、『覚醒』した後の鍛錬終了後のことであった

左慈は鍛錬が終了したことで区切りをつけ、一刀に絡繰人間が2回に分けて襲撃してきた事を説明

勿論、雪蓮により『読心術』を遮られたこともだ

すると、一刀は血相を変えて問い詰める

一刀「何っ!!?本当か左慈っ!!!」

左慈は溜息をついて話す

左慈「今更、嘘なんかついてどうすんだよ……………

まぁ、でも雪蓮率いる呉の精鋭だ……問題は」

『ない』………

左慈がそこまで言いかけたのだが、一刀はその先を遮って

一刀「馬鹿野郎っ!!!なんでそれを先に言わないんだよっ!!?」

一刀は慌てて聖フランチェスカの制服を着始める

左慈「お、おい………何を慌ててるんだ…………？」

一刀の急ぎっぷりを見て左慈は驚く

あまりの出来事に思わずどもってしまう程

一刀「そりゃ慌てるだろ!!?『血光軍』が同じ手で襲撃してくると思うか!!?」

一刀は制服を着ながら息を荒くしつつ、左慈に問いかける

左慈「それはねぇだろうな………現に3体+追加で1体送ってきたんだしよ」

左慈はさも当たり前かのよう腰に手を当てて問に返す

一刀「そうだろ？最低限、絡繰人間7号より強い筈だ

それに若干の間を空けてからの追加襲撃………恐らく強さの計測とかをしてデータを収集してるんだろう」

一刀は制服を着終わらせ、左腰に得物である漆黒の日本刀『龍終』を装備させる

左慈「……………今の雪蓮達でも勝てねぇと？

だが、過保護すぎやしねぇか？」

左慈は眉を顰めて一刀に聞く

あくまでも、まだ一刀を戦地に向かわせたくないようだ

一刀「もし、現場に向かって俺の勘違いで雪蓮達皆が無事ならそれでいいさ

だが、この戦いは遅かったじゃ済ませられないんだぞ？」

一刀は全ての準備が終わったのか、左慈の真正面に立ち、ゆっくりとした口調で左慈を見据えて話す

左慈はまだ納得していないのか、口を尖らせている

一刀「左慈………俺だって気のせいだって思いたいよ

だけど、行かないで後悔するより行って後悔したほうが俺はいい………

更に言えば行って後悔させないようにしたい………」

一刀は真っ直ぐ左慈を見た

左慈「……………………はぁ?……」

左慈は大きな間を空け、大きな溜息をついて口を開く

左慈「分かった、行って来い………」

一刀「左慈……………!!!」

左慈はやれやれといった表情でサバサバと答える

左慈「丁度いい機会だ………てめぇの修行の成果を実戦で学んで来い

十中八九、負けはしねぇだろうがそれでも気を抜くな」

一刀「勿論だ……………」

一刀は真顔で頷く

左慈「あと、現場に着くまでは気を押し殺し続けろ

バレたら面倒だからな」

一刀「了解」

左慈は一刀に忠告すると

左慈「やれやれ…………てめぇの甘ったれさには反吐が出らぁ……」

右手で頭をガシガシと掻き毟る

一刀「わ、悪かったな………」

一刀はバツが悪そうに答える

左慈「……………けどな、てめぇの甘ったれさが俺にも伝染っちまったようだな…………」

左慈は苦笑いで一刀を見る

一刀「良い事………なのかな？」

一刀は笑いながら首を傾げる

左慈「そんな事、俺が知るかよ

ほらぁ、とっとと後悔する前に行って来いっ!!!」

ﾄﾞｶｯ!!!

一刀「痛ってっ!!?分かった分かったっ!!!」

一刀は左慈にはぐらかされたうえ、タイキックを喰らってしまったので逃げるようにして『次元の狭間』を後にした

因みに一刀が去った後の左慈は

左慈「ったく……………」

左慈「…………………」

左慈はふと一刀の言葉を復唱する

左慈「甘ったれさが伝染ることは良い事なのか………か……」

左慈は懐こから莨を取り出し、火をつけて吸い出した

左慈「ふぅ?………」

左慈「………………………」

左慈は一瞬、考えて口を開く

左慈「………別に良い事じゃねぇと思うが……………

案外悪くねぇ気分だな…………」

左慈は一人、思い掛けない一言を言いほくそ笑んでいたのだった……