リリカルHS 2015年八神はやて誕生日記念回
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はやて「はぁ…」

 

私こと、八神はやては、最近少しモヤモヤしていた

 

士希が帰ってきて早2ヶ月。

 

士希とレーゲンは彼らが暴れてしまった罪を償う為に嘱託魔導師となり、現在は聖王協会や特務隊で活躍しているとの事。

元々の正義感や人徳、そして能力の高さから、士希は早くも信頼され、その内単独での任務を言い渡される予定の目処も立っているとの事。

 

それ自体は何の問題もない。むしろ喜ばしい事や。

士希を正当に評価してくれとるんやもん。同僚としても恋人としても誇らしい事や。

 

せやけど、なぁ…

 

はやて「あいつ、忘れとんのとちゃうやろな…」

 

6月に入り、私はあいつの顔を見ていない。

日付としては6月3日。

たった3日見てないだけやけど、個人的に6月のこの3日間は、ソワソワしてしまう理由があった。

それは…

 

アリサ「明日ははやての誕生日ね。去年みたいに、またはやての家でやる?」

 

すずか「去年は楽しかったよねー。士希君の料理も美味しかったし」

 

なのは「明日は私もフェイトちゃんもしっかり休み取ってあるよ!」

 

フェイト「うん、お兄ちゃんは忙しくて無理みたいだけど、エイミィは来れるって」

 

そう、それは私の誕生日。

毎年みんなに祝ってもろてて、去年はそこに士希も加わって、私にとっては恋の始まりでもあったりして、とても大事な日なんやけど…

 

すずか「そう言えば、士希君はまた仕事?」

 

はやて「せやでー。あいつ、仕事忙しいみたいやわー」

 

アリサ「わかりやすいほど拗ねてるわね」

 

はやて「拗ねてなんておらへんよー。ややわー、アリサちゃん。私がそんなん気にすると思てるん?」

 

ホントに、別に拗ねてなんておらへん。ただ、ほんのちょっと、モヤモヤするだけ

 

アリサ「いやいや…はぁ…まぁいいわよ。それで、明日どうする?」

 

はやて「あはは、毎年ありがとうなぁ。なんや、うちのシャマルが気合い入れとったで、うち来てもらえると嬉しいわぁ」

 

シャマルがえらい気合い入れて「ご飯作ります!」なんて言ってたでなぁ。

確か、士希お手製のレシピ本なるものを貰ってたみたいやで、作りたぁてしゃあないんやろな

 

アリサ「わかったわ。なら、今年はちょっと派手にいってみる?なんたって17歳なんだし。綺麗な花火でも打ち上げてみる?」

 

はやて「おいおい、そりゃ派手過ぎなんとちゃいますん?」

 

お金持ちは相変わらずやる事が大掛かりやった

 

 

 

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時間はあっという間に過ぎて放課後。今日も帰り道は一人である。

いや、途中まではみんなと一緒やったで?決してボッチとか、そんなんちゃうでな?

 

はやて「おばちゃーん!たい焼き一つちょうだいな」

 

おばちゃん「あら、はやてちゃん!たい焼きね?ちょっと待っててね!」

 

こうやって商店街に顔馴染みがおるくらいなんやで、絶対ボッチとかちゃうでな?

ちなみに今私がたい焼き買ったところも、私が昔からようお世話になっとるたい焼き屋さんや。かれこれ7年以上の付き合いやな

 

おばちゃん「はい、お待たせ!」

 

はやて「ありがとー!って、おばちゃん、たい焼き一つ多いで?」

 

渡された紙袋の中には、たい焼きが二つ入ってた。

ここのたい焼き屋さんは、昔ながらの餡子しか入ってないたい焼き屋さんで、カスタードとかチョコレートみたいな、種類が豊富って訳ちゃうんやけどなぁ

 

おばちゃん「ふふ!それはサービスよ!中は漉し餡と粒餡だから。確か、はやてちゃんの彼氏君は漉し餡派だったでしょ?だからそれは彼氏君にと思って」

 

あー、そういやこの商店街、士希も懇意にしとるで、私並みに顔馴染み多いんやったなぁ。

てか、士希は漉し餡派なんかい。

粒餡派な私としては、ここでは断固、粒餡をプッシュしてこうと思う

 

はやて「あははー、ありがとうな、おばちゃん。あいつに渡しとくわぁ」

 

おばちゃん「はーい、また来てねー!」

 

そう言って、たい焼き片手に私は再び歩き始めた。

 

ホカホカのたい焼きを口の中に入れると、程よい甘さの粒餡と生地が口いっぱいに広がっていく。

甘い、けど甘過ぎない。

和菓子の特徴とも言えるその味わいは、そのどれもがお茶に合うように作られとる気がして、私は思わず水筒に入れてきた冷たい緑茶に手を伸ばした。

少し苦味のある深い味わいの緑茶が、粒餡や生地を流し込んでいく。

先程まであった甘みと、今来た苦みが絶妙に混ざり合って、私の脳とお腹に満足感を与えていく。

 

至福、っていうのは、きっとこの瞬間の事なんやろな

 

そんな事を思ってしまうほど、たい焼きと緑茶の相性は最高やった

 

はやて「ふぅー、悩んだ時は、甘いもんに限るなぁ」

 

とは言え、ここで更に悩みが出来てしまった。

 

この、おばちゃんに貰った漉し餡のたい焼き、どないしよか?

 

おばちゃんは士希にと言って渡してくれたが、その士希当人がいつ帰ってくるかわからない。

たい焼きは食べ物やで、なるべく早く食べてもらわな痛んでまうし、それは流石にもったいない。

うちの子らにあげるにしても、一個だけしかないで、なんや不平等やし…

 

はやて「うーん…」

 

悩む、悩む、悩む…

 

この紙袋に入ったたい焼きの処遇に悩む

 

はやて「……とりあえず、あいつの部屋行ってみるか」

 

悩みに悩んだ末、私は士希の家に行く事にした。

もしかしたら帰って来てるかもしれやんし、最悪このたい焼きも、日付と食べてなってメモ用意して置いときゃええやろ。

そう思うやいなや、私は早速士希の家へと向かった

 

 

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士希の家は、私の家の真向かいにあるマンション、その最上階の一室や。

ここは海鳴市内でも有数の高級マンションで、設備はもちろんの事、眺めも最高で、特に士希の部屋からは海が一望出来るので、夕方の時間帯なら日没も見れる

 

はやて「金持ちにしか住むこと許されへんとこなんよな」

 

もちろん、私は金持ちではない。

生活には困らへんくらいはあるけど、士希程ではない。

せやけど、私はここの合鍵を持ってるから自由に行き来出来たりする。

恋人の特権ってやつやな

 

私は士希の部屋の前に行き、鍵束から士希の部屋の鍵を取る。

そして慣れた手つきでガチャリと開けて、中に入った

 

玄関に靴はない。

部屋のカーテンも締め切っている。

聞こえるのは、時を刻む時計の音だけ。

 

やっぱり、帰って来てへんか…

 

私はカーテンと窓を開けて、空気の入れ替えをする。

その時目に入ったのは、外の景色いっぱいに広がる茜色の空と、それを映し出すキラキラと輝いているオレンジ色の海やった。

 

はやて「綺麗…」

 

何度も見てきた筈やのに、それでもここの景色は飽きさせず、見惚れさせてしまう。

それが数秒なのか、数分なのか、時間の感覚が狂ってしまう程、目の前の光景に釘付けになった

 

やがて、陽はゆっくりと沈んでいき、徐々に暗くなっていく。

せやけど、海はまだその輝きを失っておらず、陽の光と、夜の闇が混ざり合って、幻想的な風景を映し出していた。

 

それはまるで、魔法の様な風景。

 

黄金に輝く、幻想的な光景

 

この現象を、私は前に聞いた事がある。そう、確か…

 

「マジックアワー、だな」

 

私が答えを導き出すと同時に、その答えを先に言ってくれた男の声が聞こえた。

その声は、聞きなれた声やけど、私にとっては掛け替えのないもので、とても愛おしいものや

 

私はバッと振り返り、目の前の人物に焦点を当てる。

そして誰なのかを認識するや否や、私はそいつに抱き着いた。

そいつはびっくりするも、しっかり私を抱き留めてくれた

 

士希「ただいま、はやて」

 

はやて「おかえり、士希」

 

抱き着くと感じる、彼の体温。

抱き締められると香る、彼の匂い。

そして聞こえる、時計の針の音と同調するように刻むお互いの心臓の音。

そのどれもが、心地良くて、心を落ち着かせる

 

はやて「あんた、マジックアワーなんて知ってたんやな」

 

抱き着いたまま、私は士希と会話する。

士希も、抱き締めてくれたまま、会話に付き合ってくれた

 

士希「あぁ、この現象は母さんが好きでな。なんでも、母さんにとっては思入れ深い出来事があったみたいなんだ。それが何なのかは、教えてくれないけどな」

 

少し子どもっぽい笑顔で、士希は言った。

 

なんとなくやけど、多分士希のお母さん、咲夜さんは、この光景を大切な人と一緒に見たんじゃないかなと思った。

だって、この光景はとても綺麗で、それを大切な人と見れたら、それは確かに思入れ深い出来事になる。

せやけど、それを言うのは何となく気恥ずかしい。

だから咲夜さんは、マジックアワーの事は教えても、その思い出までは語らなかったんとちゃうかな

 

はやて「あ、せや、あんたに渡さなあかんモンあるんさ。そこに紙袋置いてあるやろ?あれ、あんたのやで」

 

士希「ん?あの紙袋は…たい焼きか?ありがとな!有難く貰うよ!やっぱり仕事終わりの、疲れた身には甘いものだよな!」

 

そう言って士希は私を手放した。

それが少しだけ寂しかったけど、目の前の士希の笑顔を見とると、それだけで満たされた

 

士希「うん!美味いな!やっぱりたい焼きは漉し餡だよなぁ」

 

はやて「何言うとるん、粒餡やろ。粒餡こそが至高やで!」

 

士希「お、はやては粒餡派かぁ。粒餡も悪くねぇんだけど、俺はこのしっとりした餡が好きだからなぁ」

 

ま、好みは人それぞれやわな

 

士希「まぁでも、和菓子と言えばアレだよな?」

 

はやて・士希「緑茶!」

 

士希「お、これはピッタリだな」

 

はやて「当然やな!」

 

好みが合う。

それだけで嬉しくなる。

そんな単純な事やのに、愛おしく思う。

私は士希が心底好きなんだと、再認識した

 

士希「おっと、言い忘れるところだった」

 

私が士希への想いを再確認したところで、士希が私を見て微笑みかけてくれた

 

士希「明日は、ちゃんと休み取ったから。だから、期待していいからな」

 

ドクンと心臓の音が高鳴り、頬が熱くなるのを感じる

 

覚えてて、くれてたんやな…

 

本当に、たったそれだけの事が嬉しくてたまらない

 

涙が出そうな程に、想いが溢れてくる

 

だから私は…

 

はやて「士希、ありがとう…」

 

そっと、彼に口付けをした

 

そのキスは甘く、だけど甘過ぎない、私好みのキスやった

 

 

 

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おまけ(その頃の八神家)

 

 

 

シグナム「チッ!!!」

 

レーゲン「っ!?ど、どうしたんですか、シグナムさん?」

 

シグナム「いま、ラブコメの波動を感じた。私は殺意の波動に目覚めそうだがな!」

 

ヴィータ「つか、もう目覚めてんだろ、それ」

 

ザフィーラ「平常運転だ、いつもの事だろう」

 

シャマル「だよねー、ところでこの大さじ一杯って、どれくらいが大さじなのかな?レンゲでひとすくいくらい?」

 

リィン「多い!シャマルそれ絶対多いですから!」

 

 

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あとがき

 

 

 

どうも、こんにちは、桐生キラです!

 

最近、とうとう社会人になってしまい、小説書く時間がめっきり減ってしまいましたが、はやての誕生日話だけは書くと決めて、寝る間を惜しんで書いてみました(笑)

 

誕生日というより、誕生日が近づいてソワソワ&好きな人が自分の事をほったらかしにしてモヤモヤするはやてちゃんを描写したみました。

 

個人的には、思った以上に筆が進んだお話でした。

 

やはり、日常もの書いてる方が自分にはあってるのかな?なんて思ったりもしました(笑)

 

とは言え、現在自分が書いてる方も佳境なので、あともう一踏ん張りではあるのですが…

 

次回作もいろいろ考えてるんで、その際またお付き合いしてくださると幸いです!

 

ん?次回作ですか?

 

そう言えば、なのはVIVID始まりましたね。

 

その前にStrikerS編やらないとね!

 

それでは、またどこかで!

 

 

 

説明
こんにちは!
お久しぶりの方はお久しぶりでございます!
短いですが、はやてちゃんハピバ回でございます。
楽しんでもらえると幸いです!
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コメント
コメント、ありがとうございます!やはり、コメントを頂けると、励みにもなってとても嬉しいです!(桐生キラ)
はじめまして、バイキラーという者です! はやて好きな私にとって、この小説はとても嬉しかったです! これからも更新頑張って下さい!  (バイキラー)
コメント、ありがとうございます!そろそろ落ち着いてくるかと思われるので、書き溜めたら出す感じにしようかと思います!(桐生キラ)
StrikerS編が楽しみで仕方ないです。でもまぁ就職したら大変でしょうし、ゆっくりと頑張ってください(ohatiyo)
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